[インデックス 15100] ファイルの概要
このコミットは、Goコンパイラの内部ツールである cmd/gc
におけるデバッグ出力の整形に関する修正です。具体的には、ノードのダンプ(node dump
)を行う際に発生していた余分な改行(spurious newline
)を削除することを目的としています。これにより、コンパイラのデバッグ出力がよりクリーンになり、可読性が向上します。
コミット
- コミットハッシュ:
fc6b530f0ff4b73e6bd42c282bf5409e804f989e
- 作者: Russ Cox rsc@golang.org
- コミット日時: 2013年2月2日 土曜日 23:09:49 -0500
- コミットメッセージ:
cmd/gc: remove spurious newline from node dump R=ken2 CC=golang-dev https://golang.org/cl/7276048
- 変更ファイル:
src/cmd/gc/fmt.c
- 変更行数: 1ファイル変更、2挿入、2削除
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/fc6b530f0ff4b73e6bd42c282bf5409e804f989e
元コミット内容
cmd/gc: remove spurious newline from node dump
R=ken2
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7276048
変更の背景
この変更は、Goコンパイラ(cmd/gc
)のデバッグ出力、特に抽象構文木(AST)のノード情報をダンプする際に、意図しない余分な改行が含まれてしまう問題を修正するために行われました。このような「余分な改行」は、デバッグ情報の解析を困難にしたり、スクリプトによる自動処理を妨げたりする可能性があります。コンパイラの開発やデバッグの効率を高めるためには、出力される情報の正確性と整形が非常に重要です。このコミットは、その出力の品質を向上させるための細かな調整の一環です。
前提知識の解説
cmd/gc
cmd/gc
は、Go言語の公式コンパイラの実装です。Go言語のソースコードを機械語に変換する主要なツールであり、Goツールチェインの中核をなします。gc
は "Go compiler" の略であり、歴史的にはPlan 9のCコンパイラ vc
に由来しています。Go言語の進化とともに、gc
も継続的に開発・改善されています。
ノードダンプ (Node Dump)
コンパイラは、ソースコードを解析する過程で、プログラムの構造を抽象構文木(AST: Abstract Syntax Tree)として内部的に表現します。ASTは、プログラムの各要素(変数、関数呼び出し、演算子など)をノードとして表現し、それらの関係をツリー構造で表したものです。
「ノードダンプ」とは、このASTのノード情報を人間が読める形式、あるいは機械が処理しやすい形式で出力するデバッグ機能の一つです。コンパイラの開発者は、このダンプ機能を使って、コンパイラがソースコードをどのように解釈しているか、ASTが正しく構築されているかなどを確認します。
print
関数 (Goコンパイラ内部の)
Goコンパイラのソースコード(特にC言語で書かれた部分)では、デバッグや内部情報の出力のために独自の print
関数が使用されています。これは標準Cライブラリの printf
に似ていますが、コンパイラの特定の要件に合わせてカスタマイズされている場合があります。この print
関数は、フォーマット文字列と可変個の引数を取り、指定された形式で文字列を出力します。
フォーマット指定子 %+H
と %+N
Goコンパイラの内部 print
関数で使用されるフォーマット指定子には、一般的なC言語の printf
にはない独自のものが存在します。
%+H
:NodeList
(ノードのリスト) を整形して出力するための指定子と考えられます。%+N
:Node
(単一のノード) を整形して出力するための指定子と考えられます。
これらの指定子は、GoコンパイラのASTノード構造を効率的かつ意味のある形で文字列に変換するために特別に実装されています。
技術的詳細
このコミットの技術的な核心は、print
関数のフォーマット文字列から余分な改行文字 (\n
) を削除することにあります。
元のコードでは、dumplist
関数と dump
関数内で print
を呼び出す際に、フォーマット文字列の末尾に \n
が2つ連続して含まれていました。
dumplist
の場合:print("%s\\n%+H\\n", s, l);
%s
の後に\n
が一つ、そして%+H
の後に\n
が一つ。
dump
の場合:print("%s [%p]\\n%+N\\n", s, n, n);
%s [%p]
の後に\n
が一つ、そして%+N
の後に\n
が一つ。
ここで問題となるのは、%+H
や %+N
といったカスタムフォーマット指定子が、それ自体で出力の最後に改行を含んでいた可能性です。もしそうであれば、フォーマット文字列内の \n
と、カスタム指定子が出力する \n
が重複し、結果として「余分な改行」が生成されてしまいます。
