[インデックス 16995] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリ image/draw
パッケージのテストファイル src/pkg/image/draw/draw_test.go
におけるタイポ(誤字)を修正するものです。具体的には、go vet
ツールによって検出された t.Fatal
の誤用を t.Fatalf
に変更しています。これは、エラーメッセージのフォーマット指定子(%v
など)を使用する際に t.Fatalf
を使うべきという go vet
の指摘に従った修正であり、コードの堅牢性と可読性を向上させます。
コミット
commit 97863bb8afb025b06cea1032f605207b899764f3
Author: Nigel Tao <nigeltao@golang.org>
Date: Fri Aug 2 13:29:45 2013 +1000
image/draw: fix typos found by "go vet".
R=r, adg, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/12312043
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/97863bb8afb025b06cea1032f605207b899764f3
元コミット内容
image/draw: fix typos found by "go vet".
変更の背景
この変更は、Go言語の公式ツールである go vet
によって検出された問題を修正するために行われました。go vet
は、Goのソースコードを静的に解析し、潜在的なバグや疑わしい構造を報告するツールです。このケースでは、testing
パッケージの t.Fatal
関数が、フォーマット文字列と引数を伴って呼び出されているにもかかわらず、フォーマット指定子(%v
など)を処理する t.Fatalf
の代わりに使われていたことが問題でした。
go vet
はこのような一般的なプログラミングミスを特定し、開発者がより正確で意図通りのコードを書くのを助けます。このコミットは、go vet
の推奨に従い、テストコードの品質と正確性を向上させることを目的としています。
前提知識の解説
go vet
ツール
go vet
は、Go言語の標準的な静的解析ツールです。コンパイルは通るものの、実行時に問題を引き起こす可能性のあるコードパターンや、Goの慣習に反する記述を検出します。例えば、以下のような問題を検出できます。
- Printf系関数の引数とフォーマット指定子の不一致:
fmt.Printf
やlog.Printf
などで、フォーマット文字列と引数の型や数が合わない場合。 t.Fatal
とt.Fatalf
の誤用:testing
パッケージにおいて、フォーマット文字列を伴うエラー報告にはt.Fatalf
を使うべきであるという慣習。- 到達不能なコード:
return
やpanic
の後に続くコード。 - 構造体タグの誤り:
json:"field_name"
のような構造体タグの構文エラー。 - ロックの誤用:
sync.Mutex
などのロックが正しく使われていない場合。
go vet
は、GoプロジェクトのCI/CDパイプラインに組み込まれることが多く、コードレビューの前に自動的に潜在的な問題を特定するのに役立ちます。
testing
パッケージの t.Fatal
と t.Fatalf
Go言語の標準ライブラリ testing
パッケージは、ユニットテストやベンチマークテストを書くための機能を提供します。テスト関数は *testing.T
型の引数を受け取ります。この *testing.T
オブジェクトには、テストの失敗を報告するための様々なメソッドがあります。
-
t.Fatal(args ...interface{})
:- 引数をデフォルトのフォーマットで出力し、現在のテスト関数を失敗としてマークし、そのテスト関数の実行を即座に停止します。
fmt.Println(args...)
と同様に、引数をスペースで区切って出力します。- フォーマット文字列(
%v
など)を解釈しません。
-
t.Fatalf(format string, args ...interface{})
:fmt.Sprintf(format, args...)
と同様に、指定されたフォーマット文字列と引数を使ってメッセージをフォーマットし、出力します。- 現在のテスト関数を失敗としてマークし、そのテスト関数の実行を即座に停止します。
- フォーマット文字列と引数を正しく解釈します。
このコミットの文脈では、元のコードが t.Fatal("open: %v", err)
のように、t.Fatal
にフォーマット文字列とエラーオブジェクトを渡していました。しかし、t.Fatal
はフォーマット文字列を解釈しないため、出力は "open: %v %!v(type error=...)
