[インデックス 16738] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の公式仕様書である doc/go_spec.html
ファイルに対する変更です。具体的には、ドキュメント内のコード例における変数宣言の位置を、その変数が使用される箇所により近づけるように修正しています。また、仕様書のバージョン日付も更新されています。
コミット
commit 63f54ae3c25735aa8558f0f2d281032b46f45a53
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date: Thu Jul 11 14:41:46 2013 -0700
spec: move decl in example closer to use
Fixes #5862.
R=r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/11168043
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/63f54ae3c25735aa8558f0f2d281032b46f45a53
元コミット内容
spec: move decl in example closer to use
Fixes #5862.
R=r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/11168043
変更の背景
このコミットの主な目的は、Go言語の仕様書に含まれるコード例の可読性を向上させることです。コミットメッセージにある「Fixes #5862」は、おそらくGoプロジェクトの内部的な課題追跡システムにおける特定の課題を指していますが、公開されているGoのissueトラッカーではこの番号の課題は見つかりませんでした。これは、非常に古い課題であるか、あるいは内部的な議論に限定された課題であった可能性が考えられます。
変更自体は、map
型の変数 m
の宣言を、その変数が for...range
ループで使用される直前に移動させるというものです。このような変更は、コードの意図をより明確にし、読者が変数の定義と使用箇所を容易に結びつけられるようにするために行われます。特にドキュメント内のコード例においては、読者が言語の挙動を正確に理解するために、コードの明瞭さが非常に重要となります。
また、仕様書のバージョン日付が「July 9, 2013」から「July 11, 2013」に更新されており、これはこのコミットがその日付の仕様書に反映されたことを示しています。
前提知識の解説
このコミットを理解するためには、以下のGo言語の基本的な概念と、一般的なプログラミングにおけるコードの可読性に関する知識が役立ちます。
-
Go言語の仕様書 (Go Language Specification): Go言語の公式な仕様書は、言語の構文、セマンティクス、標準ライブラリの動作などを厳密に定義した文書です。開発者やコンパイラの実装者が、Go言語の正確な挙動を理解するための唯一の信頼できる情報源となります。このドキュメントはHTML形式で提供されており、Webブラウザで閲覧可能です。
-
変数宣言とスコープ (Variable Declaration and Scope): Go言語では、変数は
var
キーワードまたは短い変数宣言:=
を用いて宣言されます。変数のスコープは、その変数が宣言されたブロック({}
で囲まれた範囲)に限定されます。このコミットの例では、map
型の変数m
が宣言されています。 -
map
型 (Map Type):map
は、キーと値のペアを格納するGo言語の組み込みデータ構造です。キーは一意であり、値にアクセスするために使用されます。このコミットの例では、map[string]int
型のm
が宣言されており、これは文字列をキーとし、整数を値とするマップです。 -
for...range
ループ (For...Range Loop): Go言語のfor...range
ループは、配列、スライス、文字列、マップ、チャネルなどのコレクションを反復処理するために使用されます。マップに対してfor...range
を使用すると、各イテレーションでキーと値のペアが返されます。 -
コードの可読性 (Code Readability): プログラミングにおいて、コードの可読性は非常に重要です。可読性の高いコードは、他の開発者(または将来の自分自身)がコードの意図を素早く理解し、保守やデバッグを容易にします。変数の宣言をその使用箇所に近づけることは、コードの可読性を高める一般的なプラクティスの一つです。これにより、変数がどこで定義され、どのように初期化されているかをすぐに確認できます。
技術的詳細
このコミットは、Go言語の仕様書 doc/go_spec.html
内の特定のコード例を修正しています。技術的な変更点は以下の通りです。
-
map
変数m
の宣言位置の移動: 元のコードでは、map
型の変数m
の宣言が、その変数が使用されるfor key, val = range m
ループよりも数行前に配置されていました。変更前:
var a [10]string m := map[string]int{"mon":0, "tue":1, "wed":2, "thu":3, "fri":4, "sat":5, "sun":6} for i, s := range a { // type of i is int // type of s is string h(i, s) } var key string var val interface {} // value type of m is assignable to val for key, val = range m { h(key, val) }
変更後:
