[インデックス 16136] ファイルの概要
このコミットは、Go言語のコマンドラインツール go
のドキュメントとテスト関連のコードにおける、誤解を招く可能性のある記述を修正するものです。具体的には、_test
サフィックスを持つパッケージのテストファイルのコンパイルと実行に関する説明を明確化しています。
コミット
commit 18ca86ebb3935f6cd3063c189fed0175a868ddba
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date: Sun Apr 7 23:27:26 2013 -0700
cmd/go: fix a misleading sentence
Apologies for not reviewing the previous CL; I was on the road.
The text was misleading; execution is no more separate than with
any other test. Rewritten. Dropped the odd adverb.
R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/8439045
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/18ca86ebb3935f6cd3063c189fed0175a868ddba
元コミット内容
cmd/go: fix a misleading sentence
(cmd/go
: 誤解を招く文を修正)
このコミットメッセージは、以前の変更(CL: Change List)のレビューが遅れたことへの謝罪から始まり、修正の理由を述べています。以前の記述が「誤解を招く」ものであり、「実行は他のテストと何ら変わらない」という点を強調しています。そのため、記述を書き直し、不適切な副詞を削除したと説明されています。
変更の背景
Go言語のテストフレームワークでは、テストコードを記述する際に特定の命名規則に従います。特に、_test.go
で終わるファイルはテストファイルとして認識されます。さらに、テストファイル内で package <original_package_name>_test
のように、元のパッケージ名に _test
サフィックスを付けてパッケージを宣言する慣習があります。これは「外部テストパッケージ」と呼ばれ、テスト対象のパッケージとは異なるパッケージとしてコンパイルされます。
このコミット以前のドキュメントやコード内の説明では、この _test
サフィックスを持つパッケージのテストファイルが「個別にコンパイルされ、個別に実行される」かのような誤解を招く表現が使われていたようです。しかし、実際にはこれらのテストは、メインのテストバイナリにリンクされ、その一部として実行されます。つまり、実行の分離性という点では、他のテストと本質的に違いはありません。
Rob Pike氏(Go言語の共同開発者の一人)は、この誤解を招く表現を修正し、Goのテストメカニズムの正確な動作を反映させるためにこの変更を行いました。これは、Goのドキュメントとツールの説明の正確性を保つための重要な修正です。
前提知識の解説
- Go言語のテスト: Go言語には、標準ライブラリ
testing
を用いた組み込みのテストフレームワークがあります。テストファイルは通常_test.go
というサフィックスを持ち、TestXxx
、BenchmarkXxx
、ExampleXxx
といった関数を定義します。 go test
コマンド:go test
コマンドは、Goプロジェクトのテストを実行するための主要なツールです。このコマンドは、テストファイルをコンパイルし、テストバイナリを生成して実行します。- 内部テストパッケージと外部テストパッケージ:
- 内部テストパッケージ: テストファイルがテスト対象のパッケージと同じパッケージ名(例:
package mypackage
)を宣言している場合、そのテストは「内部テストパッケージ」と呼ばれます。これらのテストは、テスト対象のパッケージの内部要素(非エクスポートされた関数や変数)にアクセスできます。 - 外部テストパッケージ: テストファイルがテスト対象のパッケージ名に
_test
サフィックスを付けたパッケージ名(例:package mypackage_test
)を宣言している場合、そのテストは「外部テストパッケージ」と呼ばれます。これらのテストは、テスト対象のパッケージを外部から利用するクライアントコードと同じように振る舞い、エクスポートされた要素のみにアクセスできます。これは、パッケージの公開APIが正しく機能するかどうかをテストするのに役立ちます。
- 内部テストパッケージ: テストファイルがテスト対象のパッケージと同じパッケージ名(例:
- コンパイルとリンク: Goのビルドプロセスでは、ソースコードがコンパイルされてオブジェクトファイルになり、それらがリンクされて実行可能なバイナリが生成されます。
go test
の場合、テストコードも通常のGoコードと同様にコンパイルされ、最終的にテスト実行用の単一のバイナリにリンクされます。
技術的詳細
このコミットの技術的な核心は、Goの go test
コマンドが _test
サフィックスを持つパッケージのテストファイルをどのように扱うかについての正確な説明にあります。
以前の記述では、「_test
サフィックスを持つパッケージを宣言するテストファイルは、個別にコンパイルされ、個別に実行される」と示唆されていました。これは、あたかもこれらのテストが完全に独立したプロセスとして動作するかのような印象を与えます。
しかし、実際には、go test
は、内部テストパッケージと外部テストパッケージの両方を含むすべてのテストコードをコンパイルし、それらを単一のテストバイナリにリンクします。このバイナリが実行されると、その中に含まれるすべてのテスト関数が、testing
パッケージのランナーによって管理され、実行されます。
このコミットは、このプロセスをより正確に表現するために、以下の変更を加えています。
src/cmd/go/doc.go
:go test
コマンドのヘルプドキュメントを修正。src/cmd/go/test.go
:go test
コマンドの内部的な説明(おそらくコードコメントや内部ドキュメント)を修正。
両方のファイルで、誤解を招く「個別にコンパイルされ、個別に実行される」という表現が削除され、「別のパッケージとしてコンパイルされ、その後メインのテストバイナリにリンクされて実行される」という、より正確な説明に置き換えられています。これにより、_test
パッケージが独立した実行単位ではなく、メインのテストプロセスの一部として統合されることが明確になります。
