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[インデックス 15512] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式ドキュメントの一部である doc/articles/image_package.html 内のコードスニペットにおける誤植を修正するものです。具体的には、画像をイテレートする際のネストされたループの条件式に誤りがあり、y 変数を使用すべき箇所で x 変数が誤って使用されていた点を修正しています。

コミット

commit 2145cd51e330ea39c150615339166df298eb2202
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date:   Thu Feb 28 15:52:58 2013 -0800

    doc/articles/image_package.html: fix x/y mistake
    Fixes #4942.
    
    R=golang-dev, adg
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7444047

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/2145cd51e330ea39c150615339166df298eb2202

元コミット内容

doc/articles/image_package.html ファイル内の、Image インターフェースのピクセルをイテレートするサンプルコードにおいて、内側のループの条件式が誤っていました。

<pre>
b := m.Bounds()
for y := b.Min.Y; y &lt; b.Max.Y; y++ {
	for x := b.Min.X; y &lt; b.Max.X; x++ {
		doStuffWith(m.At(x, y))
	}
}
</pre>

このコードでは、内側の for ループの条件が y < b.Max.X となっており、これは yX 座標の最大値と比較されているという論理的な誤りを含んでいます。

変更の背景

この変更は、Go言語のIssueトラッカーで報告された問題 #4942 を修正するために行われました。Issue #4942は、「doc/articles/image_package.html: x/y mistake in example code」というタイトルで、まさにこのドキュメント内のサンプルコードにおけるループ条件の誤りを指摘しています。

ドキュメント内のサンプルコードは、ユーザーがGoの image パッケージを正しく使用するための手本となるべきものです。しかし、この誤ったコードは、読者が誤ったイテレーションロジックを学習したり、コピー&ペーストしてバグを導入したりする可能性がありました。そのため、正確な情報を提供し、ユーザーの混乱を防ぐために、この修正が不可欠でした。

前提知識の解説

1. Go言語の image パッケージ

Go言語の標準ライブラリには、画像処理を扱うための image パッケージが含まれています。このパッケージは、画像の読み込み、書き込み、操作、変換など、様々な機能を提供します。

  • image.Image インターフェース: 画像データを抽象化するインターフェースです。このインターフェースは、画像の境界 (Bounds()) や特定の座標のピクセル色 (At(x, y)) を取得するメソッドなどを定義しています。
  • image.Rectangle 構造体: 画像の矩形領域を表します。Min (左上隅の点) と Max (右下隅の点) の2つの image.Point 構造体で構成され、それぞれ XY の座標を持ちます。
    • b.Min.X, b.Min.Y: 画像の左上隅のX座標、Y座標。
    • b.Max.X, b.Max.Y: 画像の右下隅のX座標、Y座標。ただし、Goの画像処理では通常、Max は排他的な上限として扱われます(例: x < b.Max.X)。

2. ネストされたループと画像ピクセルのイテレーション

画像を構成する各ピクセルにアクセスするためには、通常、ネストされた(二重の)ループを使用します。

  • 外側のループ: 通常、画像の行(Y座標)をイテレートします。for y := b.Min.Y; y < b.Max.Y; y++ のように記述され、y が画像の高さの範囲をカバーします。
  • 内側のループ: 外側のループの各行に対して、列(X座標)をイテレートします。for x := b.Min.X; x < b.Max.X; x++ のように記述され、x が画像の幅の範囲をカバーします。

この二重ループによって、(x, y) の各座標が画像の全ピクセルを網羅するように処理されます。

3. プログラミングにおける変数名の重要性

プログラミングにおいて、変数の命名はコードの可読性と保守性に大きく影響します。特に、座標を扱う際には xy のように慣習的に使われる変数名があり、これらを正しく使い分けることがバグの防止につながります。今回のケースでは、x 座標のループ条件に y 変数が誤って使われていたことが問題の本質です。

技術的詳細

このコミットが修正しているのは、Goの image パッケージのドキュメントに掲載されていたサンプルコードにおける、典型的なプログラミングミスです。

元のコードは以下のようになっていました。

for y := b.Min.Y; y < b.Max.Y; y++ { // 外側のループ: Y座標 (行) をイテレート
	for x := b.Min.X; y < b.Max.X; x++ { // 内側のループ: X座標 (列) をイテレート
		doStuffWith(m.At(x, y))
	}
}

