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[インデックス 15912] ファイルの概要

このコミットは、Goランタイムのメモリ管理に関連するsrc/pkg/runtime/mcentral.cファイルに対する変更です。具体的には、存在しない関数の宣言を削除することで、コードの整合性を保ち、不要な宣言を排除することを目的としています。

コミット

commit c90850277b5144d967b9300a5f56f22a4e86fdf8
Author: Ian Lance Taylor <iant@golang.org>
Date:   Fri Mar 22 17:52:55 2013 -0700

    runtime: remove declaration of non-existent function
    
    R=golang-dev, gri
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/7577049
---
 src/pkg/runtime/mcentral.c | 1 -
 1 file changed, 1 deletion(-)

diff --git a/src/pkg/runtime/mcentral.c b/src/pkg/runtime/mcentral.c
index ac8b5aa0d4..ec2a91ad5c 100644
--- a/src/pkg/runtime/mcentral.c
+++ b/src/pkg/runtime/mcentral.c
@@ -19,7 +19,6 @@
 #include "malloc.h"
 
 static bool MCentral_Grow(MCentral *c);\n-static void* MCentral_Alloc(MCentral *c);\n static void MCentral_Free(MCentral *c, void *v);\n 
 // Initialize a single central free list.\n

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/c90850277b5144d967b9300a5f56f22a4e86fdf8

元コミット内容

runtime: remove declaration of non-existent function

このコミットは、Goランタイムのsrc/pkg/runtime/mcentral.cファイルから、存在しない関数の宣言を削除するものです。具体的には、MCentral_Allocという関数の前方宣言が削除されています。

変更の背景

ソフトウェア開発において、コードベースの健全性を維持することは非常に重要です。特に、大規模なプロジェクトや低レベルのシステムプログラミングにおいては、不要なコードや誤った宣言が潜在的なバグや混乱の原因となることがあります。

このコミットの背景には、Goランタイムのメモリ管理コードにおけるクリーンアップと正確性の向上が挙げられます。MCentral_Allocという関数の宣言が存在していたにもかかわらず、その実体がコードベースのどこにも存在しない、あるいは以前に削除されたにもかかわらず宣言が残っていた、という状況であったと推測されます。このような「存在しない関数の宣言」は、コンパイラによっては警告の対象となることがあり、またコードを読む開発者にとっては誤解を招く可能性があります。

この変更は、コードの正確性を高め、コンパイラの警告を減らし、将来的なメンテナンスを容易にすることを目的としています。Go言語のランタイムは非常に最適化されており、このような小さな変更も全体の品質向上に寄与します。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下の前提知識が必要です。

Goランタイム

Goランタイムは、Goプログラムの実行を管理する低レベルのシステムです。これには、ガベージコレクション、スケジューリング、メモリ割り当て、プリミティブな同期メカニズムなどが含まれます。Goランタイムのコードは主にC言語とGo言語で書かれており、パフォーマンスと効率が非常に重視されます。

メモリ管理 (mcentral.c)

mcentral.cは、Goランタイムのメモリ管理システムの一部です。Goのメモリ管理は、ヒープを小さなチャンクに分割し、それらを効率的に割り当て・解放することで機能します。mcentralは、特定のサイズのオブジェクトを管理するための中心的なフリーリスト(空きメモリのリスト)を指します。

Goのメモリ管理は、以下のような階層構造を持っています。

  • mheap: 全体のヒープを管理します。
  • mspan: 連続したメモリページのブロックです。mheapから取得され、mcentralに渡されます。
  • mcentral: 特定のサイズのオブジェクトを割り当てるためのmspanのリストを管理します。
  • mcache: 各P (Processor) にローカルなキャッシュで、ロックなしで高速にメモリを割り当てます。mcentralからmspanを取得します。

このコミットで変更されているmcentral.cは、mcentral構造体とその関連関数を定義しており、メモリの割り当てと解放の中心的なロジックの一部を担っています。

関数の前方宣言 (Function Forward Declaration)

C言語(およびC++)では、関数を呼び出す前にその関数の存在をコンパイラに知らせるために、前方宣言(またはプロトタイプ宣言)を行う必要があります。これは、関数の定義が呼び出し元のコードよりも後にある場合や、複数のファイルに関数が分散している場合に特に重要です。

前方宣言の一般的な形式は以下の通りです。 戻り値の型 関数名(引数の型1 引数名1, 引数の型2 引数名2, ...);

このコミットでは、static void* MCentral_Alloc(MCentral *c); という前方宣言が削除されています。staticキーワードは、その関数が定義されているファイル内でのみ可視であることを示します。

diff コマンドの出力

diffコマンドの出力は、ファイル間の変更点を示します。

  • --- a/src/pkg/runtime/mcentral.c は変更前のファイルを示します。
  • +++ b/src/pkg/runtime/mcentral.c は変更後のファイルを示します。
  • @@ -19,7 +19,6 @@ は、変更がファイルの19行目から始まり、変更前は7行、変更後は6行であることを示します。
  • -static void* MCentral_Alloc(MCentral *c); の行頭の-は、この行が削除されたことを意味します。