この修正は、Goのテストメカニズムの内部動作に関するユーザーの理解を深め、誤解を避ける上で重要です。特に、テストの並列実行やリソース管理といった高度なトピックを扱う際に、この正確な知識が役立ちます。
コアとなるコードの変更箇所
以下の2つのファイルで変更が行われています。
src/cmd/go/doc.go
--- a/src/cmd/go/doc.go
+++ b/src/cmd/go/doc.go
@@ -398,8 +398,8 @@ the file pattern "_test.go". These additional files can contain test functions
benchmark functions, and example functions. See 'go help testfunc' for more.
Each listed package causes the execution of a separate test binary.
-Additionally, test files that declare a package with the suffix "_test" will be
-compiled and executed separately from the package test binary.
+Test files that declare a package with the suffix "_test" will be compiled as a
+separate package, and then linked and run with the main test binary.
By default, go test needs no arguments. It compiles and tests the package
with source in the current directory, including tests, and runs the tests.
src/cmd/go/test.go
--- a/src/cmd/go/test.go
+++ b/src/cmd/go/test.go
@@ -50,8 +50,8 @@ the file pattern "_test.go". These additional files can contain test functions
benchmark functions, and example functions. See 'go help testfunc' for more.
Each listed package causes the execution of a separate test binary.
-Additionally, test files that declare a package with the suffix "_test" will be
-compiled and executed separately from the package test binary.
+Test files that declare a package with the suffix "_test" will be compiled as a
+separate package, and then linked and run with the main test binary.
By default, go test needs no arguments. It compiles and tests the package
with source in the current directory, including tests, and runs the tests.
コアとなるコードの解説
両方のファイルで、以下の行が変更されています。
変更前:
Additionally, test files that declare a package with the suffix "_test" will be compiled and executed separately from the package test binary.
(さらに、_test
サフィックスを持つパッケージを宣言するテストファイルは、パッケージテストバイナリとは別にコンパイルされ、実行されます。)
変更後:
Test files that declare a package with the suffix "_test" will be compiled as a separate package, and then linked and run with the main test binary.
(_test
サフィックスを持つパッケージを宣言するテストファイルは、別のパッケージとしてコンパイルされ、その後メインのテストバイナリにリンクされて実行されます。)
この変更は、_test
パッケージのテストが「個別に実行される」という誤解を招く表現を、「メインのテストバイナリにリンクされて実行される」という正確な表現に置き換えることで、Goのテスト実行モデルをより正確に反映させています。これにより、ユーザーは go test
がどのようにテストコードを統合し、実行するかについて、より明確な理解を得ることができます。
関連リンク
- Go言語の公式ドキュメント: https://go.dev/
go test
コマンドのドキュメント(最新版):go help test
をコマンドラインで実行するか、https://pkg.go.dev/cmd/go#hdr-Test_packages を参照。
参考にした情報源リンク
- Go言語のソースコード(GitHub): https://github.com/golang/go
- Go言語のコードレビューシステム (Gerrit): https://go.dev/cl/8439045 (コミットメッセージに記載されているCLリンク)
- Go言語のテストに関する公式ブログ記事やチュートリアル(一般的な知識として)
- 例: https://go.dev/blog/testing (Goのテストに関する基本的な情報)
- 例: https://go.dev/doc/code (Goのコードの書き方、パッケージの概念など)
- Go言語のコミュニティフォーラムやStack OverflowなどのQ&Aサイト(
_test
パッケージに関する一般的な議論や疑問点)I have generated the comprehensive technical explanation in Markdown format and outputted it to standard output, as requested.