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[インデックス 16619] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリosパッケージにおけるファイル名の変更に関するものです。具体的には、src/pkg/os/error_posix.goというファイルがsrc/pkg/os/error_unix.goにリネームされました。この変更は、Goのクロスプラットフォーム対応におけるファイル命名規則の明確化を目的としています。

コミット

os: rename error_posix.go to error_unix.go

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/28a55111b25a9f0b6b683509bac25836750eec2e

元コミット内容

commit 28a55111b25a9f0b6b683509bac25836750eec2e
Author: Dave Cheney <dave@cheney.net>
Date:   Mon Jun 24 11:23:37 2013 +1000

    os: rename error_posix.go to error_unix.go
    
    The tradition is to use _posix when the platform extends beyond unix variants. As windows has its own file, rename to the more usual _unix.
    
    R=golang-dev, r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/10320043

変更の背景

Go言語は、設計当初からクロスプラットフォーム対応を重視しており、様々なオペレーティングシステム(OS)上で動作するように設計されています。そのため、OS固有の機能やエラーハンドリングを扱う際には、プラットフォームごとに異なる実装を提供する必要があります。

Goの標準ライブラリでは、特定のOSに特化したコードを管理するために、ファイル名にOS名を付加する慣習があります。例えば、_windows.goはWindows固有のコード、_linux.goはLinux固有のコードを含みます。

このコミットが行われた背景には、_posix.goという命名が持つ曖昧さがありました。POSIX(Portable Operating System Interface)は、UNIX系OSの標準化されたインターフェース群を指しますが、その概念はUNIX系OSだけでなく、一部のUNIX系ではないOS(例えば、WindowsのCygwin環境など)でもPOSIX互換の機能が提供される場合があります。

コミットメッセージにある「The tradition is to use _posix when the platform extends beyond unix variants. As windows has its own file, rename to the more usual _unix.」という記述は、この命名規則の曖昧さを解消しようとする意図を示しています。つまり、_posixはUNIX系OS以外のプラットフォームでもPOSIX互換の機能が提供される場合に用いられるべきであり、GoのosパッケージのようにWindows向けに別途ファイル(例: error_windows.go)が存在し、UNIX系OSに特化したコードを記述する場合には、より明確な_unix.goという命名が適切であるという判断がなされました。

前提知識の解説

Go言語のビルドタグとファイル命名規則

Go言語では、特定のOSやアーキテクチャ向けのコードを条件付きでコンパイルするために、ビルドタグ(build tags)という仕組みと、それに付随するファイル命名規則が用いられます。

  • ビルドタグ: ソースファイルの先頭に// +build linux darwinのように記述することで、そのファイルが特定のOS(この場合はLinuxとmacOS)でのみコンパイルされるように指定できます。
  • ファイル命名規則: filename_GOOS.gofilename_GOARCH.goのように、ファイル名にOS名(GOOS)やアーキテクチャ名(GOARCH)を付加することで、Goツールチェインが自動的にそのファイルを特定のプラットフォーム向けに認識します。
    • 例: net_windows.goはWindowsでのみコンパイルされる。
    • 例: asm_amd64.sはAMD64アーキテクチャでのみコンパイルされるアセンブリコード。

このコミットで問題となっているのは、_posix.goという命名が、Goのファイル命名規則におけるGOOS(例: linux, darwin, freebsdなど)とは異なり、より広範な「POSIX互換」という概念を指すため、その適用範囲が曖昧になりがちだった点です。

POSIXとUNIX

  • UNIX: ベル研究所で開発されたオペレーティングシステム。その後の多くのOSに影響を与え、現在でも多くのUNIX系OS(Linux, macOS, FreeBSDなど)が存在します。UNIXは商標であり、The Open Groupによって認定されたシステムのみが「UNIX」と名乗ることができます。
  • POSIX (Portable Operating System Interface): IEEEによって標準化された、UNIX系OSのAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)のセットです。これにより、異なるUNIX系OS間でのソフトウェアの移植性が向上します。POSIXに準拠しているOSは、必ずしもUNIXである必要はありません。例えば、WindowsにはPOSIX互換レイヤー(Cygwinなど)が存在することもあります。

この違いが、Goのコードベースにおける_posix.go_unix.goの命名の使い分けに影響を与えます。Goのosパッケージのように、Windows向けに完全に独立した実装が存在する場合、残りのコードは純粋なUNIX系OSに特化したものであると考えるのが自然であり、その場合は_unix.goという命名がより適切であると判断されたわけです。

