[インデックス 15506] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の公式ドキュメントに含まれるHTMLファイルにおける軽微なエラーを修正することを目的としています。具体的には、tidy
ツールによって検出されたHTMLの構文エラーや、ID属性の命名規則に関する問題を修正しています。これにより、ドキュメントの品質とアクセシビリティが向上し、HTML標準への準拠が強化されます。
コミット
commit 7ae41e80103674f5cbc3e76724729c248e62d65f
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date: Thu Feb 28 13:32:36 2013 -0800
doc: correct some minor HTML errors found by tidy
R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7439046
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/7ae41e80103674f5cbc3e76724729c248e62d65f
元コミット内容
doc: correct some minor HTML errors found by tidy
R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7439046
変更の背景
この変更の背景には、Go言語の公式ドキュメントの品質と標準への準拠を維持する目的があります。tidy
というツールは、HTML、XHTML、XMLドキュメントの構文エラーをチェックし、修正するためのユーティリティです。このツールがGoのドキュメントファイルに対して実行された際に、いくつかの軽微なHTMLエラーが検出されました。これらのエラーは、ブラウザでの表示に直接的な問題を引き起こすものではないかもしれませんが、HTMLの標準に準拠していない、あるいは将来的な互換性やアクセシビリティの観点から望ましくないものです。
具体的には、自己終了タグの誤用(<p/>
)や、HTML ID属性にスラッシュ(/
)が含まれていることなどが問題として挙げられます。これらの修正は、ドキュメントの保守性を高め、より堅牢なウェブコンテンツを提供するために行われました。
前提知識の解説
HTML (HyperText Markup Language)
HTMLは、ウェブページの内容と構造を定義するための標準マークアップ言語です。要素はタグ(例: <p>
, <div>
, <h1>
)で構成され、これらのタグはコンテンツの意味や表示方法をブラウザに伝えます。
- タグの閉じ方: HTMLでは、ほとんどの要素は開始タグ(例:
<p>
)と終了タグ(例:</p>
)のペアで構成されます。一部の要素(例:<img>
,<br>
,<hr>
)は内容を持たないため、自己終了タグとして記述されることがあります(例:<img src="image.jpg" />
)。しかし、HTML5では自己終了タグの末尾のスラッシュはオプションであり、<p>
のようなブロックレベル要素を自己終了タグとして使用することはHTMLの構文エラーとなります。 - ID属性:
id
属性は、HTML要素に一意の識別子を付与するために使用されます。これにより、CSSで特定の要素にスタイルを適用したり、JavaScriptで要素を操作したりすることが可能になります。HTML4およびXHTMLでは、ID属性の値にスラッシュ(/
)を含めることは許可されていましたが、CSSセレクタやJavaScriptでの操作において問題を引き起こす可能性があるため、一般的には推奨されません。HTML5では、ID属性の値にスペース文字、タブ文字、改行文字以外の任意の文字を含めることができますが、CSSセレクタの文脈では特殊文字のエスケープが必要になるため、英数字、ハイフン、アンダースコアのみを使用するのが一般的です。
HTML Tidy
HTML Tidyは、HTMLドキュメントの構文エラーをチェックし、修正するためのオープンソースのプログラムです。これは、ウェブ標準への準拠を促進し、ブラウザ間の互換性を向上させるのに役立ちます。Tidyは、以下のような機能を提供します。
- 構文チェック: 不適切なタグの閉じ方、属性の誤り、ネストの誤りなどを検出します。
- 自動修正: 検出されたエラーの一部を自動的に修正します。
- 整形: ドキュメントのインデントや改行を調整し、読みやすい形式に整形します。
- アクセシビリティチェック: アクセシビリティガイドラインに沿った問題点を指摘します。
このコミットでは、tidy
が検出したエラーに基づいて修正が行われたことが示されており、Goドキュメントの品質管理プロセスの一部としてtidy
が利用されていることが伺えます。
技術的詳細
このコミットで行われた技術的な修正は、主に以下の2点に集約されます。
-
不適切な自己終了タグの修正:
doc/contribute.html
とdoc/debugging_with_gdb.html
において、<p/>
という記述が</p>
に修正されています。<p/>
はXHTMLの自己終了タグの記法ですが、HTMLでは<p>
要素は内容を持つブロックレベル要素であり、自己終了タグとして使用することはできません。正しくは、段落の終わりを示す</p>