var a [10]string for i, _ := range testdata.a { } var a [10]string for i, s := range a { // type of i is int // type of s is string h(i, s) } var key string var val interface {} // value type of m is assignable to val m := map[string]int{"mon":0, "tue":1, "wed":2, "thu":3, "fri":4, "sat":5, "sun":6} for key, val = range m { h(key, val) }
変更後では、
m := map[string]int{...}
の宣言が、for key, val = range m
ループの直前に移動されています。これにより、m
がどこで定義され、どのような値を持つのかが、その使用箇所からすぐに見て取れるようになります。これは、コードの局所性を高め、読者がコードのフローを追跡しやすくするための一般的なコーディングスタイルです。 -
仕様書の日付更新: HTMLドキュメントのメタデータ部分にある
Subtitle
の日付が更新されています。変更前:
<Subtitle>: "Version of July 9, 2013",
変更後:
<Subtitle>: "Version of July 11, 2013",
これは、このコミットが2013年7月11日付けのGo言語仕様書に反映されたことを示しています。
この変更は、Goコンパイラの動作に影響を与えるものではなく、あくまでドキュメントの品質向上を目的としたものです。しかし、公式仕様書という性質上、その中のコード例は言語の正しい使い方を示す模範となるため、このような細かな可読性の改善も重要視されます。
コアとなるコードの変更箇所
doc/go_spec.html
ファイルの以下の部分が変更されました。
--- a/doc/go_spec.html
+++ b/doc/go_spec.html
@@ -1,6 +1,6 @@
<!--{
"Title": "The Go Programming Language Specification",
- "Subtitle": "Version of July 9, 2013",
+ "Subtitle": "Version of July 11, 2013",
"Path": "/ref/spec"
}-->
@@ -4664,7 +4664,6 @@ for i, _ := range testdata.a {
}
var a [10]string
-m := map[string]int{"mon":0, "tue":1, "wed":2, "thu":3, "fri":4, "sat":5, "sun":6}
for i, s := range a {
// type of i is int
// type of s is string
@@ -4674,6 +4673,7 @@ for i, s := range a {
var key string
var val interface {} // value type of m is assignable to val
+m := map[string]int{"mon":0, "tue":1, "wed":2, "thu":3, "fri":4, "sat":5, "sun":6}
for key, val = range m {
h(key, val)
}
コアとなるコードの解説
変更は主に2つの部分に分けられます。
-
仕様書の日付の更新:
<!--{ ... }-->
ブロック内のSubtitle
フィールドが"Version of July 9, 2013"
から"Version of July 11, 2013"
に変更されています。これは、ドキュメントのバージョン管理の一環であり、このコミットが適用された時点での最新の日付を反映しています。 -
コード例における変数宣言の移動:
var a [10]string
の後にあったm := map[string]int{...}
の行が削除され、その後に続くfor key, val = range m { ... }
ループの直前に挿入されています。-m := map[string]int{"mon":0, "tue":1, "wed":2, "thu":3, "fri":4, "sat":5, "sun":6}
: この行が元の位置から削除されました。+m := map[string]int{"mon":0, "tue":1, "wed":2, "thu":3, "fri":4, "sat":5, "sun":6}
: この行が新しい位置に挿入されました。
この変更により、
m
というマップ変数の宣言と初期化が、実際にその変数m
がfor...range
ループで使われる箇所に隣接するようになりました。これは、コードの局所性を高め、読者がコードの意図をより迅速かつ正確に把握できるようにするための、一般的なプログラミングのベストプラクティスです。特に、ドキュメント内のコード例では、読者が言語の概念を学ぶ上で混乱を避けるために、このような明瞭さが非常に重要となります。
関連リンク
- Go言語の公式ウェブサイト: https://golang.org/
- Go言語の仕様書: https://golang.org/ref/spec (このコミットが修正したドキュメントの最終的な公開場所)
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント
- 一般的なプログラミングにおけるコードの可読性に関する原則
- GitHubのコミット履歴
- Go言語の
map
型とfor...range
ループに関する情報 - Go言語の変数宣言とスコープに関する情報
- Go言語のissueトラッカー (ただし、#5862は公開情報として見つからず)