[インデックス 15475] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の公式ドキュメントである doc/effective_go.html
の修正に関するものです。具体的には、「Interface Checks」セクションにおけるコード例の型名が誤っていたのを修正しています。
コミット
doc/effective_go.html: Interface Checksセクションで正しい名前を使用 Fixes #4897.
R=golang-dev, adg CC=golang-dev https://golang.org/cl/7377061
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/fbec8347cbdccbaafdde7e59631485731d0da153
元コミット内容
commit fbec8347cbdccbaafdde7e59631485731d0da153
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date: Wed Feb 27 14:42:53 2013 -0800
doc/effective_go.html: use correct name in Interface Checks section
Fixes #4897.
R=golang-dev, adg
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7377061
変更の背景
この変更は、Go言語の公式ドキュメント「Effective Go」内の「Interface Checks」セクションにおける誤植を修正するために行われました。具体的には、json.Marshaler
インターフェースの実装をコンパイル時に検証するコード例において、存在しない型名 MyMessage
が使用されていました。これは、Go言語の標準ライブラリ encoding/json
パッケージに存在する RawMessage
型を参照すべき箇所でした。
この問題は、GoのIssueトラッカーで #4897 として報告されました。ドキュメントの正確性を保ち、読者が混乱することなくGoのインターフェースチェックの概念を理解できるようにするために、この修正が適用されました。
前提知識の解説
Go言語のインターフェース
Go言語におけるインターフェースは、メソッドのシグネチャの集合を定義する型です。Goのインターフェースは、他の言語のインターフェースとは異なり、型がインターフェースを「実装する」ことを明示的に宣言する必要がありません。ある型がインターフェースで定義されたすべてのメソッドを持っている場合、その型はそのインターフェースを暗黙的に実装していると見なされます。これは「ダックタイピング」として知られています。
型アサーションとインターフェースチェック
Goでは、変数が特定のインターフェースを実装しているかどうかをコンパイル時に検証する方法があります。これは、インターフェース型へのゼロ値またはnilポインタを、そのインターフェースを実装すると期待される具体的な型に代入することで行われます。
例: var _ InterfaceType = (*ConcreteType)(nil)
この構文は、以下のことを意味します。
InterfaceType
: 検証したいインターフェースの型。ConcreteType
:InterfaceType
を実装していると期待される具体的な型。(*ConcreteType)(nil)
:ConcreteType
型のnilポインタ。これは、ConcreteType
のインスタンスがなくても型チェックを可能にするための慣用的な表現です。var _ = ...
:_
(ブランク識別子) に代入することで、変数を宣言しつつ、その値を使用しないことをコンパイラに伝えます。これにより、「未使用変数」のエラーを回避しつつ、代入時の型チェックのみを実行させることができます。
このテクニックは、特定の型が意図したインターフェースを実装していることをコンパイル時に保証するために非常に有用です。もし ConcreteType
が InterfaceType
のすべてのメソッドを実装していなければ、コンパイルエラーが発生します。
json.Marshaler
インターフェース
encoding/json
パッケージは、Goのデータ構造とJSONの間でエンコードおよびデコードを行うための機能を提供します。json.Marshaler
インターフェースは、カスタムJSONエンコーディングを可能にするために定義されています。
type Marshaler interface {
MarshalJSON() ([]byte, error)
}
このインターフェースを実装する型は、MarshalJSON
メソッドを提供する必要があります。このメソッドは、その型のJSON表現をバイトスライスとして返し、エラーが発生した場合はエラーを返します。これにより、開発者はGoの構造体をJSONに変換する際のデフォルトの動作をオーバーライドできます。
json.RawMessage
型
encoding/json
パッケージには RawMessage
という型も存在します。これは、JSONの生の(raw)表現をバイトスライスとして保持するための型です。RawMessage
は json.Marshaler
インターフェースを実装しており、その MarshalJSON
メソッドは単に保持しているバイトスライスをそのまま返します。これは、既にJSON形式になっているデータをそのまま出力したい場合などに便利です。
技術的詳細
このコミットは、doc/effective_go.html
ファイルの2箇所を修正しています。
-
不要な
<p>
タグの削除:- <p>
これは、HTMLの構造をわずかにクリーンアップする変更であり、機能的な影響はありません。おそらく、以前の編集で誤って残された空の段落タグが削除されたものと考えられます。
-
インターフェースチェックのコード例の型名修正:
- var _ json.Marshaler = (*MyMessage)(nil) + var _ json.Marshaler = (*RawMessage)(nil)
