[インデックス 15315] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の公式リポジトリ内の src/pkg/exp/README
ファイルを更新するものです。exp
ディレクトリの性質、特にその中のコードが実験的であり、安定したAPIを持たず、安定版リリースには含まれないことを明確にするための変更です。
コミット
commit 5c3fb96be957c6bf3199d6d460de11b2ba5093eb
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date: Tue Feb 19 11:21:18 2013 -0800
exp/README: update README
R=golang-dev, dsymonds, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7323073
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/5c3fb96be957c6bf3199d6d460de11b2ba5093eb
元コミット内容
exp/README: update README
変更の背景
Go言語のプロジェクトにおいて、exp
(experimental) ディレクトリは、その名の通り実験的なパッケージや未完成のコードを格納するために使用されます。これらのコードは、Goのメインの標準ライブラリにはまだ含まれておらず、将来的に変更される可能性が非常に高いものです。
このコミットの背景には、exp
ディレクトリ内のコードの不安定性について、ユーザーや開発者に対してより明確な警告を与える必要があったことが挙げられます。以前のREADMEでは「Goツリーの他の部分よりもさらに変更される可能性がある」と記述されていましたが、この表現では、APIの不安定性や安定版リリースに含まれないという重要な点が十分に伝わっていませんでした。
この変更は、exp
ディレクトリのコードを使用する開発者が、そのリスク(APIの変更、削除、安定版での非提供)を十分に理解し、予期せぬ問題に直面しないようにするためのものです。これにより、Goプロジェクトの安定性と、実験的な機能開発のバランスがより明確になります。
前提知識の解説
Go言語の exp
ディレクトリ
Go言語のプロジェクト、特に公式リポジトリやgolang.org/x
配下のサブモジュールにおいて、exp
という名前のディレクトリは「experimental(実験的)」なコードを格納するために用いられます。このディレクトリの主な特徴と目的は以下の通りです。
- 実験的な機能のテストベッド: 新しいアイデア、プロトタイプ、将来的に標準ライブラリに組み込まれる可能性のある機能などが、まず
exp
ディレクトリで開発・テストされます。 - 不安定性:
exp
内のコードは、まだ設計が固まっていない、あるいは十分なテストがされていないため、APIが頻繁に変更されたり、予告なく削除されたりする可能性があります。 - Go 1 互換性保証の対象外: Go言語は「Go 1 互換性保証」という強力な後方互換性ポリシーを持っていますが、
exp
ディレクトリ内のコードはこの保証の対象外です。つまり、Goのバージョンアップに伴い、exp
内のAPIが破壊的に変更されても、それはGoの互換性ポリシーに反しないと見なされます。 - 安定版リリースへの非包含:
exp
ディレクトリ内のパッケージは、Goの安定版リリースには含まれません。これらは独立したモジュールとして提供されるか、あるいは将来的に安定したと判断された場合に標準ライブラリに昇格する可能性があります。 - 開発者への注意喚起:
exp
内のコードを使用する開発者は、その不安定性を理解し、本番環境での使用を避けるか、自己責任で使用することが強く推奨されます。
このexp
ディレクトリの存在は、Go言語が新しい機能を慎重に導入し、コミュニティからのフィードバックを得ながら進化していくための重要なメカニズムとなっています。
技術的詳細
このコミットは、src/pkg/exp/README
ファイルの内容を修正することで、exp
ディレクトリの性質に関する記述をより正確かつ厳密にするものです。
変更前:
This directory tree contains experimental packages and
unfinished code that is subject to even more change than the
rest of the Go tree.
変更後:
This directory tree contains experimental packages and
unfinished code that is subject to change. It does not
have stable APIs, and is not present in stable releases.
