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[インデックス 16497] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ image/jpeg パッケージにおけるJPEGデコーダの挙動に関するものです。具体的には、JPEGファイルの読み込み時に行われるダウンサンプリング比率のチェックに関するエラーメッセージの文言を修正しています。これにより、エラーメッセージがより正確になり、ユーザーが問題の原因を特定しやすくなります。

コミット

image/jpeg: ルマダウンサンプリングかクロマダウンサンプリングかというドキュメント上の議論を避ける

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/427bec62b5a24aa42b0dc97a6040fd84d7f4366d

元コミット内容

commit 427bec62b5a24aa42b0dc97a6040fd84d7f4366d
Author: Nigel Tao <nigeltao@golang.org>
Date:   Wed Jun 5 10:18:06 2013 +1000

    image/jpeg: avoid documentation argument over whether it's luma
    subsampling or chroma subsampling.
    
    Fixes #5569.
    
    R=r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/9900044
---
 src/pkg/image/jpeg/reader.go | 4 ++--
 1 file changed, 2 insertions(+), 2 deletions(-)

diff --git a/src/pkg/image/jpeg/reader.go b/src/pkg/image/jpeg/reader.go
index 862d8dc1b2..356d56220a 100644
--- a/src/pkg/image/jpeg/reader.go
+++ b/src/pkg/image/jpeg/reader.go
@@ -174,10 +174,10 @@ func (d *decoder) processSOF(n int) error {
 		// values for the Cr and Cb components must be (1, 1).
 		if i == 0 {
 			if hv != 0x11 && hv != 0x21 && hv != 0x22 && hv != 0x12 {
-				return UnsupportedError("luma downsample ratio")
+				return UnsupportedError("luma/chroma downsample ratio")
 			}
 		} else if hv != 0x11 {
-			return UnsupportedError("chroma downsample ratio")
+			return UnsupportedError("luma/chroma downsample ratio")
 		}
 	}
 	return nil

変更の背景

このコミットは、GoのIssue #5569 に対応するものです。元のエラーメッセージ UnsupportedError("luma downsample ratio") および UnsupportedError("chroma downsample ratio") は、JPEGファイルのダウンサンプリング比率がサポートされていない場合に発生していました。しかし、このエラーメッセージは、どのコンポーネント(輝度または色差)のダウンサンプリング比率が問題なのかを正確に示していない可能性がありました。

JPEGのダウンサンプリングは、輝度(Yまたはルマ)と色差(Cb、Crまたはクロマ)の各コンポーネントに対して個別に適用されます。通常、人間の目は色よりも輝度の変化に敏感であるため、色差コンポーネントは輝度コンポーネントよりも低い解像度で保存されることがよくあります。このプロセスをクロマサブサンプリングと呼びます。

元のコードでは、輝度コンポーネント(i == 0の場合)のダウンサンプリング比率が不正な場合に「luma downsample ratio」というエラーを返し、色差コンポーネント(i != 0の場合)のダウンサンプリング比率が不正な場合に「chroma downsample ratio」というエラーを返していました。しかし、JPEGの仕様や実装によっては、これらの用語の使い分けが曖昧であったり、特定のダウンサンプリングパターンがルマとクロマの両方に影響を与える場合がありました。

この曖昧さを解消し、より一般的なエラーメッセージを提供するために、エラーメッセージを「luma/chroma downsample ratio」に統一する変更が行われました。これにより、ユーザーはエラーが輝度または色差のダウンサンプリング比率のいずれか、または両方に関連していることを理解しやすくなります。

前提知識の解説

JPEG (Joint Photographic Experts Group)

JPEGは、静止画像の圧縮方式の一つで、特に写真などの自然画の圧縮に適しています。非可逆圧縮であり、画質とファイルサイズのトレードオフを調整できます。JPEG圧縮の主要なステップには、色空間変換(RGBからYCbCrへ)、ダウンサンプリング、離散コサイン変換(DCT)、量子化、エントロピー符号化などがあります。

YCbCr色空間

JPEGでは、画像をRGB(赤、緑、青)からYCbCr色空間に変換します。

  • Y (Luma/輝度): 画像の明るさ(輝度)を表します。人間の目が最も敏感に感じる情報です。
  • Cb (Chroma Blue/青色差): 青色と輝度の差を表します。
  • Cr (Chroma Red/赤色差): 赤色と輝度の差を表します。

クロマサブサンプリング (Chroma Subsampling)

