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[インデックス 15741] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ net/http パッケージのHTTPクライアントとサーバーのパフォーマンスを測定するための新しいベンチマークテストを追加するものです。具体的には、test/bench/go1 ディレクトリに http_test.go という新しいファイルが追加され、小規模なリクエストにおけるHTTP通信のベンチマークが実行されます。

コミット

commit ba6ea4a95c6975735d18ba4f9d233d312038b425
Author: Brad Fitzpatrick <bradfitz@golang.org>
Date:   Tue Mar 12 16:46:38 2013 -0700

    test/bench/go1: add http test
    
    R=golang-dev, r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7529048

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/ba6ea4a95c6975735d18ba4f9d233d312038b425

元コミット内容

test/bench/go1: add http test

このコミットは、Go言語の標準ベンチマークスイートにHTTPテストを追加するものです。

変更の背景

Go言語の標準ライブラリである net/http パッケージは、Webアプリケーション開発において非常に重要なコンポーネントです。HTTPクライアントとサーバーのパフォーマンスは、Goで構築されたシステムの全体的な応答性とスケーラビリティに直結します。このコミットが作成された2013年3月時点では、Go言語はまだ比較的新しい言語であり、そのパフォーマンス特性を継続的に評価し、改善していくことが重要でした。

この変更の背景には、以下のような目的が考えられます。

  1. パフォーマンスの継続的な監視: HTTPクライアントとサーバーの基本的な操作(リクエストの送信、レスポンスの受信、ボディの読み取りなど)のパフォーマンスを定期的に測定することで、将来の変更が性能に与える影響を早期に検出し、回帰を防ぐことができます。
  2. 最適化の機会の特定: ベンチマークの結果は、パフォーマンスのボトルネックを特定し、net/http パッケージのさらなる最適化の機会を見つけるための貴重な情報源となります。
  3. Go言語の性能アピール: Go言語は並行処理と高性能を特徴としていますが、具体的なベンチマークデータは、その主張を裏付ける証拠となります。特にHTTP通信は多くのアプリケーションで利用されるため、その性能はGo言語の採用を促進する要因となります。
  4. 開発者の意識向上: ベンチマークテストが存在することで、net/http パッケージに貢献する開発者は、自身の変更がパフォーマンスに与える影響をより意識するようになります。

このベンチマークは、特に「小規模なリクエスト」に焦点を当てており、これはHTTPのオーバーヘッドが顕著になりやすいシナリオを評価することを意図していると考えられます。

前提知識の解説

このコミットの理解には、以下のGo言語およびテストに関する基本的な知識が必要です。

1. Go言語のベンチマークテスト

Go言語には、標準ライブラリにベンチマークテストをサポートする機能が組み込まれています。testing パッケージを使用し、Benchmark というプレフィックスを持つ関数を定義することで、コードのパフォーマンスを測定できます。

  • testing.B: ベンチマーク関数に渡される構造体で、テストの実行回数 (b.N) やタイマーの制御 (b.ResetTimer()) などの機能を提供します。
  • b.N: ベンチマーク関数が実行されるループの回数を示します。go test コマンドが自動的に調整し、統計的に有意な結果が得られるように十分な回数実行されます。
  • b.ResetTimer(): ベンチマークの計測を開始する前に、セットアップにかかった時間をリセットします。これにより、ベンチマーク対象のコードのみの実行時間を正確に測定できます。
  • go test -bench=.: ベンチマークテストを実行するためのコマンドです。. はすべてのベンチマークを実行することを意味します。

2. net/http パッケージ

Go言語の標準ライブラリでHTTPクライアントとサーバー機能を提供するパッケージです。

  • http.HandlerFunc: HTTPリクエストを処理するための関数を http.Handler インターフェースに適合させるためのアダプターです。
  • http.ResponseWriter: HTTPレスポンスを書き込むためのインターフェースです。
  • http.Request: 受信したHTTPリクエストを表す構造体です。
  • http.Client: HTTPリクエストを送信するためのクライアントです。
  • http.Transport: http.Client が実際にHTTPリクエストを送信する際の低レベルな詳細(コネクションの再利用、プロキシ設定など)を制御します。CloseIdleConnections() メソッドは、アイドル状態のコネクションを閉じ、リソースを解放するために使用されます。

