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[インデックス 158] ファイルの概要

このコミットは、include/utf.h という新しいファイルを追加するものです。このファイルは、../src/lib9/utf/utf/utf.h をインクルードする単一の行を含んでいます。これは、ビルドシステムや他のソースファイルがUTF関連の定義にアクセスするための、不足していたインクルードパスを提供することを目的としています。

コミット

  • コミットハッシュ: d024fb4ae47c9df7285014b41d670db11caa95d7
  • Author: Rob Pike r@golang.org
  • Date: Thu Jun 12 13:31:17 2008 -0700
  • コミットメッセージ:
    add missing include file
    
    SVN=122485
    

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/d024fb4ae47c9df7285014b41d670db11caa95d7

元コミット内容

add missing include file

SVN=122485

変更の背景

このコミットの背景には、おそらくビルドプロセスにおけるコンパイルエラーや、特定のソースファイルがUTF(Unicode Transformation Format)関連の定義や関数にアクセスできないという問題があったと考えられます。C言語やC++のような言語では、他のファイルで定義された関数やデータ構造を使用するために、ヘッダーファイルをインクルードする必要があります。utf.h は通常、UTF-8などのUnicodeエンコーディングを扱うための関数や型定義を含むヘッダーファイルです。

このコミットは、include/utf.h という新しいヘッダーファイルを追加することで、この問題を解決しようとしています。この新しいヘッダーファイルは、プロジェクト内の別の場所にある実際のUTFヘッダーファイル (../src/lib9/utf/utf.h) へのパスを提供します。これにより、他の部分のコードが include/utf.h をインクルードするだけで、必要なUTF関連の定義にアクセスできるようになります。これは、インクルードパスの整理や、特定のヘッダーをよりアクセスしやすい場所に「公開」するための一般的な手法です。

また、SVN=122485 という記述から、この変更がGoプロジェクトがGitに移行する前のSubversionリポジトリから取り込まれたものであることがわかります。これは、Go言語の初期開発段階における、コードベースの整理とビルドシステムの成熟を示す一端でもあります。

前提知識の解説

1. ヘッダーファイル (.h ファイル)

C言語やC++において、ヘッダーファイル(通常 .h または .hpp 拡張子を持つ)は、関数宣言、マクロ定義、構造体やクラスの定義、外部変数宣言などを含みます。これらのファイルは、コンパイラが他のソースファイル(.c.cpp ファイル)をコンパイルする際に、必要な情報を提供するために使用されます。

  • 目的:
    • 宣言と定義の分離: 実装の詳細(.c.cpp ファイル)から宣言を分離し、コードのモジュール化を促進します。
    • コンパイル時間の短縮: ヘッダーガード(#ifndef, #define, #endif)を使用することで、同じヘッダーファイルが複数回インクルードされることによる再定義エラーを防ぎ、コンパイル時間を短縮します。
    • インターフェースの提供: ライブラリやモジュールの公開インターフェースを定義し、他の開発者がその機能を利用できるようにします。

2. #include ディレクティブ

#include はC/C++のプリプロセッサディレクティブの一つで、指定されたファイルの全内容を、#include ディレクティブが書かれた場所に挿入するようコンパイラに指示します。

  • #include "filename.h": 通常、プロジェクト内のカスタムヘッダーファイルや、現在のソースファイルと同じディレクトリ、またはコンパイラのインクルードパスで指定されたディレクトリにあるヘッダーファイルをインクルードするために使用されます。
  • #include <filename.h>: 通常、標準ライブラリのヘッダーファイルや、システムが提供するヘッダーファイルをインクルードするために使用されます。コンパイラは、標準のインクルードディレクトリからこれらのファイルを検索します。

このコミットでは、#include "../src/lib9/utf/utf.h" のように、相対パスでプロジェクト内の別のヘッダーファイルをインクルードしています。

3. UTF (Unicode Transformation Format)

UTFは、Unicode文字をバイトシーケンスにエンコードするための方式です。最も一般的なものにはUTF-8、UTF-16、UTF-32があります。

  • UTF-8: 可変長エンコーディングで、ASCII文字は1バイトで表現され、他の文字は2〜4バイトで表現されます。Webや多くのシステムで広く使用されています。
  • utf.h: このヘッダーファイルは、通常、UTF-8などのUnicodeエンコーディングを扱うための関数(例: 文字列の長さ計算、文字の読み書き、エンコーディング変換など)や、Unicode文字を表すための型定義(例: Rune 型など)を含むと考えられます。Go言語はUnicodeをネイティブにサポートしており、そのルーツの一部はPlan 9オペレーティングシステムにあります。Plan 9の lib9 ライブラリには、UTF処理のためのユーティリティが含まれており、このコミットで参照されている ../src/lib9/utf/utf.h はその一部である可能性が高いです。

4. SVN (Subversion)

Subversionは、Gitが登場する以前に広く使われていた集中型バージョン管理システム(CVCS)です。SVN=122485 という記述は、このコミットがSubversionリポジトリからの移行の一部であり、元のSubversionリビジョン番号が122485であることを示しています。Go言語の初期開発はSubversionで行われていました。