このコミットでは、フォーマット文字列から余分な \n
を削除することで、この重複を解消しています。
dumplist
の修正後:print("%s%+H\\n", s, l);
%s
の後に\n
はなくなり、%+H
の後に\n
が一つ。
dump
の修正後:print("%s [%p]%+N\\n", s, n, n);
%s [%p]
の後に\n
はなくなり、%+N
の後に\n
が一つ。
これにより、dumplist
や dump
が呼び出された際に、各ダンプ出力の末尾に正確に1つの改行のみが挿入されるようになり、デバッグ出力の整形が改善されます。これは、コンパイラのデバッグ出力の整合性を保つ上で重要な、しかし細かな修正です。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/cmd/gc/fmt.c
+++ b/src/cmd/gc/fmt.c
@@ -1672,11 +1672,11 @@ fmtinstallgo(void)
void
dumplist(char *s, NodeList *l)
{
- print("%s\\n%+H\\n", s, l);
+ print("%s%+H\\n", s, l);
}
void
dump(char *s, Node *n)
{
- print("%s [%p]\\n%+N\\n", s, n, n);
+ print("%s [%p]%+N\\n", s, n, n);
}
コアとなるコードの解説
変更は src/cmd/gc/fmt.c
ファイル内の2つの関数、dumplist
と dump
に集中しています。
-
dumplist(char *s, NodeList *l)
関数:- この関数は、ノードのリスト (
NodeList
) をダンプするために使用されます。 - 元のコード:
print("%s\\n%+H\\n", s, l);
%s
は最初の引数s
(おそらくダンプのタイトルや識別子) を出力します。\\n
はリテラルのバックスラッシュとn
ではなく、エスケープされた改行文字\n
を意味します。%+H
はNodeList
l
を整形して出力します。- その後に再び
\\n
が続きます。
- 修正後のコード:
print("%s%+H\\n", s, l);
%s
の直後に%+H
が続き、s
の出力とl
の整形出力の間に余分な改行がなくなりました。%+H
の後に続く\\n
は残されており、これはdumplist
の出力の最後に改行を挿入するためです。- この変更により、
s
の出力とl
の整形出力の間にあった余分な改行が削除されました。
- この関数は、ノードのリスト (
-
dump(char *s, Node *n)
関数:- この関数は、単一のノード (
Node
) をダンプするために使用されます。 - 元のコード:
print("%s [%p]\\n%+N\\n", s, n, n);
%s [%p]
は最初の引数s
と、ノードn
のメモリアドレスを出力します。- その後に
\\n
が続きます。 %+N
はノードn
自体を整形して出力します。- その後に再び
\\n
が続きます。
- 修正後のコード:
print("%s [%p]%+N\\n", s, n, n);
%s [%p]
の直後に%+N
が続き、s
とn
のアドレス出力とn
の整形出力の間に余分な改行がなくなりました。%+N
の後に続く\\n
は残されており、これはdump
の出力の最後に改行を挿入するためです。- この変更により、
s
とn
のアドレス出力とn
の整形出力の間にあった余分な改行が削除されました。
- この関数は、単一のノード (
これらの変更は、print
関数のカスタムフォーマット指定子 (%+H
, %+N
) が既に自身の出力の最後に改行を含んでいるという前提に基づいています。もしそうであれば、フォーマット文字列内の追加の \n
は冗長であり、二重の改行を引き起こしていました。この修正は、デバッグ出力のフォーシングを改善し、より簡潔で読みやすい形式にするためのものです。
関連リンク
- Go Gerrit Code Review: https://golang.org/cl/7276048
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメントおよびソースコード(
cmd/gc
のfmt.c
および関連ファイル) - Goコンパイラの内部構造に関する一般的な知識
- Gitのコミットログと差分表示
- C言語の
printf
フォーマット指定子に関する一般的な知識 - 抽象構文木 (AST) に関する一般的な知識
- Go言語のコンパイラ開発に関するコミュニティの議論 (必要に応じて)
- Go言語の
cmd/gc
の歴史と背景に関する情報 (必要に応じて) - Go言語の
print
関数 (コンパイラ内部の) の実装に関する情報 (必要に応じて)
# [インデックス 15100] ファイルの概要
このコミットは、Goコンパイラの内部ツールである `cmd/gc` におけるデバッグ出力の整形に関する修正です。具体的には、ノードのダンプ(`node dump`)を行う際に発生していた余分な改行(`spurious newline`)を削除することを目的としています。これにより、コンパイラのデバッグ出力がよりクリーンになり、可読性が向上します。