3. net/http/httptest パッケージ

HTTPハンドラーのテストを容易にするためのユーティリティを提供するパッケージです。

  • httptest.NewServer(handler http.Handler): 指定された http.Handler を使用して、テスト用のHTTPサーバーを起動します。実際のネットワークポートをリッスンし、そのURLを返します。これにより、実際のHTTPリクエストをサーバーに送信してテストできます。テスト終了時には Close() メソッドを呼び出してサーバーを停止する必要があります。

4. io/ioutil パッケージ (Go 1.16以降は io および os パッケージに統合)

ファイルやI/O操作に関するユーティリティ関数を提供するパッケージです。

  • ioutil.ReadAll(r io.Reader): io.Reader からすべてのデータを読み込み、バイトスライスとして返します。HTTPレスポンスボディの読み取りによく使用されます。

5. bytes パッケージ

バイトスライスを操作するための関数を提供するパッケージです。

  • bytes.Equal(a, b []byte): 2つのバイトスライスが等しいかどうかを比較します。

技術的詳細

このベンチマークテスト BenchmarkHTTPClientServer は、Go言語の testing パッケージと net/http/httptest パッケージを組み合わせて、HTTPクライアントとサーバー間の通信性能を測定します。

テストの主要なステップは以下の通りです。

  1. テスト用HTTPサーバーのセットアップ:

    • httptest.NewServer を使用して、テスト用のHTTPサーバーを起動します。
    • このサーバーは http.HandlerFunc を介して、すべてのリクエストに対して "Hello world.\n" というメッセージを返すシンプルなハンドラーを設定します。
    • defer ts.Close() により、ベンチマーク関数が終了する際にサーバーが適切にシャットダウンされるようにします。
  2. HTTPクライアントのセットアップ:

    • http.Transport{} を作成し、HTTPクライアントのトランスポートとして設定します。これにより、コネクションの再利用などの低レベルな動作を制御できます。
    • defer tr.CloseIdleConnections() により、ベンチマーク関数が終了する際にアイドル状態のコネクションが閉じられるようにします。
    • http.Client を作成し、先ほど設定した http.Transport を割り当てます。
  3. ベンチマークの実行:

    • b.ResetTimer() を呼び出し、サーバーとクライアントのセットアップにかかった時間をベンチマークの計測から除外します。
    • for i := 0; i < b.N; i++ ループ内で、b.N 回のHTTPリクエストとレスポンスの処理を実行します。
    • リクエストの送信: cl.Get(ts.URL) を使用して、テストサーバーのURLに対してGETリクエストを送信します。
    • エラーハンドリング: リクエスト送信中にエラーが発生した場合、b.Fatal を呼び出してベンチマークを停止します。
    • レスポンスボディの読み取り: ioutil.ReadAll(res.Body) を使用して、レスポンスボディ全体を読み取ります。
    • エラーハンドリング: レスポンスボディの読み取り中にエラーが発生した場合、b.Fatal を呼び出してベンチマークを停止します。
    • ボディの検証: bytes.Equal(all, msg) を使用して、受信したレスポンスボディが期待されるメッセージ ("Hello world.\n") と一致するかどうかを検証します。一致しない場合は b.Fatalf でエラーを報告します。

このベンチマークは、HTTPクライアントがリクエストを送信し、サーバーがそれに応答し、クライアントがレスポンスを読み取るという一連の処理にかかる時間を測定します。これにより、Goの net/http パッケージが提供するHTTP通信の基本的なオーバーヘッドとスループットを評価できます。

コアとなるコードの変更箇所

test/bench/go1/http_test.go が新規追加されています。

// Copyright 2013 The Go Authors.  All rights reserved.
// Use of this source code is governed by a BSD-style
// license that can be found in the LICENSE file.

