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[インデックス 16740] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のビルドシステムにおけるランタイムテストのタイムアウト値を調整するものです。具体的には、make.batスクリプト内で実行されるgo test runtimeコマンドのタイムアウトが240秒から300秒に延長されました。これは、ビルドの安定性を向上させることを目的としています。

コミット

make.bat: incease runtime test timeout to 300s (fixes build)

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/09e72f5670664539a4f01c60faea4a366d2a0fb8

元コミット内容

commit 09e72f5670664539a4f01c60faea4a366d2a0fb8
Author: Alex Brainman <alex.brainman@gmail.com>
Date:   Fri Jul 12 12:30:18 2013 +1000

    make.bat: incease runtime test timeout to 300s (fixes build)
    
    R=golang-dev, rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/11064044
---
 src/run.bat | 2 +-\n 1 file changed, 1 insertion(+), 1 deletion(-)\n
diff --git a/src/run.bat b/src/run.bat
index 6f8ab0e7d6..a60de185dd 100644
--- a/src/run.bat
+++ b/src/run.bat
@@ -43,7 +43,7 @@ if errorlevel 1 goto fail
 echo.
 
 echo # runtime -cpu=1,2,4
-go test runtime -short -timeout=240s -cpu=1,2,4
+go test runtime -short -timeout=300s -cpu=1,2,4
 if errorlevel 1 goto fail
 echo.
 

変更の背景

このコミットの主な背景は、Go言語のビルドプロセスにおいて、ランタイムパッケージのテストがタイムアウトにより失敗する問題が発生していたことです。コミットメッセージにある「fixes build」という記述が示す通り、このタイムアウトはビルドの不安定性を引き起こしていました。

テストがタイムアウトする原因はいくつか考えられます。例えば、CI(継続的インテグレーション)環境の負荷が高い場合、テスト実行に通常よりも時間がかかることがあります。また、特定のテストが複雑な処理やリソースを多く消費する場合、あるいは稀に発生する競合状態(race condition)などによって、実行時間が変動し、既存のタイムアウト設定を超過してしまう可能性があります。

この問題に対処するため、テストのタイムアウト時間を延長することで、一時的なパフォーマンスの低下やリソースの競合によってテストが不当に失敗することを防ぎ、ビルドの安定性を確保することが目的とされました。

前提知識の解説

make.bat

make.batは、Windows環境におけるGo言語のビルドシステムの一部として機能するバッチスクリプトです。Goプロジェクトでは、クロスプラットフォームなビルドを管理するためにmake.bash(Unix系)やmake.bat(Windows系)のようなスクリプトが用いられることがあります。これらのスクリプトは、コンパイル、テスト実行、パッケージングなど、ビルドプロセスにおける一連のタスクを自動化します。このコミットでは、src/run.batというファイルが変更されていますが、これはmake.batから呼び出される、あるいはビルドプロセスの一部として実行されるスクリプトであると推測されます。

go testコマンド

go testは、Go言語の標準的なテスト実行ツールです。Goのテストは、_test.goというサフィックスを持つファイルに記述され、go testコマンドを実行することで自動的に発見・実行されます。

  • go test [パッケージ名]: 指定されたパッケージのテストを実行します。このコミットではruntimeパッケージのテストが対象です。
  • -shortフラグ: 短時間で完了するテストのみを実行するよう指示します。これは、開発中の迅速なフィードバックや、CI環境での時間節約のために使用されます。
  • -timeout durationフラグ: テストの実行に許容される最大時間を設定します。この時間を超えると、テストは強制的に終了され、失敗とみなされます。このコミットの核心となる変更点です。
  • -cpu listフラグ: テストを並列実行する際のCPUコア数を指定します。例えば-cpu=1,2,4は、テストを1コア、2コア、4コアのそれぞれで実行し、並列実行時の挙動を確認するために使われます。

runtimeパッケージ

Go言語のruntimeパッケージは、Goプログラムの実行環境を管理する非常に低レベルな機能を提供します。これには、ガベージコレクション、ゴルーチン(goroutine)のスケジューリング、スタック管理、システムコールインターフェースなどが含まれます。runtimeパッケージのテストは、Go言語のコアな動作の正確性と安定性を保証するために極めて重要であり、しばしば複雑で時間のかかるテストが含まれます。

競合状態(Race Condition)

