[インデックス 16877] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の公式仕様書(doc/go_spec.html
)における「Constants(定数)」セクションの記述を更新するものです。具体的には、定数の種類に関する説明文の軽微な修正が含まれています。
コミット
commit f3310124277638d3eb4fdcfe86966b9c41fe4954
Author: Robert Griesemer <gri@golang.org>
Date: Thu Jul 25 09:35:55 2013 -0700
spec: update prose in Constants section
Fixes #5952.
R=r, rsc
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/11812043
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/f3310124277638d3eb4fdcfe86966b9c41fe4954
元コミット内容
このコミットの元の内容は、Go言語の仕様書(doc/go_spec.html
)の定数に関する記述を修正することです。具体的には、定数の分類に関する説明文において、「Character constants(文字定数)」という表現を「Rune constants(rune定数)」に修正しています。これは、Go言語における文字の概念がUnicodeのコードポイントを表すrune
型と密接に関連しているため、より正確な用語を使用するための変更です。
変更の背景
この変更の背景には、Go言語の仕様書における用語の正確性を向上させるという目的があります。コミットメッセージに「Fixes #5952」とあることから、GoのIssueトラッカーで報告された問題(Issue 5952)に対応するものであることがわかります。
Issue 5952は、「spec: "character constant" should be "rune constant"」というタイトルで、Go言語の仕様書において「character constant」という用語が使われている箇所を「rune constant」に修正すべきであるという提案でした。Go言語では、文字は通常rune
型として扱われ、これはUnicodeのコードポイントを表します。C言語など他の言語における「文字(character)」の概念とは異なり、Goでは1バイトの文字だけでなく、可変長のUTF-8エンコードされた文字(rune)を扱うため、より正確な「rune constant」という表現が求められました。
この修正は、Go言語の設計思想、特にUnicodeとUTF-8への深いコミットメントを反映したものであり、仕様書の記述を実際の言語の挙動と用語に合致させるための重要な調整です。
前提知識の解説
Go言語の仕様書 (The Go Programming Language Specification)
Go言語の仕様書は、Go言語の構文、セマンティクス、および標準ライブラリの動作を定義する公式文書です。Go言語の設計者によって維持され、言語の進化に合わせて更新されます。開発者はこの仕様書を参照することで、Goプログラムがどのように動作するかを正確に理解できます。
Go言語における定数 (Constants)
Go言語における定数は、プログラムの実行中に値が変更されない固定された値です。定数は、数値(整数、浮動小数点数、複素数)、ブール値、文字列のいずれかになります。Goの定数は型を持たない「untyped constant」として扱われることが多く、これはコンパイル時に型が決定されるまで、より柔軟な型推論を可能にします。
Rune型
Go言語には、rune
という組み込み型があります。rune
はint32
のエイリアスであり、Unicodeのコードポイントを表すために使用されます。Goの文字列はUTF-8でエンコードされたバイトのシーケンスですが、個々のUnicode文字(コードポイント)を扱う際にはrune
型が用いられます。例えば、文字列をfor range
ループでイテレートすると、各要素はrune
型として取得されます。
文字定数とRune定数
一般的なプログラミング言語では、「文字定数」という用語は単一の文字を表すリテラルを指します。しかし、Go言語では、単一引用符で囲まれたリテラル(例: 'A'
)は、その文字のUnicodeコードポイントを表すrune
型の定数として扱われます。したがって、「文字定数」という表現は、Goのrune
型の概念と完全に一致しないため、より正確な「rune定数」という用語が推奨されます。
技術的詳細
このコミットは、doc/go_spec.html
という単一のファイルを変更しています。このファイルはGo言語の公式仕様書をHTML形式で記述したものです。変更内容は非常にシンプルで、特定の単語の置き換えです。
具体的には、以下の行が変更されています。
--- a/doc/go_spec.html
+++ b/doc/go_spec.html
@@ -1,6 +1,6 @@
<!--{
"Title": "The Go Programming Language Specification",
- "Subtitle": "Version of July 11, 2013",
+ "Subtitle": "Version of July 25, 2013",
"Path": "/ref/spec"
}-->
@@ -539,7 +539,7 @@ literal.
