[インデックス 1674] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の初期開発段階におけるビルドシステム関連の修正です。具体的には、src/lib/Makefile
に container
ディレクトリを DIRS
変数に追加することで、ビルドプロセスに container
パッケージが正しく含まれるようにする変更です。
コミット
commit 070738c30c8295e61572530b7affb13daf4153d1
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date: Fri Feb 13 15:10:35 2009 -0800
- added Makefile change again (lost due to to p4 misuse)
R=rsc
OCL=25026
CL=25026
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/070738c30c8295e61572530b7affb13daf4153d1
元コミット内容
このコミットの元々の内容は、src/lib/Makefile
に container
ディレクトリを追加することです。コミットメッセージにある「added Makefile change again (lost due to to p4 misuse)」から、この変更が以前にも行われたものの、バージョン管理システムであるPerforce (p4) の誤用により失われたため、再度追加されたものであることが示唆されています。
変更の背景
Go言語の初期開発において、ビルドシステムは現在のようなGo Modulesやgo build
コマンドが確立される前であり、Makefile
が重要な役割を担っていました。src/lib/Makefile
は、Goの標準ライブラリの一部をビルドするための設定を含んでいました。
このコミットの背景には、container
パッケージがGoの標準ライブラリの一部として開発されていたものの、何らかの理由(コミットメッセージでは「p4 misuse」と明記されている)で、そのビルド設定がMakefile
から一時的に失われていたという状況があります。これにより、container
パッケージが正しくビルドプロセスに含まれず、利用できない状態になっていた可能性があります。
p4 misuse
という記述は、当時のGo開発チームがPerforceという集中型バージョン管理システムを使用しており、その操作ミス(例えば、ファイルの同期ミス、変更の取り消しミス、ブランチマージの失敗など)によって、一度コミットされたはずの重要なビルド設定が失われたことを示しています。このコミットは、その失われた設定を復元し、ビルドの整合性を確保することを目的としています。
前提知識の解説
- Makefile:
Makefile
は、make
ユーティリティがプログラムのコンパイルやインストールなどのタスクを自動化するために使用するファイルです。依存関係に基づいてコマンドを実行し、プロジェクトのビルドプロセスを効率化します。Go言語の初期においては、Goプログラム自体のビルドや標準ライブラリのビルドにMakefile
が広く利用されていました。 DIRS
変数:Makefile
において、DIRS
のような変数は、ビルド対象となるサブディレクトリのリストを定義するためによく使用されます。make
は、このリストに指定された各ディレクトリに移動し、それぞれのディレクトリ内のMakefile
(またはデフォルトのビルドルール)を実行することで、プロジェクト全体を再帰的にビルドします。- Perforce (p4): Perforceは、特に大規模な開発チームやゲーム開発業界で広く使用されている集中型バージョン管理システム(CVCS)です。Gitのような分散型バージョン管理システム(DVCS)とは異なり、中央サーバーにすべてのリポジトリが存在し、開発者はサーバーからファイルをチェックアウトして作業します。
p4 misuse
という表現は、Perforceのコマンド操作やワークフローにおける誤りを示唆しており、例えば、正しいリビジョンへの同期を怠った、変更を誤ってリバートした、あるいは不適切なマージ操作を行ったなどが考えられます。 - Go言語の初期のビルドシステム: 現在のGo言語は
go build
コマンド一つで簡単にビルドできますが、初期のGoはより伝統的なコンパイル言語と同様に、Makefile
やシェルスクリプトを組み合わせてビルドプロセスを管理していました。このコミットは、その過渡期のビルドシステムの一端を示しています。
技術的詳細
このコミットの技術的な詳細は、src/lib/Makefile
という特定のファイルに対する変更に集約されます。
src/lib/Makefile
は、Goの標準ライブラリ(lib
ディレクトリ以下)に含まれる各パッケージをビルドするための設定を定義していました。このファイルには、DIRS
という変数が存在し、Goの標準ライブラリを構成する各サブディレクトリ(パッケージ)のリストが格納されていました。make
コマンドがこのMakefile
を実行すると、DIRS
に列挙された各ディレクトリに移動し、それぞれのパッケージをコンパイルするなどのビルドステップが実行されます。
コミットの差分を見ると、container
という文字列がDIRS
変数に追加されています。
--- a/src/lib/Makefile
+++ b/src/lib/Makefile
@@ -8,6 +8,7 @@ GC=6g
DIRS=\
container/array\
+ container\
fmt\
hash\
http\
元々container/array
はリストに存在していましたが、これはcontainer
パッケージ内のarray
サブパッケージを指します。しかし、container
パッケージ自体がトップレベルのパッケージとしてビルドされるためには、DIRS
リストにcontainer
そのものが含まれている必要がありました。
この変更により、make
プロセスはsrc/lib/container
ディレクトリもビルド対象として認識し、そのディレクトリ内のGoソースコードがコンパイルされ、Goの標準ライブラリの一部として正しく組み込まれるようになります。これは、container
パッケージが提供するデータ構造(例えば、list
やheap
など、Go 1.0で導入されたもの)が、Goのビルド済みライブラリとして利用可能になるために不可欠な修正でした。
「p4 misuse」によってこの行が失われたということは、開発者がPerforceの操作中に、意図せずこの変更を元に戻してしまったり、正しい変更履歴が反映されない形でファイルを更新してしまったりしたことを意味します。このコミットは、そのエラーを修正し、ビルドの完全性を回復させるためのものです。
コアとなるコードの変更箇所
変更はsrc/lib/Makefile
ファイルの一箇所のみです。
--- a/src/lib/Makefile
+++ b/src/lib/Makefile
@@ -8,6 +8,7 @@ GC=6g
DIRS=\
container/array\\\
+ container\\\
fmt\\\
hash\\\
http\\\
具体的には、DIRS
変数にcontainer\
という行が追加されています。
コアとなるコードの解説
DIRS
変数は、src/lib
ディレクトリ以下にある、ビルド対象となるサブディレクトリ(Goパッケージ)のリストを定義しています。\
(バックスラッシュ)は、Makefile
において行の継続を示す記号であり、これによりDIRS
変数の定義が複数行にわたって記述されています。
この変更によって、container
ディレクトリがDIRS
リストに追加されたことで、make
コマンドがsrc/lib/Makefile
を処理する際に、src/lib/container
ディレクトリもビルド対象として認識するようになります。これにより、container
パッケージ内のGoソースファイルがコンパイルされ、Goの標準ライブラリの一部として正しくリンクされるようになります。
この修正は、container
パッケージがGoの標準ライブラリとして機能するために不可欠なものでした。もしこの行がなければ、container
パッケージはビルドシステムによって無視され、Goプログラムからインポートして使用することができなかったでしょう。
関連リンク
- Go言語の初期のコミット履歴: https://github.com/golang/go/commits/master
- Perforce (p4) の公式ドキュメント: https://www.perforce.com/ (一般的な情報源として)
- GNU Makeの公式ドキュメント: https://www.gnu.org/software/make/manual/ (Makefileの一般的な情報源として)
参考にした情報源リンク
- コミットデータ:
./commit_data/1674.txt
- GitHub上のコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/070738c30c8295e61572530b7affb13daf4153d1
- Go言語の歴史に関する一般的な知識
- Makefileの一般的な構文と使用法に関する知識
- バージョン管理システム(特にPerforce)に関する一般的な知識