Go言語のテストにおいて、特に並行処理を含むruntimeパッケージのような低レベルな部分では、競合状態(race condition)が問題となることがあります。競合状態とは、複数のゴルーチンが共有リソースにアクセスする際に、そのアクセス順序によって結果が非決定的に変わってしまうバグのことです。このようなバグは再現性が低く、特定のタイミングやシステム負荷の下でのみ発生することがあります。テストがタイムアウトする原因が、稀に発生する競合状態によってテストがデッドロックしたり、無限ループに陥ったりすることである可能性も考えられます。

技術的詳細

このコミットは、Go言語のビルドシステムにおけるテストの信頼性を向上させるための、実用的な調整です。テストのタイムアウトを延長するという決定は、通常、以下の理由に基づいています。

  1. CI環境の変動性: 継続的インテグレーション(CI)システムは、共有リソース上で動作することが多く、他のジョブの実行やシステム全体の負荷によって、テストの実行時間が変動することがあります。特定のテストが、通常は問題なく完了するものの、CI環境のピーク負荷時にのみタイムアウトしてしまう場合、タイムアウトの延長は有効な解決策となります。
  2. テストの複雑性またはリソース消費: runtimeパッケージのテストは、Go言語の内部動作を深く検証するため、複雑なシナリオや大量のリソース(CPU、メモリ)を消費する場合があります。これらのテストは、設計上、完了までに時間がかかることがあり、厳しすぎるタイムアウト設定は不当な失敗につながります。
  3. 間欠的なパフォーマンス問題: テスト対象のコード自体に、稀に発生するパフォーマンスのボトルネックや、特定の条件下での遅延がある場合、タイムアウトの延長は一時的な回避策となり得ます。ただし、これは根本的なパフォーマンス問題を隠蔽する可能性もあるため、通常は根本原因の調査と修正が望ましいとされます。
  4. 競合状態の検出と回避: 前述の通り、競合状態がテストの非決定的なタイムアウトを引き起こすことがあります。タイムアウトを延長することで、テストがより多くの時間を与えられ、競合状態によるデッドロックや無限ループから回復する機会が増える、あるいは単に完了するまで待つことができるようになります。ただし、これは競合状態を修正するものではなく、その影響を緩和するものです。

タイムアウトを延長することのトレードオフも考慮する必要があります。

  • 潜在的な問題の隠蔽: タイムアウトの延長は、テストが遅いことの根本原因(例えば、非効率なコード、リソースリーク、デッドロックなど)を隠蔽してしまう可能性があります。本来修正すべきパフォーマンスの問題やバグが見過ごされるリスクがあります。
  • CI時間の増加: テストのタイムアウトを延長すると、実際にテストがタイムアウトした場合に、CIジョブが完了するまでの総時間が増加します。これは、CIパイプラインの効率に影響を与える可能性があります。

このコミットは、当時のGoビルドシステムにおいて、ランタイムテストのタイムアウトが頻繁に発生し、ビルドの安定性を損なっていたという状況に対する、迅速かつ実用的な対応であったと考えられます。

コアとなるコードの変更箇所

変更はsrc/run.batファイルの一箇所のみです。

--- a/src/run.bat
+++ b/src/run.bat
@@ -43,7 +43,7 @@ if errorlevel 1 goto fail
 echo.
 
 echo # runtime -cpu=1,2,4
-go test runtime -short -timeout=240s -cpu=1,2,4
+go test runtime -short -timeout=300s -cpu=1,2,4
 if errorlevel 1 goto fail
 echo.
 

コアとなるコードの解説

変更された行は、go test runtime -short -timeout=240s -cpu=1,2,4というコマンドです。

このコマンドは、以下の意味を持ちます。

  • go test runtime: runtimeパッケージのテストを実行します。
  • -short: 短時間で完了するテストのみを実行します。
  • -timeout=240s: テストの実行に最大240秒(4分)を許容します。
  • -cpu=1,2,4: テストを1コア、2コア、4コアのそれぞれで実行し、並列実行時の挙動を確認します。

このコミットでは、-timeoutフラグの値が240sから300sに変更されました。これにより、runtimeパッケージのテストに許容される実行時間が、4分から5分に延長されました。この変更は、テストが以前のタイムアウト設定で不当に失敗していた問題を解決し、ビルドの成功率を高めることを目的としています。

関連リンク

参考にした情報源リンク