[インデックス 15800] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のコードレビューシステム(codereview
)におけるステータス表示の機能を修正・再有効化するものです。具体的には、15秒ごとのステータス出力と、hg -v
(Mercurialの冗長モード)使用時の全ステータス変更の表示を再度有効にしています。これは、以前のリファクタリングで誤って失われた機能の修正となります。
コミット
このコミットは、Go言語のコードレビューツールであるcodereview.py
スクリプトにおいて、ステータス表示のロジックを修正し、以前のリファクタリングで失われた機能を回復させました。これにより、ユーザーはコードレビュープロセス中の進捗状況をより詳細に把握できるようになります。
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/037c03b53734cbf2606ddbfe31b9b45a36cc1f14
元コミット内容
commit 037c03b53734cbf2606ddbfe31b9b45a36cc1f14
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date: Fri Mar 15 16:33:04 2013 -0400
codereview: re-enable 15-second status prints
Also print all status changes when using hg -v.
The start_status_thread call was lost during the refactoring in
https://golang.org/cl/5395044/diff/6006/lib/codereview/codereview.py
Oops.
R=golang-dev, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/7834044
変更の背景
この変更の背景には、Go言語のコードレビューシステムにおける以前のリファクタリング作業があります。コミットメッセージに明記されているように、https://golang.org/cl/5395044
でのリファクタリング中に、ステータス表示を制御する重要な関数であるstart_status_thread
の呼び出しが誤って削除されてしまいました。
このstart_status_thread
は、コードレビュープロセス中にバックグラウンドで動作し、定期的に(おそらく15秒ごとに)現在のステータスを標準エラー出力(sys.stderr
)に表示する役割を担っていました。この機能が失われたことで、ユーザーはレビューの進行状況に関するリアルタイムのフィードバックを得られなくなり、特に時間がかかる操作中にプロセスが停止しているかのように感じられる可能性がありました。
また、Mercurial(hg
)コマンドに-v
(verbose: 冗長)オプションを付けて実行した場合に、すべてのステータス変更が出力されるべきでしたが、これも機能していませんでした。このコミットは、これらの失われた機能を「Oops.」という簡潔な表現で認め、修正することを目的としています。
前提知識の解説
このコミットを理解するためには、以下の技術的背景知識が必要です。
-
Go言語のコードレビューシステム (
codereview
): Go言語プロジェクトでは、Googleの内部コードレビューシステムをベースにした独自のコードレビューツールが使用されています。これは通常、Mercurial(hg
)バージョン管理システムと連携して動作し、変更セットのアップロード、レビューコメントの管理、ステータスの追跡などを行います。lib/codereview/codereview.py
は、このシステムのPython実装の一部であり、クライアント側のロジックやMercurialとの連携を担っています。 -
Mercurial (
hg
): Mercurialは、Gitと同様の分散型バージョン管理システム(DVCS)です。Go言語プロジェクトの初期にはMercurialが主要なバージョン管理システムとして使用されており、codereview
ツールもMercurialのコマンドや概念に深く依存していました。hg -v
: Mercurialコマンドに-v
オプションを付けると、より詳細な(verbose)出力が得られます。これは、通常は表示されない追加情報やデバッグメッセージを表示するために使用されます。このコミットでは、この冗長モード時にすべてのステータス変更を表示する機能が失われていたことが問題視されています。
-
sys.stderr
: Pythonのsys
モジュールは、システム固有のパラメータと関数へのアクセスを提供します。sys.stderr
は、標準エラー出力ストリームを指します。プログラムがエラーメッセージや診断情報を出力する際に通常使用されます。通常のプログラム出力(sys.stdout
)とは異なり、sys.stderr
への出力はパイプやリダイレクトによって分離されることが多く、エラーログの収集などに役立ちます。 -
time.asctime()
: Pythonのtime
モジュールは、時刻関連の機能を提供します。time.asctime()
関数は、現在の時刻または指定された時刻のタプルを、'Mon Jul 28 15:14:00 2025'
のような読みやすい文字列形式に変換して返します。これは、ログ出力やステータス表示にタイムスタンプを含めるためによく使用されます。 -
スレッド (
start_status_thread
):start_status_thread
という名前から、これはバックグラウンドで独立して実行されるスレッドを開始する関数であることが推測されます。スレッドは、メインプログラムの実行とは別に、特定のタスク(この場合は定期的なステータス表示)を並行して実行するために使用されます。これにより、メインのコードレビュー処理がブロックされることなく、ユーザーに継続的なフィードバックを提供できます。
技術的詳細
このコミットは、lib/codereview/codereview.py
ファイルに対して2つの主要な変更を加えています。
-
set_status
関数の修正: 以前のコードでは、set_status
関数内のprint >>sys.stderr, "\t", time.asctime(), s
という行がコメントアウトされていました(#
で始まる行)。これは、ステータス変更が標準エラー出力に表示されないことを意味します。 このコミットでは、この行のコメントアウトを解除し、さらにif verbosity > 0:
という条件を追加しています。verbosity
変数は、おそらくMercurialの-v
オプションなどによって設定される詳細度レベルを示すグローバル変数です。verbosity > 0
という条件は、冗長モードが有効な場合にのみステータス出力が行われるようにします。これにより、ユーザーが明示的に詳細な出力を求めた場合にのみ、すべてのステータス変更がタイムスタンプ付きでsys.stderr
