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[インデックス 16371] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のツールチェイン内部で使用されるincludeディレクトリにREADMEファイルを追加するものです。このREADMEは、当該ディレクトリ内のヘッダーファイルがgc(Goコンパイラ)ツールチェインに厳密に内部的なものであり、システムインクルードディレクトリにコピーすべきではないこと、そして$GOROOT/includeにそのまま保持される必要があることを明確にしています。

コミット

  • コミットハッシュ: 6289dccf8b2d406e645c7134ee60a1fbd3b04503
  • 作者: Shenghou Ma minux.ma@gmail.com
  • コミット日時: 2013年5月22日 水曜日 18:51:15 +0800
  • コミットメッセージ:
    include: add a README file
    
    R=golang-dev, r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/9392049
    

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/6289dccf8b2d406e645c7134ee60a1fbd3b04503

元コミット内容

include: add a README file

R=golang-dev, r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/9392049

変更の背景

Go言語のソースコードリポジトリには、コンパイラやその他のツールチェインが内部的に使用するヘッダーファイルが格納されているincludeディレクトリが存在します。これらのファイルはGoのビルドシステムやコンパイラの特定の挙動に密接に結びついており、一般的なC/C++のヘッダーファイルのようにシステム全体で利用されることを意図していません。

しかし、その性質が明示されていない場合、開発者がこれらのファイルを誤ってシステムインクルードパス(例: /usr/include)にコピーしたり、Goのビルドプロセス外で利用しようとしたりする可能性があります。このような誤用は、ビルドの失敗、予期せぬ動作、または将来のGoバージョンのアップグレード時の互換性問題を引き起こす可能性があります。

このコミットは、includeディレクトリ内のファイルの意図された用途と制約を明確にするために、READMEファイルを追加することで、このような潜在的な誤用を防ぎ、開発者に対して適切な情報を提供することを目的としています。特に、cmd/distというGoのビルドツールがこれらのファイルの特定の配置に依存しているため、その重要性を強調する必要がありました。

前提知識の解説

このコミットの理解には、以下のGo言語およびシステムに関する基本的な知識が必要です。

  • Go Toolchain (gc): Go言語の公式コンパイラおよびツールセットの総称です。gcはGoプログラムをコンパイルし、実行可能なバイナリを生成します。Goのソースコードには、このgcが内部的に利用する様々なファイルが含まれており、includeディレクトリはその一部です。これらのファイルは、Goのランタイム、ガベージコレクタ、スケジューラなどの低レベルな実装に関連する情報を含んでいることがあります。

  • $GOROOT: Go言語のインストールディレクトリを指す環境変数です。Goのソースコード、標準ライブラリ、ツールチェインのバイナリなどがこのディレクトリ以下に配置されます。Goのビルドシステムは、$GOROOTを基準として必要なファイルを探索します。

  • cmd/dist: Go言語のソースコードからGoツールチェイン自体をビルドするためのコマンドです。cmd/distは、Goのコンパイラ、リンカ、アセンブラなどのツールを構築し、$GOROOT/binに配置します。このツールは、Goのソースツリー内の特定のファイルパスに厳密に依存しており、ファイルの配置が変更されると正しく機能しなくなる可能性があります。

  • システムインクルードディレクトリ (/usr/include, /usr/local/include など): Unix系システムにおいて、C/C++コンパイラが標準でヘッダーファイルを探索するディレクトリです。これらのディレクトリには、システムライブラリや広く利用されるサードパーティライブラリの公開ヘッダーファイルが配置されます。通常、アプリケーション開発者はこれらのディレクトリにあるヘッダーファイルを参照してプログラムをビルドします。Goの内部ヘッダーファイルは、これらのシステムディレクトリに配置されるべきではありません。なぜなら、それらはGoツールチェインの内部実装に特化しており、一般的なC/C++プログラムから直接利用することを意図していないためです。また、Goのバージョンアップに伴い、これらの内部ヘッダーの構造や内容が予告なく変更される可能性があり、システムインクルードディレクトリにコピーすると、システム全体のビルド環境に予期せぬ影響を与えるリスクがあります。

技術的詳細

このコミットが追加するREADMEファイルは、includeディレクトリ内のヘッダーファイルが持つ二つの重要な特性と、それらに伴う制約を明確にしています。

  1. gcツールチェインへの厳密な内部性: includeディレクトリ内のファイルは、Goコンパイラ(gc)および関連ツールが内部的に使用するために設計されています。これらはGo言語のランタイム、コンパイラのコード生成、ガベージコレクションなどの低レベルな実装の詳細を定義している可能性があります。したがって、これらのファイルはGoツールチェインの外部から直接参照したり、一般的なC/C++プロジェクトのヘッダーとして利用したりすることは意図されていません。もしこれらをシステムインクルードディレクトリにコピーした場合、他のC/C++プロジェクトが誤ってGoの内部ヘッダーを参照し、コンパイルエラーやリンクエラー、あるいは実行時の未定義動作を引き起こす可能性があります。また、Goの内部APIは安定性が保証されておらず、Goのバージョンアップによって頻繁に変更されるため、外部からの依存は非常に脆いものとなります。

