Keyboard shortcuts

Press or to navigate between chapters

Press S or / to search in the book

Press ? to show this help

Press Esc to hide this help

[インデックス 15078] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のツールチェインの一部である cmd/go における cgo コンパイラのエラーメッセージの可読性を向上させるための変更です。具体的には、cgo が生成する一時ファイルのパスをエラーメッセージから削除し、_Ctype_foo のような内部的な型名を C.foo のようなよりユーザーフレンドリーな形式に変換することで、開発者がエラーの原因を特定しやすくすることを目的としています。

コミット

commit 32a6097fdea70f64e56a03709befe3adc3c70038
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Fri Feb 1 08:34:21 2013 -0800

    cmd/go: clean cgo compiler errors

    Cut out temporary cgo file in error message.
    Show C.foo instead of _Ctype_foo.

    Before:
    x.go:20[/var/folders/00/05_b8000h01000cxqpysvccm000n9d/T/go-build242036121/command-line-arguments/_obj/x.cgo1.go:19]: cannot use tv.Usec (type int32) as type _Ctype___darwin_suseconds_t in assignment

    After:
    x.go:20: cannot use tv.Usec (type int32) as type C.__darwin_suseconds_t in assignment

    Fixes #4255.

    R=golang-dev, iant
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7231075

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/32a6097fdea70f64e56a03709befe3adc3c70038

元コミット内容

このコミットの目的は、cgo を使用したGoプログラムのコンパイル時に発生するエラーメッセージの出力を改善することです。具体的には、以下の2点に焦点を当てています。

  1. 一時的な cgo ファイルパスの削除: エラーメッセージに含まれる、cgo が内部的に生成する一時ファイル(例: /var/folders/.../x.cgo1.go)へのパスを削除します。これにより、エラーメッセージがより簡潔になり、ユーザーがGoのソースコードのどの行で問題が発生しているかに集中できるようになります。
  2. _Ctype_foo から C.foo への変換: cgo がC言語の型をGo言語にマッピングする際に生成する _Ctype_ プレフィックスを持つ型名(例: _Ctype___darwin_suseconds_t)を、Goの cgo 規約に沿った C. プレフィックスを持つ型名(例: C.__darwin_suseconds_t)に変換します。これにより、エラーメッセージがGo開発者にとってより自然で理解しやすいものになります。

コミットメッセージには、変更前と変更後のエラーメッセージの例が示されており、改善された可読性が明確に示されています。

変更の背景

Go言語は、C言語のコードをGoプログラムから呼び出すための cgo というメカニズムを提供しています。cgo は、GoとCの間の相互運用を可能にする強力な機能ですが、その内部ではCのコードをGoから呼び出せるようにするための中間コードを生成します。この中間コードは、通常、一時ファイルとしてディスクに保存され、コンパイルプロセス中に使用されます。

しかし、cgo を使用する際にコンパイルエラーが発生した場合、そのエラーメッセージには、この一時ファイルのパスや、cgo が内部的に生成するGoの型名(例: _Ctype_foo)が含まれることがありました。これらの情報は、Go開発者にとってはノイズであり、エラーの根本原因を特定する上で混乱を招く可能性がありました。特に、一時ファイルのパスは環境によって異なり、エラーメッセージの再現性や共有を困難にする要因にもなっていました。

このコミットは、Go Issue #4255 で報告された問題に対応するものです。このIssueでは、cgo のエラーメッセージが冗長で理解しにくいというフィードバックが寄せられていました。開発者のRuss Cox氏(rsc@golang.org)は、この問題に対処し、cgo のエラーメッセージをよりクリーンで、開発者にとって有用なものにすることを目指しました。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下の概念についての基本的な知識が必要です。