人間の目は輝度の変化に比べて色の変化に対する感度が低いため、JPEGでは色差情報(CbとCr)の解像度を輝度情報(Y)よりも低くすることができます。これをクロマサブサンプリングと呼びます。これにより、画質への影響を最小限に抑えつつ、ファイルサイズを大幅に削減できます。

一般的なクロマサブサンプリングの形式には以下のようなものがあります。

  • 4:4:4: サブサンプリングなし。Y, Cb, Crのすべてのコンポーネントが同じ解像度を持ちます。
  • 4:2:2: 水平方向に色差情報を半分にサブサンプリングします。輝度情報が4ピクセルある場合、色差情報は水平方向に2ピクセル分しか持ちません。
  • 4:2:0: 水平方向と垂直方向の両方に色差情報を半分にサブサンプリングします。輝度情報が4x2ピクセルある場合、色差情報は1ピクセル分しか持ちません。
  • 4:1:1: 水平方向に色差情報を4分の1にサブサンプリングします。

これらの比率は、通常 H1:V1:H2 の形式で表され、H1は輝度コンポーネントの水平サンプリング係数、V1は輝度コンポーネントの垂直サンプリング係数、H2は色差コンポーネントの水平サンプリング係数を示します。JPEGの内部では、各コンポーネントの水平・垂直サンプリング係数(HV)が個別に定義されます。例えば、0x11は水平1、垂直1のサンプリング係数を意味し、0x21は水平2、垂直1を意味します。

SOF (Start Of Frame) マーカー

JPEGファイルは、様々なマーカー(セグメント)で構成されています。SOFマーカーは、フレームの開始を示すもので、画像の幅、高さ、コンポーネント数、各コンポーネントのサンプリング係数などの重要な情報を含んでいます。processSOF関数は、このSOFマーカーを解析し、その情報がサポートされている形式であるかを検証する役割を担っています。

技術的詳細

src/pkg/image/jpeg/reader.go 内の processSOF 関数は、JPEGのSOF(Start Of Frame)セグメントを処理する際に、各コンポーネントのサンプリング係数(hv)を検証します。

JPEGの仕様では、各コンポーネント(通常はY, Cb, Cr)に対して水平サンプリング係数と垂直サンプリング係数が定義されます。これらは通常、1バイトのデータとしてエンコードされ、上位4ビットが水平サンプリング係数、下位4ビットが垂直サンプリング係数を表します。例えば、0x11は水平1、垂直1(つまりダウンサンプリングなし)を意味します。0x21は水平2、垂直1(水平方向に2分の1にダウンサンプリング)を意味します。

元のコードでは、以下のチェックが行われていました。

  1. 輝度コンポーネント (i == 0): 輝度コンポーネントのサンプリング係数 hv0x11, 0x21, 0x22, 0x12 のいずれでもない場合、UnsupportedError("luma downsample ratio") を返していました。これは、これらの値が一般的な輝度コンポーネントのサンプリングパターンとして認識されているためです。

  2. 色差コンポーネント (i != 0): 色差コンポーネントのサンプリング係数 hv0x11 でない場合、UnsupportedError("chroma downsample ratio") を返していました。これは、色差コンポーネントは通常、輝度コンポーネントと同じか、それよりも低い解像度で保存されるため、0x11(ダウンサンプリングなし)以外の値は、特定のクロマサブサンプリングパターンに合致しない場合にエラーと見なされていたためです。

このコミットでは、これらのエラーメッセージをより汎用的な UnsupportedError("luma/chroma downsample ratio") に変更しました。これは、特定のサンプリング比率が「ルマ」または「クロマ」のどちらに厳密に属するかという議論を避けるためです。JPEGのサンプリング比率は、ルマとクロマの相対的な関係で定義されることが多く、個々のコンポーネントの比率が直接的に「ルマダウンサンプリング」や「クロマダウンサンプリング」と断定しにくい場合があるためです。この変更により、エラーメッセージの正確性が向上し、ユーザーがデバッグする際の混乱が軽減されます。

コアとなるコードの変更箇所

src/pkg/image/jpeg/reader.go ファイルの processSOF 関数内の2箇所で、UnsupportedError の引数が変更されています。

--- a/src/pkg/image/jpeg/reader.go
+++ b/src/pkg/image/jpeg/reader.go
@@ -174,10 +174,10 @@ func (d *decoder) processSOF(n int) error {
 		// values for the Cr and Cb components must be (1, 1).
 		if i == 0 {
 			if hv != 0x11 && hv != 0x21 && hv != 0x22 && hv != 0x12 {
-				return UnsupportedError("luma downsample ratio")
+				return UnsupportedError("luma/chroma downsample ratio")
 			}
 		} else if hv != 0x11 {
-			return UnsupportedError("chroma downsample ratio")
+			return UnsupportedError("luma/chroma downsample ratio")
 		}
 	}
 	return nil

