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[インデックス 15925] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリsrc/pkg/math/tanh.go内のTanh関数のコメントを、Goのコーディング規約に準拠するように修正したものです。具体的には、コメントの冒頭部分を「Tanh computes the hyperbolic tangent of x.」から「Tanh returns the hyperbolic tangent of x.」へと変更しています。これは、Goの公開された(エクスポートされた)識別子に対するコメントの慣習に従うための微細ながら重要な修正です。

コミット

commit 1693e14bc4eaef34877191bfc6c370f55deaa031
Author: Oling Cat <olingcat@gmail.com>
Date:   Mon Mar 25 08:43:51 2013 -0700

    math: modify a comment to the convention format.
    
    R=golang-dev, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/8012043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/1693e14bc4eaef34877191bfc6c370f55deaa031

元コミット内容

    math: modify a comment to the convention format.
    
    R=golang-dev, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/8012043

変更の背景

この変更の背景には、Go言語の公式なコーディング規約、特に公開された(エクスポートされた)関数や変数に対するコメントの書き方があります。Goでは、エクスポートされた識別子(大文字で始まる関数、変数、型など)のドキュメンテーションコメントは、その識別子の名前で始まり、その識別子が何をするのか、あるいは何を表すのかを簡潔に説明するという慣習があります。

元のコメント「// Tanh computes the hyperbolic tangent of x.」は、Tanh関数が何をするかを説明していますが、Goの慣習では「Tanhは...を返す」または「Tanhは...である」という形式が好まれます。これは、godocツールがドキュメンテーションを生成する際に、より自然で読みやすい出力を提供するためです。このコミットは、この慣習に沿うようにコメントを修正し、コードベース全体のコメントの一貫性と品質を向上させることを目的としています。

前提知識の解説

1. 双曲線正接 (Hyperbolic Tangent, tanh)

math.Tanh関数は、数学における双曲線正接(ハイパボリックタンジェント)を計算します。双曲線関数は、通常の三角関数(正弦、余弦など)が単位円と関連付けられるのと同様に、単位双曲線と関連付けられる関数です。

双曲線正接 tanh(x) は、以下の式で定義されます。

tanh(x) = sinh(x) / cosh(x) = (e^x - e^-x) / (e^x + e^-x)

ここで、sinh(x) は双曲線正弦、cosh(x) は双曲線余弦です。

tanh(x) の値域は (-1, 1) であり、x0 に近づくと 0 に、x が正の無限大に近づくと 1 に、負の無限大に近づくと -1 に収束します。この関数は、ニューラルネットワークの活性化関数や信号処理など、様々な分野で利用されます。

2. Go言語のドキュメンテーションコメント規約

Go言語には、コードの可読性と保守性を高めるための厳格なコーディング規約が存在します。その中でも、ドキュメンテーションコメントに関する規約は特に重要です。

  • エクスポートされた識別子: Goでは、パッケージ外からアクセス可能な識別子(関数、変数、定数、型など)は、名前の最初の文字を大文字にすることでエクスポートされます。これらのエクスポートされた識別子には、必ずドキュメンテーションコメントを付けることが推奨されます。
  • コメントの開始: エクスポートされた識別子のドキュメンテーションコメントは、その識別子の名前で始まる必要があります。例えば、Funcという関数のコメントは「Func は...」で始まるべきです。これは、godocツールがドキュメンテーションを生成する際に、識別子の名前とコメントを組み合わせて自然な文章を作成するためです。
  • 簡潔な説明: コメントは、その識別子が何をするのか、あるいは何を表すのかを簡潔かつ明確に説明する必要があります。
  • 特殊なケース: 関数によっては、特定の入力に対する特殊な振る舞い(例: NaNInf±0 など)がある場合、それらをコメントに含めることが推奨されます。

この規約に従うことで、godocコマンドやGoの公式ドキュメントサイト(pkg.go.devなど)で生成されるドキュメントが、一貫性があり、読みやすく、理解しやすいものになります。

技術的詳細

このコミットは、Go言語の標準ライブラリにおけるコメントの慣習、特にエクスポートされた関数に対するコメントの書き方に焦点を当てています。Goのドキュメンテーションツールであるgodocは、ソースコード内のコメントを解析し、自動的にAPIドキュメントを生成します。このgodocが生成するドキュメントの品質と一貫性を保つために、特定のコメントスタイルが推奨されています。

Goの公式ドキュメント「Effective Go」や「Go Code Review Comments」には、この慣習が明記されています。主要なポイントは以下の通りです。

  1. エクスポートされた識別子のコメントは、その識別子の名前で始まるべきである。

    • 例: // Tanh returns the hyperbolic tangent of x.
    • これは、godocが生成するドキュメントで、関数名とコメントが自然な文章として連結されるためです。例えば、「func Tanh(x float64) float64 Tanh returns the hyperbolic tangent of x.」のように表示されます。
    • もしコメントが「// Computes the hyperbolic tangent of x.」のように始まると、godocは「func Tanh(x float64) float64 Computes the hyperbolic tangent of x.」と表示し、文法的に不自然になります。
  2. コメントは、識別子が何をするのか、あるいは何を表すのかを簡潔に説明する。

    • computes」のような動詞は、関数が何らかの計算を行うことを示しますが、Goの慣習では、関数が「何を返すのか」に焦点を当てた表現(例: returns)や、「何であるか」に焦点を当てた表現(例: is)が好まれます。これは、関数の主要な目的が結果を返すことにあるためです。

このコミットでは、math.Tanh関数のコメントが「Tanh computes the hyperbolic tangent of x.」から「Tanh returns the hyperbolic tangent of x.」に変更されました。この変更は、上記のGoのコメント規約に厳密に従うためのものです。これにより、godocによって生成されるドキュメントがより自然で、Goコミュニティ全体で期待されるスタイルに合致するようになります。

このような微細なコメントの修正は、Go言語の設計哲学である「シンプルさ」と「一貫性」を反映しています。コードベース全体で統一されたコメントスタイルを維持することで、開発者はより迅速にコードを理解し、プロジェクトの保守性が向上します。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/pkg/math/tanh.go ファイルの1箇所のみです。

--- a/src/pkg/math/tanh.go
+++ b/src/pkg/math/tanh.go
@@ -65,7 +65,7 @@ var tanhQ = [...]float64{\n 	4.84406305325125486048E3,\n }\n \n-// Tanh computes the hyperbolic tangent of x.\n+// Tanh returns the hyperbolic tangent of x.\n //\n // Special cases are:\n //	Tanh(±0) = ±0

コアとなるコードの解説

変更された行は、math.Tanh関数のドキュメンテーションコメントです。

  • 変更前: // Tanh computes the hyperbolic tangent of x.
  • 変更後: // Tanh returns the hyperbolic tangent of x.

この変更は、Go言語のコーディング規約、特にエクスポートされた識別子に対するコメントの慣習に準拠するためのものです。Goでは、エクスポートされた関数(この場合はTanh)のドキュメンテーションコメントは、その関数名で始まり、その関数が「何を返すのか」を説明する形式が推奨されます。

computes」(計算する)という動詞は、関数が行う動作を説明していますが、「returns」(返す)という動詞は、関数の主要な目的である「結果を返す」という側面をより直接的に表現しています。これにより、godocツールが生成するドキュメントが、より自然でGoの慣習に沿ったものになります。

この修正は機能的な変更を伴わず、コードの振る舞いには一切影響を与えません。純粋にドキュメンテーションの品質と一貫性を向上させるための、クリーンアップ作業の一環です。

関連リンク

参考にした情報源リンク