  • Go言語: Googleによって開発された静的型付けのコンパイル型言語。シンプルさ、効率性、並行処理のサポートが特徴です。
  • cmd/go: Go言語の公式ツールチェインの一部であり、Goプログラムのビルド、テスト、実行、パッケージ管理などを行うコマンドラインツールです。go buildgo run などのコマンドを実行する際に使用されます。
  • cgo: Go言語の機能の一つで、C言語のコードをGoプログラムから呼び出すことを可能にします。cgo を使用すると、既存のCライブラリをGoプロジェクトに統合したり、パフォーマンスが重要な部分をCで記述したりすることができます。cgo は、Goのソースコード内に import "C" という特殊なインポート文を記述することで有効になります。
  • コンパイルエラー: プログラムのソースコードが、使用しているプログラミング言語の文法規則や型システムに違反している場合に、コンパイラによって報告されるエラーです。コンパイルエラーが発生すると、プログラムは実行可能な形式に変換されません。
  • 正規表現 (Regular Expression): 文字列のパターンを記述するための強力なツールです。このコミットでは、エラーメッセージ内の特定の部分(一時ファイルのパスや内部的な型名)を識別し、置換するために正規表現が使用されています。
  • regexp.MustCompile: Go言語の regexp パッケージの関数で、正規表現パターンをコンパイルします。コンパイルに失敗した場合はパニック(実行時エラー)を発生させます。
  • strings.Replace: Go言語の strings パッケージの関数で、文字列内の指定された部分文字列を別の文字列に置換します。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、src/cmd/go/build.go ファイル内の builder.run メソッドにおけるエラー出力の処理にあります。builder.run メソッドは、外部コマンド(この場合は cgo コンパイラ)を実行し、その出力を処理する役割を担っています。

変更前は、cgo コンパイラからの出力がそのまま b.showOutput メソッドに渡され、ユーザーに表示されていました。この出力には、前述のような冗長な情報が含まれていました。

変更後では、以下の2つの主要な変更が導入されています。

  1. 正規表現 cgoLine の導入:

    var cgoLine = regexp.MustCompile(`\[[^\[\]]+\.cgo1\.go:[0-9]+\]`)
    

    この正規表現は、エラーメッセージ内に含まれる [一時ファイルのパス/ファイル名.cgo1.go:行番号] の形式の文字列を検出するために使用されます。例えば、[/var/folders/00/05_b8000h01000cxqpysvccm000n9d/T/go-build242036121/command-line-arguments/_obj/x.cgo1.go:19] のようなパターンにマッチします。

  2. エラー出力の整形ロジックの追加: builder.run メソッド内で、cgo コンパイラからの出力 out を整形するロジックが追加されました。

    		out := string(out)
    		// Fix up output referring to cgo-generated code to be more readable.
    		// Replace x.go:19[/tmp/.../x.cgo1.go:18] with x.go:19.
    		// Replace _Ctype_foo with C.foo.
    		// If we're using -x, assume we're debugging and want the full dump, so disable the rewrite.
    		if !buildX && cgoLine.MatchString(out) {
    			out = cgoLine.ReplaceAllString(out, "")
    			out = strings.Replace(out, "type _Ctype_", "type C.", -1)
    		}
    		b.showOutput(dir, desc, out)
    
    • !buildX の条件: buildX は、go build -x オプションが指定されているかどうかを示すフラグです。-x オプションは、ビルドプロセスで実行されるコマンドを詳細に表示するためのデバッグオプションです。この条件により、デバッグ時にはエラーメッセージの整形を行わず、元の詳細な出力をそのまま表示することで、開発者がデバッグに必要な情報を得られるように配慮されています。
    • cgoLine.MatchString(out): cgoLine 正規表現が out 文字列にマッチするかどうかをチェックします。これにより、cgo 関連のエラーメッセージのみが整形対象となります。
    • out = cgoLine.ReplaceAllString(out, ""): マッチした一時ファイルのパス部分を空文字列に置換することで、エラーメッセージから削除します。
    • out = strings.Replace(out, "type _Ctype_", "type C.", -1): type _Ctype_ という文字列を type C. に置換します。-1 は、すべての出現箇所を置換することを意味します。これにより、内部的な型名がよりユーザーフレンドリーな形式に変換されます。

