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[インデックス 15271] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の実験的なcookiejarパッケージにおけるWindowsビルドの問題を修正するためのものです。具体的には、jar_test.goファイル内の特定のテストがWindows環境で失敗するため、そのテストをスキップするように変更しています。

コミット

commit f8f2727ab50decb8db6d2235e77e8079b8d22eba
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Fri Feb 15 11:32:31 2013 -0500

    exp/cookiejar: fix windows builder
    
    TBR=nigeltao
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7322084

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/f8f2727ab50decb8db6d2235e77e8079b8d22eba

元コミット内容

exp/cookiejar: fix windows builder

TBR=nigeltao
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7322084

変更の背景

このコミットの主な背景は、Go言語のexp/cookiejarパッケージに含まれるTestChromiumDomainというテストが、Windows環境で正しく動作しないという問題(Go issue 4823)が存在したことです。Goプロジェクトでは、様々なプラットフォーム(Linux, macOS, Windowsなど)でコードが正しくビルドされ、テストがパスすることを確認するための「ビルダー」(自動テストシステム)が稼働しています。Windowsビルダーがこのテストで失敗し続けることは、全体のビルドプロセスを阻害し、他の変更の検証を遅らせる可能性があります。

この問題は、TestChromiumDomainがChromiumブラウザのクッキードメイン処理に関する特定の挙動を検証するものであり、Windowsのファイルシステムやパスの取り扱い、あるいはその他の環境固有の特性が原因で、テストの前提が崩れるか、期待される結果が得られないために発生していました。

一時的な解決策として、テスト自体を修正するのではなく、Windows環境でのみこのテストをスキップすることで、ビルダーの失敗を回避し、開発フローを継続できるようにすることが選択されました。これは、根本的な原因究明と修正に時間がかかる場合に、CI/CDパイプラインをブロックしないための一般的なプラクティスです。コメントにある// issue 4823は、このスキップが特定の未解決の問題に関連していることを示しています。

前提知識の解説

  • exp/cookiejarパッケージ: Go言語の標準ライブラリにはnet/http/cookiejarパッケージがありますが、exp/cookiejarはそれ以前に実験的に開発されていたクッキー管理のためのパッケージです。ウェブクライアントがHTTPリクエスト間でクッキーを保存・送信する機能を提供します。実験的なパッケージは、将来的に標準ライブラリに取り込まれる可能性のある機能や、まだ安定していないがフィードバックを求めている機能が含まれることがあります。
  • Goのテストフレームワーク (testingパッケージ): Go言語には、標準でtestingパッケージが用意されており、これを使ってユニットテストやベンチマークテストを記述します。テスト関数はTestXxxという命名規則に従い、*testing.T型の引数を取ります。
  • t.Skip(): *testing.T型が提供するメソッドの一つで、テストの実行中にこのメソッドが呼び出されると、そのテストはスキップされます。テストがスキップされた場合、それは失敗とはみなされず、テスト結果には「スキップされた」として記録されます。これは、特定の環境でのみ問題が発生するテストや、まだ実装されていない機能のテストなど、一時的に実行したくないテストに対して使用されます。
  • ビルダー (Builder): ソフトウェア開発における「ビルダー」とは、継続的インテグレーション(CI)システムの一部として、コードのビルド、テスト、デプロイを自動的に実行するサーバーやプロセスを指します。Goプロジェクトでは、様々なOSやアーキテクチャの組み合わせ(例: linux/amd64, windows/386, darwin/arm64など)でコードが正しく動作することを確認するために、多数のビルダーが稼働しています。ビルダーが失敗すると、そのプラットフォームでのコードの健全性が保証されなくなり、開発者はその失敗を調査・修正する必要があります。
  • Go issue 4823: GoプロジェクトのIssueトラッカー(バグ報告や機能要望を管理するシステム)における特定の課題番号です。この番号は、TestChromiumDomainがWindowsで失敗するという問題の詳細が記録されている場所を指します。

技術的詳細

このコミットは、Goのテストにおける条件付きスキップの典型的な例を示しています。

TestChromiumDomainは、Chromiumブラウザのクッキードメイン処理の挙動を模倣し、Goのcookiejarパッケージがそれと互換性があるか、あるいは同様のロジックで動作するかを検証するテストです。クッキードメインの処理は、ドメイン名の大文字・小文字の区別、IPアドレスの扱い、パブリックサフィックスリスト(例: .co.jp, .comなど)の考慮など、複雑なルールに基づいています。

