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[インデックス 15890] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリである math パッケージ内の src/pkg/math/sqrt.go ファイルに対する変更です。具体的には、Sqrt 関数のコメントの重複を解消することを目的としています。

コミット

math: remove repeated comment.

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/79ae1ad48911ac6d36105cd5ec38247892f8a10b

元コミット内容

commit 79ae1ad48911ac6d36105cd5ec38247892f8a10b
Author: Oling Cat <olingcat@gmail.com>
Date:   Fri Mar 22 14:54:20 2013 +1100

    math: remove repeated comment.
    
    R=golang-dev, nigeltao
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7835046

変更の背景

このコミットの主な背景は、src/pkg/math/sqrt.go ファイル内で Sqrt 関数に関するコメントが重複して記述されていたことです。Go言語のコードベースでは、コードの可読性とメンテナンス性を高めるために、冗長な記述を避け、情報の一貫性を保つことが重視されます。Sqrt 関数の特殊なケース(例: Sqrt(+Inf), Sqrt(±0), Sqrt(x < 0), Sqrt(NaN) の振る舞い)に関する説明が、ファイルの異なる2箇所に存在していました。この重複は、将来的なコメントの更新時に片方だけが修正され、もう片方が古い情報のまま残ってしまうといった不整合のリスクをはらんでいました。そのため、このコミットでは、重複するコメントの一方を削除し、情報源を一元化することで、コードの品質と保守性を向上させることを目的としています。

前提知識の解説

Go言語の math パッケージ

Go言語の標準ライブラリには、数値計算のための math パッケージが含まれています。このパッケージは、平方根、三角関数、対数関数など、一般的な数学関数を提供します。math パッケージの関数は、通常 float64 型の引数を取り、float64 型の値を返します。

math.Sqrt 関数

math.Sqrt 関数は、与えられた float64 型の数値 x の平方根を計算して返します。この関数は、通常の正の数に対しては期待通りの平方根を返しますが、浮動小数点数の特性上、いくつかの特殊な入力値に対しては特定の振る舞いをします。

浮動小数点数の特殊な値

float64 型は、IEEE 754 倍精度浮動小数点数形式に従います。この形式では、通常の数値の他に以下の特殊な値を表現できます。

  • +Inf (Positive Infinity): 正の無限大。非常に大きな正の数を表現します。
  • ±0 (Positive/Negative Zero): 正のゼロと負のゼロ。数値としては同じですが、一部の演算で異なる振る舞いをすることがあります。
  • NaN (Not a Number): 非数。不正な演算結果(例: 0/0Inf - Inf)や、未定義の結果(例: 負の数の平方根)を表します。

Sqrt 関数の特殊ケースの振る舞い

math.Sqrt 関数は、これらの特殊な入力値に対して以下のように定義された振る舞いをします。

  • Sqrt(+Inf)+Inf を返します。無限大の平方根は無限大です。
  • Sqrt(±0)±0 を返します。ゼロの平方根はゼロです。符号は入力のゼロの符号を維持します。
  • Sqrt(x < 0)NaN を返します。実数の範囲では負の数の平方根は定義されないためです。
  • Sqrt(NaN)NaN を返します。入力が非数であれば、結果も非数となります。

これらの特殊ケースの振る舞いは、浮動小数点演算の正確性と予測可能性を保証するために重要です。

コメントの重要性と重複の問題

コード内のコメントは、そのコードの目的、動作、制約、特殊な振る舞いなどを説明し、他の開発者がコードを理解しやすくするために不可欠です。しかし、コメントが重複している場合、以下のような問題が発生する可能性があります。

  • 情報の一貫性の欠如: コードの変更に伴い、片方のコメントだけが更新され、もう片方が古い情報のまま残ってしまうことがあります。これにより、誤解を招く情報が提供される可能性があります。
  • メンテナンスコストの増加: 同じ情報を複数の場所で管理する必要があるため、変更があった場合の修正作業が増え、エラーのリスクも高まります。
  • 可読性の低下: 冗長なコメントは、コードを読む際に余計なノイズとなり、本当に重要な情報を見つけにくくすることがあります。

このコミットは、これらの問題を回避し、コードベースの健全性を保つための典型的な改善例と言えます。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/math/sqrt.go ファイル内の Sqrt 関数のドキュメンテーションに関するものです。変更前、このファイルには Sqrt 関数の特殊ケースに関する説明コメントが2箇所に存在していました。

