[インデックス 15615] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリである net/http/httputil
パッケージ内のテストファイル dump_test.go
における User-Agent
ヘッダの期待値の変更を扱っています。具体的には、Go 1.1リリースに向けた変更に伴い、テストが期待する User-Agent
文字列を更新することで、ビルドエラーを修正しています。
コミット
commit 56d1faa8b667c6867c8704c276c1cbedf9c5be6a
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date: Wed Mar 6 16:56:53 2013 -0500
net/http/httputil: fix build
TBR=bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7540043
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/56d1faa8b667c6867c8704c276c1cbedf9c5be6a
元コミット内容
このコミットの元の内容は以下の通りです。
net/http/httputil: fix build
TBR=bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7540043
これは、net/http/httputil
パッケージのビルドを修正するためのコミットであり、具体的な変更内容はテストファイル dump_test.go
内の User-Agent
文字列の期待値の更新です。
変更の背景
この変更の背景には、Go言語の net/http
パッケージが生成するデフォルトの User-Agent
ヘッダの文字列が変更されたことがあります。特に、Go 1.1のリリースに向けて、User-Agent
文字列にGoのバージョン情報を含めるように変更されたと考えられます。
net/http/httputil
パッケージは、HTTPリクエストやレスポンスのユーティリティ機能を提供し、その中にはHTTPダンプ(リクエストやレスポンスの内容を文字列として表現する機能)も含まれます。dump_test.go
は、このダンプ機能が正しく動作するかを検証するためのテストファイルです。
Goの標準ライブラリが生成する User-Agent
文字列が "Go http package" から "Go 1.1 package http" に変更されたため、既存のテストケースがこの新しい User-Agent
文字列と一致しなくなり、テストが失敗するようになりました。このコミットは、そのテストの失敗("fix build"というコミットメッセージが示唆するように、ビルドプロセスの一部としてテストが実行され、その失敗がビルドエラーとして扱われた可能性が高い)を解消するために、テストの期待値を新しい User-Agent
文字列に合わせて更新したものです。
前提知識の解説
HTTP User-Agent
ヘッダ
User-Agent
ヘッダは、HTTPリクエストを送信するクライアント(ウェブブラウザ、クローラー、APIクライアントなど)が、自身の識別情報(アプリケーションの種類、オペレーティングシステム、ソフトウェアベンダー、バージョンなど)をサーバーに伝えるために使用するリクエストヘッダです。サーバー側は、この情報に基づいてコンテンツの最適化、ログの記録、統計情報の収集などを行います。
一般的な User-Agent
の例:
Mozilla/5.0 (Windows NT 10.0; Win64; x64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/108.0.0.0 Safari/537.36
(Chromeブラウザ)curl/7.64.1
(cURLコマンドラインツール)
Go言語の net/http
パッケージでHTTPリクエストを送信する場合、デフォルトでGoのバージョン情報を含む User-Agent
ヘッダが自動的に付与されます。
Go言語の net/http
パッケージ
net/http
パッケージは、Go言語でHTTPクライアントおよびサーバーを実装するための基本的な機能を提供します。HTTPリクエストの送信、レスポンスの受信、HTTPサーバーの構築などが可能です。
Go言語の net/http/httputil
パッケージ
net/http/httputil
パッケージは、net/http
パッケージを補完するユーティリティ機能を提供します。主な機能には以下のようなものがあります。
- ReverseProxy: リバースプロキシの実装。
- DumpRequest/DumpResponse: HTTPリクエストやレスポンスの内容をバイト列としてダンプ(文字列化)する機能。デバッグやロギングに役立ちます。
このコミットで変更された dump_test.go
は、この DumpRequest
や DumpResponse
の機能が、期待されるHTTPメッセージを正しく生成するかどうかを検証するためのテストです。
Go 1.1 リリース
Go 1.1は、2013年5月にリリースされたGo言語のメジャーバージョンアップです。このリリースでは、パフォーマンスの向上、標準ライブラリの改善、新しいツールの追加など、多くの変更が加えられました。このコミットは、Go 1.1のリリースプロセス中に、標準ライブラリの内部的な変更(User-Agent
文字列の変更)に対応するために行われたものと考えられます。
技術的詳細
このコミットは、src/pkg/net/http/httputil/dump_test.go
ファイル内の dumpTests