Windows環境でこのテストが失敗する具体的な原因は、コミットメッセージからは直接読み取れませんが、一般的に考えられる要因としては以下のようなものがあります。

  1. パスの区切り文字: Windowsではパスの区切り文字に\(バックスラッシュ)を使用しますが、Unix系システムでは/(スラッシュ)を使用します。テスト内でファイルパスやURLパスを生成・解析する際に、この違いが考慮されていない場合、予期せぬエラーが発生する可能性があります。
  2. ファイルシステムの大文字・小文字の区別: Windowsのファイルシステムは通常、大文字・小文字を区別しませんが、Unix系システムは区別します。ドメイン名やパスの比較において、この違いがテストの期待値と実際の挙動の乖離を生むことがあります。
  3. ネットワークスタックの挙動: Windowsのネットワークスタックが、特定のネットワーク操作やDNS解決において、Unix系システムとは異なる挙動を示す可能性も考えられます。
  4. 環境変数や設定: テストが依存する環境変数やシステム設定が、Windows環境で異なる値を持つか、あるいは存在しないためにテストが失敗するケースもあります。
  5. Chromiumの挙動の再現性: TestChromiumDomainがChromiumの挙動を再現しようとしているため、Chromium自体がWindows上で特定の挙動を示す場合、その挙動をGoのテストで正確に再現するのが難しい場合があります。

t.Skip("test is broken on windows")という行は、テスト関数の冒頭に追加されています。これは、テストが実行される際に、まずこの行が評価され、メッセージと共にテストがスキップされることを意味します。この変更は、テストのロジック自体には手を加えず、単に特定の条件下での実行を停止させることで、CI/CDパイプラインの健全性を維持するための「応急処置」です。根本的な解決には、テストの失敗原因を特定し、テストコードまたはcookiejarパッケージのコードを修正する必要があります。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/pkg/exp/cookiejar/jar_test.goファイルにのみ行われています。

--- a/src/pkg/exp/cookiejar/jar_test.go
+++ b/src/pkg/exp/cookiejar/jar_test.go
@@ -883,6 +883,7 @@ var chromiumDomainTests = [...]jarTest{\n }\n \n func TestChromiumDomain(t *testing.T) {\n+\tt.Skip("test is broken on windows") // issue 4823
 \tjar := newTestJar()\n \tfor _, test := range chromiumDomainTests {\n \t\ttest.run(t, jar)\n```

## コアとなるコードの解説

変更は`TestChromiumDomain`関数の冒頭に1行追加されただけです。

```go
func TestChromiumDomain(t *testing.T) {
	t.Skip("test is broken on windows") // issue 4823
	jar := newTestJar()
	for _, test := range chromiumDomainTests {
		test.run(t, jar)
	}
}
  • func TestChromiumDomain(t *testing.T): これはGoのテスト関数です。t *testing.Tはテストの状態とユーティリティメソッドを提供するオブジェクトです。
  • t.Skip("test is broken on windows"): この行が追加された変更の核心です。
    • t.Skip()メソッドが呼び出されると、現在のテスト関数はそれ以上実行されずに終了し、テスト結果として「スキップされた」と報告されます。
    • 引数として渡された文字列 "test is broken on windows" は、スキップの理由を示すメッセージとしてテスト結果に表示されます。
    • コメント// issue 4823は、このスキップがGoのIssueトラッカーに登録されている特定のバグ(Issue 4823)に関連していることを示しています。これにより、将来的にこのテストがなぜスキップされているのか、どの問題が解決されればスキップを解除できるのかが明確になります。

この変更により、Windows環境でこのテストが実行されると、すぐにスキップされ、テストスイート全体の実行がブロックされることがなくなります。これは一時的な回避策であり、根本的な問題解決(Issue 4823の修正)が完了すれば、このt.Skip行は削除されることになります。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のtestingパッケージに関する公式ドキュメント
  • Go言語のnet/http/cookiejarパッケージに関する公式ドキュメント
  • Go言語のIssueトラッカー(GitHub IssuesまたはGoの公式Issueトラッカー)での「issue 4823」に関する情報
  • 一般的な継続的インテグレーション(CI)およびテストスキップのプラクティスに関する情報