[インデックス 17065] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリであるstrings
パッケージのテストファイルsrc/pkg/strings/strings_test.go
に、IndexByte
関数のベンチマークテストを追加するものです。
コミット
commit 1104a2afb188a97a153727f7a67c243038b49749
Author: Brad Fitzpatrick <bradfitz@golang.org>
Date: Tue Aug 6 14:41:07 2013 -0700
strings: add IndexByte benchmark
Like existing Index, IndexRune, IndexHardN, etc.
R=golang-dev, khr
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/12486044
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/1104a2afb188a97a153727f7a67c243038b49749
元コミット内容
strings: add IndexByte benchmark
既存のIndex
、IndexRune
、IndexHardN
などと同様に、IndexByte
のベンチマークを追加します。
変更の背景
Go言語の開発では、パフォーマンスの最適化が非常に重視されています。標準ライブラリの各機能が期待通りの性能を発揮しているか、また将来的な変更が性能に悪影響を与えないかを継続的に監視するために、ベンチマークテストは不可欠な要素です。
このコミットの背景には、strings
パッケージ内の文字列検索関数群の性能を網羅的に評価し、その結果を継続的なインテグレーション(CI)システムや開発者が利用できるようにするという意図があります。IndexByte
関数は、文字列内で特定のバイト(byte
型)が最初に出現するインデックスを検索する基本的な操作であり、多くのアプリケーションで頻繁に利用される可能性があります。そのため、この関数の性能特性を正確に把握し、回帰テストとしてベンチマークを追加することは、ライブラリ全体の品質と信頼性を高める上で重要です。
既存のIndex
、IndexRune
、IndexHardN
といった関連する検索関数には既にベンチマークが存在しており、IndexByte
も同様にベンチマークの対象とすることで、strings
パッケージ内の検索機能のベンチマークカバレッジを向上させ、一貫した性能評価体制を確立することが目的です。
前提知識の解説
Go言語のtesting
パッケージとベンチマーク
Go言語には、標準ライブラリとしてtesting
パッケージが提供されており、ユニットテスト、例(Example)テスト、そしてベンチマークテストを記述するためのフレームワークが含まれています。
- ベンチマークテスト: Goのベンチマークテストは、特定のコードの実行時間を測定し、その性能を評価するために使用されます。関数名のプレフィックスは
Benchmark
で始まり、*testing.B
型の引数を取ります。b.N
: ベンチマーク関数内でループを回す回数を指定します。testing
パッケージは、安定した測定結果が得られるように、このb.N
の値を自動的に調整します。開発者は、for i := 0; i < b.N; i++
のようにループを記述し、測定したい処理をその中に含めます。go test -bench=.
: ベンチマークテストを実行するためのコマンドです。.
はすべてのベンチマークを実行することを意味します。b.Fatalf
: テストが失敗した場合に、エラーメッセージを出力してテストを終了させます。ベンチマークのセットアップ段階で、期待される結果が得られない場合に利用されます。
strings
パッケージ
strings
パッケージは、Go言語で文字列を操作するための基本的な機能を提供します。このパッケージには、文字列の検索、置換、分割、結合、大文字・小文字変換など、多岐にわたる関数が含まれています。
strings.IndexByte(s string, c byte) int
: 文字列s
内でバイトc
が最初に出現するインデックスを返します。c
が見つからない場合は-1
を返します。この関数は、特にASCII文字や単一バイト文字の検索に効率的です。strings.Index(s, substr string) int
: 文字列s
内で部分文字列substr
が最初に出現するインデックスを返します。strings.IndexRune(s string, r rune) int
: 文字列s
内でUnicodeコードポイント(ルーン)r
が最初に出現するインデックスを返します。strings.IndexAny(s, chars string) int
: 文字列s
内でchars
内のいずれかのUnicodeコードポイントが最初に出現するインデックスを返します。
これらの関数は、それぞれ異なる検索対象(バイト、部分文字列、ルーン、任意のルーン)に対応しており、内部的には異なるアルゴリズムが使用される場合があります。そのため、それぞれの性能特性を個別に評価することが重要です。
技術的詳細
このコミットは、strings
パッケージのIndexByte
関数の性能を測定するためのベンチマークテストBenchmarkIndexByte
をstrings_test.go
に追加します。
追加されたベンチマーク関数は以下の構造を持っています。
-
初期検証:
if got := IndexByte(benchmarkString, 'v'); got != 17 { b.Fatalf("wrong index: expected 17, got=%d", got) }
ベンチマークループに入る前に、
IndexByte
