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[インデックス 15445] ファイルの概要

このコミットは、Goランタイムのスタック管理に関連するファイルである src/pkg/runtime/stack.c に変更を加えています。具体的には、スタックキャッシュのロジック内のコメントとエラーメッセージのタイポ(typo)を修正しています。

コミット

  • コミットハッシュ: 16eb2c0b7ae66dae708b4ca59f68a13652a95d6a
  • Author: Anthony Martin ality@pbrane.org
  • Date: Tue Feb 26 09:59:17 2013 -0800
  • コミットメッセージ:
    runtime: fix stack cache typos
    
    R=golang-dev, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7370050
    

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/16eb2c0b7ae66dae708b4ca59f68a13652a95d6a

元コミット内容

runtime: fix stack cache typos

R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7370050

変更の背景

このコミットは、Goランタイムのスタックキャッシュメカニズムにおける軽微なタイポを修正することを目的としています。Goのランタイムは、ゴルーチン(goroutine)のスタックを効率的に管理するために、スタックキャッシュを使用しています。これは、頻繁なスタックの割り当てと解放によるオーバーヘッドを削減し、メモリ使用量を最適化するための重要なコンポーネントです。

Goのゴルーチンは非常に軽量であり、必要に応じてスタックサイズを動的に増減させることができます。この動的なスタック管理は、Goが数百万ものゴルーチンを効率的に実行できる理由の一つです。スタックキャッシュは、この動的な管理を支える基盤の一つであり、使用済みのスタックセグメントを再利用することで、メモリ割り当てのコストを削減します。

このコミットが行われた2013年時点では、Goのスタック管理は「セグメントスタック」方式を採用していました。これは、スタックが複数の小さなセグメントに分割され、必要に応じて新しいセグメントが割り当てられる方式です。Go 1.3以降では「連続スタック」(スタックコピー)方式に移行しましたが、このコミットはそれ以前のスタック管理モデルにおける修正です。

このコミットの具体的な背景は、src/pkg/runtime/stack.c ファイル内のコメントとエラーメッセージに存在するスペルミスを修正することです。これらのタイポはコードの動作には直接影響しませんが、コードの可読性やデバッグ時のメッセージの正確性に影響を与える可能性があります。特に、エラーメッセージのタイポは、問題発生時の原因特定を困難にする可能性があるため、修正は重要です。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下のGoランタイムの概念とC言語の基本的な知識が必要です。

  • Goランタイム (Go Runtime): Goプログラムの実行を管理するシステム。メモリ管理(ガベージコレクション)、ゴルーチン管理、スケジューリング、チャネル通信など、Go言語の並行処理モデルを支える低レベルな機能を提供します。
  • ゴルーチン (Goroutine): Go言語における軽量な実行スレッド。OSのスレッドよりもはるかに少ないメモリで起動でき、数百万単位で同時に実行することが可能です。
  • スタック (Stack): プログラムの実行中に、関数呼び出しの引数、ローカル変数、戻りアドレスなどを一時的に格納するために使用されるメモリ領域です。Goのゴルーチンはそれぞれ独自のスタックを持っています。
  • スタックキャッシュ (Stack Cache): Goランタイムがゴルーチンのスタックを効率的に管理するために使用するメカニズム。使用済みのスタックセグメントを解放せずにプールしておき、新しいゴルーチンがスタックを必要とするときに再利用することで、メモリ割り当てのオーバーヘッドを削減します。これにより、頻繁なメモリ確保・解放によるパフォーマンス低下を防ぎます。
  • runtime.SysAlloc: GoランタイムがOSから直接メモリを割り当てるための関数。スタックキャッシュが枯渇した場合など、新しいメモリ領域が必要な場合に使用されます。
  • FixedStack: Goランタイムが管理するスタックセグメントの固定サイズ。
  • StackCacheBatch: スタックキャッシュに一度に割り当てられるスタックセグメントのバッチサイズ。
  • mstats.stacks_sys: Goランタイムの統計情報の一部で、システムから割り当てられたスタックメモリの総量を追跡するカウンタ。
  • runtime.throw: Goランタイムが致命的なエラーを発生させるための関数。通常、回復不可能な状況(例:メモリ不足)で使用されます。
  • runtime.xadd64: アトミックに64ビット整数に値を加算する関数。並行処理環境で共有カウンタを安全に更新するために使用されます。
  • C言語: Goランタイムの一部はC言語で記述されています。src/pkg/runtime/stack.c はその一例です。

技術的詳細

このコミットは、Goランタイムのスタックキャッシュの実装ファイルである src/pkg/runtime/stack.c 内の2つの箇所でタイポを修正しています。

Goのスタックキャッシュは、StackCacheNode 構造体と、stackcache というグローバルな StackCacheNode ポインタ、そして stackcachemu というロックによって管理されています。stackcacherefill および stackcacherelease 関数は、グローバルなスタックセグメントのキャッシュを実装しており、スレッドごとのキャッシュの無限の増加を防ぐために必要とされます。

