[インデックス 16449] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式仕様書（doc/go_spec.html）における「クローズされたチャネルからの受信」に関する記述の文言を改善するものです。既存の記述が誤解を招く可能性があったため、より正確で明確な表現に修正されました。

コミット

commit ab5c762a4644c5701dfa14905802979b04cee4b0
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date:   Fri May 31 11:21:37 2013 -0700

    spec: better wording re: receiving from closed channels
    
    As suggested by ej@evanjones.ca.
    
    Fixes #5604.
    
    R=r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/9899043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/ab5c762a4644c5701dfa14905802979b04cee4b0

元コミット内容

このコミットは、Go言語の仕様書（doc/go_spec.html）の以下の部分を変更しています。

変更前の記述:

Receiving from a <a href="#Close">closed</a> channel always succeeds,
immediately returning the element type's <a href="#The_zero_value">zero
value</a>.

この記述は、「クローズされたチャネルからの受信は常に成功し、即座に要素型のゼロ値を返す」と述べていました。

変更の背景

この変更は、ej@evanjones.ca（Evan Jones氏）からの提案に基づいて行われました。Go言語のIssue #5604（"spec: receiving from closed channels"）で議論された内容を修正するものです。

元の記述「always succeeds, immediately returning」は、クローズされたチャネルからの受信が、あたかもチャネルがクローズされた瞬間にのみ発生するような印象を与える可能性がありました。しかし、実際には、チャネルがクローズされた後も、チャネルにまだ送信されていない値が残っている場合、それらの値は引き続き受信可能です。チャネルが完全に空になり、かつクローズされた後に初めて、ゼロ値が返されるようになります。

この曖昧さを解消し、より正確な挙動を反映するために、文言の修正が必要とされました。特に、チャネルがクローズされた後でも、バッファリングされた値がまだ存在する場合に、その値が優先的に受信されるという挙動を明確にすることが目的でした。

前提知識の解説

Go言語のチャネル (Channels)

Go言語のチャネルは、ゴルーチン（goroutine）間で値を送受信するための通信メカニズムです。チャネルは、Goの並行処理モデルの根幹をなす要素であり、共有メモリによる競合状態を避けるために推奨される通信手段です。

• チャネルの作成: make(chan Type) で作成します。バッファリングされていないチャネル（unbuffered channel）と、バッファリングされたチャネル（buffered channel）があります。
  • make(chan Type): バッファリングされていないチャネル。送信と受信が同時に行われるまでブロックします。
  • make(chan Type, capacity): バッファリングされたチャネル。capacityで指定された数の要素をバッファに保持できます。バッファが満杯になるまで送信はブロックせず、バッファが空になるまで受信はブロックしません。

チャネルのクローズ (Closing Channels)

チャネルは、close(ch) 関数を使ってクローズすることができます。チャネルをクローズすると、それ以上そのチャネルに値を送信できなくなります。

• クローズの目的: 送信側がこれ以上送信する値がないことを受信側に通知するために使用されます。
• クローズ後の送信: クローズされたチャネルに値を送信しようとすると、パニック（panic）が発生します。
• クローズ後の受信: クローズされたチャネルから受信操作を行うことは可能です。

クローズされたチャネルからの受信の挙動

ここが本コミットの核心部分です。クローズされたチャネルからの受信には、以下の2つの主要なケースがあります。

1. チャネルにまだ値が残っている場合:

   • バッファリングされたチャネルの場合、クローズされてもバッファにまだ値が残っていることがあります。
   • これらの値は、チャネルがクローズされた後も、通常通り受信できます。
   • 値がすべて受信され尽くすまでは、ゼロ値は返されません。

2. チャネルが空になり、かつクローズされている場合:

   • バッファリングされていないチャネルの場合、クローズされた時点で常に空です。
   • バッファリングされたチャネルの場合、バッファ内のすべての値が受信され尽くした後。
   • この状態になると、それ以降の受信操作はブロックすることなく、チャネルの要素型のゼロ値を返します。
   • 受信操作の2番目の戻り値（ok）は false になります。これは、受信した値がゼロ値であり、それがチャネルがクローズされたことによるものであることを示します。

ゼロ値 (Zero Value)

