[インデックス 16] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の初期ドキュメントファイル doc/go_lang.txt
におけるタイポグラフィ(書式)の微調整を目的としています。特に、HTML変換時の表示を改善するための変更が含まれています。
コミット
- コミットハッシュ:
194ed070de814b341b23c43205d45ad3e7393d83
- 作者: Rob Pike r@golang.org
- 日付: 2008年3月6日 木曜日 22:14:17 -0800
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/194ed070de814b341b23c43205d45ad3e7393d83
元コミット内容
fix a few nits in the typography so HTML is right
SVN=111691
変更の背景
このコミットは、Go言語の初期段階におけるドキュメントの品質向上を目的としています。特に doc/go_lang.txt
はGo言語の仕様や例を記述した重要なドキュメントであり、これがHTMLとして適切に表示されることは、Go言語の理解と普及において非常に重要でした。
「typography nits」とは、文字の配置、間隔、書式など、見た目に関する小さな不具合や改善点を指します。この場合、テキストファイルである doc/go_lang.txt
が、何らかのツールによってHTMLに変換されることを前提としており、その変換結果がより読みやすく、正確になるように調整が行われました。具体的には、Go言語のコード例や構文定義、型定義の記述において、よりGoらしい慣用的な表現への修正や、視覚的な整合性を高めるためのスペースやインデントの調整、そしてUnicodeエスケープシーケンスの記述方法の修正が含まれています。
前提知識の解説
- Go言語の初期の構文: Go言語は開発初期段階であり、現在のGo言語とは異なる構文が存在していました。例えば、無限ループの
for
文はfor ; ; {
と記述されていましたが、後にfor {
というより簡潔な形式に統一されました。このコミットは、その過渡期におけるドキュメントの修正を示唆しています。 - チャネル (Channels): Go言語における並行処理の主要な要素であり、ゴルーチン間で値を送受信するためのパイプのようなものです。コミット内のコード例には
chan< int
やchan> int
といったチャネルの宣言が見られますが、これは現在のchan int
とは異なる初期の構文です。 - 識別子 (Identifiers): プログラム内で変数、関数、型などに与えられる名前です。Go言語の識別子の命名規則は厳格であり、ドキュメント内での記述もその規則に沿っている必要があります。
- 基本型 (Basic Types):
bool
,uint8
,int8
など、Go言語が提供する基本的なデータ型です。ドキュメントではこれらの型の説明が記述されており、その書式が調整されています。 - Unicodeエスケープシーケンス: 文字列リテラル内でUnicode文字を表現するための特殊な表記法です。
\uXXXX
(4桁の16進数) や\UXXXXXXXX
(8桁の16進数) の形式で記述されます。ドキュメント内でのこれらの表記の引用符の有無が修正されています。 - SVN (Subversion): コミットメッセージにある
SVN=111691
は、このコミットが元々Subversionリポジトリで行われたものであり、そのリビジョン番号が111691であることを示しています。Go言語のプロジェクトは初期にはSubversionで管理されており、後にGitに移行しました。
技術的詳細
このコミットは、主にGo言語のドキュメントファイル doc/go_lang.txt
の内容を修正しています。このファイルはプレーンテキスト形式ですが、その内容はHTMLとしてレンダリングされることを意図しているため、HTML変換時に適切な表示となるように書式が調整されています。
具体的な変更点は以下のカテゴリに分けられます。
-
for
ループ構文の修正:for ; ; {
という無限ループの記述が、よりGoらしい慣用的なfor {
に変更されています。これは、Go言語の構文が進化する過程で、より簡潔な表現が採用されたことを反映しています。ドキュメントのコード例を最新の(当時の)慣用的な構文に合わせることで、読者が混乱しないように配慮されています。
-
識別子のインデントの統一:
- 識別子の定義
identifier = letter { letter | decimal_digit } .
の下に続く例 (a
,_x
,ThisIsVariable9
) のインデントが、スペースからタブ (\t
) に変更されています。これにより、ドキュメント全体のインデントスタイルが統一され、視覚的な整合性が向上しています。
- 識別子の定義
-
基本型の説明におけるスペースの調整:
bool
,uint8
,int8
などの基本型の説明において、型名と説明文の間のスペースが調整されています。例えば、bool the truth values...
がbool the truth values...
に変更されています。これは、HTML変換時に適切なカラム幅やアライメントを確保するための微調整と考えられます。
-
Unicodeエスケープシーケンスの引用符の削除:
\U00101234
のような「big U」値のUnicodeエスケープシーケンスの例から、不要なシングルクォーテーション ('
) が削除されています。'\\U00101234'
から\\U00101234
へと変更されており、これにより、エスケープシーケンス自体が正しく表現され、読者が誤解する可能性が低減されます。これは、ドキュメントがコード例を正確に表現するための重要な修正です。
これらの変更は、Go言語のドキュメントが、その内容だけでなく、見た目の面でも高品質であることを保証するための細かな配慮を示しています。
コアとなるコードの変更箇所
doc/go_lang.txt
ファイルにおいて、以下の箇所が変更されています。
--- a/doc/go_lang.txt
+++ b/doc/go_lang.txt
@@ -161,7 +161,7 @@ Here is a complete example Go program that implements a concurrent prime sieve:
// Copy the values from channel 'in' to channel 'out',
// removing those divisible by 'prime'.
func Filter(in *chan< int, out *chan> int, prime int) {
- for ; ; {
+ for {
i := <in; // Receive value of new variable 'i' from 'in'.
if i % prime != 0 {
>out = i; // Send 'i' to channel 'out'.