コアとなるコードの解説

processSOF 関数は、JPEGのSOFセグメントを解析し、画像のコンポーネント情報(特にサンプリング係数)を読み取ります。

  • for i := range d.comp: このループは、画像の各コンポーネント(通常はY, Cb, Cr)を反復処理します。i はコンポーネントのインデックスです。
  • hv := d.comp[i].h << 4 | d.comp[i].v: 各コンポーネントの水平サンプリング係数 h と垂直サンプリング係数 v を結合して1バイトの hv 値を生成します。
  • if i == 0: これは通常、輝度(Y)コンポーネントを指します。JPEGの仕様では、最初のコンポーネントが輝度であると規定されています。
    • if hv != 0x11 && hv != 0x21 && hv != 0x22 && hv != 0x12: 輝度コンポーネントの hv 値が、サポートされている一般的なサンプリングパターン(4:4:4, 4:2:2, 4:2:0, 4:1:1などに対応する値)のいずれでもない場合にエラーを発生させます。
    • 変更前: return UnsupportedError("luma downsample ratio")
    • 変更後: return UnsupportedError("luma/chroma downsample ratio")
  • else if hv != 0x11: これは通常、色差(CbまたはCr)コンポーネントを指します。
    • 色差コンポーネントの hv 値が 0x11(ダウンサンプリングなし)でない場合にエラーを発生させます。これは、GoのJPEGデコーダが、色差コンポーネントに対して特定のダウンサンプリングパターンのみをサポートしていることを示唆しています。
    • 変更前: return UnsupportedError("chroma downsample ratio")
    • 変更後: return UnsupportedError("luma/chroma downsample ratio")

この変更により、エラーメッセージがより包括的になり、特定のコンポーネントに限定されない「ルマ/クロマダウンサンプリング比率」の問題として報告されるようになりました。これにより、ユーザーはJPEGファイルのサンプリング設定に問題があることをより明確に理解できます。

関連リンク

参考にした情報源リンク

[インデックス 16497] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ image/jpeg パッケージにおけるJPEGデコーダの挙動に関するものです。具体的には、JPEGファイルの読み込み時に行われるダウンサンプリング比率のチェックに関するエラーメッセージの文言を修正しています。これにより、エラーメッセージがより正確になり、ユーザーが問題の原因を特定しやすくなります。

コミット

image/jpeg: ルマダウンサンプリングかクロマダウンサンプリングかというドキュメント上の議論を避ける

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/427bec62b5a24aa42b0dc97a6040fd84d7f4366d

元コミット内容

commit 427bec62b5a24aa42b0dc97a6040fd84d7f4366d
Author: Nigel Tao <nigeltao@golang.org>
Date:   Wed Jun 5 10:18:06 2013 +1000

    image/jpeg: avoid documentation argument over whether it's luma
    subsampling or chroma subsampling.
    
    Fixes #5569.
    
    R=r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/9900044
---
 src/pkg/image/jpeg/reader.go | 4 ++--
 1 file changed, 2 insertions(+), 2 deletions(-)

diff --git a/src/pkg/image/jpeg/reader.go b/src/pkg/image/jpeg/reader.go
index 862d8dc1b2..356d56220a 100644
--- a/src/pkg/image/jpeg/reader.go
+++ b/src/pkg/image/jpeg/reader.go
@@ -174,10 +174,10 @@ func (d *decoder) processSOF(n int) error {
 		// values for the Cr and Cb components must be (1, 1).
 		if i == 0 {
 			if hv != 0x11 && hv != 0x21 && hv != 0x22 && hv != 0x12 {
-				return UnsupportedError("luma downsample ratio")
+				return UnsupportedError("luma/chroma downsample ratio")
 			}
 		} else if hv != 0x11 {
-			return UnsupportedError("chroma downsample ratio")
+			return UnsupportedError("luma/chroma downsample ratio")
 		}
 	}
 	return nil

変更の背景

このコミットは、GoのIssue #5569 に対応するものです。元のエラーメッセージ UnsupportedError("luma downsample ratio") および UnsupportedError("chroma downsample ratio") は、JPEGファイルのダウンサンプリング比率がサポートされていない場合に発生していました。しかし、このエラーメッセージは、どのコンポーネント(輝度または色差)のダウンサンプリング比率が問題なのかを正確に示していない可能性がありました。