package go1

import (
	"bytes"
	"io/ioutil"
	"net/http"
	"net/http/httptest"
	"testing"
)

// BenchmarkHTTPClientServer benchmarks both the HTTP client and the HTTP server,
// on small requests.
func BenchmarkHTTPClientServer(b *testing.B) {
	msg := []byte("Hello world.\n")
	ts := httptest.NewServer(http.HandlerFunc(func(rw http.ResponseWriter, r *http.Request) {
		rw.Write(msg)
	}))
	defer ts.Close()

	tr := &http.Transport{}
	defer tr.CloseIdleConnections()
	cl := &http.Client{
		Transport: tr,
	}

	b.ResetTimer()

	for i := 0; i < b.N; i++ {
		res, err := cl.Get(ts.URL)
		if err != nil {
			b.Fatal("Get:", err)
		}
		all, err := ioutil.ReadAll(res.Body)
		if err != nil {
			b.Fatal("ReadAll:", err)
		}
		if !bytes.Equal(all, msg) {
			b.Fatalf("Got body %q; want %q", all, msg)
		}
	}
}

コアとなるコードの解説

  • package go1: このベンチマークテストが go1 パッケージの一部であることを示します。これは、Go 1のリリースに関連するベンチマークやテストをまとめるための慣習的なパッケージ名です。
  • import (...): 必要な標準ライブラリパッケージをインポートしています。
    • bytes: バイトスライス操作のため。
    • io/ioutil: レスポンスボディの読み取りのため(Go 1.16以降は io に統合)。
    • net/http: HTTPクライアントとサーバーの機能のため。
    • net/http/httptest: テスト用HTTPサーバーの作成のため。
    • testing: ベンチマークテストフレームワークのため。
  • func BenchmarkHTTPClientServer(b *testing.B): ベンチマーク関数を定義しています。Benchmark プレフィックスと *testing.B 型の引数がGoのベンチマークテストの規約です。
  • msg := []byte("Hello world.\n"): サーバーが返すメッセージをバイトスライスとして定義しています。
  • ts := httptest.NewServer(...):
    • httptest.NewServer を呼び出して、テスト用のHTTPサーバーを起動します。
    • 引数には http.HandlerFunc が渡されており、これは匿名関数 func(rw http.ResponseWriter, r *http.Request)http.Handler インターフェースに適合させています。
    • この匿名関数は、受信したHTTPリクエスト r に対して、rw.Write(msg) を使って定義済みの msg をレスポンスボディとして書き込みます。
  • defer ts.Close(): BenchmarkHTTPClientServer 関数が終了する際に、ts.Close() が呼び出され、テストサーバーが適切にシャットダウンされることを保証します。これにより、リソースリークを防ぎます。
  • tr := &http.Transport{}: 新しい http.Transport インスタンスを作成します。これはHTTPクライアントの低レベルなネットワーク操作を管理します。
  • defer tr.CloseIdleConnections(): BenchmarkHTTPClientServer 関数が終了する際に、tr.CloseIdleConnections() が呼び出され、トランスポートが保持しているアイドル状態のネットワークコネクションが閉じられることを保証します。
  • cl := &http.Client{Transport: tr,}: 新しい http.Client インスタンスを作成し、先ほど作成した tr をその Transport フィールドに設定します。これにより、このクライアントは tr を介してHTTPリクエストを送信します。
  • b.ResetTimer(): ここでベンチマークのタイマーをリセットします。これにより、サーバーとクライアントのセットアップにかかった時間は計測対象から除外され、純粋なHTTP通信のパフォーマンスのみが測定されます。
  • for i := 0; i < b.N; i++: このループがベンチマークの本体です。b.Ngo test コマンドによって動的に決定され、統計的に有意な結果が得られるように十分な回数実行されます。
  • res, err := cl.Get(ts.URL): http.ClientGet メソッドを使用して、テストサーバーのURL (ts.URL) に対してGETリクエストを送信します。結果としてレスポンス res とエラー err が返されます。
  • if err != nil { b.Fatal("Get:", err) }: Get リクエスト中にエラーが発生した場合、b.Fatal を呼び出してベンチマークを即座に終了させ、エラーメッセージを出力します。
  • all, err := ioutil.ReadAll(res.Body): レスポンスボディ res.Body からすべてのデータを読み込み、バイトスライス all として取得します。
  • if err != nil { b.Fatal("ReadAll:", err) }: レスポンスボディの読み取り中にエラーが発生した場合、b.Fatal を呼び出してベンチマークを終了させます。
  • if !bytes.Equal(all, msg) { b.Fatalf("Got body %q; want %q", all, msg) }: 読み取ったレスポンスボディ all が、期待されるメッセージ msg と一致するかどうかを bytes.Equal で検証します。一致しない場合、b.Fatalf を呼び出してベンチマークを終了させ、期待値と実際の値を出力します。これは、ベンチマーク中に予期せぬデータが返された場合に、テストの正確性を保証するためのアサーションです。

