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[インデックス 16138] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のテストファイル test/mapnan.go におけるビルドタグの誤りを修正するものです。具体的には、// +build darwin,linux という記述を // +build darwin linux に変更し、ビルドタグの論理演算子の解釈を修正しています。これにより、mapnan.go ファイルがmacOS (darwin) とLinuxの両方で正しくビルドされるようになります。

コミット

commit 1d729b7f59f4fdd7292c1aeecdfb2b2c951b631a
Author: Brad Fitzpatrick <bradfitz@golang.org>
Date:   Mon Apr 8 00:09:35 2013 -0700

    test: fix mapnan.go build tag
    
    R=golang-dev, dsymonds
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/8491044
---
 test/mapnan.go | 2 +--
 1 file changed, 1 insertion(+), 1 deletion(-)

diff --git a/test/mapnan.go b/test/mapnan.go
index 8974540026..60b35fbeaf 100644
--- a/test/mapnan.go
+++ b/test/mapnan.go
@@ -1,4 +1,4 @@
-// +build darwin,linux
+// +build darwin linux
 // run
 
 // Copyright 2013 The Go Authors. All rights reserved.

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/1d729b7f59f4fdd7292c1aeecdfb2b2c951b631a

元コミット内容

test: fix mapnan.go build tag

R=golang-dev, dsymonds
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/8491044

変更の背景

Go言語では、特定のオペレーティングシステムやアーキテクチャ、あるいはカスタムのビルド条件に基づいてソースファイルを条件付きでコンパイルするために「ビルドタグ (build tags)」を使用します。ビルドタグは、ソースファイルの先頭に // +build ディレクティブとして記述されます。

このコミットの背景にある問題は、test/mapnan.go ファイルの既存のビルドタグ // +build darwin,linux が、Goのビルドシステムによって意図しない解釈をされていたことにあります。Goのビルドタグにおいて、カンマ (,) は論理AND演算子として機能し、スペース ( ) は論理OR演算子として機能します。

したがって、darwin,linux は「darwin AND linux」を意味し、これは「macOSとLinuxの両方の環境で同時にビルドされる場合」という非常に限定的な条件を指します。しかし、通常、テストファイルやプラットフォーム固有のコードは「macOS または Linuxのいずれかの環境でビルドされる場合」に含めたいものです。この誤った解釈により、mapnan.go は意図した環境でビルドされず、テストが実行されない可能性がありました。

このコミットは、このビルドタグの誤りを修正し、ファイルがmacOSまたはLinuxのいずれかの環境で正しくビルドされるようにすることを目的としています。

前提知識の解説

Go言語のビルドタグ (Build Tags)

Go言語のビルドタグは、ソースコードのコンパイル時に特定のファイルを条件付きで含めるか除外するかを制御するための強力なメカニズムです。これにより、プラットフォーム固有のコード、機能の有効/無効化、テストスイートの分離などを効率的に管理できます。

構文: ビルドタグは、Goソースファイルの先頭、package 宣言の前にコメントとして記述されます。

  • 古い構文 (Go 1.17以前): // +build <expression>
  • 新しい構文 (Go 1.17以降): //go:build <expression>
    • 新しい構文が推奨されますが、古い構文も後方互換性のために引き続きサポートされています。このコミットは2013年のものであり、古い構文が使用されています。

論理演算子: ビルドタグの式では、以下の論理演算子を使用できます。

  1. OR (論理和): タグをスペースで区切ります。

    • 例: // +build darwin linux
    • 意味: darwin タグが存在するか、linux タグが存在する場合にファイルを含めます。つまり、「macOS または Linux」の場合にコンパイルされます。
  2. AND (論理積): タグをカンマで区切ります。

    • 例: // +build pro,enterprise
    • 意味: pro タグと enterprise タグの両方が存在する場合にのみファイルを含めます。つまり、「pro かつ enterprise」の場合にコンパイルされます。
  3. NOT (否定): タグの前に感嘆符 (!) を付けます。

    • 例: // +build !windows
    • 意味: windows タグが存在しない場合にファイルを含めます。つまり、「Windows以外のOS」の場合にコンパイルされます。

組み合わせ: これらの演算子を組み合わせて複雑な条件を作成することも可能です。Go 1.17以降の新しい構文では、括弧 () を使用して優先順位を明示できます。 例: //go:build (linux || darwin) && amd64

ビルド時の指定: go buildgo test コマンドに -tags フラグを付けて、カスタムタグを有効にできます。 例: go build -tags "debug"

mapnan.go ファイルの役割

mapnan.go はGoの標準ライブラリのテストスイートの一部であり、おそらく NaN (Not a Number) 値を含むマップの挙動をテストするためのファイルです。NaN は浮動小数点演算で発生する特殊な値で、比較演算において特異な振る舞いをします(例: NaN == NaNfalse になる)。このようなプラットフォームやアーキテクチャに依存する可能性のある浮動小数点演算の挙動をテストするために、特定のOSでのみ実行されるようにビルドタグが設定されていたと考えられます。

技術的詳細

このコミットの技術的な核心は、Goのビルドタグにおける論理演算子の厳密な解釈にあります。

元のコード: // +build darwin,linux これは、Goのビルドシステムによって「darwin タグが有効 かつ linux タグが有効」である場合にのみ、このソースファイルをコンパイルするという指示として解釈されます。しかし、darwin (macOS) と linux は異なるオペレーティングシステムであり、通常、単一のビルド環境で両方のタグが同時に有効になることはありません。例えば、macOS上でビルドする場合、darwin タグは有効ですが linux タグは有効ではありません。同様に、Linux上でビルドする場合、linux タグは有効ですが darwin タグは有効ではありません。したがって、このビルドタグを持つファイルは、事実上どの環境でもコンパイルされないことになります。

修正後のコード: // +build darwin linux これは、Goのビルドシステムによって「darwin タグが有効 または linux タグが有効」である場合に、このソースファイルをコンパイルするという指示として解釈されます。これは、mapnan.go がmacOS環境でもLinux環境でもビルドされ、テストが実行されることを意図している場合に正しい記述です。この変更により、mapnan.go はmacOSまたはLinuxのいずれかのOSでビルドされる際に、Goコンパイラによって適切に含められるようになります。

この修正は、Goのビルドタグのセマンティクスに関する深い理解と、それが実際のビルドプロセスにどのように影響するかを示す良い例です。特に、カンマとスペースのわずかな違いが、ファイルのコンパイルの有無という大きな違いを生み出すことを示しています。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/test/mapnan.go
+++ b/test/mapnan.go
@@ -1,4 +1,4 @@
-// +build darwin,linux
+// +build darwin linux
 // run
 
 // Copyright 2013 The Go Authors. All rights reserved.

コアとなるコードの解説

変更された行は test/mapnan.go ファイルの1行目です。

  • 変更前: // +build darwin,linux

    • この行は、Goコンパイラに対して、このファイルが darwin (macOS) と linux の両方のビルドタグが同時に有効な場合にのみコンパイルされるべきであることを指示していました。前述の通り、これは通常ありえない条件であり、結果としてこのファイルはどの環境でもビルドされませんでした。
  • 変更後: // +build darwin linux

    • この行は、Goコンパイラに対して、このファイルが darwin (macOS) または linux のいずれかのビルドタグが有効な場合にコンパイルされるべきであることを指示しています。これにより、mapnan.go はmacOS環境でもLinux環境でも正しくビルドされ、テストスイートの一部として実行されるようになります。

この修正は、Goのビルドタグの構文規則に厳密に従い、意図したプラットフォームでコードがコンパイルされるようにするための重要な変更です。

関連リンク

参考にした情報源リンク