関数が正しく動作するかどうかを一度だけ確認します。benchmarkString
というグローバル変数(おそらくstrings_test.go
の他の場所で定義されている長い文字列)から'v'
というバイトを検索し、その結果が期待されるインデックス17
であることを確認しています。これにより、ベンチマークが実行される環境で関数が正しく機能していることを保証し、誤った測定を防ぎます。もし結果が17
でなければ、b.Fatalf
が呼び出され、ベンチマークは失敗します。 -
ベンチマークループ:
for i := 0; i < b.N; i++ { IndexByte(benchmarkString, 'v') }
このループ内で、
IndexByte(benchmarkString, 'v')
がb.N
回実行されます。b.N
はtesting
パッケージによって自動的に調整され、統計的に有意な測定結果が得られるように十分な回数だけ関数が実行されます。このループ内の処理の実行時間が測定され、その結果がベンチマークレポートとして出力されます。
このベンチマークは、特定の文字列benchmarkString
内で特定のバイト'v'
を検索するシナリオをシミュレートしています。これは、IndexByte
関数の典型的な使用パターンの一つであり、その性能を評価する上で適切なテストケースと言えます。
コアとなるコードの変更箇所
変更はsrc/pkg/strings/strings_test.go
ファイルに対して行われました。
--- a/src/pkg/strings/strings_test.go
+++ b/src/pkg/strings/strings_test.go
@@ -168,6 +168,15 @@ func BenchmarkIndex(b *testing.B) {
}\n
}\n
+func BenchmarkIndexByte(b *testing.B) {
+\tif got := IndexByte(benchmarkString, 'v'); got != 17 {
+\t\tb.Fatalf("wrong index: expected 17, got=%d", got)
+\t}\n
+\tfor i := 0; i < b.N; i++ {
+\t\tIndexByte(benchmarkString, 'v')
+\t}\n
+}\n+\n
var explodetests = []struct {
\ts string
\tn int
コアとなるコードの解説
追加されたコードは、BenchmarkIndexByte
という新しいベンチマーク関数です。
func BenchmarkIndexByte(b *testing.B)
: Goのベンチマーク関数のシグネチャに従っています。*testing.B
型の引数b
を受け取ります。if got := IndexByte(benchmarkString, 'v'); got != 17 { b.Fatalf("wrong index: expected 17, got=%d", got) }
: ベンチマークの実行前に、IndexByte
関数が正しく動作するかを検証しています。benchmarkString
というテスト用の文字列(このコミットの差分には含まれていませんが、strings_test.go
の他の場所で定義されていると推測されます)から文字'v'
を検索し、その結果が17
であることを確認しています。これは、ベンチマークが意味のある結果を出すための前提条件です。for i := 0; i < b.N; i++ { IndexByte(benchmarkString, 'v') }
: これが実際のベンチマークループです。b.N
はtesting
パッケージによって動的に決定される繰り返し回数で、このループ内でIndexByte
関数が繰り返し呼び出され、その実行時間が測定されます。これにより、IndexByte
関数の平均的な性能が評価されます。
このベンチマークの追加により、IndexByte
関数の性能がGoのCIシステムで継続的に監視されるようになり、将来的なコード変更が性能に与える影響を早期に検出できるようになります。
関連リンク
- Go言語の
testing
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/testing - Go言語の
strings
パッケージのドキュメント: https://pkg.go.dev/strings - Go言語のベンチマークに関する公式ブログ記事(例: "Go's work-stealing scheduler"など、ベンチマークの重要性について触れているもの): https://go.dev/blog/ (具体的な記事は検索が必要)
- Goのコードレビューシステム Gerrit の該当チェンジリスト: https://golang.org/cl/12486044
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント
- Go言語の
testing
パッケージのソースコード - Go言語の
strings
パッケージのソースコード - Go言語のベンチマークに関する一般的な知識
- GitHubのコミット履歴と差分表示機能
- https://go.dev/doc/code (Goのコードの書き方やテストに関する一般的な情報)
- https://go.dev/doc/effective_go#testing (Effective Goのテストに関するセクション)
- https://go.dev/blog/go1.5-benchmarks (Goのベンチマークに関するブログ記事の例、時期は異なるが概念は共通)
- https://go.dev/blog/ (Go公式ブログ)
- https://golang.org/cl/ (Go Gerrit チェンジリスト)
- https://github.com/golang/go/ (Go GitHub リポジトリ)