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[インデックス 1505] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のbignumパッケージのテストファイルであるsrc/lib/bignum_test.goに対する変更です。具体的には、テストヘルパー関数の命名規則を修正し、外部に公開する必要のない関数を非公開(unexported)にするための変更が行われています。

コミット

このコミットは、bignum_test.goファイル内の関数名のキャメルケース(CamelCase)を修正し、Go言語の命名規則に準拠させることを目的としています。これにより、テスト内部でのみ使用される関数が誤って外部から参照されることを防ぎ、コードの整合性とカプセル化を向上させます。

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/116a6e9c9cad2202d8dfabf9e59c949af998eead

元コミット内容

- more bignum_test letter case fixes

R=r
OCL=22952
CL=22952

変更の背景

Go言語では、識別子(関数名、変数名、型名など)の最初の文字が大文字であるか小文字であるかによって、その識別子がパッケージ外に公開される(exported)か、パッケージ内でのみ使用される(unexported)かが決まります。このコミットが行われた2009年1月はGo言語がまだ初期段階にあった時期であり、コードベース全体でこのような命名規則の統一が進められていました。

bignum_test.goファイル内の関数は、bignumパッケージのテストを補助するためのヘルパー関数であり、通常はパッケージ外部から利用されることを意図していません。しかし、コミット前のコードでは、これらのヘルパー関数がNatFromStringTESTのように大文字で始まっており、これはGoの命名規則上「公開された」関数として扱われることを意味していました。

この変更の背景には、以下の目的があったと考えられます。

  1. 命名規則の統一と遵守: Go言語の公式な命名規則に準拠し、コードベース全体の一貫性を保つ。
  2. カプセル化の強化: テストヘルパー関数が誤って他のパッケージから利用されることを防ぎ、テストコードの内部実装を隠蔽する。これにより、テストコードの変更が他のコードに予期せぬ影響を与えるリスクを低減する。
  3. コードの意図の明確化: 関数名を見るだけで、その関数がパッケージ内部でのみ使用されるものなのか、それとも外部に公開されるAPIの一部なのかを明確にする。

前提知識の解説

Go言語の命名規則(Exported vs. Unexported)

Go言語における識別子の可視性(visibility)は、その識別子の最初の文字のケース(大文字か小文字か)によって決定されます。

  • Exported (公開された) 識別子: 識別子の最初の文字が大文字の場合、その識別子は定義されたパッケージの外部からアクセス可能です。これは、他のプログラミング言語におけるpublicに相当します。例えば、fmt.PrintlnPrintlnfmtパッケージからエクスポートされているため、他のパッケージから呼び出すことができます。
  • Unexported (非公開) 識別子: 識別子の最初の文字が小文字の場合、その識別子は定義されたパッケージの内部からのみアクセス可能です。これは、他のプログラミング言語におけるprivateinternalに相当します。例えば、internal/foo.go内のbarという関数は、internalパッケージ内でのみ使用できます。

この規則は、関数、変数、定数、型、構造体のフィールドなど、すべての識別子に適用されます。このシンプルな規則により、Go言語では明示的なpublicprivateキーワードを使用せずに、コードの可視性を管理しています。

bignumパッケージ

bignumパッケージは、Go言語の標準ライブラリの一部として、任意精度(arbitrary-precision)の整数、有理数、浮動小数点数などを扱うための機能を提供するパッケージです。通常のintfloat64型では表現できない非常に大きな数値や、高い精度が求められる計算(例: 暗号化、科学技術計算)に利用されます。

  • Natural (自然数): 負でない整数を扱います。
  • Integer (整数): 正負の整数を扱います。
  • Rational (有理数): 分数形式の数値を扱います。

これらの型は、加算、減算、乗算、除算、比較、シフトなどの基本的な算術演算をサポートしています。bignum_test.goは、これらのbignumパッケージの機能が正しく動作するかを検証するためのテストコードです。

技術的詳細

このコミットの技術的な詳細は、Go言語のコンパイラとリンカが識別子の可視性をどのように扱うかに関連しています。

Goコンパイラは、ソースコードをコンパイルする際に、各識別子の最初の文字をチェックし、その識別子がエクスポートされるべきか否かを判断します。エクスポートされない識別子(小文字で始まるもの)は、生成されるオブジェクトファイルやライブラリにおいて、外部から参照できないようにマークされます。これにより、他のパッケージが誤って内部関数を呼び出そうとした場合、コンパイルエラーが発生します。

bignum_test.goファイルは、bignumパッケージのテストコードであり、通常はbignumパッケージ自体とは別のパッケージ(慣例としてbignum_testパッケージ)としてコンパイルされます。これにより、テストコードはbignumパッケージの公開されたAPIのみをテストし、内部実装に依存しないように設計されます。しかし、テストヘルパー関数が誤って大文字で始まっていると、それらの関数はテストパッケージの外部からも参照可能であると誤解される可能性があります。

このコミットでは、NatFromStringのような関数がnatFromStringに変更されています。これにより、これらの関数はbignum_testパッケージ内でのみ利用可能な非公開関数となります。これは、テストコードの健全性を保つ上で重要です。なぜなら、テストヘルパー関数はテストの内部実装の詳細であり、そのシグネチャや動作が変更されても、テストパッケージの外部に影響を与えるべきではないからです。非公開にすることで、将来的なリファクタリングや変更が容易になり、意図しない依存関係の発生を防ぐことができます。

また、TEST, NAT_EQ, INT_EQ, RAT_EQといったアサーションヘルパー関数も同様に小文字始まりのtest, nat_eq, int_eq, rat_eqに変更されています。これらはGoのtestingパッケージの*testing.T型を利用してテストの失敗を報告するものであり、テストコードの内部でのみ使用されるべきものです。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/lib/bignum_test.goファイルのみで行われています。主な変更は、複数の関数名の最初の文字を大文字から小文字に変更することです。

以下に、変更された主要な関数名とその変更内容を示します。

  • NatFromString -> natFromString
  • IntFromString -> intFromString
  • RatFromString -> ratFromString
  • TEST -> test
  • NAT_EQ -> nat_eq
  • INT_EQ -> int_eq
  • RAT_EQ -> rat_eq
  • Add -> add
  • Sum -> sum
  • Mul -> mul

これらの関数は、ファイル内で定義されている箇所と、それらが呼び出されている箇所の両方で変更されています。

コアとなるコードの解説

変更された関数は、bignumパッケージのテストにおいて、文字列からbignumの数値型への変換、テスト結果の比較、算術演算のヘルパーとして使用されていました。

例えば、NatFromStringは文字列からbignum.Natural型を生成するヘルパー関数でした。これがnatFromStringに変更されたことで、この関数はbignum_testパッケージ内でのみ利用可能になります。同様に、NAT_EQは2つのbignum.Natural型の値が等しいかを比較し、等しくない場合にテストを失敗させるアサーションヘルパーでした。これがnat_eqに変更されたことで、このアサーションもテストパッケージ内部でのみ使用されることが明確になります。

これらの変更は、機能的な変更を伴いません。つまり、関数の動作自体は変更されていません。変更の目的は、Go言語の命名規則に準拠し、コードの可読性と保守性を向上させることにあります。これにより、bignum_test.goファイル内のコードは、Goの慣習に沿ったより「Goらしい」コードになりました。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント
  • Go言語のEffective Go
  • Go言語のソースコードリポジトリ (GitHub)
  • Go言語の初期のコミット履歴
  • Go言語の命名規則に関する一般的な情報源 (ブログ、チュートリアルなど)