このコードは、Go言語のHTTPスタックが小規模なリクエストをどれだけ効率的に処理できるかを測定するための、堅牢で自己完結型のベンチマークを提供しています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメントおよびパッケージドキュメント
  • Go言語のベンチマークテストに関する一般的な情報源 (例: Go言語のブログ、チュートリアル)
  • GitHubのgolang/goリポジトリのコミット履歴
  • go test コマンドの挙動に関する情報
  • net/http および net/http/httptest パッケージのソースコード
  • io/ioutil パッケージの歴史的経緯とGo 1.16での変更に関する情報
  • bytes パッケージのドキュメント
  • Go言語のベンチマークの書き方に関する一般的なガイドライン
  • Go言語のHTTPクライアントとサーバーの基本的な使い方に関する情報# [インデックス 15741] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ net/http パッケージのHTTPクライアントとサーバーのパフォーマンスを測定するための新しいベンチマークテストを追加するものです。具体的には、test/bench/go1 ディレクトリに http_test.go という新しいファイルが追加され、小規模なリクエストにおけるHTTP通信のベンチマークが実行されます。

コミット

commit ba6ea4a95c6975735d18ba4f9d233d312038b425
Author: Brad Fitzpatrick <bradfitz@golang.org>
Date:   Tue Mar 12 16:46:38 2013 -0700

    test/bench/go1: add http test
    
    R=golang-dev, r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7529048

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/ba6ea4a95c6975735d18ba4f9d233d312038b425

元コミット内容

test/bench/go1: add http test

このコミットは、Go言語の標準ベンチマークスイートにHTTPテストを追加するものです。

変更の背景

Go言語の標準ライブラリである net/http パッケージは、Webアプリケーション開発において非常に重要なコンポーネントです。HTTPクライアントとサーバーのパフォーマンスは、Goで構築されたシステムの全体的な応答性とスケーラビリティに直結します。このコミットが作成された2013年3月時点では、Go言語はまだ比較的新しい言語であり、そのパフォーマンス特性を継続的に評価し、改善していくことが重要でした。

この変更の背景には、以下のような目的が考えられます。

  1. パフォーマンスの継続的な監視: HTTPクライアントとサーバーの基本的な操作(リクエストの送信、レスポンスの受信、ボディの読み取りなど)のパフォーマンスを定期的に測定することで、将来の変更が性能に与える影響を早期に検出し、回帰を防ぐことができます。
  2. 最適化の機会の特定: ベンチマークの結果は、パフォーマンスのボトルネックを特定し、net/http パッケージのさらなる最適化の機会を見つけるための貴重な情報源となります。
  3. Go言語の性能アピール: Go言語は並行処理と高性能を特徴としていますが、具体的なベンチマークデータは、その主張を裏付ける証拠となります。特にHTTP通信は多くのアプリケーションで利用されるため、その性能はGo言語の採用を促進する要因となります。
  4. 開発者の意識向上: ベンチマークテストが存在することで、net/http パッケージに貢献する開発者は、自身の変更がパフォーマンスに与える影響をより意識するようになります。