技術的詳細

このコミットの技術的な詳細は、Goランタイムのメモリ管理におけるmcentralの役割と、C言語における前方宣言の重要性に集約されます。

mcentral.cファイルは、MCentral構造体に関連する関数を定義しています。このファイルには、MCentral_Grow(mcentralが管理するメモリを拡張する)、MCentral_Alloc(mcentralからメモリを割り当てる)、MCentral_Free(mcentralにメモリを解放する)といった関数が存在することが期待されます。

コミットの差分を見ると、static void* MCentral_Alloc(MCentral *c); という行が削除されています。これは、MCentral_Allocという関数がこのファイル内で宣言されていたにもかかわらず、その関数の実際の定義(実装)がどこにも存在しない、あるいは既に削除されていることを示唆しています。

このような状況は、以下のような場合に発生する可能性があります。

  1. リファクタリングによる削除忘れ: MCentral_Alloc関数が以前に削除されたが、その前方宣言が削除されずに残ってしまった。
  2. 開発中の変更: 開発中にMCentral_Allocという関数を実装する予定だったが、設計変更により不要になった、あるいは別の方法で実装されることになり、宣言だけが残ってしまった。
  3. 誤った宣言: 単純なタイプミスやコピー&ペーストのミスにより、存在しない関数の宣言が誤って追加されてしまった。

いずれの場合も、存在しない関数の宣言はコードベースのノイズとなり、コンパイラによっては「未使用の宣言」といった警告を発する可能性があります。このような警告は、実際のバグを示す重要な警告を見落とす原因となるため、可能な限り排除することが推奨されます。

このコミットは、このような不要な宣言を削除することで、コードベースのクリーンさと正確性を向上させています。これは、Goランタイムのような低レベルでパフォーマンスが重要なシステムにおいて、コードの品質を維持するための一般的なプラクティスです。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/pkg/runtime/mcentral.cファイルの一箇所のみです。

--- a/src/pkg/runtime/mcentral.c
+++ b/src/pkg/runtime/mcentral.c
@@ -19,7 +19,6 @@
 #include "malloc.h"
 
 static bool MCentral_Grow(MCentral *c);\n-static void* MCentral_Alloc(MCentral *c);\n static void MCentral_Free(MCentral *c, void *v);\n 
 // Initialize a single central free list.\n

具体的には、19行目付近にあった以下の行が削除されました。

-static void* MCentral_Alloc(MCentral *c);

コアとなるコードの解説

削除された行は、MCentral_Allocという関数の前方宣言です。

  • static: このキーワードは、この関数が定義されているソースファイル(この場合はmcentral.c)内でのみ可視であることを示します。つまり、他のファイルからこの関数を直接呼び出すことはできません。
  • void*: 関数の戻り値の型です。void*は、任意の型のポインタを指す汎用ポインタであり、メモリ割り当て関数が割り当てたメモリブロックの先頭アドレスを返す際によく使用されます。
  • MCentral_Alloc: 関数の名前です。MCentral構造体からメモリを割り当てる役割を持つ関数であったと推測されます。
  • (MCentral *c): 関数の引数です。MCentral構造体へのポインタcを引数として取ります。これは、どのmcentralインスタンスに対して操作を行うかを指定するために使用されます。

この宣言が削除されたということは、このMCentral_Allocという名前の関数が、このファイル内でも、あるいはリンクされる他のファイルでも、もはや存在しないか、あるいはその機能が別の関数に統合されたか、完全に廃止されたかのいずれかであることを意味します。宣言だけが残っている状態は、コンパイラに不要な情報を与え、コードの可読性を損なうため、削除されました。

この変更自体は、Goランタイムの機能に直接的な影響を与えるものではなく、コードベースの保守性と正確性を向上させるためのクリーンアップ作業の一環です。

関連リンク

  • Go言語の公式ドキュメント: https://golang.org/doc/
  • Goのソースコードリポジトリ: https://github.com/golang/go
  • Goのメモリ管理に関する一般的な情報(Goのバージョンによって詳細は異なる可能性がありますが、基本的な概念は共通です):
    • Goのガベージコレクションとメモリ管理の概要: https://go.dev/doc/gc-guide
    • Goのメモリ割り当ての仕組みに関するブログ記事やプレゼンテーション(例: "Go's Memory Allocator" などで検索すると多くの情報が見つかります)

参考にした情報源リンク

  • Goのコミット履歴 (GitHub): https://github.com/golang/go/commits/master
  • C言語の関数宣言に関する一般的な情報源 (例: C言語の教科書、オンラインリファレンス)
  • Goランタイムのメモリ管理に関する一般的な知識 (Goのドキュメント、関連する技術ブログ、論文など)
  • diffコマンドの出力形式に関する情報