これらの変更により、cgo コンパイラからの生のエラー出力が、ユーザーに表示される前にフィルタリングされ、整形されるようになりました。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/cmd/go/build.go ファイルに集中しています。

--- a/src/cmd/go/build.go
+++ b/src/cmd/go/build.go
@@ -814,11 +814,11 @@ func (b *builder) build(a *action) (err error) {

 	// Compile Go.
 	if len(gofiles) > 0 {
-		if out, err := buildToolchain.gc(b, a.p, obj, inc, gofiles); err != nil {
+		out, err := buildToolchain.gc(b, a.p, obj, inc, gofiles)
+		if err != nil {
 			return err
-		} else {
-			objects = append(objects, out)
-		}
+		}
+		objects = append(objects, out)
 	}

 	// Copy .h files named for goos or goarch or goos_goarch
@@ -1177,6 +1177,8 @@ func relPaths(paths []string) []string {\
 // print this error.
 var errPrintedOutput = errors.New("already printed output - no need to show error")

+var cgoLine = regexp.MustCompile(`\[[^\[\]]+\.cgo1\.go:[0-9]+\]`)
+
 // run runs the command given by cmdline in the directory dir.
 // If the command fails, run prints information about the failure
 // and returns a non-nil error.
@@ -1189,7 +1191,16 @@ func (b *builder) run(dir string, desc string, cmdargs ...interface{}) error {
 		if desc == "" {
 			desc = b.fmtcmd(dir, "%s", strings.Join(stringList(cmdargs...), " "))
 		}
-		b.showOutput(dir, desc, string(out))
+		out := string(out)
+		// Fix up output referring to cgo-generated code to be more readable.
+		// Replace x.go:19[/tmp/.../x.cgo1.go:18] with x.go:19.
+		// Replace _Ctype_foo with C.foo.
+		// If we're using -x, assume we're debugging and want the full dump, so disable the rewrite.
+		if !buildX && cgoLine.MatchString(out) {
+			out = cgoLine.ReplaceAllString(out, "")
+			out = strings.Replace(out, "type _Ctype_", "type C.", -1)
+		}
+		b.showOutput(dir, desc, out)
 		if err != nil {
 			err = errPrintedOutput
 		}

コアとなるコードの解説

  1. build メソッド内の変更: func (b *builder) build(a *action) (err error) メソッド内で、buildToolchain.gc の呼び出しとその後の objects への追加ロジックが変更されています。 変更前:

    		if out, err := buildToolchain.gc(b, a.p, obj, inc, gofiles); err != nil {
    			return err
    		} else {
    			objects = append(objects, out)
    		}
    

    変更後:

    		out, err := buildToolchain.gc(b, a.p, obj, inc, gofiles)
    		if err != nil {
    			return err
    		}
    		objects = append(objects, out)
    

    これは、gc (Goコンパイラ) の実行結果 out とエラー err を先に受け取り、エラーが発生した場合にのみ return err するように変更されています。エラーがない場合は、objectsout を追加します。この変更自体はエラーメッセージの整形とは直接関係ありませんが、コードの構造をより明確にしています。

  2. cgoLine 正規表現の追加: var cgoLine = regexp.MustCompile([[^[]]+.cgo1.go:[0-9]+]) この行は、cgo が生成する一時ファイルへの参照を検出するための正規表現を定義しています。これは、エラーメッセージから不要なパス情報を削除するために使用されます。

  3. run メソッド内のエラー出力整形ロジック: func (b *builder) run(dir string, desc string, cmdargs ...interface{}) error メソッド内で、外部コマンドの出力 out を処理する部分が大幅に変更されています。 変更前は、b.showOutput(dir, desc, string(out)) と直接出力していました。 変更後は、以下のロジックが追加されています。