Go言語では、変数を宣言した際に明示的に初期化しなくても、その型のゼロ値で自動的に初期化されます。

• 数値型（int, float64など）: 0
• ブール型（bool）: false
• 文字列型（string）: "" (空文字列)
• ポインタ、スライス、マップ、チャネル、関数、インターフェース: nil
• 構造体: すべてのフィールドがそれぞれのゼロ値で初期化されます。

クローズされたチャネルから値を受信し、それがゼロ値である場合、そのゼロ値がチャネルがクローズされたことによるものなのか、それとも実際に送信されたゼロ値なのかを区別するために、多値受信（value, ok := <-ch）が利用されます。ok が false であれば、チャネルはクローズされており、受信した値はゼロ値です。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、Go言語のチャネルのセマンティクス、特にクローズされたチャネルからの受信の挙動に関する仕様の正確性にあります。

元の記述「Receiving from a closed channel always succeeds, immediately returning the element type's zero value.」は、以下の点で不正確または誤解を招く可能性がありました。

1. immediately returning の誤解: この表現は、チャネルがクローズされたらすぐにゼロ値が返されるかのような印象を与えます。しかし、前述の通り、バッファリングされたチャネルの場合、クローズ後もバッファに値が残っていれば、それらの値が優先的に受信されます。ゼロ値が返されるのは、チャネルが完全に空になった後です。
2. always succeeds の曖昧さ: 受信操作自体は成功しますが、その「成功」が何を意味するのかが不明確でした。値が受信できることなのか、それともブロックしないことなのか。

新しい記述「A receive operation on a closed channel can always proceed immediately, yielding the element type's zero value.」は、これらの問題を解決します。

• can always proceed immediately: この表現は、受信操作がブロックしないことを明確にしています。つまり、クローズされたチャネルからの受信は、値が残っているかゼロ値が返されるかにかかわらず、常に非ブロックで進行します。これは、チャネルがクローズされた後に、受信側が無限にブロックされることがないという重要な保証を意味します。
• yielding the element type's zero value: この部分は、チャネルが空になった後に何が返されるかを明確にしています。immediately returning ではなく yielding を使うことで、ゼロ値が返されるのはチャネルが空になった後であるというニュアンスをより正確に伝えています。

この修正は、Go言語の仕様が、実際のランタイムの挙動と完全に一致するように、そして開発者がチャネルの挙動を正確に理解できるようにするための重要な改善です。特に、並行処理のコードを書く上で、チャネルのクローズと受信のセマンティクスを正確に把握することは、デッドロックや予期せぬ挙動を避けるために不可欠です。

コアとなるコードの変更箇所

変更は doc/go_spec.html ファイルにあります。

--- a/doc/go_spec.html
+++ b/doc/go_spec.html
@@ -1,6 +1,6 @@
 <!--{
  	"Title": "The Go Programming Language Specification",
-	"Subtitle": "Version of May 20, 2013",
+	"Subtitle": "Version of May 31, 2013",
  	"Path": "/ref/spec"
 }-->
 
@@ -3301,9 +3301,8 @@ from the channel <code>ch</code>. The channel direction must permit receive oper
 and the type of the receive operation is the element type of the channel.
 The expression blocks until a value is available.
 Receiving from a <code>nil</code> channel blocks forever.
-Receiving from a <a href="#Close">closed</a> channel always succeeds,
-immediately returning the element type\'s <a href="#The_zero_value">zero
-value</a>.
+A receive operation on a <a href="#Close">closed</a> channel can always proceed
+immediately, yielding the element type\'s <a href="#The_zero_value">zero value</a>.
 </p>
 
 <pre>

コアとなるコードの解説

この変更は、Go言語の仕様書内のHTMLドキュメントの一部を修正しています。

1. 日付の更新: - "Subtitle": "Version of May 20, 2013", + "Subtitle": "Version of May 31, 2013", これは、仕様書のバージョン日付をコミット日に合わせて更新したものです。これはドキュメントの一般的なメンテナンスの一部です。

2. チャネル受信の記述修正: -Receiving from a <a href="#Close">closed</a> channel always succeeds, -immediately returning the element type\'s <a href="#The_zero_value">zero -value</a>. +A receive operation on a <a href="#Close">closed</a> channel can always proceed +immediately, yielding the element type\'s <a href="#The_zero_value">zero value</a>.