ここで問題となるのは、内側のループの条件式 y < b.Max.X です。

  1. 変数の不一致: 内側のループは x 変数をインクリメントしており、x 座標に沿ってイテレートすることを意図しています。しかし、条件式では y 変数(外側のループのインデックス)が使用されています。
  2. 座標軸の不一致: さらに、y 変数が b.Max.X(画像の幅の最大値)と比較されています。y は垂直方向の座標を表すため、水平方向の最大値である b.Max.X と比較するのは論理的に誤りです。yb.Max.Y と比較されるべきであり、xb.Max.X と比較されるべきです。

この誤った条件式の結果、内側のループは意図した通りに動作しません。

  • もし yb.Max.X より小さい場合、内側のループは xb.Min.X から無限に増加し続ける(または整数オーバーフローする)ことになり、無限ループに陥る可能性があります。
  • もし yb.Max.X 以上の場合、内側のループは一度も実行されません。

いずれの場合も、画像全体を正しくイテレートすることはできません。

修正後のコードは以下の通りです。

for y := b.Min.Y; y < b.Max.Y; y++ {
	for x := b.Min.X; x < b.Max.X; x++ { // 修正箇所
		doStuffWith(m.At(x, y))
	}
}

修正により、内側のループの条件式が x < b.Max.X となりました。これにより、x 変数が b.Min.X から始まり、画像の幅の最大値である b.Max.X に達するまで正しくインクリメントされるようになります。これは、画像ピクセルを水平方向に正しく走査するための正しいロジックです。

この修正は、ドキュメントの正確性を保ち、Goの image パッケージを使用する開発者が正しいイテレーションパターンを理解し、適用できるようにするために非常に重要です。

コアとなるコードの変更箇所

変更は doc/articles/image_package.html ファイルの196行目に行われました。

--- a/doc/articles/image_package.html
+++ b/doc/articles/image_package.html
@@ -194,7 +194,7 @@ way to iterate over an <code>Image</code> m's pixels looks like:
 <pre>
 b := m.Bounds()
 for y := b.Min.Y; y &lt; b.Max.Y; y++ {
-	for x := b.Min.X; y &lt; b.Max.X; x++ {\n+\tfor x := b.Min.X; x &lt; b.Max.X; x++ {
 	\tdoStuffWith(m.At(x, y))\
 	}\
 }\

具体的には、以下の行が変更されました。

  • - for x := b.Min.X; y &lt; b.Max.X; x++ { (削除された行)
  • + for x := b.Min.X; x &lt; b.Max.X; x++ { (追加された行)

コアとなるコードの解説

この変更は、HTMLドキュメント内の <pre> タグで囲まれたGoのコードスニペットの一部です。このスニペットは、image.Image インターフェースを実装する m という名前の画像オブジェクトのすべてのピクセルをイテレートする方法を示しています。

  1. b := m.Bounds(): 画像 m の境界(矩形領域)を取得し、b に代入します。bimage.Rectangle 型で、b.Minb.Max というフィールドを持ちます。
  2. for y := b.Min.Y; y < b.Max.Y; y++ { ... }: 外側のループです。y 変数を b.Min.Y(画像の最上部のY座標)から開始し、b.Max.Y(画像の最下部のY座標の1つ手前)まで1ずつ増やしながらイテレートします。これにより、画像の各行が処理されます。
  3. for x := b.Min.X; x < b.Max.X; x++ { ... }: 内側のループです。ここが修正された箇所です。 x 変数を b.Min.X(画像の最も左のX座標)から開始し、b.Max.X(画像の最も右のX座標の1つ手前)まで1ずつ増やしながらイテレートします。これにより、現在の行 (y) の各列 (x) が処理されます。
    • 修正前は y < b.Max.X となっており、内側のループの制御が y 変数に依存し、かつ X 座標の最大値と比較されるという論理的な誤りがありました。
    • 修正後は x < b.Max.X となり、内側のループが x 変数によって正しく制御され、X 座標の範囲内でイテレートされるようになりました。
  4. doStuffWith(m.At(x, y)): この行は、現在のピクセル (x, y) の色情報を取得し、それに対して何らかの処理を行うプレースホルダーです。m.At(x, y) メソッドは、指定された座標の color.Color インターフェースを返します。

この修正により、ドキュメントのサンプルコードは、Goの image パッケージを使って画像を正しくピクセル単位で走査するための、正確で機能的な例となりました。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント
  • GitHubのGoリポジトリのIssueトラッカー
  • Go言語のソースコード
  • 一般的なプログラミングにおけるループと配列(画像)のイテレーションに関する知識