Keyboard shortcuts

Press or to navigate between chapters

Press S or / to search in the book

Press ? to show this help

Press Esc to hide this help

[インデックス 16145] ファイルの概要

このコミットは、Go言語プロジェクトのWindows環境におけるランタイムテストのタイムアウト時間を、他のオペレーティングシステム(OS)と統一するために変更したものです。具体的には、src/run.batファイル内のgo test runtimeコマンドのタイムアウト設定を120秒から240秒に延長しています。

コミット

commit 384b72e94bf403676fe652fd7efc72cad25365f0
Author: Alex Brainman <alex.brainman@gmail.com>
Date:   Tue Apr 9 13:01:09 2013 +1000

    run.bat: make windows runtime test timeout same as other os
    
    R=golang-dev, dave
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/8551043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/384b72e94bf403676fe652fd7efc72cad25365f0

元コミット内容

run.bat: make windows runtime test timeout same as other os

このコミットは、Windows環境でのGoランタイムテストのタイムアウト時間を、他のOSでの設定と一致させることを目的としています。

変更の背景

Goプロジェクトでは、様々なプラットフォームでコードの品質と安定性を保証するために、広範なテストスイートが実行されます。これらのテストは、ビルドプロセスや継続的インテグレーション(CI)システムの一部として自動的に実行されることが一般的です。

コミットメッセージにある「make windows runtime test timeout same as other os」という記述から、この変更の背景には、Windows環境でのランタイムテストが、他のOS(LinuxやmacOSなど)と比較して、デフォルトのタイムアウト時間内に完了しない、あるいは不安定になるという問題があったと推測されます。

テストのタイムアウトは、テストが無限に実行され続けたり、デッドロックに陥ったりするのを防ぐための重要なメカニズムです。しかし、特定の環境(この場合はWindows)でテストの実行時間が長くなる傾向がある場合、他の環境と同じ短いタイムアウト設定では、テストが正しく完了する前に強制終了されてしまう可能性があります。これは、テストの失敗として報告され、実際のバグではないにもかかわらず、開発者の混乱を招くことになります。

このコミットは、Windows環境でのランタイムテストの安定性を向上させ、他のOSとのテスト実行の一貫性を保つために、タイムアウト時間を延長するという解決策を適用したものです。これにより、Windows環境でのテストが不必要にタイムアウトで失敗するのを防ぎ、テスト結果の信頼性を高めることが意図されています。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、以下の概念について知っておく必要があります。

  • Go言語のテストシステム (go test): Go言語には、標準で強力なテストフレームワークが組み込まれています。go testコマンドは、Goパッケージ内のテスト関数(TestXxxという命名規則に従う関数)を実行するために使用されます。

    • -timeoutフラグ: go testコマンドの重要なフラグの一つで、テスト全体の実行時間に対するタイムアウトを設定します。指定された時間内にテストが完了しない場合、go testはテストプロセスを強制終了し、失敗として報告します。これは、無限ループやデッドロック、あるいは単に非常に時間がかかるテストがCIシステムをブロックするのを防ぐために不可欠です。値は10s(10秒)、1m(1分)、2h(2時間)のように時間単位で指定します。
    • -shortフラグ: このフラグが指定されると、テストコード内でtesting.Short()関数がtrueを返します。これにより、開発者は時間のかかるテストや外部リソースに依存するテストをスキップするロジックを記述し、開発中のテスト実行を高速化できます。
    • -cpuフラグ: テストを並行して実行する際のCPUの数を指定します。例えば、-cpu=1,2,4は、テストを1コア、2コア、4コアのそれぞれで実行し、並行処理におけるテストの挙動を確認するために使用されます。
    • runtimeパッケージ: Go言語の標準ライブラリの一部で、Goランタイム(ガベージコレクタ、スケジューラ、ゴルーチンなど)に関する低レベルな機能や情報を提供します。go test runtimeは、Goランタイム自体の動作を検証するためのテストを実行することを意味します。これらのテストは、Go言語のコア部分の安定性とパフォーマンスを保証するために非常に重要です。
  • バッチファイル (.bat): Windowsオペレーティングシステムで使用されるスクリプトファイルの一種です。コマンドプロンプト(cmd.exe)で実行される一連のコマンドを含んでいます。Goプロジェクトでは、Windows環境でのビルド、テスト、その他の自動化タスクを実行するために、このようなバッチファイルが使用されることがあります。src/run.batは、Goプロジェクトのソースコードのルートディレクトリにあるテスト実行スクリプトであると推測されます。

  • 継続的インテグレーション (CI): ソフトウェア開発のプラクティスの一つで、開発者がコードベースに加えた変更を頻繁にメインブランチにマージし、自動化されたビルドとテストを実行します。CIの目的は、統合の問題を早期に発見し、ソフトウェアの品質を継続的に維持することです。テストのタイムアウトは、CIパイプラインが長時間ブロックされるのを防ぐために重要です。

技術的詳細

このコミットの技術的な変更は非常にシンプルですが、その背景にある考慮事項は重要です。

変更前:

go test runtime -short -timeout=120s -cpu=1,2,4

変更後:

go test runtime -short -timeout=240s -cpu=1,2,4

変更点は、go test runtimeコマンドに渡される-timeoutフラグの値が120s(2分)から240s(4分)に倍増されたことです。

なぜWindowsでタイムアウトを延長する必要があったのか?