技術的詳細

このコミットは、Go言語プロジェクトのビルドシステムとヘッダーファイルの管理に関する重要な側面を示しています。

1. ヘッダーファイルの「公開」

include/utf.h という新しいファイルを作成し、その中に #include "../src/lib9/utf/utf.h" と記述するアプローチは、特定のヘッダーファイルをプロジェクトの他の部分からアクセスしやすくするための一般的なパターンです。

  • なぜ直接 ../src/lib9/utf/utf.h をインクルードしないのか?:
    • パスの簡素化: include/utf.h を作成することで、他のソースファイルは単に #include "utf.h" (またはコンパイラのインクルードパスに include ディレクトリが追加されていれば) と書くだけでよくなります。これにより、長い相対パスを記述する手間が省け、コードの可読性が向上します。
    • 抽象化と安定性: ../src/lib9/utf/utf.h の内部パスが将来変更されたとしても、include/utf.h の内容を更新するだけで済み、そのヘッダーをインクルードしている他の多数のファイルは変更する必要がありません。これは、APIの安定性を保つ上で重要です。
    • 公開APIの明確化: include/ ディレクトリは、プロジェクトの外部に公開される(またはプロジェクト内の他のモジュールが利用する)ヘッダーファイルを置くための慣習的な場所です。これにより、どのヘッダーが「公開」されているかが明確になります。

2. ビルドシステムへの影響

この変更は、コンパイラが utf.h を見つけられないという問題を解決します。コンパイラは、ソースファイルをコンパイルする際に、#include ディレクティブで指定されたヘッダーファイルを検索します。もし utf.h が見つからなければ、コンパイルエラーが発生し、ビルドが失敗します。

このコミットにより、include/utf.h が適切な場所に配置され、ビルドシステムがこの新しいヘッダーファイルを見つけられるように設定されていれば、UTF関連の機能を使用するソースファイルは正常にコンパイルされるようになります。

3. Plan 9との関連性

../src/lib9/utf/utf.h というパスは、Go言語がPlan 9オペレーティングシステムの影響を強く受けていることを示唆しています。Plan 9は、Rob Pikeを含むGo言語の主要な開発者たちが以前に開発に携わっていたOSです。lib9 はPlan 9の標準ライブラリの一部であり、Go言語の初期のコードベースには、Plan 9の設計思想やコードが多数取り入れられていました。この utf.h も、Plan 9のUTF処理ライブラリに由来するものと考えられます。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/include/utf.h b/include/utf.h
new file mode 100644
index 0000000000..be1c46e7f2
--- /dev/null
+++ b/include/utf.h
@@ -0,0 +1 @@
+#include "../src/lib9/utf/utf.h"

この差分は、以下の変更を示しています。

  • new file mode 100644: include/utf.h という新しいファイルが作成されたことを示します。100644 は、通常のファイルであり、読み取り/書き込み権限が所有者にあり、読み取り権限がグループとその他にあることを示すUnixパーミッションです。
  • --- /dev/null: 変更前のファイルが存在しないことを示します(新しいファイルのため)。
  • +++ b/include/utf.h: 変更後のファイルが include/utf.h であることを示します。
  • @@ -0,0 +1 @@: 差分のヘッダーで、変更がファイルの0行目から始まり、0行が削除され、1行が追加されたことを示します。
  • +#include "../src/lib9/utf/utf.h": 新しいファイルに追加された唯一の行です。これは、../src/lib9/utf/utf.h というパスにあるヘッダーファイルをインクルードするプリプロセッサディレクティブです。

コアとなるコードの解説

このコミットのコアとなるコードは、新しく作成された include/utf.h ファイルのたった1行です。

#include "../src/lib9/utf/utf.h"

この行は、C/C++のプリプロセッサに対して、../src/lib9/utf/utf.h というパスにあるファイルの全内容を、この #include ディレクティブが書かれた場所に挿入するように指示します。

具体的には、以下の目的を果たします。

  1. 間接的なインクルードパスの提供: プロジェクト内の他のソースファイルが、直接 ../src/lib9/utf/utf.h という長い相対パスを指定する代わりに、より短い include/utf.h をインクルードできるようにします。これは、ビルドシステムが include ディレクトリをインクルードパスとして設定している場合に特に有効です。
  2. モジュール化と整理: include ディレクトリは、通常、公開されるヘッダーファイルや、プロジェクト全体で共有されるヘッダーファイルを配置する場所として機能します。この変更は、UTF関連の定義をプロジェクトの他の部分からアクセスしやすいように「公開」し、コードベースの構造をより整理されたものにします。
  3. 依存関係の管理: include/utf.h が存在することで、lib9/utf モジュールの内部構造が変更されても、その変更が include/utf.h を介して抽象化されるため、他のファイルへの影響を最小限に抑えることができます。

このシンプルな変更は、Go言語の初期のコードベースにおけるヘッダーファイルの依存関係を解決し、ビルドの成功を確実にするための重要なステップでした。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • コミット情報: ./commit_data/158.txt
  • GitHub上のコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/d024fb4ae47c9df7285014b41d670db11caa95d7
  • C言語のヘッダーファイルに関する一般的な知識
  • UTF-8エンコーディングに関する一般的な知識
  • バージョン管理システム(Subversion, Git)に関する一般的な知識
  • Plan 9オペレーティングシステムに関する一般的な知識