のようになるか、あるいは単に %v
がそのまま表示されてしまうなど、意図しない結果になります。t.Fatalf
を使用することで、%v
が err
オブジェクトの文字列表現に正しく置き換えられ、期待通りのエラーメッセージが出力されます。
image/draw
パッケージ
image/draw
パッケージは、Go言語の標準ライブラリの一部であり、画像間の描画操作を提供します。具体的には、ある画像の内容を別の画像にコピーしたり、合成したりする機能を提供します。例えば、draw.Draw
関数は、ソース画像からデスティネーション画像へ、指定された矩形領域と合成操作(Porter-Duff合成など)を用いてピクセルを転送します。このパッケージは、グラフィックス処理や画像編集アプリケーションで広く利用されます。
このコミットで修正されたファイル draw_test.go
は、image/draw
パッケージの機能が正しく動作するかを検証するためのユニットテストを含んでいます。
技術的詳細
このコミットの技術的詳細は、t.Fatal
と t.Fatalf
のセマンティクスの違いに集約されます。
Goの testing
パッケージにおいて、テストの失敗を報告し、かつそのテストの実行を停止する関数はいくつかありますが、メッセージのフォーマット方法によって使い分けられます。
t.Error
/t.Errorf
: テストを失敗としてマークするが、テスト関数の実行は継続する。t.Fatal
/t.Fatalf
: テストを失敗としてマークし、テスト関数の実行を即座に停止する。
Fatal
と Errorf
の違いは、テストの継続性ですが、Fatal
と Fatalf
の違いは、メッセージのフォーマット方法です。
元のコードでは、以下のように記述されていました。
t.Fatal("open: %v", err)
ここで、開発者は err
オブジェクトを %v
フォーマット指定子を使って整形し、エラーメッセージに含めたいと考えていました。しかし、t.Fatal
は fmt.Println
と同様に動作するため、引数をそのまま出力しようとします。結果として、"open: %v"
という文字列と err
オブジェクトが別々の引数として扱われ、期待通りのフォーマットされたメッセージは得られません。
一方、t.Fatalf
は fmt.Sprintf
と同様に動作します。
t.Fatalf("open: %v", err)
この場合、t.Fatalf
は最初の引数 "open: %v"
をフォーマット文字列として解釈し、それに続く err
を %v
に対応する引数として扱います。これにより、err
の値が正しくフォーマットされ、例えば "open: permission denied"
のような、人間が読みやすいエラーメッセージが生成されます。
go vet
は、このような t.Fatal
の誤用(フォーマット文字列と引数が与えられているにもかかわらず Fatalf
が使われていないケース)を検出するように設計されており、このコミットはその指摘に従って修正されたものです。これは、Goのテストコードの品質と、エラーメッセージの有用性を高めるための重要な修正と言えます。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/pkg/image/draw/draw_test.go
ファイルの2箇所です。
--- a/src/pkg/image/draw/draw_test.go
+++ b/src/pkg/image/draw/draw_test.go
@@ -390,12 +390,12 @@ type embeddedPaletted struct {
func TestPaletted(t *testing.T) {
f, err := os.Open("../testdata/video-001.png")
if err != nil {
- t.Fatal("open: %v", err)
+ t.Fatalf("open: %v", err)
}
defer f.Close()
src, err := png.Decode(f)
if err != nil {
- t.Fatal("decode: %v", err)
+ t.Fatalf("decode: %v", err)
}
b := src.Bounds()
コアとなるコードの解説
このコミットでは、TestPaletted
関数内の2つのエラーハンドリング箇所が修正されています。
-
ファイルオープン時のエラーハンドリング:
// 変更前 if err != nil { t.Fatal("open: %v", err) } // 変更後 if err != nil { t.Fatalf("open: %v", err) }
os.Open
でファイルを開く際にエラーが発生した場合、テストを失敗させて終了します。元のコードではt.Fatal
が使われていましたが、エラーメッセージにerr
の内容を%v
で含める意図があったため、t.Fatalf
に変更されました。 -
PNGデコード時のエラーハンドリング:
// 変更前 if err != nil { t.Fatal("decode: %v", err) } // 変更後 if err != nil { t.Fatalf("decode: %v", err) }
png.Decode
でPNG画像をデコードする際にエラーが発生した場合も同様に、テストを失敗させて終了します。ここでも、エラーメッセージにerr
の内容を%v
で含める意図があったため、t.Fatalf
に変更されました。
これらの変更により、テストが失敗した際に表示されるエラーメッセージが、より正確で情報量の多いものになります。例えば、ファイルオープンに失敗した場合、open: no such file or directory
のように、具体的なエラー内容が %v
の部分に展開されて表示されるようになります。これはデバッグの際に非常に役立ちます。
関連リンク
- Go言語
testing
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/testing - Go言語
image/draw
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/image/draw go vet
コマンドのドキュメント (Go 1.18以降のgo doc cmd/vet
に相当): https://pkg.go.dev/cmd/vet
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント (
pkg.go.dev
) go vet
に関する一般的な情報源 (例: Go言語のブログ記事やチュートリアル)t.Fatal
とt.Fatalf
の違いに関するGoコミュニティの議論やStack Overflowの回答# [インデックス 16995] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリ image/draw
パッケージのテストファイル src/pkg/image/draw/draw_test.go
におけるタイポ(誤字)を修正するものです。具体的には、go vet
ツールによって検出された t.Fatal
の誤用を t.Fatalf
に変更しています。これは、エラーメッセージのフォーマット指定子(%v
など)を使用する際に t.Fatalf
を使うべきという go vet
の指摘に従った修正であり、コードの堅牢性と可読性を向上させます。
コミット
commit 97863bb8afb025b06cea1032f605207b899764f3
Author: Nigel Tao <nigeltao@golang.org>
Date: Fri Aug 2 13:29:45 2013 +1000
image/draw: fix typos found by "go vet".
