[インデックス 16041] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のドキュメンテーションツールである godoc コマンドにおいて、インデックスファイルが見つからない場合に表示されるエラーメッセージを改善するものです。具体的には、godoc がドキュメントのインデックスを読み込む際に、指定されたパターンに一致するファイルが存在しない場合に、より明確なエラーメッセージを返すように修正されています。
コミット
commit a23dd4fe4e448d7f696360f2c84c7c57a1ccaacf
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date: Mon Apr 1 15:15:02 2013 -0700
cmd/godoc: better error message for missing index files
Fixes #5024.
R=golang-dev, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/8222045
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/a23dd4fe4e448d7f696360f2c84c7c57a1ccaacf
元コミット内容
cmd/godoc: better error message for missing index files
このコミットは、godoc コマンドがインデックスファイルを読み込む際に、指定されたファイルパターンに一致するファイルが見つからなかった場合に、より分かりやすいエラーメッセージを出力するように変更を加えるものです。これにより、ユーザーは問題の原因を特定しやすくなります。
変更の背景
godoc はGo言語のソースコードからドキュメントを生成し、表示するためのツールです。大規模なプロジェクトや特定の環境では、ドキュメントの検索性能を向上させるためにインデックスファイルを使用することがあります。これらのインデックスファイルは、godoc が起動時に読み込む必要があります。
このコミットが修正する問題は、godoc がインデックスファイルを読み込もうとした際に、指定されたファイルパスやパターンに一致するファイルが一つも存在しなかった場合のエラーハンドリングに関するものでした。以前の実装では、filepath.Glob 関数が一致するファイルを見つけられなかった場合、nil スライスと nil エラーを返していました。この nil エラーは、呼び出し元にとっては「エラーが発生しなかった」と解釈される可能性があり、結果として godoc がインデックスファイルを正しく読み込めないにもかかわらず、ユーザーにその旨を明確に伝えられない状況が発生していました。
ユーザーがインデックスファイルの設定を誤ったり、ファイルが削除されたりした場合に、godoc が沈黙したり、不明瞭なエラーを出力したりすると、デバッグが困難になります。このコミットは、このような状況でユーザーに「指定されたパターンに一致するインデックスファイルが見つかりません」という明確なメッセージを提供することで、ユーザーエクスペリエンスを向上させることを目的としています。
前提知識の解説
godocコマンド: Go言語の公式ドキュメンテーションツールです。Goのソースコードからコメントを抽出し、HTML形式で表示したり、コマンドラインから検索したりする機能を提供します。Goの標準ライブラリのドキュメントもgodocによって提供されています。- インデックスファイル:
godocが大規模なコードベースのドキュメントを効率的に検索するために使用する、事前に生成されたデータファイルです。これにより、毎回ソースコード全体をスキャンすることなく、高速な検索が可能になります。 filepath.Glob関数: Go言語の標準ライブラリpath/filepathパッケージに含まれる関数です。この関数は、指定されたシェルパターン(ワイルドカードを含むパス)に一致するすべてのファイルパスを検索し、そのリストを返します。例えば、*.txtは現在のディレクトリ内のすべての.txtファイルに一致し、data/*.logはdataディレクトリ内のすべての.logファイルに一致します。一致するファイルがない場合、エラーは発生せず、空のスライスが返されます。fmt.Errorf関数: Go言語の標準ライブラリfmtパッケージに含まれる関数で、フォーマットされた文字列から新しいエラーを生成するために使用されます。これにより、開発者は特定の状況に応じた詳細なエラーメッセージを作成できます。
技術的詳細
このコミットの技術的な変更は、src/cmd/godoc/godoc.go ファイル内の readIndex 関数に集中しています。readIndex 関数は、godoc がインデックスファイルを読み込むための主要なロジックを含んでいます。
変更前は、filepath.Glob(filenames) の呼び出し結果が matches スライスと err を返していました。filepath.Glob の仕様として、パターンに一致するファイルが見つからなかった場合、matches は nil(または空のスライス)となり、err は nil となります。つまり、ファイルが見つからなかったことはエラーとしては扱われませんでした。
このコミットでは、この挙動を考慮し、filepath.Glob が nil エラーを返した場合でも、matches スライスが nil であるかどうかを明示的にチェックするロジックが追加されました。