このベンチマークは、特に「小規模なリクエスト」に焦点を当てており、これはHTTPのオーバーヘッドが顕著になりやすいシナリオを評価することを意図していると考えられます。

前提知識の解説

このコミットの理解には、以下のGo言語およびテストに関する基本的な知識が必要です。

1. Go言語のベンチマークテスト

Go言語には、標準ライブラリにベンチマークテストをサポートする機能が組み込まれています。testing パッケージを使用し、Benchmark というプレフィックスを持つ関数を定義することで、コードのパフォーマンスを測定できます。

  • testing.B: ベンチマーク関数に渡される構造体で、テストの実行回数 (b.N) やタイマーの制御 (b.ResetTimer()) などの機能を提供します。
  • b.N: ベンチマーク関数が実行されるループの回数を示します。go test コマンドが自動的に調整し、統計的に有意な結果が得られるように十分な回数実行されます。
  • b.ResetTimer(): ベンチマークの計測を開始する前に、セットアップにかかった時間をリセットします。これにより、ベンチマーク対象のコードのみの実行時間を正確に測定できます。
  • go test -bench=.: ベンチマークテストを実行するためのコマンドです。. はすべてのベンチマークを実行することを意味します。

2. net/http パッケージ

Go言語の標準ライブラリでHTTPクライアントとサーバー機能を提供するパッケージです。

  • http.HandlerFunc: HTTPリクエストを処理するための関数を http.Handler インターフェースに適合させるためのアダプターです。
  • http.ResponseWriter: HTTPレスポンスを書き込むためのインターフェースです。
  • http.Request: 受信したHTTPリクエストを表す構造体です。
  • http.Client: HTTPリクエストを送信するためのクライアントです。
  • http.Transport: http.Client が実際にHTTPリクエストを送信する際の低レベルな詳細(コネクションの再利用、プロキシ設定など)を制御します。CloseIdleConnections() メソッドは、アイドル状態のコネクションを閉じ、リソースを解放するために使用されます。

3. net/http/httptest パッケージ

HTTPハンドラーのテストを容易にするためのユーティリティを提供するパッケージです。

  • httptest.NewServer(handler http.Handler): 指定された http.Handler を使用して、テスト用のHTTPサーバーを起動します。実際のネットワークポートをリッスンし、そのURLを返します。これにより、実際のHTTPリクエストをサーバーに送信してテストできます。テスト終了時には Close() メソッドを呼び出してサーバーを停止する必要があります。

4. io/ioutil パッケージ (Go 1.16以降は io および os パッケージに統合)

ファイルやI/O操作に関するユーティリティ関数を提供するパッケージです。

  • ioutil.ReadAll(r io.Reader): io.Reader からすべてのデータを読み込み、バイトスライスとして返します。HTTPレスポンスボディの読み取りによく使用されます。
    • 補足: Go 1.16以降、io/ioutil パッケージの機能は io および os パッケージに統合され、ioutil.ReadAllio.ReadAll に置き換えられました。このコミットは2013年のものであるため、当時は io/ioutil が標準的な使用方法でした。

5. bytes パッケージ

バイトスライスを操作するための関数を提供するパッケージです。

  • bytes.Equal(a, b []byte): 2つのバイトスライスが等しいかどうかを比較します。

技術的詳細

このベンチマークテスト BenchmarkHTTPClientServer は、Go言語の testing パッケージと net/http/httptest パッケージを組み合わせて、HTTPクライアントとサーバー間の通信性能を測定します。

テストの主要なステップは以下の通りです。

  1. テスト用HTTPサーバーのセットアップ:

    • httptest.NewServer を使用して、テスト用のHTTPサーバーを起動します。
    • このサーバーは http.HandlerFunc を介して、すべてのリクエストに対して "Hello world.\n" というメッセージを返すシンプルなハンドラーを設定します。
    • defer ts.Close() により、ベンチマーク関数が終了する際にサーバーが適切にシャットダウンされるようにします。
  2. HTTPクライアントのセットアップ:

    • http.Transport{} を作成し、HTTPクライアントのトランスポートとして設定します。これにより、コネクションの再利用などの低レベルな動作を制御できます。
    • defer tr.CloseIdleConnections() により、ベンチマーク関数が終了する際にアイドル状態のコネクションが閉じられるようにします。
    • http.Client を作成し、先ほど設定した http.Transport を割り当てます。
  3. ベンチマークの実行:

    • b.ResetTimer() を呼び出し、サーバーとクライアントのセットアップにかかった時間をベンチマークの計測から除外します。
    • for i := 0; i < b.N; i++ ループ内で、b.N 回のHTTPリクエストとレスポンスの処理を実行します。
    • リクエストの送信: cl.Get(ts.URL) を使用して、テストサーバーのURLに対してGETリクエストを送信します。
    • エラーハンドリング: リクエスト送信中にエラーが発生した場合、b.Fatal を呼び出してベンチマークを停止します。
    • レスポンスボディの読み取り: ioutil.ReadAll(res.Body) を使用して、レスポンスボディ全体を読み取ります。
    • エラーハンドリング: レスポンスボディの読み取り中にエラーが発生した場合、b.Fatal を呼び出してベンチマークを停止します。
    • ボディの検証: bytes.Equal(all, msg) を使用して、受信したレスポンスボディが期待されるメッセージ ("Hello world.\n") と一致するかどうかを検証します。一致しない場合は b.Fatalf でエラーを報告します。

このベンチマークは、HTTPクライアントがリクエストを送信し、サーバーがそれに応答し、クライアントがレスポンスを読み取るという一連の処理にかかる時間を測定します。これにより、Goの net/http パッケージが提供するHTTP通信の基本的なオーバーヘッドとスループットを評価できます。

コアとなるコードの変更箇所

test/bench/go1/http_test.go が新規追加されています。

// Copyright 2013 The Go Authors.  All rights reserved.
// Use of this source code is governed by a BSD-style
// license that can be found in the LICENSE file.

package go1

import (
	"bytes"
	"io/ioutil"
	"net/http"
	"net/http/httptest"
	"testing"
)

// BenchmarkHTTPClientServer benchmarks both the HTTP client and the HTTP server,
// on small requests.
func BenchmarkHTTPClientServer(b *testing.B) {
	msg := []byte("Hello world.\n")
	ts := httptest.NewServer(http.HandlerFunc(func(rw http.ResponseWriter, r *http.Request) {
		rw.Write(msg)
	}))
	defer ts.Close()

	tr := &http.Transport{}
	defer tr.CloseIdleConnections()
	cl := &http.Client{
		Transport: tr,
	}

	b.ResetTimer()

	for i := 0; i < b.N; i++ {
		res, err := cl.Get(ts.URL)
		if err != nil {
			b.Fatal("Get:", err)
		}
		all, err := ioutil.ReadAll(res.Body)
		if err != nil {
			b.Fatal("ReadAll:", err)
		}
		if !bytes.Equal(all, msg) {
			b.Fatalf("Got body %q; want %q", all, msg)
		}
	}
}