   この部分が本コミットの主要な変更点です。

   • 元の「always succeeds, immediately returning the element type's zero value」という表現が削除されました。
   • 代わりに、「A receive operation on a closed channel can always proceed immediately, yielding the element type's zero value.」という新しい表現が導入されました。

   この変更により、クローズされたチャネルからの受信の挙動がより正確に記述されています。

   • 「can always proceed immediately」は、受信操作がブロックしないことを強調しています。チャネルがクローズされていれば、値が残っていようがいまいが、受信操作はすぐに進行します。
   • 「yielding the element type's zero value」は、チャネルが空になった後にゼロ値が返されることを示唆しています。immediately returning ではなく yielding を使うことで、ゼロ値が返されるタイミングが、チャネルが完全に空になった後であることをより適切に表現しています。

この修正は、Go言語のチャネルのセマンティクスに関する誤解を減らし、仕様の正確性を高めることを目的としています。

関連リンク

• GitHubコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/ab5c762a4644c5701dfa14905802979b04cee4b0
• Go CL (Code Review): https://golang.org/cl/9899043
• Go Issue #5604: https://github.com/golang/go/issues/5604

参考にした情報源リンク

• Go Programming Language Specification - Channels: https://go.dev/ref/spec#Channel_types
• Go Programming Language Specification - Receive operator: https://go.dev/ref/spec#Receive_operator
• Go Programming Language Specification - The zero value: https://go.dev/ref/spec#The_zero_value
• A Tour of Go - Channels: https://go.dev/tour/concurrency/2
• Effective Go - Channels: https://go.dev/doc/effective_go#channels
• Stack Overflow - What happens when you receive from a closed channel in Go?: https://stackoverflow.com/questions/11886531/what-happens-when-you-receive-from-a-closed-channel-in-go
• Go by Example - Channels: https://gobyexample.com/channels
• Go by Example - Channel Buffering: https://gobyexample.com/channel-buffering
• Go by Example - Channel Synchronization: https://gobyexample.com/channel-synchronization
• Go by Example - Closing Channels: https://gobyexample.com/closing-channels
• Evan Jones's blog (for context on ej@evanjones.ca): https://www.evanjones.ca/ (具体的な記事は特定できませんでしたが、Goコミュニティへの貢献者として認識されています。)
• Robert Griesemer's profile (for context on author): https://go.dev/blog/griesemer (Go言語の共同設計者の一人)# [インデックス 16449] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式仕様書（doc/go_spec.html）における「クローズされたチャネルからの受信」に関する記述の文言を改善するものです。既存の記述が誤解を招く可能性があったため、より正確で明確な表現に修正されました。

コミット

commit ab5c762a4644c5701dfa14905802979b04cee4b0
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date:   Fri May 31 11:21:37 2013 -0700

    spec: better wording re: receiving from closed channels
    
    As suggested by ej@evanjones.ca.
    
    Fixes #5604.
    
    R=r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/9899043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/ab5c762a4644c5701dfa14905802979b04cee4b0

元コミット内容

このコミットは、Go言語の仕様書（doc/go_spec.html）の以下の部分を変更しています。

変更前の記述:

Receiving from a <a href="#Close">closed</a> channel always succeeds,
immediately returning the element type's <a href="#The_zero_value">zero
value</a>.

この記述は、「クローズされたチャネルからの受信は常に成功し、即座に要素型のゼロ値を返す」と述べていました。

変更の背景

この変更は、ej@evanjones.ca（Evan Jones氏）からの提案に基づいて行われました。Go言語のIssue #5604（"spec: receiving from closed channels"）で議論された内容を修正するものです。

元の記述「always succeeds, immediately returning」は、クローズされたチャネルからの受信が、あたかもチャネルがクローズされた瞬間にのみ発生するような印象を与える可能性がありました。しかし、実際には、チャネルがクローズされた後も、チャネルにまだ送信されていない値が残っている場合、それらの値は引き続き受信可能です。チャネルが完全に空になり、かつクローズされた後に初めて、ゼロ値が返されるようになります。

この曖昧さを解消し、より正確な挙動を反映するために、文言の修正が必要とされました。特に、チャネルがクローズされた後でも、バッファリングされた値がまだ存在する場合に、その値が優先的に受信されるという挙動を明確にすることが目的でした。

前提知識の解説

Go言語のチャネル (Channels)

Go言語のチャネルは、ゴルーチン（goroutine）間で値を送受信するための通信メカニズムです。チャネルは、Goの並行処理モデルの根幹をなす要素であり、共有メモリによる競合状態を避けるために推奨される通信手段です。