これがこのコミットの主要な変更点です。
- 変更前:
var _ json.Marshaler = (*MyMessage)(nil)
この行は、MyMessage
という型がjson.Marshaler
インターフェースを実装していることをコンパイル時に検証しようとしています。しかし、MyMessage
はencoding/json
パッケージには存在しない架空の型です。 - 変更後:
var _ json.Marshaler = (*RawMessage)(nil)
この行は、encoding/json
パッケージに実際に存在するRawMessage
型がjson.Marshaler
インターフェースを実装していることを検証するように修正されています。RawMessage
は実際にMarshalJSON
メソッドを持っているため、このインターフェースチェックは成功します。
- 変更前:
この修正により、「Effective Go」ドキュメントの「Interface Checks」セクションのコード例が正確になり、読者がGoのインターフェースチェックの概念を正しく理解できるようになります。これは、ドキュメントの品質と信頼性を向上させるための重要な修正です。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/doc/effective_go.html
+++ b/doc/effective_go.html
@@ -3041,7 +3041,6 @@ Similarly, assigning <code>greeting</code> to a blank identifier
will silence the unused variable error.
</p>
{{code "/doc/progs/unused2.go" `/package/` `$`}}\n-<p>\n
<h3 id=\"blank_import\">Import for side effect</h3>
@@ -3103,7 +3102,7 @@ cause the compiler to verify this automatically.\n A declaration can be used to add such a check:\n </p>\n <pre>\n-var _ json.Marshaler = (*MyMessage)(nil)\n+var _ json.Marshaler = (*RawMessage)(nil)\n </pre>\n <p>\n As part of type-checking this static assignment of a\n```
## コアとなるコードの解説
変更されたコードは、Go言語の公式ドキュメント「Effective Go」のHTMLファイル `doc/effective_go.html` の一部です。
1. **`doc/effective_go.html` の役割**:
このファイルは、Go言語のベストプラクティスや慣用的な書き方について解説する「Effective Go」ドキュメントのHTML版です。Go言語の学習者や開発者にとって非常に重要なリソースであり、正確な情報が求められます。
2. **変更された行のコンテキスト**:
変更された行は、「Interface Checks」というセクションにあります。このセクションでは、Goでインターフェースの実装をコンパイル時に検証するテクニックについて説明しています。
元のコード `var _ json.Marshaler = (*MyMessage)(nil)` は、`MyMessage` という架空の型が `json.Marshaler` インターフェースを実装していることを検証する例として提示されていました。しかし、`MyMessage` はGoの標準ライブラリには存在しないため、この例は誤解を招く可能性がありました。
修正後のコード `var _ json.Marshaler = (*RawMessage)(nil)` は、`encoding/json` パッケージに実際に存在する `RawMessage` 型を使用しています。`RawMessage` は `json.Marshaler` インターフェースを実装しているため、この例は正確であり、読者は実際に動作するコードを通じてインターフェースチェックの概念を学ぶことができます。
この修正は、ドキュメントの正確性を高め、読者がGoのインターフェースの概念をより明確に理解できるようにすることを目的としています。
## 関連リンク
* GitHubコミットページ: [https://github.com/golang/go/commit/fbec8347cbdccbaafdde7e59631485731d0da153](https://github.com/golang/go/commit/fbec8347cbdccbaafdde7e59631485731d0da153)
* Go CL (Code Review): [https://golang.org/cl/7377061](https://golang.org/cl/7377061)
* Go Issue #4897: [https://github.com/golang/go/issues/4897](https://github.com/golang/go/issues/4897)
* Effective Go (公式ドキュメント): [https://go.dev/doc/effective_go](https://go.dev/doc/effective_go)
## 参考にした情報源リンク
* Go言語公式ドキュメント: [https://go.dev/doc/](https://go.dev/doc/)
* `encoding/json` パッケージドキュメント: [https://pkg.go.dev/encoding/json](https://pkg.go.dev/encoding/json)
* Go言語のインターフェースに関する一般的な情報源 (例: A Tour of Go, Go by Exampleなど)
* GitHubのGoリポジトリのIssueトラッカー