@@ -173,7 +173,7 @@ Here is a complete example Go program that implements a concurrent prime sieve:
func Sieve() {
ch := new(chan int); // Create a new channel.
go Generate(ch); // Start Generate() as a subprocess.
- for ; ; {
+ for {
prime := <ch;
printf("%d\n", prime);
ch1 := new(chan int);
@@ -262,11 +262,11 @@ Identifiers
An identifier is a name for a program entity such as a variable, a
type, a function, etc. An identifier must not be a reserved word.
-identifier = letter { letter | decimal_digit } .
+ identifier = letter { letter | decimal_digit } .
- a
- _x
- ThisIsVariable9
+\ta
+\t_x
+\tThisIsVariable9
Types
@@ -285,16 +285,16 @@ Go defines a number of basic types which are referred to by their
predeclared type names. There are signed and unsigned integer
and floating point types:
- bool the truth values true and false
+ bool the truth values true and false
- uint8 the set of all unsigned 8bit integers
+ uint8 the set of all unsigned 8bit integers
uint16 the set of all unsigned 16bit integers
uint32 the set of all unsigned 32bit integers
unit64 the set of all unsigned 64bit integers
byte alias for uint8
- int8 the set of all signed 8bit integers, in 2's complement
+ int8 the set of all signed 8bit integers, in 2's complement
int16 the set of all signed 16bit integers, in 2's complement
int32 the set of all signed 32bit integers, in 2's complement
int64 the set of all signed 64bit integers, in 2's complement
@@ -408,7 +408,7 @@ text into Unicode characters.
* A `little u' value, such as \u12AB. This represents the Unicode
code point with the corresponding hexadecimal value. It always
has exactly 4 hexadecimal digits.
-* A `big U' value, such as '\U00101234'. This represents the
+* A `big U' value, such as \U00101234. This represents the
Unicode code point with the corresponding hexadecimal value.
It always has exactly 8 hexadecimal digits.
コアとなるコードの解説
-
for ; ; {
からfor {
への変更:- これはGo言語の無限ループの構文が進化する過程での修正です。C言語などでは
for (;;)
のような形式が一般的ですが、Go言語ではより簡潔なfor {
が採用されました。ドキュメント内のコード例をこの新しい(当時の)慣用的な形式に合わせることで、読者がGo言語の最新のスタイルを学ぶことができるようにしています。
- これはGo言語の無限ループの構文が進化する過程での修正です。C言語などでは
-
識別子定義のインデント修正:
identifier = letter { letter | decimal_digit } .
の定義文とその下の例 (a
,_x
,ThisIsVariable9
) のインデントが、スペースからタブに変更されています。これは、ドキュメント全体の書式規則を統一し、HTML変換時に一貫した表示を保証するためのものです。特に、コード例や構文定義は、その構造が視覚的に明確であることが重要です。
-
基本型説明のスペース調整:
bool
,uint8
,int8
などの型名と説明文の間のスペースが調整されています。これは、HTML変換時にテーブルのような形式で表示されることを想定している可能性があり、各カラムの幅を揃えることで、より整然としたレイアウトを実現するための微調整です。
-
Unicodeエスケープシーケンスの引用符削除:
'\U00101234'
のように、Unicodeエスケープシーケンスの例がシングルクォーテーションで囲まれていた箇所から、その引用符が削除されています。これは、エスケープシーケンス自体が文字列リテラルの一部として解釈されるべきであり、その表記自体を引用符で囲むのは誤解を招く可能性があるためです。この修正により、ドキュメントがGo言語の構文をより正確に表現するようになります。
これらの変更は、Go言語のドキュメントが、その内容の正確性だけでなく、視覚的な読みやすさにおいても高い品質を保つための、細部にわたる配慮を示しています。
関連リンク
- Go言語公式サイト: https://go.dev/
- Go言語の初期の歴史に関する情報 (Go言語の進化やSubversionからGitへの移行について言及されている可能性のある資料):
- The Go Programming Language (初期の論文など): https://go.dev/doc/
- Go Blog (初期の投稿): https://go.dev/blog/
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント (現在の構文との比較のため)
- Gitのdiff出力の解釈
- SubversionからGitへの移行に関する一般的な知識
- タイポグラフィに関する一般的な知識
- Unicodeエスケープシーケンスに関する一般的な知識
- Go言語の初期の構文に関する情報 (Web検索を通じて得られた情報)
- 特に、
for ; ; {
からfor {
への変更に関する情報。 - 初期のチャネル構文 (
chan< int
,chan> int
) に関する情報。
- 特に、