• チャネルの作成: make(chan Type) で作成します。バッファリングされていないチャネル（unbuffered channel）と、バッファリングされたチャネル（buffered channel）があります。
  • make(chan Type): バッファリングされていないチャネル。送信と受信が同時に行われるまでブロックします。
  • make(chan Type, capacity): バッファリングされたチャネル。capacityで指定された数の要素をバッファに保持できます。バッファが満杯になるまで送信はブロックせず、バッファが空になるまで受信はブロックしません。

チャネルのクローズ (Closing Channels)

チャネルは、close(ch) 関数を使ってクローズすることができます。チャネルをクローズすると、それ以上そのチャネルに値を送信できなくなります。

• クローズの目的: 送信側がこれ以上送信する値がないことを受信側に通知するために使用されます。
• クローズ後の送信: クローズされたチャネルに値を送信しようとすると、パニック（panic）が発生します。
• クローズ後の受信: クローズされたチャネルから受信操作を行うことは可能です。

クローズされたチャネルからの受信の挙動

ここが本コミットの核心部分です。クローズされたチャネルからの受信には、以下の2つの主要なケースがあります。

1. チャネルにまだ値が残っている場合:

   • バッファリングされたチャネルの場合、クローズされてもバッファにまだ値が残っていることがあります。
   • これらの値は、チャネルがクローズされた後も、通常通り受信できます。
   • 値がすべて受信され尽くすまでは、ゼロ値は返されません。

2. チャネルが空になり、かつクローズされている場合:

   • バッファリングされていないチャネルの場合、クローズされた時点で常に空です。
   • バッファリングされたチャネルの場合、バッファ内のすべての値が受信され尽くした後。
   • この状態になると、それ以降の受信操作はブロックすることなく、チャネルの要素型のゼロ値を返します。
   • 受信操作の2番目の戻り値（ok）は false になります。これは、受信した値がゼロ値であり、それがチャネルがクローズされたことによるものであることを示します。

ゼロ値 (Zero Value)

Go言語では、変数を宣言した際に明示的に初期化しなくても、その型のゼロ値で自動的に初期化されます。

• 数値型（int, float64など）: 0
• ブール型（bool）: false
• 文字列型（string）: "" (空文字列)
• ポインタ、スライス、マップ、チャネル、関数、インターフェース: nil
• 構造体: すべてのフィールドがそれぞれのゼロ値で初期化されます。

クローズされたチャネルから値を受信し、それがゼロ値である場合、そのゼロ値がチャネルがクローズされたことによるものなのか、それとも実際に送信されたゼロ値なのかを区別するために、多値受信（value, ok := <-ch）が利用されます。ok が false であれば、チャネルはクローズされており、受信した値はゼロ値です。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、Go言語のチャネルのセマンティクス、特にクローズされたチャネルからの受信の挙動に関する仕様の正確性にあります。

元の記述「Receiving from a closed channel always succeeds, immediately returning the element type's zero value.」は、以下の点で不正確または誤解を招く可能性がありました。

1. immediately returning の誤解: この表現は、チャネルがクローズされたらすぐにゼロ値が返されるかのような印象を与えます。しかし、前述の通り、バッファリングされたチャネルの場合、クローズ後もバッファに値が残っていれば、それらの値が優先的に受信されます。ゼロ値が返されるのは、チャネルが完全に空になった後です。
2. always succeeds の曖昧さ: 受信操作自体は成功しますが、その「成功」が何を意味するのかが不明確でした。値が受信できることなのか、それともブロックしないことなのか。

新しい記述「A receive operation on a closed channel can always proceed immediately, yielding the element type's zero value.」は、これらの問題を解決します。

• can always proceed immediately: この表現は、受信操作がブロックしないことを明確にしています。つまり、クローズされたチャネルからの受信は、値が残っているかゼロ値が返されるかにかかわらず、常に非ブロックで進行します。これは、チャネルがクローズされた後に、受信側が無限にブロックされることがないという重要な保証を意味します。
• yielding the element type's zero value: この部分は、チャネルが空になった後に何が返されるかを明確にしています。immediately returning ではなく yielding を使うことで、ゼロ値が返されるのはチャネルが空になった後であるというニュアンスをより正確に伝えています。