を使用する必要があります。この修正により、HTMLの正しい構文に準拠し、将来的な互換性やレンダリングの一貫性が保証されます。
-
HTML ID属性内のスラッシュの修正:
doc/go1.1.html
において、id="debug/elf"
がid="debug_elf"
に、id="html/template"
がid="html_template"
に修正されています。- HTMLのID属性の値にスラッシュ(
/
)を使用することは、HTMLの仕様上は許可されていますが、CSSセレクタやJavaScriptでこれらのIDを参照する際に問題を引き起こす可能性があります。特にCSSセレクタでは、スラッシュは特殊文字として扱われるため、エスケープが必要になります(例:#debug\/elf
)。このようなエスケープはコードの可読性を低下させ、エラーの原因となることがあります。アンダースコア(_
)に置き換えることで、IDの参照が容易になり、より堅牢なウェブ開発が可能になります。これは、ID属性の命名に関するベストプラクティスに沿った修正と言えます。
-
コードブロック内のHTMLエンティティの修正:
doc/go_spec.html
において、コードブロック内の<code>
タグで囲まれた部分のlen(a)</code>
の前に余分な<code>
タグが挿入されていたのを修正し、0 <= <code>low</code> <= <code>high</code> <= len(a)</code>
が0</code> <= <code>low</code> <= <code>high</code> <= <code>len(a)</code>
となるように修正されています。これは、HTMLエンティティの解釈とコードの表示に関する微細な修正であり、表示の正確性を向上させます。
これらの修正は、GoドキュメントのHTMLがよりクリーンで標準に準拠したものになるように貢献しています。
コアとなるコードの変更箇所
このコミットでは、以下の4つのHTMLファイルが変更されています。
doc/contribute.html
doc/debugging_with_gdb.html
doc/go1.1.html
doc/go_spec.html
それぞれのファイルにおける具体的な変更点は以下の通りです。
doc/contribute.html
--- a/doc/contribute.html
+++ b/doc/contribute.html
@@ -293,7 +293,7 @@ run <code>hg change 99999</code>.
<p>
Alternatively, you can use
-<p/>
+</p>
<pre>
$ hg file 99999 somefile
doc/debugging_with_gdb.html
--- a/doc/debugging_with_gdb.html
+++ b/doc/debugging_with_gdb.html
@@ -179,7 +179,7 @@ $ <b>gdb regexp.test -d $GOROOT</b>
If for some reason GDB still can\'t find that directory or that script, you can load
it by hand by telling gdb (assuming you have the go sources in
<code>~/go/</code>):
-<p>
+</p>
<pre>
(gdb) <b>source ~/go/src/pkg/runtime/runtime-gdb.py</b>
doc/go1.1.html
--- a/doc/go1.1.html
+++ b/doc/go1.1.html
@@ -131,7 +131,7 @@ to convert the code to Go 1.0 first.\n
<h2 id=\"library\">Changes to the standard library</h2>
-<h3 id=\"debug/elf\">debug/elf</h3>
+<h3 id=\"debug_elf\">debug/elf</h3>
<p>
Previous versions of the debug/elf package intentionally skipped over the first
symbol in the ELF symbol table, since it is always an empty symbol. This symbol
@@ -141,7 +141,7 @@ calls the debug/elf functions Symbols or ImportedSymbols may need to be
adjusted to account for the additional symbol and the change in symbol offsets.\n
</p>
-<h3 id=\"html/template\">html/template</h3>
+<h3 id=\"html_template\">html/template</h3>
<p>
Templates using the undocumented and only partially implemented
doc/go_spec.html
