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[インデックス 16150] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の内部ライブラリであるlib9において、execシステムコールが失敗した際に表示されるエラーメッセージに改行を追加する変更です。これにより、エラーメッセージの可読性が向上し、ターミナルやログファイルでの表示がより適切になります。

コミット

commit 0d932d434bb2e546c029641a8321f3fb9b33ab92
Author: Ian Lance Taylor <iant@golang.org>
Date:   Tue Apr 9 10:03:14 2013 -0700

    lib9: add newline to exec error message
    
    R=golang-dev, bradfitz, r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/8573043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/0d932d434bb2e546c029641a8321f3fb9b33ab92

元コミット内容

lib9ライブラリにおいて、execシステムコールが失敗した場合のエラーメッセージに改行を追加します。

変更の背景

プログラムが外部コマンドを実行しようとする際に、execシステムコールが失敗することがあります。例えば、指定されたコマンドが見つからない場合や、実行権限がない場合などです。このような場合、execはエラーを返し、プログラムはエラーメッセージを標準エラー出力(stderr)に表示します。

このコミットが行われる前は、エラーメッセージの末尾に改行文字(\n)が含まれていませんでした。そのため、エラーメッセージの後に続く出力が同じ行に表示されてしまい、メッセージが読みにくくなったり、ログ解析ツールでの処理が困難になったりする問題がありました。改行を追加することで、エラーメッセージが独立した行に表示されるようになり、可読性と解析のしやすさが向上します。これは、ユーザー体験の改善と、デバッグ作業の効率化に寄与します。

前提知識の解説

  • lib9: Go言語の内部ライブラリの一つで、主にPlan 9およびUnix系システム間での移植性を高めるために、低レベルなシステムコールをラップして提供します。Goランタイムの一部として、OSとのインタフェースを抽象化する役割を担っています。
  • exec / execvp: これらはUnix系OSにおけるシステムコールで、現在のプロセスイメージを新しいプロセスイメージで置き換えるために使用されます。簡単に言えば、現在のプログラムの実行を停止し、指定された新しいプログラムを実行します。execはパスが絶対パスまたは相対パスで指定された場合に、execvpは環境変数PATHを利用してコマンドを検索する場合に用いられます。これらのシステムコールが成功すると、呼び出し元のプログラムは終了し、新しいプログラムが開始されます。失敗した場合は、呼び出し元のプログラムが実行を継続し、通常はエラーコードを返します。
  • fprintf(2, ...): C言語の標準ライブラリ関数fprintfは、指定されたファイルストリームにフォーマットされた文字列を出力します。ここで2はファイルディスクリプタの番号であり、Unix系システムでは通常、0が標準入力(stdin)、1が標準出力(stdout)、2が標準エラー出力(stderr)を指します。したがって、fprintf(2, ...)はエラーメッセージを標準エラー出力に書き出すことを意味します。
  • %r フォーマット指定子: これはGo言語のfmtパッケージ(およびそのルーツであるPlan 9のfmtライブラリ)に特有のフォーマット指定子です。C言語のprintf/fprintfでは通常使用されません。Goの文脈では、%rは直前のシステムコールで発生したエラーの文字列表現(errnoに対応するエラーメッセージ)を出力するために使用されます。このコミットのコードはC言語で書かれていますが、lib9がGoのランタイムの一部であるため、Goの慣習に合わせたエラー報告が行われています。
  • 改行文字 (\n): テキスト出力において、カーソルを次の行の先頭に移動させる特殊文字です。ターミナルやログファイルでは、この文字によって行が区切られ、各メッセージが独立した行に表示されます。

技術的詳細

このコミットの技術的な変更は非常にシンプルですが、その影響は重要です。変更はsrc/lib9/run_plan9.csrc/lib9/run_unix.cの2つのファイルにわたっています。これらのファイルは、それぞれPlan 9とUnix系OSにおけるexecシステムコールのラッパー関数runcmdを含んでいます。

runcmd関数内でexec(またはexecvp)システムコールが呼び出され、これが失敗した場合、エラーメッセージがfprintf(2, ...)によって標準エラー出力に書き出されます。

変更前: fprintf(2, "exec %s: %r", argv[0]);

変更後: fprintf(2, "exec %s: %r\\n", argv[0]);

この変更は、フォーマット文字列の末尾に\n(改行文字)を追加するだけです。これにより、execが失敗した際に表示されるエラーメッセージ(例: "exec /bin/nonexistent_command: No such file or directory")の直後に改行が挿入されます。結果として、エラーメッセージは常に新しい行で終了し、その後の出力が混ざることがなくなります。

これは、特にスクリプトや自動化された環境でプログラムが実行される場合に重要です。改行がないと、エラーメッセージが他の出力と連結されてしまい、エラーの検出や解析が困難になる可能性があります。改行を追加することで、各エラーメッセージが明確に区切られ、ログの解析やエラーハンドリングが容易になります。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/src/lib9/run_plan9.c b/src/lib9/run_plan9.c
index 2b043cc2c7..cd85652f79 100644
--- a/src/lib9/run_plan9.c
+++ b/src/lib9/run_plan9.c
@@ -16,7 +16,7 @@ runcmd(char **argv)\n 	\treturn -1;\n 	case 0:\n 	\texec(argv[0], argv);\n-\t\tfprint(2, "exec %s: %r", argv[0]);\n+\t\tfprintf(2, "exec %s: %r\\n", argv[0]);\n 	\texits("exec");\n 	}\n 	\ndiff --git a/src/lib9/run_unix.c b/src/lib9/run_unix.c
index 1b4c6de1b4..c26cf0afb7 100644
--- a/src/lib9/run_unix.c
+++ b/lib9/run_unix.c
@@ -20,7 +20,7 @@ runcmd(char **argv)\n 	\treturn -1;\n 	case 0:\n 	\texecvp(argv[0], argv);\n-\t\tfprintf(2, "exec %s: %r", argv[0]);\n+\t\tfprintf(2, "exec %s: %r\\n", argv[0]);\n 	\t_exit(1);\n 	}\

コアとなるコードの解説

上記の差分は、src/lib9/run_plan9.csrc/lib9/run_unix.cの両方で、fprintf関数のフォーマット文字列に\nを追加していることを示しています。

  • fprintf(2, "exec %s: %r", argv[0]);
    • 2: 標準エラー出力(stderr)を指すファイルディスクリプタ。
    • "exec %s: %r": 出力するフォーマット文字列。
      • exec: 固定文字列。
      • %s: argv[0](実行しようとしたコマンド名)がここに挿入されます。
      • : : 固定文字列。
      • %r: 直前のシステムコール(この場合はexecまたはexecvp)が失敗した際のエラーメッセージがここに挿入されます。
    • argv[0]: 実行しようとしたコマンドのパスまたは名前。

変更後のコードでは、フォーマット文字列の末尾に\nが追加されています。

  • fprintf(2, "exec %s: %r\\n", argv[0]);
    • \n: 改行文字。これにより、エラーメッセージの出力後にカーソルが次の行の先頭に移動します。

この変更により、execが失敗した場合に、例えば以下のような出力が得られるようになります。

exec /path/to/nonexistent_command: No such file or directory

改行がない場合、もしその後に別の出力があったとすると、以下のように表示されてしまい、エラーメッセージと他の出力の区別がつきにくくなります。

exec /path/to/nonexistent_command: No such file or directoryAnother message

改行の追加は、エラーメッセージの独立性を保ち、ログの整形やデバッグ時の視認性を大幅に向上させるための、小さくも重要な改善です。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • 特になし(コミット内容と差分から直接解析しました)。