この修正は、Go言語の仕様が、実際のランタイムの挙動と完全に一致するように、そして開発者がチャネルの挙動を正確に理解できるようにするための重要な改善です。特に、並行処理のコードを書く上で、チャネルのクローズと受信のセマンティクスを正確に把握することは、デッドロックや予期せぬ挙動を避けるために不可欠です。

コアとなるコードの変更箇所

変更は doc/go_spec.html ファイルにあります。

--- a/doc/go_spec.html
+++ b/doc/go_spec.html
@@ -1,6 +1,6 @@
 <!--{
  	"Title": "The Go Programming Language Specification",
-	"Subtitle": "Version of May 20, 2013",
+	"Subtitle": "Version of May 31, 2013",
  	"Path": "/ref/spec"
 }-->
 
@@ -3301,9 +3301,8 @@ from the channel <code>ch</code>. The channel direction must permit receive oper
 and the type of the receive operation is the element type of the channel.
 The expression blocks until a value is available.
 Receiving from a <code>nil</code> channel blocks forever.
-Receiving from a <a href="#Close">closed</a> channel always succeeds,
-immediately returning the element type\'s <a href="#The_zero_value">zero
-value</a>.
+A receive operation on a <a href="#Close">closed</a> channel can always proceed
+immediately, yielding the element type\'s <a href="#The_zero_value">zero value</a>.
 </p>
 
 <pre>

コアとなるコードの解説

この変更は、Go言語の仕様書内のHTMLドキュメントの一部を修正しています。

1. 日付の更新: - "Subtitle": "Version of May 20, 2013", + "Subtitle": "Version of May 31, 2013", これは、仕様書のバージョン日付をコミット日に合わせて更新したものです。これはドキュメントの一般的なメンテナンスの一部です。

2. チャネル受信の記述修正: -Receiving from a <a href="#Close">closed</a> channel always succeeds, -immediately returning the element type\'s <a href="#The_zero_value">zero -value</a>. +A receive operation on a <a href="#Close">closed</a> channel can always proceed +immediately, yielding the element type\'s <a href="#The_zero_value">zero value</a>.

   この部分が本コミットの主要な変更点です。

   • 元の「always succeeds, immediately returning the element type's zero value」という表現が削除されました。
   • 代わりに、「A receive operation on a closed channel can always proceed immediately, yielding the element type's zero value.」という新しい表現が導入されました。

   この変更により、クローズされたチャネルからの受信の挙動がより正確に記述されています。

   • 「can always proceed immediately」は、受信操作がブロックしないことを強調しています。チャネルがクローズされていれば、値が残っていようがいまいが、受信操作はすぐに進行します。
   • 「yielding the element type's zero value」は、チャネルが空になった後にゼロ値が返されることを示唆しています。immediately returning ではなく yielding を使うことで、ゼロ値が返されるタイミングが、チャネルが完全に空になった後であることをより適切に表現しています。

この修正は、Go言語のチャネルのセマンティクスに関する誤解を減らし、仕様の正確性を高めることを目的としています。

関連リンク

• GitHubコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/ab5c762a4644c5701dfa14905802979b04cee4b0
• Go CL (Code Review): https://golang.org/cl/9899043
• Go Issue #5604: https://github.com/golang/go/issues/5604

参考にした情報源リンク

• Go Programming Language Specification - Channels: https://go.dev/ref/spec#Channel_types
• Go Programming Language Specification - Receive operator: https://go.dev/ref/spec#Receive_operator
• Go Programming Language Specification - The zero value: https://go.dev/ref/spec#The_zero_value
• A Tour of Go - Channels: https://go.dev/tour/concurrency/2
• Effective Go - Channels: https://go.dev/doc/effective_go#channels
• Stack Overflow - What happens when you receive from a closed channel in Go?: https://stackoverflow.com/questions/11886531/what-happens-when-you-receive-from-a-closed-channel-in-go
• Go by Example - Channels: https://gobyexample.com/channels
• Go by Example - Channel Buffering: https://gobyexample.com/channel-buffering
• Go by Example - Channel Synchronization: https://gobyexample.com/channel-synchronization
• Go by Example - Closing Channels: https://gobyexample.com/closing-channels
• Evan Jones's blog (for context on ej@evanjones.ca): https://www.evanjones.ca/ (具体的な記事は特定できませんでしたが、Goコミュニティへの貢献者として認識されています。)
• Robert Griesemer's profile (for context on author): https://go.dev/blog/griesemer (Go言語の共同設計者の一人)