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[インデックス 16444] ファイルの概要

このコミットは、Go 1.2のリリースノートであるdoc/go1.2.txtに、testingパッケージのAllocsPerRun関数の挙動変更に関する記述を追加するものです。具体的には、AllocsPerRunが整数に量子化されるようになったという変更を文書化しています。

コミット

commit 85fc2f70acf1ad1f834e826a1bbde3e02fe2c9ee
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date:   Thu May 30 12:41:20 2013 -0400

    doc/go1.2.txt: AllocsPerRun now quantized

    R=golang-dev, khr, rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/9728045

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/85fc2f70acf1ad1f834e826a1bbde3e02fe2c9ee

元コミット内容

--- a/doc/go1.2.txt
+++ b/doc/go1.2.txt
@@ -12,3 +12,4 @@ cmd/5a: removed support for R9/R10 (use m/g instead) (CL 9840043).
 
 fmt: indexed access to arguments in Printf etc. (CL 9680043).
 io: Copy prioritizes WriterTo over ReaderFrom (CL 9462044).
+testing: AllocsPerRun is now quantized to an integer (the type is still float64) (CL 9837049).

変更の背景

このコミット自体は、Go 1.2のリリースに向けたドキュメントの更新です。ここで記述されている変更は、testingパッケージのベンチマーク機能の一部であるAllocsPerRunの挙動に関するものです。

Goのベンチマークでは、特定の操作が実行されるたびに発生するメモリ割り当ての回数を測定できます。これは、testing.B構造体のAllocsPerRun()メソッドによって提供されます。このメソッドは、ベンチマークの各イテレーションで発生する平均メモリ割り当て数を返します。

元々、この値はfloat64型で、小数点以下の値を持つ可能性がありました。しかし、メモリ割り当ては本質的に離散的なイベントであり、常に整数回発生します。小数点以下の値は、ベンチマークの実行方法や測定の特性に起因するもので、実際の割り当て回数を正確に反映していない場合がありました。

CL 9837049(このコミットで言及されている変更の実際のコミット)では、このAllocsPerRunの値を整数に「量子化」する変更が導入されました。これは、測定の精度を向上させ、ベンチマーク結果の再現性を高めることを目的としています。このコミットは、その重要な変更をGo 1.2のリリースノートに明記することで、ユーザーがこの挙動変更を認識できるようにするためのものです。

前提知識の解説

Goのベンチマーク

Goには、標準ライブラリのtestingパッケージにベンチマーク機能が組み込まれています。これにより、コードのパフォーマンスを測定し、最適化のボトルネックを特定することができます。ベンチマーク関数は、func BenchmarkXxx(*testing.B)というシグネチャを持ち、go test -bench .コマンドで実行されます。

testing.B

ベンチマーク関数に渡される*testing.B型は、ベンチマークの実行を制御し、測定結果を収集するためのメソッドを提供します。主要なメソッドには以下のようなものがあります。

  • b.N: ベンチマーク関数が実行されるイテレーション数。
  • b.ResetTimer(): タイマーをリセットし、ベンチマークの測定を開始します。
  • b.StopTimer(): タイマーを停止します。
  • b.StartTimer(): タイマーを再開します。
  • b.ReportAllocs(): メモリ割り当ての測定を有効にします。
  • b.AllocsPerRun(): ベンチマークの各イテレーションで発生した平均メモリ割り当て数を返します。

AllocsPerRun

AllocsPerRunは、ベンチマークの実行中に発生したメモリ割り当ての回数を測定するために使用されます。これは、特にガベージコレクションのオーバーヘッドやメモリ使用量を最適化する際に重要な指標となります。例えば、ある操作が不必要に多くのメモリを割り当てている場合、AllocsPerRunの値が高くなる傾向があります。

量子化 (Quantization)

量子化とは、連続的な値や非常に細かい離散的な値を、より粗い離散的な値に変換するプロセスを指します。この文脈では、AllocsPerRunfloat64型でありながら、その値が最も近い整数に丸められることを意味します。これにより、例えば「2.7回の割り当て」といった非現実的な値ではなく、「3回の割り当て」といった、より直感的で物理的な意味を持つ値が報告されるようになります。