考えられる理由はいくつかあります。

  1. パフォーマンスの違い: WindowsのファイルシステムI/O、プロセス管理、またはスケジューリングの特性が、LinuxやmacOSなどの他のOSと比較して、特定の種類のテスト(特にランタイムの低レベルな挙動をテストするもの)の実行時間を長くする可能性があります。例えば、コンテキストスイッチのオーバーヘッド、ディスクキャッシュの挙動、セキュリティソフトウェアの介入などが影響する場合があります。
  2. 仮想環境/CI環境の特性: GoプロジェクトのCIシステムがWindows上で実行される場合、それが仮想マシン(VM)上であったり、リソースが制限された環境であったりする可能性があります。このような環境では、テストの実行が物理マシンよりも遅くなることが一般的です。
  3. テストの性質: runtimeパッケージのテストは、ガベージコレクタの挙動、スケジューラの負荷テスト、メモリ割り当てのパターンなど、非常に低レベルで時間のかかる操作を含むことがあります。これらのテストは、わずかな環境の違いでも実行時間が大きく変動する可能性があります。
  4. 過去の経験則: 開発者が過去の経験から、Windows環境でのランタイムテストが2分では不安定にタイムアウトすることがあり、4分であれば安定して完了することを確認した可能性があります。

タイムアウト延長のメリットとデメリット:

  • メリット:

    • Windows環境でのランタイムテストの安定性が向上し、不必要なテスト失敗が減少します。
    • テスト結果の信頼性が高まり、開発者が実際のバグと環境依存のタイムアウトを区別しやすくなります。
    • 他のOSとのテスト実行の一貫性が保たれ、CIパイプライン全体でのテスト結果の解釈が容易になります。
  • デメリット:

    • テストスイート全体の実行時間が長くなる可能性があります。CIパイプラインの実行時間が長くなると、開発のフィードバックループが遅くなる可能性があります。
    • 本当にデッドロックや無限ループに陥っているテストの発見が遅れる可能性があります。タイムアウト時間が長すぎると、問題のあるテストが長時間実行され続けてしまい、リソースを無駄に消費することになります。

この変更は、テストの安定性とCIの効率性のバランスを取るための調整であり、Windows環境でのGoランタイムテストの特定の挙動に対応するための実用的な解決策と言えます。

コアとなるコードの変更箇所

変更は、src/run.batファイル内の以下の1行です。

--- a/src/run.bat
+++ b/src/run.bat
@@ -43,7 +43,7 @@ if errorlevel 1 goto fail
 echo.
 
 echo # runtime -cpu=1,2,4
-go test runtime -short -timeout=120s -cpu=1,2,4
+go test runtime -short -timeout=240s -cpu=1,2,4
 if errorlevel 1 goto fail
 echo.

コアとなるコードの解説

src/run.batは、Goプロジェクトのテストを実行するためのWindowsバッチスクリプトの一部です。このスクリプトは、Goのテストコマンドgo testを呼び出し、特定のパッケージ(この場合はruntime)に対してテストを実行します。

変更された行は、runtimeパッケージのテストを実行するコマンドです。

  • go test runtime: runtimeパッケージ内のテストを実行します。
  • -short: 時間のかかるテストをスキップするよう指示します。
  • -timeout=120s (変更前) / -timeout=240s (変更後): テスト全体のタイムアウト時間を設定します。この値が2分から4分に延長されました。
  • -cpu=1,2,4: テストを1コア、2コア、4コアのそれぞれで実行し、並行処理のテストを行います。

この変更により、Windows環境でrun.batが実行される際に、runtimeパッケージのテストが最大4分間実行されることが許可されるようになりました。これにより、以前は2分でタイムアウトしていたテストが、より長い時間を与えられ、正常に完了する可能性が高まります。

関連リンク

  • Go Change-Id: I384b72e94bf403676fe652fd7efc72cad25365f0 (Goの内部的な変更管理システムにおけるID)
  • Go CL (Change List) 8551043: https://golang.org/cl/8551043

参考にした情報源リンク