[インデックス 15312] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリである path/filepath
パッケージ内の Dir
関数のドキュメントを改善するものです。具体的には、Dir
関数がパスの最終要素を削除した後に、パスが Clean
され、末尾のスラッシュが削除されるという挙動をより明確に記述しています。これは、path
パッケージの対応する Dir
関数のコメントと整合性を取るための変更でもあります。
コミット
commit 6df181a7f01bc40a2ad9e98510b43b653eb7fb3b
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date: Tue Feb 19 13:24:03 2013 -0500
path/filepath: document Dir better
This comment matches the one in path.
Fixes #4837.
R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7305100
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/6df181a7f01bc40a2ad9e98510b43b653eb7fb3b
元コミット内容
path/filepath: document Dir better
このコメントは path
パッケージのコメントと一致します。
Issue #4837 を修正。
レビュー担当者: golang-dev, bradfitz CC: golang-dev 変更リスト: https://golang.org/cl/7305100
変更の背景
この変更の背景には、path/filepath
パッケージの Dir
関数のドキュメントが、その実際の挙動を完全に反映していなかったという問題があります。特に、Dir
関数がパスの最終要素を削除した後に、内部的にパスを「クリーンアップ」し、末尾のスラッシュを削除するという重要なステップが明示されていませんでした。
Go言語の標準ライブラリでは、関連するパッケージ間で一貫したドキュメントを提供することが重要です。path
パッケージ(Unixスタイルのパスを扱う)と path/filepath
パッケージ(OS固有のパスを扱う)は密接に関連しており、それぞれの Dir
関数の挙動は非常に似ています。このコミットは、path
パッケージの Dir
関数のドキュメントが既にこの「クリーンアップ」の挙動を記述していたため、path/filepath
パッケージのドキュメントもそれに合わせて更新し、両者間の整合性を確保することを目的としています。
Fixes #4837
との記述がありますが、Goの公式リポジトリで直接このIssue番号が見つからないことから、これは内部的なトラッキング番号であるか、あるいは非常に古いIssueである可能性があります。しかし、コミットメッセージから判断すると、このIssueは Dir
関数のドキュメントの不明瞭さ、またはその挙動に関する誤解を解消するためのものであったと推測されます。
前提知識の解説
このコミットを理解するためには、Go言語の path
および path/filepath
パッケージ、特にパス操作に関する基本的な概念を理解しておく必要があります。
-
path
パッケージ:path
パッケージは、スラッシュ (/
) を区切り文字とするUnixスタイルのパスを操作するための関数を提供します。これは、OSに依存しないパス処理、例えばURLパスや内部的なデータ構造のパスなどに使用されます。 -
path/filepath
パッケージ:path/filepath
パッケージは、現在のオペレーティングシステム(Windowsではバックスラッシュ\
、Unix系ではスラッシュ/
)のパス区切り文字を考慮したパス操作のための関数を提供します。ファイルシステム上の実際のパスを扱う際に使用されます。 -
Dir
関数:path.Dir(path string) string
およびfilepath.Dir(path string) string
は、与えられたパスのディレクトリ部分(最後の要素を除いた部分)を返します。例えば、/a/b/c
のDir
は/a/b
です。 -
Clean
関数:path.Clean(path string) string
およびfilepath.Clean(path string) string
は、パスを「クリーン」な形式に変換します。これには、以下のような処理が含まれます。- 冗長なスラッシュ(例:
//
)を単一のスラッシュに置き換える。 .
(カレントディレクトリ) を削除する。..
(親ディレクトリ) を解決する。- 末尾のスラッシュを削除する(ルートディレクトリ
/
を除く)。 例えば、a/b/../c
はa/c
に、/a//b/
は/a/b
になります。
- 冗長なスラッシュ(例:
このコミットの変更は、Dir
関数が内部的に Clean
関数のような処理を行っていることを明示することで、ユーザーが Dir
関数の返り値の形式をより正確に理解できるようにすることを目的としています。
技術的詳細
変更されたドキュメントは、filepath.Dir
関数の挙動をより正確に記述しています。以前のコメントは「末尾のパス区切り文字は処理前に削除されます」と述べていましたが、これは不完全でした。新しいコメントは、Dir
関数が最終要素を削除した後、以下の2つの重要なステップを実行することを明確にしています。
- パスの
Clean
処理:Dir
関数は、最終要素を削除した後のパスに対してfilepath.Clean
と同様の処理を適用します。これにより、パス内の冗長な区切り文字や.
、..
などの要素が正規化されます。 - 末尾のスラッシュの削除:
Clean
処理の一部として、またはそれに加えて、結果のパスの末尾にあるスラッシュが削除されます。ただし、これはルートディレクトリ (/
) の場合には適用されません。ルートディレクトリは常に単一のスラッシュで表現されます。
この変更は、filepath.Dir
の実装自体を変更するものではなく、そのドキュメントを改善することで、開発者が関数が返すパスの形式について誤解するのを防ぐことを目的としています。特に、path.Dir
と filepath.Dir
の両方が同様の「クリーンアップ」ロジックを適用していることを明確にすることで、Goのパス処理ライブラリ全体の一貫性が向上します。
例えば、filepath.Dir("/a/b/c/")
の場合、以前のドキュメントでは「末尾のパス区切り文字は処理前に削除されます」とあったため、/a/b/c
の Dir
が /a/b
となることは理解できましたが、filepath.Dir("/a/b/c/../d")
のような複雑なパスの場合に、Clean
処理がどのように影響するかは不明瞭でした。新しいドキュメントは、このようなケースでも Clean
処理が適用されることを示唆しており、より予測可能な挙動を期待できるようになります。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/pkg/path/filepath/path.go
+++ b/src/pkg/path/filepath/path.go
@@ -437,7 +437,8 @@ func Base(path string) string {
}
// Dir returns all but the last element of path, typically the path's directory.
-// Trailing path separators are removed before processing.
+// After dropping the final element, the path is Cleaned and trailing
+// slashes are removed.
// If the path is empty, Dir returns ".".
// If the path consists entirely of separators, Dir returns a single separator.
// The returned path does not end in a separator unless it is the root directory.
コアとなるコードの解説
変更は src/pkg/path/filepath/path.go
ファイルの Dir
関数のコメント部分にあります。
元のコメント:
// Trailing path separators are removed before processing.
(末尾のパス区切り文字は処理前に削除されます。)
新しいコメント:
// After dropping the final element, the path is Cleaned and trailing
// slashes are removed.
(最終要素を削除した後、パスは Clean
され、末尾のスラッシュは削除されます。)
この変更により、Dir
関数のドキュメントは、パスの最終要素を削除した後に、パスが filepath.Clean
関数によって「クリーンアップ」され、その結果として末尾のスラッシュが(ルートディレクトリの場合を除いて)削除されるという、より正確な挙動を記述するようになりました。これにより、開発者は Dir
関数の返り値の形式について、より明確な期待を持つことができます。
関連リンク
- Go言語の
path
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/path - Go言語の
path/filepath
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/path/filepath - Go言語の
filepath.Clean
関数のドキュメント: https://pkg.go.dev/path/filepath#Clean
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント
- Go言語のソースコード (特に
src/pkg/path/filepath/path.go
およびsrc/pkg/path/path.go
) - GitHubのコミット履歴
- Go言語のIssueトラッカー (ただし、Issue #4837は直接見つからなかったため、一般的なGoのIssueの構造を参考にしました)
- Go言語のパス操作に関する一般的な知識