    • out := string(out): コマンドのバイト出力を文字列に変換します。
    • コメント: 変更の目的(cgo 生成コードへの参照をより読みやすくする、一時ファイルのパスを削除する、_Ctype_C. に置換する、-x オプション時は整形を無効にする)が明確に記述されています。
    • if !buildX && cgoLine.MatchString(out):
      • !buildX: go build -x オプションが指定されていない場合にのみ、エラーメッセージの整形を行います。これにより、デバッグ時には詳細な情報が保持されます。
      • cgoLine.MatchString(out): cgo 関連のエラーメッセージであるかどうかを正規表現で判定します。
    • out = cgoLine.ReplaceAllString(out, ""): cgoLine 正規表現にマッチする部分(一時ファイルのパス)を空文字列に置換し、エラーメッセージから削除します。
    • out = strings.Replace(out, "type _Ctype_", "type C.", -1): _Ctype_ プレフィックスを持つ型名を C. プレフィックスに置換します。
    • b.showOutput(dir, desc, out): 整形された out 文字列を最終的にユーザーに表示します。

これらの変更により、cgo コンパイラからのエラーメッセージが、開発者にとってより簡潔で、関連性の高い情報のみを含むように改善されています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

このコミットは、Go言語のツールチェインの一部である cmd/go における cgo コンパイラのエラーメッセージの可読性を向上させるための変更です。具体的には、cgo が生成する一時ファイルのパスをエラーメッセージから削除し、_Ctype_foo のような内部的な型名を C.foo のようなよりユーザーフレンドリーな形式に変換することで、開発者がエラーの原因を特定しやすくすることを目的としています。

コミット

commit 32a6097fdea70f64e56a03709befe3adc3c70038
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Fri Feb 1 08:34:21 2013 -0800

    cmd/go: clean cgo compiler errors

    Cut out temporary cgo file in error message.
    Show C.foo instead of _Ctype_foo.

    Before:
    x.go:20[/var/folders/00/05_b8000h01000cxqpysvccm000n9d/T/go-build242036121/command-line-arguments/_obj/x.cgo1.go:19]: cannot use tv.Usec (type int32) as type _Ctype___darwin_suseconds_t in assignment

    After:
    x.go:20: cannot use tv.Usec (type int32) as type C.__darwin_suseconds_t in assignment

    Fixes #4255.

    R=golang-dev, iant
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7231075

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/32a6097fdea70f64e56a03709befe3adc3c70038

元コミット内容

このコミットの目的は、cgo を使用したGoプログラムのコンパイル時に発生するエラーメッセージの出力を改善することです。具体的には、以下の2点に焦点を当てています。

  1. 一時的な cgo ファイルパスの削除: エラーメッセージに含まれる、cgo が内部的に生成する一時ファイル(例: /var/folders/.../x.cgo1.go)へのパスを削除します。これにより、エラーメッセージがより簡潔になり、ユーザーがGoのソースコードのどの行で問題が発生しているかに集中できるようになります。
  2. _Ctype_foo から C.foo への変換: cgo がC言語の型をGo言語にマッピングする際に生成する _Ctype_ プレフィックスを持つ型名(例: _Ctype___darwin_suseconds_t)を、Goの cgo 規約に沿った C. プレフィックスを持つ型名(例: C.__darwin_suseconds_t)に変換します。これにより、エラーメッセージがGo開発者にとってより自然で理解しやすいものになります。

コミットメッセージには、変更前と変更後のエラーメッセージの例が示されており、改善された可読性が明確に示されています。

変更の背景

Go言語は、C言語のコードをGoプログラムから呼び出すための cgo というメカニズムを提供しています。cgo は、GoとCの間の相互運用を可能にする強力な機能ですが、その内部ではCのコードをGoから呼び出せるようにするための中間コードを生成します。この中間コードは、通常、一時ファイルとしてディスクに保存され、コンパイルプロセス中に使用されます。