に出力されるようになります。
-
reposetup
関数でのstart_status_thread
の再有効化:reposetup
関数は、リポジトリのセットアップ時に一度だけ実行される初期化ロジックの一部であると推測されます。以前のリファクタリングで、この関数内からstart_status_thread()
の呼び出しが失われていました。 このコミットでは、codereview_init = True
の行の直後にstart_status_thread()
の呼び出しを再度追加しています。これにより、コードレビューシステムが初期化される際に、ステータス表示用のバックグラウンドスレッドが正しく開始されるようになります。このスレッドが開始されることで、15秒ごとの定期的なステータス更新が再び機能するようになります。
これらの変更により、コードレビュープロセス中のユーザーエクスペリエンスが向上し、特に長時間かかる操作において、システムが正常に動作していることをユーザーが確認できるようになります。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/lib/codereview/codereview.py
+++ b/lib/codereview/codereview.py
@@ -155,7 +155,8 @@ default_to_utf8()\n global_status = None\n \n def set_status(s):\n-\t# print >>sys.stderr, \"\\t\", time.asctime(), s\n+\tif verbosity > 0:\n+\t\tprint >>sys.stderr, time.asctime(), s\n \tglobal global_status\n \tglobal_status = s\n \n@@ -2213,6 +2214,7 @@ def reposetup(ui, repo):\n \tif codereview_init:\n \t\treturn\n \tcodereview_init = True\n+\tstart_status_thread()\n \n \t# Read repository-specific options from lib/codereview/codereview.cfg or codereview.cfg.\n \troot = ''\n```
## コアとなるコードの解説
### `set_status`関数の変更
```python
def set_status(s):
-\t# print >>sys.stderr, \"\\t\", time.asctime(), s
+\tif verbosity > 0:\n+\t\tprint >>sys.stderr, time.asctime(), s
\tglobal global_status
\tglobal_status = s
- 変更前:
print >>sys.stderr, "\t", time.asctime(), s
の行がコメントアウトされていました。これは、ステータスが変更されても、その情報が標準エラー出力に表示されないことを意味します。 - 変更後: コメントアウトが解除され、さらに
if verbosity > 0:
という条件が追加されました。verbosity
は、おそらくMercurialの-v
オプションなどによって設定される詳細度レベルを示す変数です。- この変更により、
verbosity
が0より大きい(つまり、冗長モードが有効な)場合にのみ、現在のタイムスタンプ(time.asctime()
)と新しいステータス文字列(s
)が標準エラー出力(sys.stderr
)に表示されるようになります。これにより、hg -v
使用時にすべてのステータス変更がログに出力されるようになります。
reposetup
関数の変更
\tif codereview_init:\n \t\treturn\n \tcodereview_init = True\n+\tstart_status_thread()\n```
* **変更前**: `start_status_thread()`の呼び出しがありませんでした。
* **変更後**: `codereview_init = True`の行の直後に`start_status_thread()`の呼び出しが追加されました。
* `codereview_init`は、コードレビューシステムの初期化が完了したかどうかを示すフラグであると推測されます。
* この変更により、コードレビューシステムが初期化される際に、ステータスを定期的に出力するためのバックグラウンドスレッドが確実に開始されるようになります。これにより、以前のリファクタリングで失われた15秒ごとのステータス表示機能が回復します。
これらの変更は、コードレビュープロセスの可視性を高め、ユーザーがシステムの動作状況をより正確に把握できるようにすることを目的としています。
## 関連リンク
* **このコミットのGo Code Reviewリンク**: `https://golang.org/cl/7834044`
* **参照されている以前のリファクタリングコミットのGo Code Reviewリンク**: `https://golang.org/cl/5395044`
## 参考にした情報源リンク
* Mercurial Documentation: [https://www.mercurial-scm.org/](https://www.mercurial-scm.org/)
* Python `sys` module documentation: [https://docs.python.org/3/library/sys.html](https://docs.python.org/3/library/sys.html)
* Python `time` module documentation: [https://docs.python.org/3/library/time.html](https://docs.python.org/3/library/time.html)
* Go Code Review Process (General Information): [https://go.dev/doc/contribute#code_reviews](https://go.dev/doc/contribute#code_reviews) (これは一般的な情報であり、特定の`codereview.py`ツールの詳細ではない可能性がありますが、背景理解に役立ちます。)
* Google Code Review (Mondrian) - Goのコードレビューシステムが影響を受けている可能性のある元のシステムに関する情報: [https://en.wikipedia.org/wiki/Mondrian_(software)](https://en.wikipedia.org/wiki/Mondrian_(software)) (直接的な情報源ではありませんが、背景理解に役立つ可能性があります。)