[インデックス 16813] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリ regexp/syntax
パッケージ内の parse.go
ファイルにおけるドキュメンテーションの更新に関するものです。具体的には、Parse
関数のコメントから正規表現の構文説明への参照方法が変更されました。
コミット
commit b6f841733bd00267074d5cc0e2043a382e920eef
Author: Daniel Morsing <daniel.morsing@gmail.com>
Date: Thu Jul 18 21:28:00 2013 +0200
regexp/syntax: update documentation for Parse.
Syntax description was moved to the top level comment of this package.
R=golang-dev, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/11536043
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/b6f841733bd00267074d5cc0e2043a382e920eef
元コミット内容
regexp/syntax: update documentation for Parse.
Syntax description was moved to the top level comment of this package.
変更の背景
この変更の背景には、Go言語のドキュメンテーションにおける一貫性と可読性の向上が挙げられます。以前は Parse
関数のコメント内で正規表現の構文が「パッケージ regexp
のトップレベルコメントで記述されている」と具体的に言及されていました。しかし、このコミットではその記述を「トップレベルコメントで記述されている」と簡略化しています。
これは、正規表現の構文に関する詳細な説明が、regexp/syntax
パッケージ自体のトップレベルコメント(つまり、パッケージの概要を説明するコメント)に移動されたことを示唆しています。このような変更は、以下の目的で行われることが多いです。
- 情報の集約と一貫性: 特定の概念(この場合は正規表現の構文)に関する説明をパッケージのトップレベルに集約することで、ユーザーがそのパッケージの機能全体を理解する上で必要な情報を一箇所で参照できるようになります。これにより、関連情報が散在するのを防ぎ、ドキュメンテーションの一貫性が向上します。
- メンテナンスの容易性: 構文の説明が複数の場所に重複して記述されていると、変更があった場合にすべての箇所を更新する必要があり、メンテナンスが煩雑になります。一箇所に集約することで、更新作業が簡素化されます。
- 参照の簡素化:
Parse
関数のような個別の関数から、より一般的な情報への参照を簡素化することで、コードの可読性を損なわずに、必要な情報への誘導を明確にすることができます。
このコミットは、regexp/syntax
パッケージのドキュメンテーション構造を改善し、ユーザーが正規表現の構文に関する情報をより効率的に見つけられるようにするためのリファクタリングの一環と考えられます。
前提知識の解説
Go言語のドキュメンテーション
Go言語では、コードのコメントがそのままドキュメンテーションとして機能する「godoc」という仕組みがあります。
- パッケージコメント: ファイルの先頭にある
package
宣言の直前にあるコメントは、そのパッケージ全体の概要を説明するパッケージコメントとして扱われます。これはgodoc
コマンドや pkg.go.dev でパッケージのトップページに表示されます。 - 関数/型/変数コメント: 関数、型、変数などの宣言の直前にあるコメントは、その要素のドキュメンテーションとして扱われます。
- エクスポートされた要素: 大文字で始まる(エクスポートされた)要素のコメントは、外部から参照可能なドキュメンテーションとなります。
このコミットで言及されている「トップレベルコメント」とは、regexp/syntax
パッケージのパッケージコメントを指している可能性が高いです。
regexp/syntax
パッケージ
regexp/syntax
パッケージは、Go言語の正規表現エンジンの中核をなす部分です。このパッケージは、正規表現の文字列を解析(パース)し、内部的な表現(構文木)に変換する機能を提供します。
- 正規表現のパース: 正規表現文字列(例:
a+b*c?
)を読み込み、その構文を解析します。 - 構文木 (Parse Tree): パースされた正規表現は、
Regexp
型の構文木として表現されます。この構文木は、正規表現の構造をプログラムで扱いやすい形式で表現したものです。 - フラグ (Flags): 正規表現のパースやマッチングの挙動を制御するためのオプション(例: 大文字小文字を区別しない、複数行モードなど)を定義します。
このパッケージは、Goの regexp
パッケージが内部的に利用しており、正規表現のコンパイル処理において重要な役割を担っています。
Parse
関数
regexp/syntax
パッケージの Parse
関数は、正規表現文字列とフラグを受け取り、その正規表現の構文木を生成する主要な関数です。この関数が、正規表現の文字列を解析し、内部的な表現に変換する処理を行います。
技術的詳細
このコミットの技術的な変更は非常にシンプルで、src/pkg/regexp/syntax/parse.go
ファイル内の Parse
関数のドキュメンテーションコメントが1行変更されただけです。
変更前:
// Parse parses a regular expression string s, controlled by the specified
// Flags, and returns a regular expression parse tree. The syntax is
// described in the top-level comment for package regexp.