というテストデータ構造を変更しています。dumpTests
は、HTTPリクエストのダンプ結果を検証するためのテストケースの配列です。各テストケースは、入力となるHTTPリクエストと、それに対応する期待されるダンプ出力 (WantDumpOut
) を含んでいます。
変更された箇所は、WantDumpOut
フィールド内の User-Agent
ヘッダの文字列です。
- 変更前:
"User-Agent: Go http package\\r\\n"
- 変更後:
"User-Agent: Go 1.1 package http\\r\\n"
この変更は、Go 1.1で net/http
パッケージが生成するデフォルトの User-Agent
文字列が、Goのバージョン情報を含むように更新されたことに対応しています。テストがこの新しい文字列を期待するように修正することで、テストの失敗を防ぎ、ビルドが正常に完了するようにしています。
\\r\\n
は、HTTPヘッダの行末を示すCRLF(Carriage Return Line Feed)を表すエスケープシーケンスです。これは、HTTPプロトコルの仕様に準拠した改行コードです。
コアとなるコードの変更箇所
diff --git a/src/pkg/net/http/httputil/dump_test.go b/src/pkg/net/http/httputil/dump_test.go
index 5afe9ba74e..3e87c27bc3 100644
--- a/src/pkg/net/http/httputil/dump_test.go
+++ b/src/pkg/net/http/httputil/dump_test.go
@@ -68,7 +68,7 @@ var dumpTests = []dumpTest{
WantDumpOut: "GET /foo HTTP/1.1\\r\\n" +\
"Host: example.com\\r\\n" +\
- "User-Agent: Go http package\\r\\n" +\
+ "User-Agent: Go 1.1 package http\\r\\n" +\
"Accept-Encoding: gzip\\r\\n\\r\\n",
},
@@ -80,7 +80,7 @@ var dumpTests = []dumpTest{
WantDumpOut: "GET /foo HTTP/1.1\\r\\n" +\
"Host: example.com\\r\\n" +\
- "User-Agent: Go http package\\r\\n" +\
+ "User-Agent: Go 1.1 package http\\r\\n" +\
"Accept-Encoding: gzip\\r\\n\\r\\n",
},
}
コアとなるコードの解説
上記の差分は、dump_test.go
ファイル内の dumpTests
スライス(Go言語における配列のようなもの)の定義の一部を示しています。このスライスは、dumpTest
型の構造体の要素を含んでいます。各 dumpTest
構造体は、HTTPリクエストのダンプテストのための入力と期待される出力を定義します。
変更された行は、WantDumpOut
フィールドに割り当てられている文字列リテラルの一部です。この文字列は、httputil.DumpRequest
または httputil.DumpResponse
関数が生成すると期待されるHTTPメッセージの完全な文字列表現です。
具体的には、以下の部分が変更されています。
- "User-Agent: Go http package\\r\\n"
: これは変更前の期待されるUser-Agent
ヘッダの文字列です。+ "User-Agent: Go 1.1 package http\\r\\n"
: これは変更後の期待されるUser-Agent
ヘッダの文字列です。
この変更は、Go 1.1のリリースに伴い、GoのHTTPクライアントがデフォルトで送信する User-Agent
ヘッダの文字列が、より具体的なバージョン情報を含むように変更されたことを反映しています。テストは、この新しいデフォルトの User-Agent
文字列と一致するように更新され、テストの失敗を防ぎ、ビルドが正常に完了するようにしています。
この修正は、機能的な変更ではなく、既存の機能の動作変更(この場合は User-Agent
文字列の変更)にテストが追従するためのメンテナンス的な変更です。
関連リンク
- Go言語の公式ウェブサイト: https://golang.org/
- Go 1.1 Release Notes (当時の情報源): Go 1.1のリリースノートには、
net/http
パッケージの変更点に関する詳細が含まれている可能性があります。 - Goの
net/http
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/net/http - Goの
net/http/httputil
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/net/http/httputil
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント
- HTTP/1.1 RFC 2616 (特に
User-Agent
ヘッダに関するセクション) - Go言語のコミット履歴 (GitHub)
- Go言語のコードレビューシステム (Gerrit) - コミットメッセージに記載されている
https://golang.org/cl/7540043
は、当時のGoのGerritコードレビューシステムへのリンクです。このリンクを辿ることで、この変更に関する議論や詳細なコンテキストを確認できます。