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[インデックス 16453] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のランタイムの一部であるlib9/utfディレクトリ内の複数のC言語ソースファイルから、不要なインクルードファイルを削除し、一部のファイルで_BSD_SOURCEマクロを定義する変更です。これにより、コードのクリーンアップと依存関係の最適化が図られています。

コミット

commit af7f7b7515a335b593049f04d4fedff7c7c7d128
Author: Anthony Martin <ality@pbrane.org>
Date:   Fri May 31 15:53:26 2013 -0700

    lib9/utf: remove unneccesary includes
    
    R=golang-dev, r, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/8651043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/af7f7b7515a335b593049f04d4fedff7c7c7d128

元コミット内容

lib9/utf: remove unneccesary includes

このコミットメッセージは、「lib9/utf: 不要なインクルードを削除」と簡潔に述べています。

変更の背景

この変更の背景には、Go言語のランタイムにおけるコードベースの保守性と効率性の向上が挙げられます。C言語で書かれたコードにおいて、実際に使用されていないヘッダーファイルをインクルードすることは、コンパイル時間の増加、ビルドシステムの複雑化、そして潜在的なシンボル衝突のリスクを招きます。また、不要な依存関係は、コードの可読性を低下させ、将来的なリファクタリングやメンテナンスを困難にする可能性があります。

特に、stdarg.h(可変引数リストを扱うためのヘッダー)やstring.h(文字列操作関数を扱うためのヘッダー)が、それらの機能が実際に使用されていないファイルでインクルードされていた場合、それらを削除することは、コードの「清潔さ」を保つ上で重要です。

_BSD_SOURCEマクロの追加は、特定のPOSIXまたはBSD拡張機能を使用するために必要となる場合があります。これは、標準Cライブラリの動作を制御し、特定の関数や定義を有効にするために用いられます。このコミットでは、utfecpy.cにおいてこのマクロが追加されており、これはおそらく、このファイル内で使用されている何らかの関数や定義が、標準Cライブラリのデフォルト設定では利用できないBSD固有の機能に依存しているためと考えられます。

前提知識の解説

  • Go言語のランタイム (Runtime): Go言語で書かれたプログラムが実行される際に、メモリ管理(ガベージコレクション)、スケジューリング、システムコールなど、低レベルな操作を司る部分です。Goランタイムの一部はC言語で書かれており、これはGo言語がC言語の既存のライブラリやシステムコールと連携する必要があるためです。
  • lib9/utf: Go言語のランタイム内で使用される、UTF-8エンコーディングに関連するユーティリティ関数群を提供するライブラリです。UTF-8は、Unicode文字を可変長バイト列で表現するためのエンコーディング方式であり、多言語対応において非常に重要です。このライブラリは、UTF-8文字列の長さ計算、ルーン(Unicodeコードポイント)の操作などを行います。
  • C言語のインクルード (#include): C言語において、他のソースファイルやヘッダーファイルの内容を現在のファイルに挿入するためのプリプロセッサディレクティブです。これにより、関数宣言、マクロ定義、構造体定義などを複数のファイルで共有できます。
  • stdarg.h: C言語の標準ライブラリヘッダーで、可変引数リスト(printfのような関数が使用する引数のリスト)を処理するためのマクロ(va_list, va_start, va_arg, va_end)を定義しています。
  • string.h: C言語の標準ライブラリヘッダーで、文字列操作関数(strcpy, strlen, memcpyなど)を定義しています。
  • _BSD_SOURCEマクロ: C言語のコンパイル時に定義されるマクロの一つで、主にBSD系UNIXシステムで提供される特定の関数や定義を有効にするために使用されます。これは、標準Cライブラリの動作を制御するフィーチャーテストマクロの一種です。例えば、一部のシステムでは、strlcpystrlcatのような関数を使用するためにこのマクロの定義が必要になることがあります。このマクロを定義することで、コンパイラは特定のヘッダーファイル内でBSD固有の定義を公開するようになります。
  • UTF-8: Unicode文字をバイト列に変換するためのエンコーディング方式。可変長であり、ASCII文字は1バイト、それ以外の文字は2バイト以上で表現されます。