## コミット
* **コミットハッシュ**: `fc6b530f0ff4b73e6bd42c282bf5409e804f989e`
* **作者**: Russ Cox <rsc@golang.org>
* **コミット日時**: 2013年2月2日 土曜日 23:09:49 -0500
* **コミットメッセージ**:
```
cmd/gc: remove spurious newline from node dump
R=ken2
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7276048
```
* **変更ファイル**: `src/cmd/gc/fmt.c`
* **変更行数**: 1ファイル変更、2挿入、2削除
## GitHub上でのコミットページへのリンク
[https://github.com/golang/go/commit/fc6b530f0ff4b73e6bd42c282bf5409e804f989e](https://github.com/golang/go/commit/fc6b530f0ff4b73e6bd42c282bf5409e804f989e)
## 元コミット内容
cmd/gc: remove spurious newline from node dump
R=ken2 CC=golang-dev https://golang.org/cl/7276048
## 変更の背景
この変更は、Goコンパイラ(`cmd/gc`)のデバッグ出力、特に抽象構文木(AST)のノード情報をダンプする際に、意図しない余分な改行が含まれてしまう問題を修正するために行われました。このような「余分な改行」は、デバッグ情報の解析を困難にしたり、スクリプトによる自動処理を妨げたりする可能性があります。コンパイラの開発やデバッグの効率を高めるためには、出力される情報の正確性と整形が非常に重要です。このコミットは、その出力の品質を向上させるための細かな調整の一環です。
## 前提知識の解説
### `cmd/gc`
`cmd/gc` は、Go言語の公式コンパイラの実装です。Go言語のソースコードを機械語に変換する主要なツールであり、Goツールチェインの中核をなします。`gc` は "Go compiler" の略であり、歴史的にはPlan 9のCコンパイラ `vc` に由来しています。Go言語の進化とともに、`gc` も継続的に開発・改善されています。
### ノードダンプ (Node Dump)
コンパイラは、ソースコードを解析する過程で、プログラムの構造を抽象構文木(AST: Abstract Syntax Tree)として内部的に表現します。ASTは、プログラムの各要素(変数、関数呼び出し、演算子など)をノードとして表現し、それらの関係をツリー構造で表したものです。
「ノードダンプ」とは、このASTのノード情報を人間が読める形式、あるいは機械が処理しやすい形式で出力するデバッグ機能の一つです。コンパイラの開発者は、このダンプ機能を使って、コンパイラがソースコードをどのように解釈しているか、ASTが正しく構築されているかなどを確認します。
### `print` 関数 (Goコンパイラ内部の)
Goコンパイラのソースコード(特にC言語で書かれた部分)では、デバッグや内部情報の出力のために独自の `print` 関数が使用されています。これは標準Cライブラリの `printf` に似ていますが、コンパイラの特定の要件に合わせてカスタマイズされている場合があります。この `print` 関数は、フォーマット文字列と可変個の引数を取り、指定された形式で文字列を出力します。
### フォーマット指定子 `%+H` と `%+N`
Goコンパイラの内部 `print` 関数で使用されるフォーマット指定子には、一般的なC言語の `printf` にはない独自のものが存在します。
* `%+H`: `NodeList` (ノードのリスト) を整形して出力するための指定子と考えられます。
* `%+N`: `Node` (単一のノード) を整形して出力するための指定子と考えられます。
これらの指定子は、GoコンパイラのASTノード構造を効率的かつ意味のある形で文字列に変換するために特別に実装されています。
## 技術的詳細
このコミットの技術的な核心は、`print` 関数のフォーマット文字列から余分な改行文字 (`\n`) を削除することにあります。
元のコードでは、`dumplist` 関数と `dump` 関数内で `print` を呼び出す際に、フォーマット文字列の末尾に `\n` が2つ連続して含まれていました。
* `dumplist` の場合: `print("%s\\n%+H\\n", s, l);`
* `%s` の後に `\n` が一つ、そして `%+H` の後に `\n` が一つ。
* `dump` の場合: `print("%s [%p]\\n%+N\\n", s, n, n);`
* `%s [%p]` の後に `\n` が一つ、そして `%+N` の後に `\n` が一つ。
