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[インデックス 1601] ファイルの概要

このコミットは、Goコンパイラの字句解析器(lexer)の一部である src/cmd/gc/lex.c ファイル内の isfrog 関数のコードをわずかに改善するものです。具体的には、不要な条件チェックを削除し、コードの可読性を向上させています。

コミット

  • コミットハッシュ: 6e395cfecf580523d3c46b9db35b95a495474397
  • 作者: Rob Pike r@golang.org
  • 日付: Sat Jan 31 16:44:52 2009 -0800
  • コミットメッセージ:
    slightly better code for the frog fix
    
    R=ken
    OCL=24025
    CL=24025
    

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/6e395cfecf580523d3c46b9db35b95a495474397

元コミット内容

slightly better code for the frog fix

R=ken
OCL=24025
CL=24025

変更の背景

このコミットは、以前に適用された「frog fix」と呼ばれる修正をさらに改善することを目的としています。Goコンパイラの字句解析器は、ソースコードをトークンに分割する役割を担っています。この過程で、特定の文字(特に制御文字や非標準的な空白文字など)が予期せぬ挙動を引き起こす可能性があります。isfrog 関数は、このような「問題のある」文字("frog"文字)を識別するために使用されます。

元の「frog fix」は、これらの問題のある文字を正しく処理するためのものでしたが、このコミットでは、isfrog 関数内の条件分岐に冗長な部分があることが発見され、それを削除することでコードをより簡潔かつ正確にすることを意図しています。具体的には、c < ' ' (ASCIIスペース文字より小さい値) の範囲内で、スペース文字 (' ') をチェックする条件が論理的に不要であったため、これを取り除いています。

前提知識の解説

字句解析器 (Lexer/Scanner)

字句解析器は、コンパイラの最初のフェーズであり、ソースコードの文字列を入力として受け取り、それを意味のある最小単位である「トークン」のシーケンスに変換します。例えば、int x = 10; というコードは、int (キーワード), x (識別子), = (演算子), 10 (リテラル), ; (区切り文字) といったトークンに分割されます。

Goコンパイラ (gc)

gc は、Go言語の公式コンパイラの実装の一つです。Go言語のソースコードを機械語に変換する主要なツールチェーンの一部です。src/cmd/gc/ ディレクトリには、このコンパイラのソースコードが含まれています。

isfrog 関数

isfrog 関数は、Goコンパイラの字句解析器 (lex.c) 内で使用されるヘルパー関数です。その目的は、特定の文字が「frog」であるかどうかを判定することです。「frog」文字とは、通常、字句解析の際に特別な注意が必要な、あるいは不正な文字を指します。これには、ASCII制御文字(タブ、改行、キャリッジリターンを除く)、特定のUnicode範囲の文字などが含まれる可能性があります。この関数が 1 を返すと「frog」文字、0 を返すと「frog」文字ではないと判断されます。

ASCII文字とUnicode

  • ASCII: 0から127までの整数で表現される文字セットで、英数字、記号、基本的な制御文字を含みます。スペース文字 (' ') はASCII値32です。
  • Unicode: 世界中のほとんどの書記体系の文字を表現するために設計された文字エンコーディング標準です。ASCIIはUnicodeのサブセットです。

制御文字

ASCII値が32未満の文字は、通常、制御文字(例: NULL, Start of Text, End of Textなど)と呼ばれ、画面に表示されない特殊な機能を持つ文字です。タブ (\t), 改行 (\n), キャリッジリターン (\r) は、一般的に「良い」空白文字として扱われますが、それ以外の制御文字は問題を引き起こす可能性があります。

技術的詳細

このコミットの主要な変更は、isfrog 関数内の2つの箇所にあります。

  1. if(c < ' ') ブロック内の条件修正:

    • 元のコードでは、c < ' ' (つまり、文字 c のASCII値が32未満) の場合に、さらに c == ' ' || c == '\n' || c== '\r' || c == '\t' という条件で「良い空白文字」をチェックしていました。
    • しかし、c < ' ' という外側の条件が真である場合、c の値は32未満であるため、c == ' ' (ASCII値32) が真になることは論理的にありえません。この条件は常に偽となります。
    • したがって、c == ' ' のチェックは冗長であり、このコミットではその部分を削除しています。これにより、コードはより正確になり、意図しない誤解を招く可能性がなくなります。この変更は機能的な影響はなく、コードのクリーンアップが目的です。
  2. Unicode範囲の条件の書式修正:

    • if(0x80 <= c && c <=0xa0) という行で、c <=0xa0 の部分が c <= 0xa0 に変更されました。
    • これは単なる空白の追加であり、コードの書式を整えるための変更です。機能的な影響は一切ありません。

これらの変更は、isfrog 関数のロジックをより明確にし、保守性を高めることを目的としています。特に、冗長な条件の削除は、コードの意図をより直接的に表現します。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/cmd/gc/lex.c
+++ b/src/cmd/gc/lex.c
@@ -305,11 +305,11 @@ isfrog(int c) {
 	if(c < 0)
 		return 1;
 	if(c < ' ') {
-		if(c == ' ' || c == '\n' || c== '\r' || c == '\t')	// good white space
+		if(c == '\n' || c== '\r' || c == '\t')	// good white space
 		return 0;
 		return 1;
 	}
-	if(0x80 <= c && c <=0xa0)	// unicode block including unbreakable space.
+	if(0x80 <= c && c <= 0xa0)	// unicode block including unbreakable space.
 		return 1;
 	return 0;
 }

コアとなるコードの解説

isfrog 関数は、入力された文字 c が「frog」文字であるかどうかを判定します。

  • if(c < 0): 文字が負の値である場合、それは不正な文字として「frog」と判定されます。
  • if(c < ' '): このブロックは、ASCII制御文字(ASCII値が32未満の文字)を処理します。
    • 変更前: c がスペース、改行、キャリッジリターン、タブのいずれかであれば、それは「良い空白文字」として「frog」ではない (0 を返す) と判断されます。それ以外の場合は「frog」である (1 を返す) と判断されます。
    • 変更後: c が改行、キャリッジリターン、タブのいずれかであれば、「良い空白文字」として「frog」ではないと判断されます。それ以外の場合は「frog」であると判断されます。
    • 前述の通り、c < ' ' の条件が真である限り、c はスペース文字 (' ', ASCII値32) と等しくなることはありません。したがって、c == ' ' のチェックは冗長であり、削除されました。これにより、このブロックは、改行、キャリッジリターン、タブ以外のASCII制御文字を「frog」として識別するようになります。
  • if(0x80 <= c && c <= 0xa0): このブロックは、特定のUnicode範囲の文字を処理します。この範囲には、非ブレークスペース(No-Break Space, U+00A0)を含む、いくつかの制御文字や特殊文字が含まれます。これらの文字は「frog」と判定されます。c <=0xa0 から c <= 0xa0 への変更は、単なる書式調整です。

この関数の全体的な目的は、Goのソースコード内で予期せぬ挙動を引き起こす可能性のある文字を早期に特定し、コンパイラがそれらを適切に処理できるようにすることです。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語のソースコード (特に src/cmd/gc/lex.c の関連部分)
  • ASCIIコード表
  • Unicode文字コード表
  • (必要に応じて)Go言語のコンパイラに関するオンライン記事や議論