技術的詳細

このコミットは、Go言語のランタイムにおけるC言語コードの依存関係を整理するものです。具体的には、以下の変更が行われています。

  1. stdarg.hの削除:

    • src/lib9/utf/rune.c
    • src/lib9/utf/utflen.c
    • src/lib9/utf/utfnlen.c
    • src/lib9/utf/utfrrune.c
    • src/lib9/utf/utfrune.c
    • src/lib9/utf/utfutf.c これらのファイルから#include <stdarg.h>が削除されています。これは、これらのファイル内で可変引数リストを扱う関数が使用されていないことを示唆しています。不要なヘッダーの削除は、コンパイル時間の短縮と、ビルド依存関係の簡素化に貢献します。
  2. string.hの削除:

    • src/lib9/utf/rune.c
    • src/lib9/utf/utflen.c
    • src/lib9/utf/utfnlen.c これらのファイルから#include <string.h>が削除されています。同様に、これらのファイル内で文字列操作関数が直接使用されていないことを意味します。
  3. _BSD_SOURCEマクロの追加:

    • src/lib9/utf/utfecpy.c このファイルに#define _BSD_SOURCE 1が追加されています。utfecpy関数は、UTF-8文字列を安全にコピーするための関数であると推測されます。このマクロの追加は、utfecpy.c内で使用されている特定の関数や定義が、標準Cライブラリのデフォルト設定では利用できないBSD固有の機能に依存しているためと考えられます。例えば、strlcpyのような安全な文字列コピー関数は、一部のシステムでは_BSD_SOURCEを定義しないと利用できない場合があります。この変更により、コードの移植性が向上し、異なるシステム環境でのコンパイルエラーを防ぐことができます。

これらの変更は、GoランタイムのC言語部分のコード品質を向上させ、より効率的で保守しやすいコードベースを目指すものです。不要な依存関係を排除し、必要なマクロを適切に定義することで、ビルドプロセスを最適化し、将来的な開発における潜在的な問題を減少させます。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットでは、以下の7つのファイルが変更されています。

  • src/lib9/utf/rune.c
  • src/lib9/utf/utfecpy.c
  • src/lib9/utf/utflen.c
  • src/lib9/utf/utfnlen.c
  • src/lib9/utf/utfrrune.c
  • src/lib9/utf/utfrune.c
  • src/lib9/utf/utfutf.c

具体的な変更内容は以下の通りです。

src/lib9/utf/rune.c

--- a/src/lib9/utf/rune.c
+++ b/src/lib9/utf/rune.c
@@ -12,8 +12,6 @@
  * REPRESENTATION OR WARRANTY OF ANY KIND CONCERNING THE MERCHANTABILITY
  * OF THIS SOFTWARE OR ITS FITNESS FOR ANY PARTICULAR PURPOSE.
  */
-#include <stdarg.h>
-#include <string.h>
 #include "utf.h"
 #include "utfdef.h"
 

src/lib9/utf/utfecpy.c

--- a/src/lib9/utf/utfecpy.c
+++ b/src/lib9/utf/utfecpy.c
@@ -11,7 +11,7 @@
  * REPRESENTATION OR WARRANTY OF ANY KIND CONCERNING THE MERCHANTABILITY
  * OF THIS SOFTWARE OR ITS FITNESS FOR ANY PARTICULAR PURPOSE.
  */
-#include <stdarg.h>
+#define _BSD_SOURCE 1
 #include <string.h>
 #include "utf.h"
 #include "utfdef.h"

src/lib9/utf/utflen.c

--- a/src/lib9/utf/utflen.c
+++ b/src/lib9/utf/utflen.c
@@ -11,8 +11,6 @@
  * REPRESENTATION OR WARRANTY OF ANY KIND CONCERNING THE MERCHANTABILITY
  * OF THIS SOFTWARE OR ITS FITNESS FOR ANY PARTICULAR PURPOSE.
  */
-#include <stdarg.h>
-#include <string.h>
 #include "utf.h"
 #include "utfdef.h"
 

