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[インデックス 1594] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の初期段階におけるコードベースのクリーンアップと、Go言語の構文規則、特にセミコロンの扱いに関する慣習を確立する一環として行われたものです。具体的には、型宣言の末尾に不要なセミコロンが存在していた箇所を削除しています。これは、Go言語の自動セミコロン挿入(Automatic Semicolon Insertion: ASI)の原則に則った変更であり、コードの可読性とGoらしい記述スタイル(Idiomatic Go)を促進します。

コミット

commit 25a2b3626d29b63b1afd8c695c04c1d75d18b129
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date:   Fri Jan 30 15:10:22 2009 -0800

    needless semicolons
    
    R=rsc
    DELTA=2  (0 added, 0 deleted, 2 changed)
    OCL=23967
    CL=23970

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/25a2b3626d29b63b1afd8c695c04c1d75d18b129

元コミット内容

needless semicolons

このコミットメッセージは非常に簡潔で、「不要なセミコロン」という変更の目的を直接的に示しています。Go言語の設計思想の一つである「シンプルさ」を反映したメッセージと言えます。

変更の背景

Go言語は、その設計当初から、C言語のような既存の言語の欠点を克服し、よりシンプルで効率的なプログラミング言語を目指していました。その設計思想の一つに、構文の簡潔さがあります。多くのプログラミング言語では、文の終わりを示すためにセミコロンが必須ですが、Go言語では「自動セミコロン挿入(Automatic Semicolon Insertion: ASI)」というメカニズムが導入されています。

このコミットが行われた2009年1月は、Go言語がまだ一般に公開される前の開発初期段階にあたります。この時期には、言語仕様や慣習がまだ固まっておらず、C言語などの影響で不要なセミコロンがコードベースに混入していることがありました。このコミットは、Go言語の設計原則に沿って、コードベース全体で一貫したスタイルを確立し、Goらしい記述(Idiomatic Go)を推進するためのクリーンアップ作業の一環として行われました。特に、Rob Pike氏(Go言語の共同設計者の一人)によるコミットであることから、言語の設計思想をコードに反映させる意図が強く感じられます。

前提知識の解説

Go言語の自動セミコロン挿入 (Automatic Semicolon Insertion: ASI)

Go言語のコンパイラは、特定の状況下で自動的にセミコロンを挿入します。これにより、開発者はほとんどの場合、手動でセミコロンを記述する必要がありません。このルールは非常にシンプルです。

  1. 改行の直前: Goの字句解析器は、特定のトークン(識別子、数値リテラル、文字列リテラル、breakcontinuefallthroughreturn++--)]})の直後に改行がある場合、その改行の直前にセミコロンを挿入します。
  2. 文の区切り: Goでは、文は通常、改行によって区切られます。セミコロンは、同じ行に複数の文を記述する場合にのみ必要となりますが、これはGoのスタイルガイドでは推奨されていません。

このASIの仕組みにより、GoのコードはC言語やJavaのような言語に比べてセミコロンが少なく、よりクリーンで読みやすい見た目になります。

型宣言 (Type Declaration)

Go言語における型宣言は、新しい型を定義するために使用されます。例えば、type MyInt intMyInt という新しい型を int 型に基づいて定義します。関数型(Function Type)も同様に宣言できます。

例: type binOp func(a, b int) int

これは、binOp という名前の新しい型を定義しており、この型は2つの整数を引数にとり、1つの整数を返す関数を表します。

Idiomatic Go (Goらしい記述)

Go言語には、その設計思想に基づいた推奨されるコーディングスタイルと慣習があります。これを「Idiomatic Go」と呼びます。gofmt ツールは、この慣習に沿ってコードを自動的にフォーマットするために広く使用されています。不要なセミコロンの削除は、このIdiomatic Goの一部であり、コードの一貫性と可読性を高めます。

技術的詳細

このコミットの技術的な詳細は、Go言語の字句解析器がどのようにセミコロンを処理するかという点に集約されます。

Go言語の仕様では、文の終端はセミコロンで示されるか、または改行によって自動的にセミコロンが挿入されることになっています。しかし、型宣言のような特定の構文要素の末尾には、明示的なセミコロンは不要です。これは、型宣言自体が完全な文として扱われ、その後に改行が続く場合、ASIによって自動的にセミコロンが挿入されるためです。

変更前のコードでは、type binOp func(a, b int) int; のように、関数型の宣言の末尾に明示的にセミコロンが付与されていました。これは、C言語などの影響を受けた記述スタイルであり、GoのASIの原則からすると冗長です。

このコミットでは、この冗長なセミコロンを削除することで、Go言語の構文規則に完全に準拠し、よりGoらしいコードスタイルに修正しています。この変更は、コンパイラの動作に影響を与えるものではなく、純粋にコードのスタイルと可読性を向上させるためのものです。しかし、言語の初期段階においては、このような細かなスタイルの統一が、将来のコードベースの健全性を保つ上で非常に重要となります。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットでは、以下の2つのファイルが変更されています。

  1. doc/progs/server.go
  2. doc/progs/server1.go

両方のファイルで、type binOp func(a, b int) int; という行が type binOp func(a, b int) int に変更されています。

doc/progs/server.go の変更点:

--- a/doc/progs/server.go
+++ b/doc/progs/server.go
@@ -9,7 +9,7 @@ type request struct {
 	replyc  chan int;
 }
 
-type binOp func(a, b int) int;
+type binOp func(a, b int) int
 
 func run(op binOp, req *request) {
 	reply := op(req.a, req.b);

doc/progs/server1.go の変更点:

--- a/doc/progs/server1.go
+++ b/doc/progs/server1.go
@@ -9,7 +9,7 @@ type request struct {
 	replyc	chan int;
 }
 
-type binOp func(a, b int) int;
+type binOp func(a, b int) int
 
 func run(op binOp, req *request) {
 	reply := op(req.b, req.a);

コアとなるコードの解説

変更された行は、binOp という名前の関数型を定義しています。

変更前: type binOp func(a, b int) int;

変更後: type binOp func(a, b int) int

この変更は、Go言語の自動セミコロン挿入のルールに基づいています。Goでは、文の終わりが改行で示される場合、明示的なセミコロンは不要です。type binOp func(a, b int) int という型宣言はそれ自体で完全な文であり、その後に改行が続くため、コンパイラが自動的にセミコロンを挿入します。したがって、末尾のセミコロンは冗長であり、削除しても構文エラーにはなりません。

この修正は、コードの機能には全く影響を与えません。プログラムの動作は変更前と後で同じです。しかし、Go言語の慣習に沿ったコードスタイルを確立し、コードベース全体の一貫性を保つ上で重要な意味を持ちます。特に、doc/progs ディレクトリ内のファイルは、Go言語のプログラミング例やドキュメントの一部として使用されることが多いため、正しいGoのスタイルを示すことが重要でした。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメントおよび仕様書
  • Go言語のコミュニティで共有されているコーディングスタイルガイドライン
  • Go言語の自動セミコロン挿入に関する技術記事や解説
  • GitHubのGo言語リポジトリのコミット履歴
  • Rob Pike氏のGo言語に関する講演や記事