R=r, adg, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/12312043
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/97863bb8afb025b06cea1032f605207b899764f3
元コミット内容
image/draw: fix typos found by "go vet".
変更の背景
この変更は、Go言語の公式ツールである go vet
によって検出された問題を修正するために行われました。go vet
は、Goのソースコードを静的に解析し、潜在的なバグや疑わしい構造を報告するツールです。このケースでは、testing
パッケージの t.Fatal
関数が、フォーマット文字列と引数を伴って呼び出されているにもかかわらず、フォーマット指定子(%v
など)を処理する t.Fatalf
の代わりに使われていたことが問題でした。
go vet
はこのような一般的なプログラミングミスを特定し、開発者がより正確で意図通りのコードを書くのを助けます。このコミットは、go vet
の推奨に従い、テストコードの品質と正確性を向上させることを目的としています。
前提知識の解説
go vet
ツール
go vet
は、Go言語の標準的な静的解析ツールです。コンパイルは通るものの、実行時に問題を引き起こす可能性のあるコードパターンや、Goの慣習に反する記述を検出します。例えば、以下のような問題を検出できます。
- Printf系関数の引数とフォーマット指定子の不一致:
fmt.Printf
やlog.Printf
などで、フォーマット文字列と引数の型や数が合わない場合。 t.Fatal
とt.Fatalf
の誤用:testing
パッケージにおいて、フォーマット文字列を伴うエラー報告にはt.Fatalf
を使うべきであるという慣習。- 到達不能なコード:
return
やpanic
の後に続くコード。 - 構造体タグの誤り:
json:"field_name"
のような構造体タグの構文エラー。 - ロックの誤用:
sync.Mutex
などのロックが正しく使われていない場合。
go vet
は、GoプロジェクトのCI/CDパイプラインに組み込まれることが多く、コードレビューの前に自動的に潜在的な問題を特定するのに役立ちます。
testing
パッケージの t.Fatal
と t.Fatalf
Go言語の標準ライブラリ testing
パッケージは、ユニットテストやベンチマークテストを書くための機能を提供します。テスト関数は *testing.T
型の引数を受け取ります。この *testing.T
オブジェクトには、テストの失敗を報告するための様々なメソッドがあります。
-
t.Fatal(args ...interface{})
:- 引数をデフォルトのフォーマットで出力し、現在のテスト関数を失敗としてマークし、そのテスト関数の実行を即座に停止します。
fmt.Println(args...)
と同様に、引数をスペースで区切って出力します。- フォーマット文字列(
%v
など)を解釈しません。
-
t.Fatalf(format string, args ...interface{})
:fmt.Sprintf(format, args...)
と同様に、指定されたフォーマット文字列と引数を使ってメッセージをフォーマットし、出力します。- 現在のテスト関数を失敗としてマークし、そのテスト関数の実行を即座に停止します。
- フォーマット文字列と引数を正しく解釈します。
このコミットの文脈では、元のコードが t.Fatal("open: %v", err)
のように、t.Fatal
にフォーマット文字列とエラーオブジェクトを渡していました。しかし、t.Fatal
はフォーマット文字列を解釈しないため、出力は "open: %v %!v(type error=...)