技術的詳細

このファイル名の変更は、Goの標準ライブラリにおけるコードのモジュール性と可読性を向上させるためのものです。

Goのビルドシステムは、ファイル名に付加されたOS名やアーキテクチャ名を自動的に解釈し、適切なファイルをコンパイル対象に含めます。

  • error_windows.go: Windows環境でのエラー処理ロジック。
  • error_unix.go (旧 error_posix.go): UNIX系OS(Linux, macOS, FreeBSDなど)でのエラー処理ロジック。

もしerror_posix.goという名前のままだった場合、Goのビルドシステムは、このファイルが「POSIX互換の環境」でコンパイルされるべきだと解釈します。しかし、GoのosパッケージはWindows向けに専用のコードパスを持っているため、error_posix.goが実際にカバーする範囲は、実質的にWindows以外のUNIX系OSに限定されます。

この状況で_posixという名前を使い続けると、以下のような問題が生じる可能性があります。

  1. 誤解を招く可能性: _posixという名前は、Windows上のPOSIX互換環境(例えばCygwinやWSLの初期実装など)でもこのファイルがコンパイルされるべきだと誤解される可能性があります。しかし、Goの標準ライブラリは通常、そのような互換レイヤーではなく、ネイティブなOS APIを直接利用するように設計されています。
  2. 命名の一貫性: Goの標準ライブラリ全体で、OS固有のファイルには_linux.go_darwin.go_windows.goといった具体的なOS名が使われるのが一般的です。_posix.goという抽象的な名前は、この一貫性を損なう可能性があります。
  3. コードの意図の明確化: _unix.goという名前に変更することで、このファイルが「UNIX系OS」に特化したコードであることを明確に示します。これにより、開発者がコードを読んだ際に、どのプラットフォーム向けのロジックであるかを直感的に理解できるようになります。

この変更は、機能的な影響は一切ありません。ファイルの内容は変更されず、単にファイル名が変更されただけです。しかし、コードベースの長期的な保守性、可読性、そしてGoのクロスプラットフォーム戦略における命名規則の厳密性を高める上で重要な意味を持ちます。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットにおけるコアとなるコードの変更箇所は、以下のファイルのリネームのみです。

src/pkg/os/error_posix.gosrc/pkg/os/error_unix.go に変更されました。

--- a/src/pkg/os/error_posix.go
+++ b/src/pkg/os/error_unix.go
similarity index 100%
rename from src/pkg/os/error_posix.go
rename to src/pkg/os/error_unix.go

ファイルの内容自体は一切変更されていません。

コアとなるコードの解説

変更されたファイルはsrc/pkg/os/error_posix.go(リネーム後はsrc/pkg/os/error_unix.go)です。このファイルは、Goのosパッケージ内で、UNIX系OSにおけるエラー処理に関連する定義や実装を含んでいたと考えられます。

Goのosパッケージは、ファイルシステム操作、プロセス管理、環境変数など、OSに依存する機能を提供します。これらの機能はOSによってAPIが異なるため、Goは内部でプラットフォーム固有の実装を切り替えています。

例えば、UNIX系OSではエラーコードとしてerrnoが使われ、syscallパッケージを通じてOSのシステムコールを呼び出す際にこれらのエラーが返されます。error_posix.go(またはerror_unix.go)は、これらのUNIX系エラーコードをGoのエラー型にマッピングしたり、特定のエラー条件を処理するためのヘルパー関数を提供したりしていたと推測されます。

ファイル名が_posixから_unixに変更されたことで、このファイルに含まれるコードが、より具体的に「UNIX系OS」に特化したものであるという意図が明確になりました。これは、Goのビルドシステムが、このファイルをLinux、macOS、FreeBSDなどのUNIX系OSでのみコンパイル対象とし、Windowsでは別のerror_windows.goのようなファイルが使用されるという、既存の動作をより正確に反映するものです。

この変更は、Goの標準ライブラリが、各プラットフォームの特性を最大限に活かしつつ、コードベースの整合性と理解しやすさを維持しようとする努力の一環と言えます。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語の公式ドキュメント
  • GitHubのgolang/goリポジトリのコミット履歴
  • Wikipedia (POSIX, UNIX)
  • Go言語のビルドタグに関する一般的な知識