src/lib9/utf/utfnlen.c

--- a/src/lib9/utf/utfnlen.c
+++ b/src/lib9/utf/utfnlen.c
@@ -11,8 +11,6 @@
  * REPRESENTATION OR WARRANTY OF ANY KIND CONCERNING THE MERCHANTABILITY
  * OF THIS SOFTWARE OR ITS FITNESS FOR ANY PARTICULAR PURPOSE.
  */
-#include <stdarg.h>
-#include <string.h>
 #include "utf.h"
 #include "utfdef.h"
 

src/lib9/utf/utfrrune.c

--- a/src/lib9/utf/utfrrune.c
+++ b/src/lib9/utf/utfrrune.c
@@ -11,7 +11,6 @@
  * REPRESENTATION OR WARRANTY OF ANY KIND CONCERNING THE MERCHANTABILITY
  * OF THIS SOFTWARE OR ITS FITNESS FOR ANY PARTICULAR PURPOSE.
  */
-#include <stdarg.h>
 #include <string.h>
 #include "utf.h"
 #include "utfdef.h"

src/lib9/utf/utfrune.c

--- a/src/lib9/utf/utfrune.c
+++ b/src/lib9/utf/utfrune.c
@@ -11,7 +11,6 @@
  * REPRESENTATION OR WARRANTY OF ANY KIND CONCERNING THE MERCHANTABILITY
  * OF THIS SOFTWARE OR ITS FITNESS FOR ANY PARTICULAR PURPOSE.
  */
-#include <stdarg.h>
 #include <string.h>
 #include "utf.h"
 #include "utfdef.h"

src/lib9/utf/utfutf.c

--- a/src/lib9/utf/utfutf.c
+++ b/src/lib9/utf/utfutf.c
@@ -11,7 +11,6 @@
  * REPRESENTATION OR WARRANTY OF ANY KIND CONCERNING THE MERCHANTABILITY
  * OF THIS SOFTWARE OR ITS FITNESS FOR ANY PARTICULAR PURPOSE.
  */
-#include <stdarg.h>
 #include <string.h>
 #include "utf.h"
 #include "utfdef.h"

コアとなるコードの解説

このコミットの主要な目的は、C言語のソースファイルにおける不要なヘッダーインクルードを削除し、utfecpy.c_BSD_SOURCEマクロを追加することです。

  • 不要なインクルードの削除:

    • stdarg.hは可変引数リストを扱うためのヘッダーですが、変更されたファイル群(rune.c, utflen.c, utfnlen.c, utfrrune.c, utfrune.c, utfutf.c, utfecpy.cから削除)では、その機能が直接使用されていませんでした。
    • string.hは文字列操作関数を扱うためのヘッダーですが、rune.c, utflen.c, utfnlen.cからは削除されています。これは、これらのファイルが直接string.h内の関数に依存していないことを示しています。 これらの削除は、コンパイル時の依存関係を減らし、ビルド時間を短縮し、コードベースをよりクリーンに保つための一般的なプラクティスです。不要なインクルードは、シンボル名の衝突や、誤解を招く依存関係を生む可能性があります。
  • _BSD_SOURCEマクロの追加 (utfecpy.c):

    • utfecpy.cは、UTF-8文字列を安全にコピーする機能を提供すると考えられます。このファイルに#define _BSD_SOURCE 1が追加されたのは、このファイル内で使用されている特定の関数(例えば、strlcpystrlcatのようなBSD固有の安全な文字列操作関数)が、標準Cライブラリのデフォルト設定では利用できないためです。_BSD_SOURCEを定義することで、これらの関数がコンパイラに認識され、正しくコンパイルされるようになります。これは、異なるUNIX系システム間でのコードの移植性を高める上で重要です。

全体として、このコミットはGoランタイムのC言語部分のコード品質と保守性を向上させるための、細かではあるが重要な改善です。

関連リンク

参考にした情報源リンク