のようになるか、あるいは単に %v
がそのまま表示されてしまうなど、意図しない結果になります。t.Fatalf
を使用することで、%v
が err
オブジェクトの文字列表現に正しく置き換えられ、期待通りのエラーメッセージが出力されます。
image/draw
パッケージ
image/draw
パッケージは、Go言語の標準ライブラリの一部であり、画像間の描画操作を提供します。具体的には、ある画像の内容を別の画像にコピーしたり、合成したりする機能を提供します。例えば、draw.Draw
関数は、ソース画像からデスティネーション画像へ、指定された矩形領域と合成操作(Porter-Duff合成など)を用いてピクセルを転送します。このパッケージは、グラフィックス処理や画像編集アプリケーションで広く利用されます。
このコミットで修正されたファイル draw_test.go
は、image/draw
パッケージの機能が正しく動作するかを検証するためのユニットテストを含んでいます。
技術的詳細
このコミットの技術的詳細は、t.Fatal
と t.Fatalf
のセマンティクスの違いに集約されます。
Goの testing
パッケージにおいて、テストの失敗を報告し、かつそのテストの実行を停止する関数はいくつかありますが、メッセージのフォーマット方法によって使い分けられます。
t.Error
/t.Errorf
: テストを失敗としてマークするが、テスト関数の実行は継続する。t.Fatal
/t.Fatalf
: テストを失敗としてマークし、テスト関数の実行を即座に停止する。
Fatal
と Errorf
の違いは、テストの継続性ですが、Fatal
と Fatalf
の違いは、メッセージのフォーマット方法です。
元のコードでは、以下のように記述されていました。
t.Fatal("open: %v", err)
ここで、開発者は err
オブジェクトを %v
フォーマット指定子を使って整形し、エラーメッセージに含めたいと考えていました。しかし、t.Fatal
は fmt.Println
と同様に動作するため、引数をそのまま出力しようとします。結果として、"open: %v"
という文字列と err
オブジェクトが別々の引数として扱われ、期待通りのフォーマットされたメッセージは得られません。
一方、t.Fatalf
は fmt.Sprintf
と同様に動作します。
t.Fatalf("open: %v", err)
この場合、t.Fatalf
は最初の引数 "open: %v"
をフォーマット文字列として解釈し、それに続く err
を %v
に対応する引数として扱います。これにより、err
の値が正しくフォーマットされ、例えば "open: no such file or directory"
のような、人間が読みやすいエラーメッセージが生成されます。
go vet
は、このような t.Fatal
の誤用(フォーマット文字列と引数が与えられているにもかかわらず Fatalf
が使われていないケース)を検出するように設計されており、このコミットはその指摘に従って修正されたものです。これは、Goのテストコードの品質と、エラーメッセージの有用性を高めるための重要な修正と言えます。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/pkg/image/draw/draw_test.go
ファイルの2箇所です。
--- a/src/pkg/image/draw/draw_test.go
+++ b/src/pkg/image/draw/draw_test.go
@@ -390,12 +390,12 @@ type embeddedPaletted struct {
func TestPaletted(t *testing.T) {
f, err := os.Open("../testdata/video-001.png")
if err != nil {
- t.Fatal("open: %v", err)
+ t.Fatalf("open: %v", err)
}
defer f.Close()
src, err := png.Decode(f)
if err != nil {
- t.Fatal("decode: %v", err)
+ t.Fatalf("decode: %v", err)
}
b := src.Bounds()
コアとなるコードの解説
このコミットでは、TestPaletted
関数内の2つのエラーハンドリング箇所が修正されています。
-
ファイルオープン時のエラーハンドリング:
// 変更前 if err != nil { t.Fatal("open: %v", err) } // 変更後 if err != nil { t.Fatalf("open: %v", err) }
os.Open
でファイルを開く際にエラーが発生した場合、テストを失敗させて終了します。元のコードではt.Fatal
が使われていましたが、エラーメッセージにerr
の内容を%v
で含める意図があったため、t.Fatalf
に変更されました。 -
PNGデコード時のエラーハンドリング:
// 変更前 if err != nil { t.Fatal("decode: %v", err) } // 変更後 if err != nil { t.Fatalf("decode: %v", err) }
png.Decode
でPNG画像をデコードする際にエラーが発生した場合も同様に、テストを失敗させて終了します。ここでも、エラーメッセージにerr
の内容を%v
で含める意図があったため、t.Fatalf
に変更されました。
これらの変更により、テストが失敗した際に表示されるエラーメッセージが、より正確で情報量の多いものになります。例えば、ファイルオープンに失敗した場合、open: no such file or directory
のように、具体的なエラー内容が %v
の部分に展開されて表示されるようになります。これはデバッグの際に非常に役立ちます。
関連リンク
- Go言語
testing
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/testing - Go言語
image/draw
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/image/draw go vet
コマンドのドキュメント (Go 1.18以降のgo doc cmd/vet
に相当): https://pkg.go.dev/cmd/vet
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント (
pkg.go.dev
) go vet
に関する一般的な情報源 (例: Go言語のブログ記事やチュートリアル)t.Fatal
とt.Fatalf
の違いに関するGoコミュニティの議論やStack Overflowの回答