JPEGのダウンサンプリングは、輝度(Yまたはルマ)と色差(Cb、Crまたはクロマ)の各コンポーネントに対して個別に適用されます。通常、人間の目は色よりも輝度の変化に敏感であるため、色差コンポーネントは輝度コンポーネントよりも低い解像度で保存されることがよくあります。このプロセスをクロマサブサンプリングと呼びます。

元のコードでは、輝度コンポーネント(i == 0の場合)のダウンサンプリング比率が不正な場合に「luma downsample ratio」というエラーを返し、色差コンポーネント(i != 0の場合)のダウンサンプリング比率が不正な場合に「chroma downsample ratio」というエラーを返していました。しかし、JPEGの仕様や実装によっては、これらの用語の使い分けが曖昧であったり、特定のダウンサンプリングパターンがルマとクロマの両方に影響を与える場合がありました。

この曖昧さを解消し、より一般的なエラーメッセージを提供するために、エラーメッセージを「luma/chroma downsample ratio」に統一する変更が行われました。これにより、ユーザーはエラーが輝度または色差のダウンサンプリング比率のいずれか、または両方に関連していることを理解しやすくなります。

前提知識の解説

JPEG (Joint Photographic Experts Group)

JPEGは、静止画像の圧縮方式の一つで、特に写真などの自然画の圧縮に適しています。非可逆圧縮であり、画質とファイルサイズのトレードオフを調整できます。JPEG圧縮の主要なステップには、色空間変換(RGBからYCbCrへ)、ダウンサンプリング、離散コサイン変換(DCT)、量子化、エントロピー符号化などがあります。

YCbCr色空間

JPEGでは、画像をRGB(赤、緑、青)からYCbCr色空間に変換します。

  • Y (Luma/輝度): 画像の明るさ(輝度)を表します。人間の目が最も敏感に感じる情報です。
  • Cb (Chroma Blue/青色差): 青色と輝度の差を表します。
  • Cr (Chroma Red/赤色差): 赤色と輝度の差を表します。

クロマサブサンプリング (Chroma Subsampling)

人間の目は輝度の変化に比べて色の変化に対する感度が低いため、JPEGでは色差情報(CbとCr)の解像度を輝度情報(Y)よりも低くすることができます。これをクロマサブサンプリングと呼びます。これにより、画質への影響を最小限に抑えつつ、ファイルサイズを大幅に削減できます。

一般的なクロマサブサンプリングの形式には以下のようなものがあります。

  • 4:4:4: サブサンプリングなし。Y, Cb, Crのすべてのコンポーネントが同じ解像度を持ちます。
  • 4:2:2: 水平方向に色差情報を半分にサブサンプリングします。輝度情報が4ピクセルある場合、色差情報は水平方向に2ピクセル分しか持ちません。
  • 4:2:0: 水平方向と垂直方向の両方に色差情報を半分にサブサンプリングします。輝度情報が4x2ピクセルある場合、色差情報は1ピクセル分しか持ちません。
  • 4:1:1: 水平方向に色差情報を4分の1にサブサンプリングします。

これらの比率は、通常 H1:V1:H2 の形式で表され、H1は輝度コンポーネントの水平サンプリング係数、V1は輝度コンポーネントの垂直サンプリング係数、H2は色差コンポーネントの水平サンプリング係数を示します。JPEGの内部では、各コンポーネントの水平・垂直サンプリング係数(HV)が個別に定義されます。例えば、0x11は水平1、垂直1のサンプリング係数を意味し、0x21は水平2、垂直1を意味します。

SOF (Start Of Frame) マーカー

JPEGファイルは、様々なマーカー(セグメント)で構成されています。SOFマーカーは、フレームの開始を示すもので、画像の幅、高さ、コンポーネント数、各コンポーネントのサンプリング係数などの重要な情報を含んでいます。processSOF関数は、このSOFマーカーを解析し、その情報がサポートされている形式であるかを検証する役割を担っています。

技術的詳細

src/pkg/image/jpeg/reader.go 内の processSOF 関数は、JPEGのSOF(Start Of Frame)セグメントを処理する際に、各コンポーネントのサンプリング係数(hv)を検証します。

