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[インデックス 15761] ファイルの概要

コミット

このコミット f51ec00722b16d356d959065d035a880864795df は、Go言語のランタイムにおけるビルドの問題を修正するものです。具体的には、src/pkg/runtime/netpoll.goc ファイルに // +build darwin というビルドタグを追加することで、Darwin (macOS) 環境でのコンパイルが正しく行われるようにしています。

  • コミットハッシュ: f51ec00722b16d356d959065d035a880864795df
  • 作者: Dmitriy Vyukov dvyukov@google.com
  • コミット日時: 2013年3月14日 木曜日 10:59:55 +0400
  • 変更ファイル: src/pkg/runtime/netpoll.goc (1ファイル変更、2行追加)

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/f51ec00722b16d356d959065d035a880864795df

元コミット内容

    runtime: fix build
    
    R=golang-dev
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7529049

変更の背景

このコミットの目的は、「ビルドの修正 (fix build)」と明記されています。src/pkg/runtime/netpoll.goc というファイルが変更されていることから、Goランタイムのネットワークポーリングに関連する部分で、特定の環境(この場合はDarwin、すなわちmacOS)でのビルドに問題があったことが推測されます。

Go言語のビルドシステムは、特定のオペレーティングシステムやアーキテクチャに特化したコードを条件付きでコンパイルする機能を持っています。この問題は、netpoll.goc がDarwin環境でのみ必要とされる、あるいはDarwin環境でのみ正しくコンパイルされるべきコードを含んでいたにもかかわらず、その条件が明示されていなかったために、他の環境でコンパイルエラーを引き起こしていた可能性が高いです。// +build darwin というビルドタグを追加することで、このファイルがDarwin環境でのみビルド対象となるように制御し、クロスプラットフォームビルド時の問題を解決しています。

前提知識の解説

Go言語のビルドタグ (+build ディレクティブ)

Go言語のソースファイルには、特別なコメント行として「ビルドタグ」を記述することができます。これは、Goのビルドツール (go build, go install など) に対して、そのファイルを特定の条件が満たされた場合にのみコンパイル対象に含めるよう指示するものです。 ビルドタグは、ファイルの先頭付近に // +build tag1,tag2 !tag3 のような形式で記述されます。

  • tag1,tag2: 論理OR条件。tag1 または tag2 のいずれかが有効な場合にファイルがコンパイルされます。
  • tag1 tag2: 論理AND条件。tag1tag2 の両方が有効な場合にファイルがコンパイルされます。
  • !tag3: 論理NOT条件。tag3 が有効でない場合にファイルがコンパイルされます。

一般的なタグには、オペレーティングシステム名(例: linux, windows, darwin, freebsd)、アーキテクチャ名(例: amd64, arm, 386)、Goのバージョン(例: go1.18)、またはカスタムタグなどがあります。このコミットでは darwin タグが使用されており、これはmacOS環境を指します。

netpoll (ネットワークポーリング)

netpoll は、GoランタイムがネットワークI/O操作(ソケットの読み書きなど)を効率的に処理するためのメカニズムです。Goの非同期I/Oは、OSが提供するイベント通知メカニズム(Linuxのepoll、macOS/BSDのkqueue、WindowsのIOCPなど)を利用して実装されています。これにより、多数の同時接続を効率的に扱うことができます。 netpoll の実装はOSに依存するため、各OS向けに異なるコードが書かれることが一般的です。netpoll.goc のようなファイルは、C言語で書かれたGoランタイムの一部であり、OS固有のシステムコールを呼び出すためのラッパーやロジックを含んでいることが多いです。

runtime パッケージ

runtime パッケージは、Goプログラムの実行時環境を提供するGo言語のコアパッケージです。これには、ガベージコレクション、ゴルーチンのスケジューリング、チャネルの実装、メモリ管理、システムコールインターフェース、そしてネットワークI/Oのプリミティブなどが含まれます。Goプログラムが動作するために不可欠な低レベルの機能を提供します。

Darwin

Darwinは、AppleのmacOSおよびiOSの基盤となるオープンソースのUNIX系オペレーティングシステムです。Go言語のビルドタグにおける darwin は、macOS環境を指します。

技術的詳細

このコミットは、Goランタイムのビルドプロセスにおける特定の課題を解決しています。src/pkg/runtime/netpoll.goc は、Goのネットワークポーリング機構の一部であり、おそらくDarwin(macOS)固有のシステムコールやAPIを利用するCコードを含んでいます。

問題は、このファイルがビルドタグなしで存在していた場合、Goのビルドツールがデフォルトで全てのソースファイルをコンパイルしようとすることにあります。もし netpoll.goc がDarwin以外のOS(例: LinuxやWindows)でコンパイルされた場合、そのファイル内のDarwin固有の関数呼び出しやデータ構造が未定義エラー("undefined symbol")を引き起こしたり、互換性のないAPIの使用によりコンパイルエラーが発生したりする可能性があります。

// +build darwin という行をファイルの先頭に追加することで、Goのビルドツールは、ターゲットOSがDarwinである場合にのみこのファイルをコンパイル対象に含めるようになります。これにより、他のOSでビルドする際にはこのファイルがスキップされ、結果としてビルドエラーが解消されます。これは、クロスプラットフォーム開発において、OS固有のコードを適切に分離し、管理するための標準的なプラクティスです。

この修正は、Goランタイムの安定性とクロスプラットフォーム互換性を向上させる上で重要です。特定のOSに依存する低レベルのコードが、意図しない環境でコンパイルされることを防ぎ、クリーンなビルドプロセスを保証します。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/runtime/netpoll.goc
+++ b/src/pkg/runtime/netpoll.goc
@@ -2,6 +2,8 @@
 // Use of this source code is governed by a BSD-style
 // license that can be found in the LICENSE file.
 
+// +build darwin
+
 package net
 
 #include "runtime.h"

コアとなるコードの解説

変更は非常にシンプルで、src/pkg/runtime/netpoll.goc ファイルの2行目と3行目の間に新しい行が挿入されています。

// +build darwin

この行はGoのビルドタグであり、Goのビルドシステムに対して以下の指示を与えます。

  • このソースファイル (netpoll.goc) は、ビルドターゲットのオペレーティングシステムが darwin (macOS) である場合にのみコンパイルに含めること。

これにより、Goのビルドツールは、Linux、Windows、FreeBSDなどの他のOS向けにビルドを行う際には、この netpoll.goc ファイルを完全に無視します。結果として、Darwin固有のコードが他のOSでコンパイルされることによるエラーが回避され、ビルドが成功するようになります。これは、Goのクロスコンパイル機能と、OS固有のランタイム実装を管理するための基本的なメカニズムです。

関連リンク

  • Gerrit Change-ID: https://golang.org/cl/7529049 (GoプロジェクトのコードレビューシステムであるGerritへのリンク)

参考にした情報源リンク