しかし、cgo を使用する際にコンパイルエラーが発生した場合、そのエラーメッセージには、この一時ファイルのパスや、cgo が内部的に生成するGoの型名(例: _Ctype_foo)が含まれることがありました。これらの情報は、Go開発者にとってはノイズであり、エラーの根本原因を特定する上で混乱を招く可能性がありました。特に、一時ファイルのパスは環境によって異なり、エラーメッセージの再現性や共有を困難にする要因にもなっていました。

このコミットは、Go Issue #4255 で報告された問題に対応するものです。このIssueでは、cgo のエラーメッセージが冗長で理解しにくいというフィードバックが寄せられていました。開発者のRuss Cox氏(rsc@golang.org)は、この問題に対処し、cgo のエラーメッセージをよりクリーンで、開発者にとって有用なものにすることを目指しました。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下の概念についての基本的な知識が必要です。

  • Go言語: Googleによって開発された静的型付けのコンパイル型言語。シンプルさ、効率性、並行処理のサポートが特徴です。
  • cmd/go: Go言語の公式ツールチェインの一部であり、Goプログラムのビルド、テスト、実行、パッケージ管理などを行うコマンドラインツールです。go buildgo run などのコマンドを実行する際に使用されます。
  • cgo: Go言語の機能の一つで、C言語のコードをGoプログラムから呼び出すことを可能にします。cgo を使用すると、既存のCライブラリをGoプロジェクトに統合したり、パフォーマンスが重要な部分をCで記述したりすることができます。cgo は、Goのソースコード内に import "C" という特殊なインポート文を記述することで有効になります。cgo を使用してGoコードをビルドする際、GoコンパイラはCコードを処理し、GoとCの間のブリッジとなる中間ファイルを生成します。これらのファイルは通常、一時ディレクトリに作成され、ビルドプロセスが完了すると削除されます。go build -work フラグを使用すると、これらの生成された一時ファイルを検査できます。
  • コンパイルエラー: プログラムのソースコードが、使用しているプログラミング言語の文法規則や型システムに違反している場合に、コンパイラによって報告されるエラーです。コンパイルエラーが発生すると、プログラムは実行可能な形式に変換されません。
  • 正規表現 (Regular Expression): 文字列のパターンを記述するための強力なツールです。このコミットでは、エラーメッセージ内の特定の部分(一時ファイルのパスや内部的な型名)を識別し、置換するために正規表現が使用されています。
  • regexp.MustCompile: Go言語の regexp パッケージの関数で、正規表現パターンをコンパイルします。コンパイルに失敗した場合はパニック(実行時エラー)を発生させます。
  • strings.Replace: Go言語の strings パッケージの関数で、文字列内の指定された部分文字列を別の文字列に置換します。
  • _Ctype_C.: cgo において、C.type はGoコード内でCの型を参照するために使用されるユーザー向けの構文です(例: C.int)。一方、_Ctype_typecgo がCの型をGoの内部的な、エクスポートされていない型に変換する際に使用する表現です。これはGoとCの型システム間のギャップを埋めるための内部メカニズムであり、通常、開発者が直接扱うことを意図していません。エラーメッセージに _Ctype_ が表示されるのは、この内部表現が漏れ出ている状態でした。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、src/cmd/go/build.go ファイル内の builder.run メソッドにおけるエラー出力の処理にあります。builder.run メソッドは、外部コマンド(この場合は cgo コンパイラ)を実行し、その出力を処理する役割を担っています。

変更前は、cgo コンパイラからの出力がそのまま b.showOutput メソッドに渡され、ユーザーに表示されていました。この出力には、前述のような冗長な情報が含まれていました。