  2. $GOROOT/includeへの厳密な配置要件: READMEは、これらのファイルが$GOROOT/includeに「そのまま」保持されなければならないと述べています。これは、Goのビルドシステム、特にcmd/distが、これらのファイルの特定のパスと内容に依存しているためです。cmd/distはGoツールチェイン自体をビルドする際に、$GOROOT以下の特定のパスにあるファイルを探索し、それらを基にコンパイラやその他のツールを構築します。もしこれらのファイルが移動されたり、内容が変更されたり、あるいはシステムインクルードディレクトリにコピーされて元の場所から削除されたりすると、cmd/distは正しく機能せず、Goツールチェインのビルドが失敗する可能性があります。この制約は、Goの自己ホスト型コンパイラとビルドプロセスの整合性を維持するために不可欠です。

このREADMEの追加は、Goのソースコードを扱う開発者、特にGoツールチェインの内部構造に触れる可能性のある開発者に対して、これらのファイルの特殊な性質と取り扱いに関する重要なガイドラインを提供し、潜在的な問題を未然に防ぐためのドキュメンテーション上の改善と言えます。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットによる変更は、include/READMEという新しいファイルが追加されたことのみです。

diff --git a/include/README b/include/README
new file mode 100644
index 0000000000..b8fb5231a9
--- /dev/null
+++ b/include/README
@@ -0,0 +1,6 @@
+The header files under this directory are strictly internal to the gc
+toolchain, so please don't copy them to the system include file
+directory (/usr/include, /usr/local/include, etc.)
+
+Also note that they must be kept as is in $GOROOT/include, or cmd/dist
+will malfunction.

コアとなるコードの解説

追加されたinclude/READMEファイルの内容は以下の通りです。

  1. The header files under this directory are strictly internal to the gc toolchain, so please don't copy them to the system include file directory (/usr/include, /usr/local/include, etc.)

    • この行は、includeディレクトリ内のヘッダーファイルがGoコンパイラ(gc)ツールチェインに「厳密に内部的」であることを明確に述べています。これは、これらのファイルがGoの内部実装に特化しており、外部のプログラムから直接利用されることを意図していないことを意味します。
    • 続けて、これらのファイルを/usr/include/usr/local/includeといった「システムインクルードディレクトリ」にコピーしないよう警告しています。これは、誤ってコピーすると、他のC/C++プログラムがGoの内部ヘッダーを参照してしまい、ビルドエラーや予期せぬ動作を引き起こす可能性があるためです。また、Goの内部APIは安定性が保証されておらず、将来のバージョンで変更される可能性があるため、システム全体に影響を与えるような配置は避けるべきです。
  2. Also note that they must be kept as is in $GOROOT/include, or cmd/dist will malfunction.

    • この行は、さらに重要な制約を提示しています。それは、これらのファイルが$GOROOT/includeに「そのまま」(as is)保持されなければならないという点です。
    • 理由として、「cmd/distが誤動作する」(cmd/dist will malfunction)と明記されています。cmd/distはGoツールチェイン自体をビルドするための重要なツールであり、Goのソースツリー内の特定のファイルパスに厳密に依存しています。もしこれらのヘッダーファイルが移動されたり、名前が変更されたり、あるいは内容がGoのビルドシステムが期待するものと異なったりすると、cmd/distはGoツールチェインを正しくビルドできなくなり、結果としてGoの開発環境全体が機能しなくなる可能性があります。
    • この警告は、Goの自己ホスト型コンパイラとビルドプロセスの整合性を維持するために、これらの内部ヘッダーファイルの配置と内容が極めて重要であることを強調しています。

このREADMEは、Goのソースコードを扱う開発者にとって、includeディレクトリ内のファイルの特殊な性質と、それらを適切に扱うための重要な指示を提供する、簡潔かつ効果的なドキュメンテーションです。

関連リンク

  • Gerrit Change-ID: https://golang.org/cl/9392049 このリンクは、Goプロジェクトがコードレビューに利用しているGerritシステムにおける、このコミットに対応する変更セット(Change-ID)を示しています。Gerritでは、コミットがマージされる前にレビュープロセスが行われ、その議論や変更履歴がこのリンクから確認できます。

参考にした情報源リンク

  • GitHub上のコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/6289dccf8b2d406e645c7134ee60a1fbd3b04503
  • Go言語公式ドキュメント (GOROOT, Go Toolchain関連): 一般的なGoの環境設定やツールチェインに関する情報は、Go言語の公式ドキュメントや関連するブログ記事から参照しました。
  • Goソースコードの構造に関する情報: cmd/distincludeディレクトリの役割については、Goのソースコードリポジトリの構造や、Goのビルドプロセスに関するコミュニティの議論や解説記事を参考にしました。
  • Web検索: Goのgcツールチェイン、$GOROOTcmd/dist、システムインクルードディレクトリの概念について、より深い理解を得るために一般的なWeb検索も活用しました。