  1. コメントの修正: 変更前: // stackcacherefill/stackcacherelease implement global cache of stack segments. 変更後: // stackcacherefill/stackcacherelease implement a global cache of stack segments. この修正は、コメントの文法的な誤りを修正し、より自然な英語表現にしています。「global cache of stack segments」を「a global cache of stack segments」とすることで、より明確な意味になります。

  2. エラーメッセージの修正: 変更前: runtime·throw("out of memory (staccachekrefill)"); 変更後: runtime·throw("out of memory (stackcacherefill)"); この修正は、メモリ不足エラーメッセージ内の関数名「staccachekrefill」のスペルミスを「stackcacherefill」に訂正しています。これは、stackcacherefill 関数内でメモリ割り当てに失敗した場合に発生するエラーメッセージであり、正しい関数名が示されることで、デバッグ時の情報がより正確になります。

これらの修正は、コードの機能的な動作には影響を与えませんが、コードベースの品質、可読性、および保守性を向上させます。特にエラーメッセージの正確性は、システムが予期せぬ動作をした際に、開発者が迅速に問題を特定し解決するために不可欠です。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/runtime/stack.c
+++ b/src/pkg/runtime/stack.c
@@ -17,7 +17,7 @@ struct StackCacheNode
 static StackCacheNode *stackcache;\n static Lock stackcachemu;\n \n-// stackcacherefill/stackcacherelease implement global cache of stack segments.\n+// stackcacherefill/stackcacherelease implement a global cache of stack segments.\n // The cache is required to prevent unlimited growth of per-thread caches.\n static void\n stackcacherefill(void)\n@@ -33,7 +33,7 @@ stackcacherefill(void)\n \tif(n == nil) {\n \t\tn = (StackCacheNode*)runtime·SysAlloc(FixedStack*StackCacheBatch);\n \t\tif(n == nil)\n-\t\t\truntime·throw("out of memory (staccachekrefill)");\n+\t\t\truntime·throw("out of memory (stackcacherefill)");\n \t\truntime·xadd64(&mstats.stacks_sys, FixedStack*StackCacheBatch);\n \t\tfor(i = 0; i < StackCacheBatch-1; i++)\n \t\t\tn->batch[i] = (byte*)n + (i+1)*FixedStack;\n```

## コアとなるコードの解説

このコミットでは、`src/pkg/runtime/stack.c` ファイル内の2行が変更されています。

1.  **コメントの変更**:
    ```c
    //- stackcacherefill/stackcacherelease implement global cache of stack segments.
    //+ stackcacherefill/stackcacherelease implement a global cache of stack segments.
    ```
    この変更は、`stackcacherefill` および `stackcacherelease` 関数がグローバルなスタックセグメントのキャッシュを実装していることを説明するコメントの修正です。単語「a」を追加することで、英語の文法としてより自然で正確な表現になっています。これはコードの動作には影響しませんが、コードベースの可読性と品質を向上させます。

2.  **エラーメッセージの変更**:
    ```c
    //- 		runtime·throw("out of memory (staccachekrefill)");
    //+ 		runtime·throw("out of memory (stackcacherefill)");
    ```
    この変更は、`stackcacherefill` 関数内でメモリ割り当て(`runtime·SysAlloc`)が失敗した場合に発生するエラーメッセージ内のタイポを修正しています。元のメッセージでは「`staccachekrefill`」という誤った関数名が記載されていましたが、これを正しい関数名「`stackcacherefill`」に修正しています。この修正により、メモリ不足エラーが発生した際に、どの関数で問題が発生したのかが正確に示されるようになり、デバッグ作業が容易になります。

これらの変更は、Goランタイムの安定性やパフォーマンスに直接的な影響を与えるものではありませんが、コードの正確性と保守性を高めるための重要な修正です。特に、エラーメッセージの正確性は、システムの問題を診断する上で非常に価値があります。

## 関連リンク

*   Go Change List 7370050: [https://golang.org/cl/7370050](https://golang.org/cl/7370050)

## 参考にした情報源リンク

*   Go runtime stack cache: [https://studyraid.com/](https://studyraid.com/)
*   Go runtime stack.c: [https://github.com/golang/go/blob/master/src/runtime/stack.go](https://github.com/golang/go/blob/master/src/runtime/stack.go) (現代のGoでは `stack.go` に移行)
*   Go runtime stack management: [https://medium.com/](https://medium.com/)
*   Go runtime stack management: [https://sobyte.net/](https://sobyte.net/)
*   Go runtime stack management: [https://go.dev/](https://go.dev/)