if err != nil {
return err
} else if matches == nil { // ここが追加された条件
return fmt.Errorf("no index files match %q", filenames)
}
この else if matches == nil という条件が追加されたことで、filepath.Glob がエラーを返さなかった(err == nil)にもかかわらず、一致するファイルが一つもなかった(matches == nil)場合に、fmt.Errorf を使用して「no index files match %q」という明確なエラーメッセージを生成し、それを返すようになりました。%q は、filenames 変数の値を引用符で囲んで表示するためのフォーマット指定子です。これにより、ユーザーはどのファイルパターンに問題があったのかを正確に知ることができます。
この変更は、エラーハンドリングの堅牢性を高め、ユーザーが godoc の設定ミスや環境の問題をより迅速に特定できるようにするための、小さなしかし重要な改善です。
コアとなるコードの変更箇所
--- a/src/cmd/godoc/godoc.go
+++ b/src/cmd/godoc/godoc.go
@@ -1517,6 +1517,8 @@ func readIndex(filenames string) error {
matches, err := filepath.Glob(filenames)
if err != nil {
return err
+ } else if matches == nil {
+ return fmt.Errorf("no index files match %q", filenames)
}
sort.Strings(matches) // make sure files are in the right order
files := make([]io.Reader, 0, len(matches))
コアとなるコードの解説
変更は src/cmd/godoc/godoc.go ファイルの readIndex 関数内、具体的には1517行目付近にあります。
matches, err := filepath.Glob(filenames): この行は、filenamesで指定されたパターン(例:/path/to/index/*.txt)に一致するファイルパスを検索し、その結果をmatchesスライスに、発生したエラーをerrに格納します。if err != nil { return err }: これは既存のエラーチェックです。filepath.Globの実行中にシステムレベルのエラー(例: 無効なパターン、権限の問題など)が発生した場合、そのエラーを即座に呼び出し元に返します。else if matches == nil { return fmt.Errorf("no index files match %q", filenames) }: このelse ifブロックがこのコミットで追加された新しいロジックです。else if: 前のif err != nilの条件が偽(つまりerrがnil)の場合にのみこのブロックが実行されます。matches == nil:filepath.Globは、パターンに一致するファイルが一つも見つからなかった場合、エラーを返さずにnilスライスを返します。この条件は、まさにその状況を検出します。return fmt.Errorf("no index files match %q", filenames):matchesがnilであった場合、fmt.Errorfを使用して新しいエラーオブジェクトを生成し、それを返します。エラーメッセージは「no index files match "指定されたファイルパターン"」となり、ユーザーに何が問題であったかを明確に伝えます。%qは、filenamesの値を引用符で囲んで出力するためのGoのフォーマット動詞です。
この変更により、godoc はインデックスファイルが見つからないという特定の状況をエラーとして適切に扱い、ユーザーに分かりやすいフィードバックを提供するようになりました。
関連リンク
- Go言語の公式ドキュメント: https://golang.org/doc/
godocコマンドのドキュメント:godocコマンド自体に関する公式ドキュメントは、Goのインストール後にgo doc cmd/godocまたはgodoc -helpで確認できます。path/filepathパッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/path/filepathfmtパッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/fmt
参考にした情報源リンク
- Go Gerrit Change 8222045: https://golang.org/cl/8222045 (コミットメッセージに記載されているGo Gerritの変更リストへのリンク)
- GitHub Issue #5024: コミットメッセージには
Fixes #5024と記載されていますが、Web検索では直接関連するIssueを見つけることができませんでした。しかし、このコミットが特定のIssueを修正したものであることは明確です。通常、GoプロジェクトのIssueは https://github.com/golang/go/issues で管理されています。