変更後:
// Parse parses a regular expression string s, controlled by the specified
// Flags, and returns a regular expression parse tree. The syntax is
// described in the top-level comment.
この変更は、正規表現の構文が「パッケージ regexp
のトップレベルコメント」で記述されているという具体的な参照を、「トップレベルコメント」というより一般的な表現に置き換えています。
これは、正規表現の構文に関する詳細な説明が、regexp/syntax
パッケージ自体のトップレベルコメントに移動されたことを示唆しています。Goのドキュメンテーション慣習では、パッケージのトップレベルコメントは、そのパッケージが提供する機能や、そのパッケージで使われる主要な概念(この場合は正規表現の構文)について説明するのに最適な場所です。
この変更により、Parse
関数のドキュメンテーションは、正規表現の構文に関する詳細な情報がどこにあるかについて、より簡潔かつ正確な指示を提供するようになりました。ユーザーは regexp/syntax
パッケージのドキュメンテーション全体を参照することで、構文に関する情報を得られるという期待が持てます。
コアとなるコードの変更箇所
diff --git a/src/pkg/regexp/syntax/parse.go b/src/pkg/regexp/syntax/parse.go
index 30e0e8b7fe..42d0bf4a16 100644
--- a/src/pkg/regexp/syntax/parse.go
+++ b/src/pkg/regexp/syntax/parse.go
@@ -651,7 +651,7 @@ func literalRegexp(s string, flags Flags) *Regexp {
// Parse parses a regular expression string s, controlled by the specified
// Flags, and returns a regular expression parse tree. The syntax is
-// described in the top-level comment for package regexp.
+// described in the top-level comment.
func Parse(s string, flags Flags) (*Regexp, error) {
if flags&Literal != 0 {
// Trivial parser for literal string.
コアとなるコードの解説
変更されたのは、src/pkg/regexp/syntax/parse.go
ファイル内の Parse
関数のドキュメンテーションコメントの1行です。
- 変更前:
// described in the top-level comment for package regexp.
- この行は、正規表現の構文が「
regexp
パッケージのトップレベルコメント」で説明されていると明示していました。これは、regexp/syntax
パッケージではなく、より上位のregexp
パッケージを参照していました。
- この行は、正規表現の構文が「
- 変更後:
// described in the top-level comment.
- この行は、単に「トップレベルコメント」で説明されていると述べています。この文脈では、
regexp/syntax
パッケージ自身のトップレベルコメントを指すことになります。
- この行は、単に「トップレベルコメント」で説明されていると述べています。この文脈では、
この変更は、正規表現の構文に関するドキュメンテーションが、regexp/syntax
パッケージのスコープ内で完結するように、情報の配置がリファクタリングされたことを示しています。これにより、Parse
関数を利用する開発者は、regexp/syntax
パッケージのドキュメンテーションを参照するだけで、必要な構文情報を得られるようになります。これは、ドキュメンテーションの局所性と自己完結性を高めるための改善です。
関連リンク
- Go CL 11536043: https://golang.org/cl/11536043
参考にした情報源リンク
- Go言語のドキュメンテーションに関する一般的な情報: https://go.dev/doc/effective_go#commentary
- Go言語の
regexp
パッケージ: https://pkg.go.dev/regexp - Go言語の
regexp/syntax
パッケージ: https://pkg.go.dev/regexp/syntax - Go言語の正規表現構文 (Goの公式ドキュメント): https://go.dev/s/re2syntax (これは一般的なRE2構文へのリンクであり、Goの
regexp
パッケージが採用している構文です。このコミットの時点での具体的なドキュメントの場所は、当時のGoソースコードのregexp/syntax
パッケージのトップレベルコメントを参照する必要がありますが、概念としてはこれに準じます。) - RE2 (Goの正規表現エンジンがベースとしているもの): https://github.com/google/re2/wiki/Syntax