技術的詳細

AllocsPerRunの量子化は、ベンチマーク結果の信頼性と解釈可能性を向上させるための重要な変更です。

  1. 測定の正確性: メモリ割り当ては、プログラムの実行中にヒープからメモリが確保されるイベントであり、常に整数回発生します。例えば、make([]int, 10)は1回の割り当てを発生させます。AllocsPerRunが小数点以下の値を持つ場合、それは測定のノイズやベンチマークのセットアップによる誤差を反映している可能性がありました。量子化により、報告される値が実際の割り当て回数に近づき、より正確な情報を提供できるようになります。

  2. 再現性の向上: ベンチマークは、同じコードに対して同じ環境で実行された場合、常に同じ結果を出すことが理想的です。しかし、浮動小数点数の計算やシステムの状態のわずかな変動により、AllocsPerRunが微妙に異なる値を示すことがありました。整数への量子化は、このような微細な変動を吸収し、ベンチマーク結果の再現性を高めるのに役立ちます。これにより、開発者はコードの変更がパフォーマンスに与える影響をより確実に評価できるようになります。

  3. 初期化による誤差の軽減: ベンチマークの初期化フェーズで発生する割り当てが、AllocsPerRunの計算に影響を与えることがありました。量子化は、これらの初期化による小さな誤差を丸め込み、ベンチマーク対象のコード自体の割り当て挙動をより明確に反映させる効果があります。

この変更は、AllocsPerRunの型がfloat64のままであるにもかかわらず、その値が整数に丸められるという点で注意が必要です。これは、APIの互換性を維持しつつ、内部的な計算結果の解釈を変更するというアプローチです。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットにおけるコアとなるコードの変更箇所は、doc/go1.2.txtファイルへの1行の追加です。

--- a/doc/go1.2.txt
+++ b/doc/go1.2.txt
@@ -12,3 +12,4 @@ cmd/5a: removed support for R9/R10 (use m/g instead) (CL 9840043).
 
 fmt: indexed access to arguments in Printf etc. (CL 9680043).
 io: Copy prioritizes WriterTo over ReaderFrom (CL 9462044).
+testing: AllocsPerRun is now quantized to an integer (the type is still float64) (CL 9837049).

具体的には、+testing: AllocsPerRun is now quantized to an integer (the type is still float64) (CL 9837049). の行が追加されています。

コアとなるコードの解説

追加された行は、Go 1.2のリリースノートの一部として、testingパッケージのAllocsPerRun関数の重要な変更点を簡潔に説明しています。

  • testing: AllocsPerRun is now quantized to an integer: これは、testingパッケージのAllocsPerRunメソッドが返す値が、小数点以下を持たない整数に丸められるようになったことを明確に示しています。
  • (the type is still float64): これは、AllocsPerRunメソッドの戻り値の型がfloat64のままであることを補足しています。これは、既存のコードとの互換性を保ちつつ、内部的な計算結果の解釈を変更したことを意味します。
  • (CL 9837049): この括弧内の記述は、この変更が実際に導入されたGoの変更リスト(Change List)の番号を示しています。これにより、ユーザーや開発者は、この変更の詳細な実装や議論を追跡することができます。

この1行は、Goのベンチマーク機能を利用する開発者にとって、AllocsPerRunの挙動が変更されたことを知らせる重要な情報源となります。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go 1.2のAllocsPerRunに関する情報: https://go.dev/doc/go1.2 (Go 1.2リリースノートの公式ドキュメント)
  • Goのベンチマークに関する公式ドキュメント: https://pkg.go.dev/testing (Go testingパッケージのドキュメント)
  • Web検索結果: go.dev (https://vertexaisearch.cloud.google.com/grounding-api-redirect/AUZIYQFshpN_kCNYg3lDAD_yi5wOSJqLANL3P_mIjRfLPGuPbLGxJhbYg-dd5nxo301d2thL4RLjmYZOaFvn763oD5VENCMudAfXrT6jejmH4RRrBL3zOA==)