JPEGの仕様では、各コンポーネント(通常はY, Cb, Cr)に対して水平サンプリング係数と垂直サンプリング係数が定義されます。これらは通常、1バイトのデータとしてエンコードされ、上位4ビットが水平サンプリング係数、下位4ビットが垂直サンプリング係数を表します。例えば、0x11は水平1、垂直1(つまりダウンサンプリングなし)を意味します。0x21は水平2、垂直1(水平方向に2分の1にダウンサンプリング)を意味します。

元のコードでは、以下のチェックが行われていました。

  1. 輝度コンポーネント (i == 0): 輝度コンポーネントのサンプリング係数 hv0x11, 0x21, 0x22, 0x12 のいずれでもない場合、UnsupportedError("luma downsample ratio") を返していました。これは、これらの値が一般的な輝度コンポーネントのサンプリングパターンとして認識されているためです。

  2. 色差コンポーネント (i != 0): 色差コンポーネントのサンプリング係数 hv0x11 でない場合、UnsupportedError("chroma downsample ratio") を返していました。これは、色差コンポーネントは通常、輝度コンポーネントと同じか、それよりも低い解像度で保存されるため、0x11(ダウンサンプリングなし)以外の値は、特定のクロマサブサンプリングパターンに合致しない場合にエラーと見なされていたためです。

このコミットでは、これらのエラーメッセージをより汎用的な UnsupportedError("luma/chroma downsample ratio") に変更しました。これは、特定のサンプリング比率が「ルマ」または「クロマ」のどちらに厳密に属するかという議論を避けるためです。JPEGのサンプリング比率は、ルマとクロマの相対的な関係で定義されることが多く、個々のコンポーネントの比率が直接的に「ルマダウンサンプリング」や「クロマダウンサンプリング」と断定しにくい場合があるためです。この変更により、エラーメッセージの正確性が向上し、ユーザーがデバッグする際の混乱が軽減されます。

コアとなるコードの変更箇所

src/pkg/image/jpeg/reader.go ファイルの processSOF 関数内の2箇所で、UnsupportedError の引数が変更されています。

--- a/src/pkg/image/jpeg/reader.go
+++ b/src/pkg/image/jpeg/reader.go
@@ -174,10 +174,10 @@ func (d *decoder) processSOF(n int) error {
 		// values for the Cr and Cb components must be (1, 1).
 		if i == 0 {
 			if hv != 0x11 && hv != 0x21 && hv != 0x22 && hv != 0x12 {
-				return UnsupportedError("luma downsample ratio")
+				return UnsupportedError("luma/chroma downsample ratio")
 			}
 		} else if hv != 0x11 {
-			return UnsupportedError("chroma downsample ratio")
+				return UnsupportedError("luma/chroma downsample ratio")
 		}
 	}
 	return nil

コアとなるコードの解説

processSOF 関数は、JPEGのSOFセグメントを解析し、画像のコンポーネント情報(特にサンプリング係数)を読み取ります。

  • for i := range d.comp: このループは、画像の各コンポーネント(通常はY, Cb, Cr)を反復処理します。i はコンポーネントのインデックスです。
  • hv := d.comp[i].h << 4 | d.comp[i].v: 各コンポーネントの水平サンプリング係数 h と垂直サンプリング係数 v を結合して1バイトの hv 値を生成します。
  • if i == 0: これは通常、輝度(Y)コンポーネントを指します。JPEGの仕様では、最初のコンポーネントが輝度であると規定されています。
    • if hv != 0x11 && hv != 0x21 && hv != 0x22 && hv != 0x12: 輝度コンポーネントの hv 値が、サポートされている一般的なサンプリングパターン(4:4:4, 4:2:2, 4:2:0, 4:1:1などに対応する値)のいずれでもない場合にエラーを発生させます。
    • 変更前: return UnsupportedError("luma downsample ratio")
    • 変更後: return UnsupportedError("luma/chroma downsample ratio")
  • else if hv != 0x11: これは通常、色差(CbまたはCr)コンポーネントを指します。
    • 色差コンポーネントの hv 値が 0x11(ダウンサンプリングなし)でない場合にエラーを発生させます。これは、GoのJPEGデコーダが、色差コンポーネントに対して特定のダウンサンプリングパターンのみをサポートしていることを示唆しています。
    • 変更前: return UnsupportedError("chroma downsample ratio")
    • 変更後: return UnsupportedError("luma/chroma downsample ratio")

この変更により、エラーメッセージがより包括的になり、特定のコンポーネントに限定されない「ルマ/クロマダウンサンプリング比率」の問題として報告されるようになりました。これにより、ユーザーはJPEGファイルのサンプリング設定に問題があることをより明確に理解できます。

関連リンク

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