  1. 関数の宣言直前: ファイルの冒頭近く、Sqrt 関数のシグネチャの直前に、その機能と特殊ケースを説明するコメントブロックがありました。これはGoの慣習として、エクスポートされる関数や型の直前にそのドキュメンテーションコメントを記述する一般的なパターンです。
  2. 関数の実装内部: Sqrt 関数の実際のGo言語による実装の内部、特にオリジナルのC言語コードからの移植部分の近くにも、同様の特殊ケースに関するコメントブロックが存在していました。これは、おそらくC言語のオリジナルコードのコメントがそのまま引き継がれたか、あるいは実装の詳細を説明するために追加されたものと考えられます。

このコミットでは、関数の宣言直前にあったコメントブロックを削除しています。これは、実装内部にあるコメントが既に同じ情報を提供しており、かつそのコメントが関数の具体的な振る舞いを説明する文脈により適していると判断されたためと考えられます。Go言語のドキュメンテーションツール(go doc など)は、エクスポートされたシンボルの直前のコメントを公式なドキュメンテーションとして利用します。しかし、このケースでは、関数のシグネチャの直前にあるコメントは、その後の実装内部にあるより詳細なコメントと重複しており、冗長でした。

変更の意図は、ドキュメンテーションの一元化と冗長性の排除です。これにより、Sqrt 関数の特殊ケースに関する情報は、コードの実装と密接に関連する箇所に集約され、将来的なメンテナンスが容易になります。また、Goのコードスタイルガイドラインに沿って、簡潔で重複のないコードベースを維持するという原則にも合致しています。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/src/pkg/math/sqrt.go b/src/pkg/math/sqrt.go
index 21336df2ae..1bd4437f15 100644
--- a/src/pkg/math/sqrt.go
+++ b/src/pkg/math/sqrt.go
@@ -4,15 +4,6 @@
 
 package math
 
-// Sqrt returns the square root of x.
-//
-// Special cases are:
-//	Sqrt(+Inf) = +Inf
-//	Sqrt(±0) = ±0
-//	Sqrt(x < 0) = NaN
-//	Sqrt(NaN) = NaN
-func Sqrt(x float64) float64
-
 // The original C code and the long comment below are
 // from FreeBSD's /usr/src/lib/msun/src/e_sqrt.c and
 // came with this notice.  The go code is a simplified
@@ -98,6 +89,8 @@ func Sqrt(x float64) float64
 //	Sqrt(±0) = ±0
 //	Sqrt(x < 0) = NaN
 //	Sqrt(NaN) = NaN
+func Sqrt(x float64) float64
+
 func sqrt(x float64) float64 {
 	// special cases
 	switch {

コアとなるコードの解説

上記の diff は、src/pkg/math/sqrt.go ファイルに対する変更を示しています。

  • --- a/src/pkg/math/sqrt.go は変更前のファイルを示し、+++ b/src/pkg/math/sqrt.go は変更後のファイルを示します。
  • @@ -4,15 +4,6 @@ は、変更がファイルの4行目から始まり、変更前は15行、変更後は6行になることを示しています。

具体的に削除された行は、- で始まる以下のコメントブロックです。

-// Sqrt returns the square root of x.
-//
-// Special cases are:
-//	Sqrt(+Inf) = +Inf
-//	Sqrt(±0) = ±0
-//	Sqrt(x < 0) = NaN
-//	Sqrt(NaN) = NaN
-func Sqrt(x float64) float64

このブロックは、Sqrt 関数の基本的な説明と、その特殊ケース(+Inf, ±0, 負の数、NaN)に対する振る舞いを記述していました。このコメントブロックは、ファイルの冒頭近く、Sqrt 関数の宣言の直前に位置していました。

注目すべきは、削除されたコメントブロックの直後にあった func Sqrt(x float64) float64 の行も削除され、その数行後に同じ行が追加されている点です。これは、diff の表示の都合上、削除されたコメントブロックのコンテキストとして表示されているだけであり、Sqrt 関数のシグネチャ自体が変更されたわけではありません。

この変更の目的は、ファイルの後半(@@ -98,6 +89,8 @@ の部分)に存在する、ほぼ同じ内容のコメントブロックを残し、冒頭の重複するコメントを削除することです。ファイルの後半に残されたコメントは以下の通りです。

//	Sqrt(±0) = ±0
//	Sqrt(x < 0) = NaN
//	Sqrt(NaN) = NaN
+func Sqrt(x float64) float64

このコミットにより、Sqrt 関数の特殊ケースに関する説明は、ファイルの後半にある一箇所に集約され、コードの冗長性が解消されました。これにより、ドキュメンテーションの一貫性が保たれ、将来的なメンテナンスが容易になります。

関連リンク

参考にした情報源リンク

特になし。Go言語のドキュメンテーションと一般的な浮動小数点数の知識に基づいています。