コアとなるコードの解説

  • package go1: このベンチマークテストが go1 パッケージの一部であることを示します。これは、Go 1のリリースに関連するベンチマークやテストをまとめるための慣習的なパッケージ名です。
  • import (...): 必要な標準ライブラリパッケージをインポートしています。
    • bytes: バイトスライス操作のため。
    • io/ioutil: レスポンスボディの読み取りのため(Go 1.16以降は io に統合)。
    • net/http: HTTPクライアントとサーバーの機能のため。
    • net/http/httptest: テスト用HTTPサーバーの作成のため。
    • testing: ベンチマークテストフレームワークのため。
  • func BenchmarkHTTPClientServer(b *testing.B): ベンチマーク関数を定義しています。Benchmark プレフィックスと *testing.B 型の引数がGoのベンチマークテストの規約です。
  • msg := []byte("Hello world.\n"): サーバーが返すメッセージをバイトスライスとして定義しています。
  • ts := httptest.NewServer(...):
    • httptest.NewServer を呼び出して、テスト用のHTTPサーバーを起動します。
    • 引数には http.HandlerFunc が渡されており、これは匿名関数 func(rw http.ResponseWriter, r *http.Request)http.Handler インターフェースに適合させています。
    • この匿名関数は、受信したHTTPリクエスト r に対して、rw.Write(msg) を使って定義済みの msg をレスポンスボディとして書き込みます。
  • defer ts.Close(): BenchmarkHTTPClientServer 関数が終了する際に、ts.Close() が呼び出され、テストサーバーが適切にシャットダウンされることを保証します。これにより、リソースリークを防ぎます。
  • tr := &http.Transport{}: 新しい http.Transport インスタンスを作成します。これはHTTPクライアントの低レベルなネットワーク操作を管理します。
  • defer tr.CloseIdleConnections(): BenchmarkHTTPClientServer 関数が終了する際に、tr.CloseIdleConnections() が呼び出され、トランスポートが保持しているアイドル状態のネットワークコネクションが閉じられることを保証します。
  • cl := &http.Client{Transport: tr,}: 新しい http.Client インスタンスを作成し、先ほど作成した tr をその Transport フィールドに設定します。これにより、このクライアントは tr を介してHTTPリクエストを送信します。
  • b.ResetTimer(): ここでベンチマークのタイマーをリセットします。これにより、サーバーとクライアントのセットアップにかかった時間は計測対象から除外され、純粋なHTTP通信のパフォーマンスのみが測定されます。
  • for i := 0; i < b.N; i++: このループがベンチマークの本体です。b.Ngo test コマンドによって動的に決定され、統計的に有意な結果が得られるように十分な回数実行されます。
  • res, err := cl.Get(ts.URL): http.ClientGet メソッドを使用して、テストサーバーのURL (ts.URL) に対してGETリクエストを送信します。結果としてレスポンス res とエラー err が返されます。
  • if err != nil { b.Fatal("Get:", err) }: Get リクエスト中にエラーが発生した場合、b.Fatal を呼び出してベンチマークを即座に終了させ、エラーメッセージを出力します。
  • all, err := ioutil.ReadAll(res.Body): レスポンスボディ res.Body からすべてのデータを読み込み、バイトスライス all として取得します。
  • if err != nil { b.Fatal("ReadAll:", err) }: レスポンスボディの読み取り中にエラーが発生した場合、b.Fatal を呼び出してベンチマークを終了させます。
  • if !bytes.Equal(all, msg) { b.Fatalf("Got body %q; want %q", all, msg) }: 読み取ったレスポンスボディ all が、期待されるメッセージ msg と一致するかどうかを bytes.Equal で検証します。一致しない場合、b.Fatalf を呼び出してベンチマークを終了させ、期待値と実際の値を出力します。これは、ベンチマーク中に予期せぬデータが返された場合に、テストの正確性を保証するためのアサーションです。

このコードは、Go言語のHTTPスタックが小規模なリクエストをどれだけ効率的に処理できるかを測定するための、堅牢で自己完結型のベンチマークを提供しています。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメントおよびパッケージドキュメント
  • Go言語のベンチマークテストに関する一般的な情報源 (例: Go言語のブログ、チュートリアル)
  • GitHubのgolang/goリポジトリのコミット履歴
  • go test コマンドの挙動に関する情報
  • net/http および net/http/httptest パッケージのソースコード
  • io/ioutil パッケージの歴史的経緯とGo 1.16での変更に関する情報
  • bytes パッケージのドキュメント
  • Go言語のベンチマークの書き方に関する一般的なガイドライン
  • Go言語のHTTPクライアントとサーバーの基本的な使い方に関する情報