変更後では、以下の2つの主要な変更が導入されています。

  1. 正規表現 cgoLine の導入:

    var cgoLine = regexp.MustCompile(`\[[^\[\]]+\.cgo1\.go:[0-9]+\]`)
    

    この正規表現は、エラーメッセージ内に含まれる [一時ファイルのパス/ファイル名.cgo1.go:行番号] の形式の文字列を検出するために使用されます。例えば、[/var/folders/00/05_b8000h01000cxqpysvccm000n9d/T/go-build242036121/command-line-arguments/_obj/x.cgo1.go:19] のようなパターンにマッチします。

  2. エラー出力の整形ロジックの追加: builder.run メソッド内で、cgo コンパイラからの出力 out を整形するロジックが追加されました。

    		out := string(out)
    		// Fix up output referring to cgo-generated code to be more readable.
    		// Replace x.go:19[/tmp/.../x.cgo1.go:18] with x.go:19.
    		// Replace _Ctype_foo with C.foo.
    		// If we're using -x, assume we're debugging and want the full dump, so disable the rewrite.
    		if !buildX && cgoLine.MatchString(out) {
    			out = cgoLine.ReplaceAllString(out, "")
    			out = strings.Replace(out, "type _Ctype_", "type C.", -1)
    		}
    		b.showOutput(dir, desc, out)
    
    • !buildX の条件: buildX は、go build -x オプションが指定されているかどうかを示すフラグです。-x オプションは、ビルドプロセスで実行されるコマンドを詳細に表示するためのデバッグオプションです。この条件により、デバッグ時にはエラーメッセージの整形を行わず、元の詳細な出力をそのまま表示することで、開発者がデバッグに必要な情報を得られるように配慮されています。
    • cgoLine.MatchString(out): cgoLine 正規表現が out 文字列にマッチするかどうかをチェックします。これにより、cgo 関連のエラーメッセージのみが整形対象となります。
    • out = cgoLine.ReplaceAllString(out, ""): マッチした一時ファイルのパス部分を空文字列に置換することで、エラーメッセージから削除します。
    • out = strings.Replace(out, "type _Ctype_", "type C.", -1): type _Ctype_ という文字列を type C. に置換します。-1 は、すべての出現箇所を置換することを意味します。これにより、内部的な型名がよりユーザーフレンドリーな形式に変換されます。

これらの変更により、cgo コンパイラからの生のエラー出力が、ユーザーに表示される前にフィルタリングされ、整形されるようになりました。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/cmd/go/build.go ファイルに集中しています。

--- a/src/cmd/go/build.go
+++ b/src/cmd/go/build.go
@@ -814,11 +814,11 @@ func (b *builder) build(a *action) (err error) {

 	// Compile Go.
 	if len(gofiles) > 0 {
-		if out, err := buildToolchain.gc(b, a.p, obj, inc, gofiles); err != nil {
+		out, err := buildToolchain.gc(b, a.p, obj, inc, gofiles)
+		if err != nil {
 			return err
-		} else {
-			objects = append(objects, out)
-		}
+		}
+		objects = append(objects, out)
 	}

 	// Copy .h files named for goos or goarch or goos_goarch
@@ -1177,6 +1177,8 @@ func relPaths(paths []string) []string {\
 // print this error.
 var errPrintedOutput = errors.New("already printed output - no need to show error")

+var cgoLine = regexp.MustCompile(`\[[^\[\]]+\.cgo1\.go:[0-9]+\]`)
+
 // run runs the command given by cmdline in the directory dir.
 // If the command fails, run prints information about the failure
 // and returns a non-nil error.
@@ -1189,7 +1191,16 @@ func (b *builder) run(dir string, desc string, cmdargs ...interface{}) error {
 		if desc == "" {
 			desc = b.fmtcmd(dir, "%s", strings.Join(stringList(cmdargs...), " "))
 		}
-		b.showOutput(dir, desc, string(out))
+		out := string(out)
+		// Fix up output referring to cgo-generated code to be more readable.
+		// Replace x.go:19[/tmp/.../x.cgo1.go:18] with x.go:19.
+		// Replace _Ctype_foo with C.foo.
+		// If we're using -x, assume we're debugging and want the full dump, so disable the rewrite.
+		if !buildX && cgoLine.MatchString(out) {
+			out = cgoLine.ReplaceAllString(out, "")
+			out = strings.Replace(out, "type _Ctype_", "type C.", -1)
+		}
+		b.showOutput(dir, desc, out)
 		if err != nil {
 			err = errPrintedOutput
 		}