この変更の技術的なポイントは以下の通りです。
-
表現の明確化:
- 変更前は「Goツリーの他の部分よりもさらに変更される可能性がある」という比較表現でした。これは、他の部分も変更される可能性があることを示唆しつつ、
exp
がより不安定であることを示していました。 - 変更後は「変更される可能性がある」と簡潔に述べた上で、具体的な不安定性の側面として「安定したAPIを持たない (It does not have stable APIs)」と「安定版リリースには含まれない (and is not present in stable releases)」という2つの重要な点を明記しています。これにより、
exp
ディレクトリのコードが持つリスクがより具体的に伝わるようになりました。
- 変更前は「Goツリーの他の部分よりもさらに変更される可能性がある」という比較表現でした。これは、他の部分も変更される可能性があることを示唆しつつ、
-
APIの安定性への言及:
- 「安定したAPIを持たない」という記述は、Go 1 互換性保証の文脈において非常に重要です。Go言語の標準ライブラリはAPIの安定性を非常に重視していますが、
exp
内のコードはその例外であることを明確にしています。これは、exp
内の関数や型のシグネチャ、振る舞いが将来のバージョンで予告なく変更される可能性があることを意味します。
- 「安定したAPIを持たない」という記述は、Go 1 互換性保証の文脈において非常に重要です。Go言語の標準ライブラリはAPIの安定性を非常に重視していますが、
-
リリースサイクルへの言及:
- 「安定版リリースには含まれない」という記述は、
exp
内のコードがGoの公式リリースバイナリや標準ライブラリの一部として提供されないことを明確にしています。これは、exp
内の機能を利用したい場合は、ソースコードからビルドするか、golang.org/x/exp
のような独立したモジュールとしてインポートする必要があることを示唆しています。
- 「安定版リリースには含まれない」という記述は、
このREADMEの更新は、コードそのものの機能変更ではなく、そのコードが置かれているディレクトリの「契約」や「期待される振る舞い」に関するドキュメントの改善です。これは、Goプロジェクトにおけるドキュメンテーションの重要性と、ユーザーへの正確な情報提供の姿勢を示しています。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/pkg/exp/README
+++ b/src/pkg/exp/README
@@ -1,3 +1,3 @@
This directory tree contains experimental packages and
-unfinished code that is subject to even more change than the
-rest of the Go tree.
+unfinished code that is subject to change. It does not
+have stable APIs, and is not present in stable releases.
コアとなるコードの解説
このdiffは、src/pkg/exp/README
ファイル内の3行目を変更しています。
-
-unfinished code that is subject to even more change than the
- 削除された行は、「Goツリーの他の部分よりもさらに変更される可能性がある未完成のコード」と記述していました。この表現は、
exp
ディレクトリのコードが不安定であることを示唆していましたが、その不安定性の具体的な側面(APIの安定性やリリースへの包含)については言及していませんでした。
- 削除された行は、「Goツリーの他の部分よりもさらに変更される可能性がある未完成のコード」と記述していました。この表現は、
-
+unfinished code that is subject to change. It does not
-
+have stable APIs, and is not present in stable releases.
- 追加された2行は、より具体的かつ明確な情報を提供しています。
- 「変更される可能性がある未完成のコード」という点は維持しつつ、
- 「安定したAPIを持たない (It does not have stable APIs)」という文言で、APIの互換性が保証されないことを明示しています。これは、
exp
内の関数や構造体が将来のバージョンで変更される可能性があることを意味します。 - 「安定版リリースには含まれない (and is not present in stable releases)」という文言で、
exp
内のコードがGoの公式な安定版ディストリビューションの一部ではないことを明確にしています。これは、これらの機能がまだ本番環境での使用には適していない、あるいは独立したモジュールとして提供されるべきであることを示唆しています。
- 追加された2行は、より具体的かつ明確な情報を提供しています。
この変更は、exp
ディレクトリのコードを使用する開発者に対して、その性質とリスクをより正確に伝えるための重要なドキュメント改善です。
関連リンク
- Go言語公式ウェブサイト: https://golang.org/
- Go言語の互換性保証 (Go 1 compatibility guarantee): Goの公式ドキュメントやブログ記事で詳細が説明されています。
参考にした情報源リンク
- Web search results for "golang exp directory purpose" (Google Search)