<i>rune constants</i>,
<i>integer constants</i>,
<i>floating-point constants</i>, <i>complex constants</i>,
-and <i>string constants</i>. Character, integer, floating-point,
+and <i>string constants</i>. Rune, integer, floating-point,
and complex constants are
collectively called <i>numeric constants</i>.
</p>
変更は2箇所あります。
-
仕様書のバージョン日付の更新:
"Subtitle": "Version of July 11, 2013",
が"Subtitle": "Version of July 25, 2013",
に変更されています。 これは、このコミットが適用された時点での仕様書の更新日を反映するためのものです。 -
用語の修正:
Character, integer, floating-point,
がRune, integer, floating-point,
に変更されています。 これは、定数の種類を列挙する際に、「Character(文字)」という曖昧な表現を、Go言語の文脈でより正確な「Rune(rune)」に置き換えるものです。これにより、仕様書の記述がGo言語のrune
型の概念と整合性が取れるようになります。
この変更は、Go言語の仕様書における用語の厳密性を高め、読者がGoの定数、特に文字を扱う際の正確な概念を理解するのに役立ちます。
コアとなるコードの変更箇所
変更されたファイルは doc/go_spec.html
です。
その中で、以下の2つの箇所が変更されています。
-
ファイルの冒頭部分(メタデータ):
--- a/doc/go_spec.html +++ b/doc/go_spec.html @@ -1,6 +1,6 @@ <!--{ "Title": "The Go Programming Language Specification", - "Subtitle": "Version of July 11, 2013", + "Subtitle": "Version of July 25, 2013", "Path": "/ref/spec" }-->
-
定数セクションの記述:
--- a/doc/go_spec.html +++ b/doc/go_spec.html @@ -539,7 +539,7 @@ literal. <i>rune constants</i>, <i>integer constants</i>, <i>floating-point constants</i>, <i>complex constants</i>, -and <i>string constants</i>. Character, integer, floating-point, +and <i>string constants</i>. Rune, integer, floating-point, and complex constants are collectively called <i>numeric constants</i>. </p>
コアとなるコードの解説
1. 仕様書バージョン日付の更新
この変更は、HTMLファイルのコメントブロック内にあるメタデータの一部です。Subtitle
フィールドは、仕様書のバージョン日付を示しています。この日付がJuly 11, 2013
からJuly 25, 2013
に更新されたのは、このコミットがGo言語の仕様書に対する公式な更新の一部であることを示しています。これは、ドキュメントの正確性と最新性を保つための標準的なプラクティスです。
2. 定数セクションの用語修正
この変更は、Go言語の仕様書における「Constants(定数)」セクションの本文にあります。元の記述では、定数の種類を列挙する際に「Character, integer, floating-point, and complex constants are collectively called numeric constants.」とありました。
ここで「Character」という用語が使われていましたが、Go言語の文脈では、単一引用符で囲まれたリテラルはUnicodeコードポイントを表すrune
型の定数として扱われます。そのため、「Character constant」という表現は、Goのrune
型の概念と完全に一致せず、誤解を招く可能性がありました。
このコミットでは、この「Character」を「Rune」に修正することで、Go言語の定数に関する記述をより正確かつGoの型システムに即したものにしています。これにより、読者はGoにおける文字の扱い(rune
型)と定数の概念をより正確に理解できるようになります。これは、Go言語の設計哲学である「明確さ」と「正確さ」を反映した、細部へのこだわりを示す変更と言えます。
関連リンク
- GitHubコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/f3310124277638d3eb4fdcfe86966b9c41fe4954
- Go Issue 5952: https://github.com/golang/go/issues/5952 (このコミットが修正したIssue)
- Go言語の公式仕様書: https://golang.org/ref/spec (変更が適用されたドキュメント)
- Go言語の
rune
型に関する公式ドキュメント: https://go.dev/blog/strings (Goにおける文字列とruneの概念を理解するための参考資料)
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント
- GitHubのgolang/goリポジトリのIssueトラッカー
- Go言語のコミット履歴
- Go言語のブログ記事 (特に文字列とruneに関するもの)