コアとなるコードの解説

  1. build メソッド内の変更: func (b *builder) build(a *action) (err error) メソッド内で、buildToolchain.gc の呼び出しとその後の objects への追加ロジックが変更されています。 変更前:

    		if out, err := buildToolchain.gc(b, a.p, obj, inc, gofiles); err != nil {
    			return err
    		} else {
    			objects = append(objects, out)
    		}
    

    変更後:

    		out, err := buildToolchain.gc(b, a.p, obj, inc, gofiles)
    		if err != nil {
    			return err
    		}
    		objects = append(objects, out)
    

    これは、gc (Goコンパイラ) の実行結果 out とエラー err を先に受け取り、エラーが発生した場合にのみ return err するように変更されています。エラーがない場合は、objectsout を追加します。この変更自体はエラーメッセージの整形とは直接関係ありませんが、コードの構造をより明確にしています。

  2. cgoLine 正規表現の追加: var cgoLine = regexp.MustCompile([[^[]]+.cgo1.go:[0-9]+]) この行は、cgo が生成する一時ファイルへの参照を検出するための正規表現を定義しています。これは、エラーメッセージから不要なパス情報を削除するために使用されます。

  3. run メソッド内のエラー出力整形ロジック: func (b *builder) run(dir string, desc string, cmdargs ...interface{}) error メソッド内で、外部コマンドの出力 out を処理する部分が大幅に変更されています。 変更前は、b.showOutput(dir, desc, string(out)) と直接出力していました。 変更後は、以下のロジックが追加されています。

    • out := string(out): コマンドのバイト出力を文字列に変換します。
    • コメント: 変更の目的(cgo 生成コードへの参照をより読みやすくする、一時ファイルのパスを削除する、_Ctype_C. に置換する、-x オプション時は整形を無効にする)が明確に記述されています。
    • if !buildX && cgoLine.MatchString(out):
      • !buildX: go build -x オプションが指定されていない場合にのみ、エラーメッセージの整形を行います。これにより、デバッグ時には詳細な情報が保持されます。
      • cgoLine.MatchString(out): cgo 関連のエラーメッセージであるかどうかを正規表現で判定します。
    • out = cgoLine.ReplaceAllString(out, ""): cgoLine 正規表現にマッチする部分(一時ファイルのパス)を空文字列に置換し、エラーメッセージから削除します。
    • out = strings.Replace(out, "type _Ctype_", "type C.", -1): _Ctype_ プレフィックスを持つ型名を C. プレフィックスに置換します。
    • b.showOutput(dir, desc, out): 整形された out 文字列を最終的にユーザーに表示します。

これらの変更により、cgo コンパイラからのエラーメッセージが、開発者にとってより簡潔で、関連性の高い情報のみを含むように改善されています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語公式ドキュメント: https://golang.org/doc/
  • cgo の使用方法に関する公式ドキュメント: https://golang.org/cmd/cgo/
  • Go言語の regexp パッケージ: https://golang.org/pkg/regexp/
  • Go言語の strings パッケージ: https://golang.org/pkg/strings/
  • Go言語のビルドプロセスに関する一般的な情報 (Goのソースコードや関連ドキュメントから得られる知識)
  • GitHubのコミット履歴とIssueトラッカー
  • Stack Overflow やその他の技術フォーラムでの cgo エラーに関する議論