--- a/doc/go_spec.html
+++ b/doc/go_spec.html
@@ -2637,7 +2637,7 @@ a[:] // same as a[0 : len(a)]
<p>
For arrays or strings, the indices <code>low</code> and <code>high</code> are
-<i>in range</i> if <code>0 <= <code>low</code> <= <code>high</code> <= len(a)</code>,
+<i>in range</i> if <code>0</code> <= <code>low</code> <= <code>high</code> <= <code>len(a)</code>,
otherwise they are <i>out of range</i>.\n
For slices, the upper index bound is the slice capacity <code>cap(a)</code> rather than the length.\n
A <a href=\"#Constants\">constant</a> index must be non-negative and representable by a value of type\n
コアとなるコードの解説
doc/contribute.html
および doc/debugging_with_gdb.html
の修正
これらのファイルでは、<p/>
という記述が</p>
に修正されています。
- 変更前:
<p/>
- 変更後:
</p>
これは、HTMLにおける段落(paragraph)要素の閉じ方に関する修正です。HTMLでは、<p>
タグはブロックレベル要素であり、内容を持つため、自己終了タグとして<p/>
と記述することはHTMLの構文として正しくありません。XHTMLでは自己終了タグの記法が許容されますが、HTMLの文脈では、段落の終わりを明示的に示す</p>
を使用するのが正しい作法です。この修正により、ドキュメントがより厳密なHTML標準に準拠するようになります。
doc/go1.1.html
の修正
このファイルでは、<h3>
タグのid
属性の値が変更されています。
- 変更前:
id="debug/elf"
およびid="html/template"
- 変更後:
id="debug_elf"
およびid="html_template"
id
属性はHTML要素に一意の識別子を付与するために使用されますが、その値にスラッシュ(/
)が含まれていると、CSSセレクタやJavaScriptでそのIDを参照する際に問題が生じる可能性があります。例えば、CSSで#debug/elf
と指定しようとすると、スラッシュが特殊文字として解釈され、エスケープ(#debug\/elf
)が必要になります。このようなエスケープはコードの可読性を損ない、エラーの原因となることがあります。スラッシュをアンダースコア(_
)に置き換えることで、IDの参照がよりシンプルかつ堅牢になります。これは、ウェブ開発におけるID命名のベストプラクティスに沿った改善です。
doc/go_spec.html
の修正
このファイルでは、コードブロック内のHTMLエンティティの記述が修正されています。
- 変更前:
<i>in range</i> if <code>0 <= <code>low</code> <= <code>high</code> <= len(a)</code>,
- 変更後:
<i>in range</i> if <code>0</code> <= <code>low</code> <= <code>high</code> <= <code>len(a)</code>,
この修正は、<code>
タグのネストとHTMLエンティティの解釈に関するものです。変更前はlen(a)</code>の前に余分な
タグが挿入されており、これがHTMLの構文エラーや表示の不整合を引き起こす可能性がありました。変更後では、
0と
len(a)がそれぞれ独立した
タグで囲まれるように修正され、全体としてより正確なコードの表示が実現されています。これは、HTMLの整形ツールである
tidy`が検出した典型的な問題の一つであり、ドキュメントの正確なレンダリングを保証するための修正です。
これらの修正は全体として、Go言語の公式ドキュメントのHTMLが、より標準に準拠し、保守しやすく、そして正確に表示されるようにするための細かながら重要な改善です。
関連リンク
参考にした情報源リンク
- コミット情報:
/home/orange/Project/comemo/commit_data/15506.txt
- GitHubコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/7ae41e80103674f5cbc3e76724729c248e62d65f
- HTML Tidy 公式サイト (または関連ドキュメント): http://www.html-tidy.org/ (一般的な情報源として)
- HTML ID属性の命名規則に関する情報 (例: MDN Web Docs): https://developer.mozilla.org/ja/docs/Web/HTML/Global_attributes/id (一般的な情報源として)