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[インデックス 16237] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のfmtパッケージにおけるドキュメントの更新に関するものです。具体的には、String()メソッドやError()メソッドがパニック(panic)を引き起こした場合のfmtパッケージの挙動について、そのドキュメントに追記を行っています。

コミット

commit 806dea82d4668c079856b77b3824143500405d25
Author: Ian Lance Taylor <iant@golang.org>
Date:   Mon Apr 29 12:01:32 2013 -0700

    fmt: document that if String or Error panics, that value is printed
    
    Fixes #5350.
    
    R=r, minux.ma
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/8950043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/806dea82d4668c079856b77b3824143500405d25

元コミット内容

fmt: document that if String or Error panics, that value is printed (fmt: StringまたはErrorがパニックした場合、その値が出力されることをドキュメント化)

Fixes #5350. (Issue #5350を修正)

変更の背景

Go言語のfmtパッケージは、値のフォーマットと出力を行うための機能を提供します。Goのインターフェースには、Stringerインターフェース(String() stringメソッドを持つ)やerrorインターフェース(Error() stringメソッドを持つ)があり、fmtパッケージはこれらのメソッドを呼び出して値を文字列に変換することがよくあります。

しかし、これらのメソッドの実装が不適切であったり、予期せぬ状態に陥ったりした場合に、メソッドの呼び出し中にパニックが発生する可能性があります。このコミット以前は、fmtパッケージがString()Error()メソッドの呼び出し中に発生したパニックをどのように処理し、どのような出力を行うかについて、公式ドキュメントに明確な記述がありませんでした。

ユーザーがfmtパッケージを使用する際に、String()Error()メソッドがパニックを起こした場合の挙動が不明瞭であると、デバッグが困難になったり、予期せぬ出力に混乱したりする原因となります。このコミットは、この不明瞭さを解消し、開発者がより予測可能なコードを書けるようにするために、ドキュメントにその挙動を明記することを目的としています。

具体的には、関連するIssue #5350でこの挙動のドキュメント化が求められていました。

前提知識の解説

  • Go言語のfmtパッケージ: Go言語の標準ライブラリの一部で、Goの値を整形して出力するための機能を提供します。fmt.Println(), fmt.Printf(), fmt.Sprintf()などが主要な関数です。
  • Stringerインターフェース: type Stringer interface { String() string }と定義されており、任意の型がこのインターフェースを実装することで、その型の値を文字列として表現する方法を定義できます。fmtパッケージは、Stringerインターフェースを実装する値に対して、自動的にString()メソッドを呼び出して文字列化します。
  • errorインターフェース: type error interface { Error() string }と定義されており、エラーを表す型がこのインターフェースを実装します。fmtパッケージは、エラー値を整形する際にError()メソッドを呼び出します。
  • パニック (Panic): Go言語におけるランタイムエラーの一種で、プログラムの異常終了を引き起こします。通常、回復不能なエラーやプログラマの論理的な誤りを示すために使用されます。パニックが発生すると、通常の実行フローは中断され、遅延関数(defer)が実行された後、スタックがアンワインドされます。もしrecoverが呼び出されなければ、プログラムはクラッシュします。
  • fmtパッケージとパニックの相互作用: fmtパッケージがString()Error()メソッドを呼び出す際に、これらのメソッド内でパニックが発生した場合、fmtパッケージはそのパニックを捕捉し、特定の形式でエラーメッセージを整形して出力します。これは、プログラム全体のクラッシュを防ぎつつ、パニックが発生したことをユーザーに通知するためのメカニズムです。

技術的詳細

このコミットは、fmtパッケージの内部実装を変更するものではなく、その外部から見た挙動、特にString()Error()メソッドがパニックを起こした場合の挙動をドキュメントに明記するものです。

ドキュメントの追加内容は、以下の点を明確にしています。

  1. パニックの捕捉: fmtパッケージは、String()またはError()メソッドの呼び出し中に発生したパニックを捕捉します。
  2. エラーメッセージの再フォーマット: 捕捉されたパニックのエラーメッセージは、fmtパッケージによって再フォーマットされます。
  3. 装飾された出力: 再フォーマットされたメッセージには、そのパニックがfmtパッケージを介して発生したことを示す装飾が追加されます。
  4. 出力例: 具体的な出力例として、String()メソッドがpanic("bad")を呼び出した場合、結果としてフォーマットされたメッセージが%s(PANIC=bad)のようになることが示されています。ここで%sは、パニックが発生した際に使用されたfmt動詞(verb)を示します。

このドキュメントの追加により、開発者はString()Error()メソッドがパニックを起こした場合でも、fmtパッケージがどのように振る舞うかを事前に理解できるようになり、デバッグやエラーハンドリングの計画に役立ちます。これは、Go言語の「明確さ」と「予測可能性」という設計原則に沿った改善です。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/pkg/fmt/doc.goファイルに対して行われています。これはfmtパッケージのドキュメントファイルであり、コードのロジック自体には変更がありません。

--- a/src/pkg/fmt/doc.go
+++ b/src/pkg/fmt/doc.go
@@ -138,6 +138,16 @@
 	by a single character (the verb) and end with a parenthesized
 	description.
 
+	If an Error or String method triggers a panic when called by a
+	print routine, the fmt package reformats the error message
+	from the panic, decorating it with an indication that it came
+	through the fmt package.  For example, if a String method
+	calls panic("bad"), the resulting formatted message will look
+	like
+		%s(PANIC=bad)
+
+	The %s just shows the print verb in use when the failure
+	occurred.
 
 	Scanning
 

コアとなるコードの解説

追加されたドキュメントのセクションは、fmtパッケージのフォーマット動詞(verbs)に関する説明の後に挿入されています。

新しい段落は以下の内容を説明しています。

  • ErrorまたはStringメソッドが、fmtパッケージの印刷ルーチンによって呼び出された際にパニックを引き起こした場合の挙動。
  • fmtパッケージがパニックからのエラーメッセージを再フォーマットし、それがfmtパッケージを介して発生したことを示す装飾を追加すること。
  • 具体的な例として、Stringメソッドがpanic("bad")を呼び出した場合の出力形式が%s(PANIC=bad)となること。
  • %sが、失敗が発生した際に使用された印刷動詞を示すこと。

この追加により、fmtパッケージのドキュメントは、Stringererrorインターフェースの実装がパニックを引き起こす可能性のあるエッジケースに対する挙動を明確に記述するようになりました。これは、Goの標準ライブラリのドキュメントが、可能な限り包括的で、ユーザーが遭遇しうるあらゆる状況をカバーしようとする姿勢を示しています。

関連リンク

参考にした情報源リンク