ここで問題となるのは、`%+H` や `%+N` といったカスタムフォーマット指定子が、それ自体で出力の最後に改行を含んでいた可能性です。もしそうであれば、フォーマット文字列内の `\n` と、カスタム指定子が出力する `\n` が重複し、結果として「余分な改行」が生成されてしまいます。
このコミットでは、フォーマット文字列から余分な `\n` を削除することで、この重複を解消しています。
* `dumplist` の修正後: `print("%s%+H\\n", s, l);`
* `%s` の後に `\n` はなくなり、`%+H` の後に `\n` が一つ。
* `dump` の修正後: `print("%s [%p]%+N\\n", s, n, n);`
* `%s [%p]` の後に `\n` はなくなり、`%+N` の後に `\n` が一つ。
これにより、`dumplist` や `dump` が呼び出された際に、各ダンプ出力の末尾に正確に1つの改行のみが挿入されるようになり、デバッグ出力の整形が改善されます。これは、コンパイラのデバッグ出力の整合性を保つ上で重要な、しかし細かな修正です。
## コアとなるコードの変更箇所
```diff
--- a/src/cmd/gc/fmt.c
+++ b/src/cmd/gc/fmt.c
@@ -1672,11 +1672,11 @@ fmtinstallgo(void)
void
dumplist(char *s, NodeList *l)
{
- print("%s\\n%+H\\n", s, l);
+ print("%s%+H\\n", s, l);
}
void
dump(char *s, Node *n)
{
- print("%s [%p]\\n%+N\\n", s, n, n);
+ print("%s [%p]%+N\\n", s, n, n);
}
コアとなるコードの解説
変更は src/cmd/gc/fmt.c
ファイル内の2つの関数、dumplist
と dump
に集中しています。
-
dumplist(char *s, NodeList *l)
関数:- この関数は、ノードのリスト (
NodeList
) をダンプするために使用されます。 - 元のコード:
print("%s\\n%+H\\n", s, l);
%s
は最初の引数s
(おそらくダンプのタイトルや識別子) を出力します。\\n
はリテラルのバックスラッシュとn
ではなく、エスケープされた改行文字\n
を意味します。%+H
はNodeList
l
を整形して出力します。- その後に再び
\\n
が続きます。
- 修正後のコード:
print("%s%+H\\n", s, l);
%s
の直後に%+H
が続き、s
の出力とl
の整形出力の間に余分な改行がなくなりました。%+H
の後に続く\\n
は残されており、これはdumplist
の出力の最後に改行を挿入するためです。- この変更により、
s
の出力とl
の整形出力の間にあった余分な改行が削除されました。
- この関数は、ノードのリスト (
-
dump(char *s, Node *n)
関数:- この関数は、単一のノード (
Node
) をダンプするために使用されます。 - 元のコード:
print("%s [%p]\\n%+N\\n", s, n, n);
%s [%p]
は最初の引数s
と、ノードn
のメモリアドレスを出力します。- その後に
\\n
が続きます。 %+N
はノードn
自体を整形して出力します。- その後に再び
\\n
が続きます。
- 修正後のコード:
print("%s [%p]%+N\\n", s, n, n);
%s [%p]
の直後に%+N
が続き、s
とn
のアドレス出力とn
の整形出力の間に余分な改行がなくなりました。%+N
の後に続く\\n
は残されており、これはdump
の出力の最後に改行を挿入するためです。- この変更により、
s
とn
のアドレス出力とn
の整形出力の間にあった余分な改行が削除されました。
- この関数は、単一のノード (
これらの変更は、print
関数のカスタムフォーマット指定子 (%+H
, %+N
) が既に自身の出力の最後に改行を含んでいるという前提に基づいています。もしそうであれば、フォーマット文字列内の追加の \n
は冗長であり、二重の改行を引き起こしていました。この修正は、デバッグ出力の整形を改善し、より簡潔で読みやすい形式にするためのものです。
関連リンク
- Go Gerrit Code Review: https://golang.org/cl/7276048
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメントおよびソースコード(
cmd/gc
のfmt.c
および関連ファイル) - Goコンパイラの内部構造に関する一般的な知識
- Gitのコミットログと差分表示
- C言語の
printf
フォーマット指定子に関する一般的な知識 - 抽象構文木 (AST) に関する一般的な知識
- Go言語のコンパイラ開発に関するコミュニティの議論 (必要に応じて)
- Go言語の
cmd/gc
の歴史と背景に関する情報 (必要に応じて) - Go言語の
print
関数 (コンパイラ内部の) の実装に関する情報 (必要に応じて)