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[インデックス 17265] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式ドキュメントの一部である doc/go1.2.txt ファイルを更新するものです。具体的には、Go 1.2リリースにおけるパフォーマンス改善に関する記述が追加されています。

コミット

commit 826a73965862c29fa1ce1fd413a3a07701cd139d
Author: Rémy Oudompheng <oudomphe@phare.normalesup.org>
Date:   Thu Aug 15 10:31:18 2013 +0200

    doc: update go1.2.txt
    
    R=golang-dev, bradfitz
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/12960043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/826a73965862c29fa1ce1fd413a3a07701cd139d

元コミット内容

doc: update go1.2.txt

R=golang-dev, bradfitz
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/12960043

変更の背景

このコミットは、Go 1.2のリリースに向けたドキュメントの準備の一環として行われました。Goプロジェクトでは、各メジャーリリースにおいて、そのバージョンで導入された主要な変更点、新機能、パフォーマンス改善などをまとめたリリースノートやドキュメントが作成されます。doc/go1.2.txt は、Go 1.2のリリースノートの草稿または一部として機能するファイルであり、このコミットは、特にパフォーマンスに関する重要な改善点を追記することで、ドキュメントの正確性と網羅性を高めることを目的としています。

具体的には、compress/bzip2 パッケージのデコンプレッション速度向上と、crypto/des パッケージのエンコーディング/デコーディング速度向上という、ユーザーにとって直接的なメリットとなるパフォーマンス改善がGo 1.2で実現されたため、それらを公式ドキュメントに明記する必要がありました。

前提知識の解説

  • Go 1.2: 2013年12月にリリースされたGo言語のメジャーバージョンです。このリリースでは、ガベージコレクタの改善、ランタイムの最適化、新しいパッケージの追加、既存パッケージの機能強化など、多岐にわたる変更が加えられました。特にパフォーマンスの向上は、Go言語がサーバーサイドやシステムプログラミングで広く採用される上で重要な要素でした。
  • compress/bzip2 パッケージ: Go標準ライブラリの一部で、bzip2圧縮形式のデータストリームを読み書きするための機能を提供します。bzip2は、LZ77/LZ78ベースの圧縮アルゴリズムとは異なり、Burrows-Wheeler変換とMove-to-front変換、ランレングス符号化、ハフマン符号化を組み合わせたブロックソートベースの圧縮アルゴリズムを使用します。高い圧縮率を誇りますが、一般的にLZ77/LZ78ベースのアルゴリズム(例: gzip)よりも圧縮・展開に時間がかかります。
  • crypto/des パッケージ: Go標準ライブラリの一部で、Data Encryption Standard (DES) および Triple DES (3DES) 暗号アルゴリズムの実装を提供します。DESは、1970年代に開発されたブロック暗号で、現在はセキュリティ上の理由から推奨されていませんが、既存システムとの互換性のために使用されることがあります。3DESはDESを3回適用することでセキュリティを強化したものですが、これも現代の基準では十分ではありません。これらの暗号化・復号化処理は計算コストが高く、パフォーマンスの最適化が重要となる場合があります。
  • CL (Change List): Goプロジェクトにおける変更の単位です。Gitのコミットに相当しますが、GoプロジェクトではGerritというコードレビューシステムを使用しており、各変更はCLとして管理されます。CL番号は、特定の変更を識別するためのユニークなIDです。

技術的詳細

このコミット自体はドキュメントの更新であり、直接的なコードの機能変更やバグ修正ではありません。しかし、その内容はGo 1.2における重要なパフォーマンス改善を反映しています。

  1. compress/bzip2 のデコンプレッション速度向上 (CL 9915043): bzip2のデコンプレッションは、計算負荷の高い処理です。CL 9915043では、このデコンプレッション処理の内部アルゴリズムやデータ構造が最適化されたと考えられます。具体的な最適化手法としては、キャッシュ効率の向上、ループの最適化、アセンブリ言語による特定部分の実装(Goのランタイムや標準ライブラリでは、パフォーマンスがクリティカルな部分でアセンブリが使用されることがあります)、またはより効率的なデータアクセスパターンへの変更などが考えられます。これにより、bzip2で圧縮されたデータを展開する際の時間が約30%短縮され、bzip2を使用するアプリケーションの応答性やスループットが向上しました。

  2. crypto/des のエンコーディング/デコーディング速度向上 (CL 11874043, 12072045): DESおよび3DESの暗号化・復号化処理は、ビット操作やテーブルルックアップを多用します。CL 11874043と12072045では、これらの処理が大幅に最適化され、速度が約5倍に向上しました。これは非常に大きな改善であり、特に大量のデータをDES/3DESで処理するアプリケーション(例: レガシーシステムとの連携、特定のプロトコル実装)において、顕著なパフォーマンス向上をもたらします。この種の最適化は、通常、CPUの特定の命令セット(例: SSE, AVXなどのSIMD命令)の活用、より効率的なS-boxルックアップの実装、または並列処理の導入によって達成されます。Go言語のランタイムは、可能な限りハードウェアの機能を活用するように設計されており、これらの改善もその一環である可能性が高いです。

これらのパフォーマンス改善は、Go言語がシステムプログラミングやネットワークサービス開発において、より競争力のある選択肢となる上で不可欠な要素でした。特に、データ圧縮や暗号化といった計算集約的なタスクにおいて、標準ライブラリの効率が向上することは、開発者が外部ライブラリに依存することなく、Goの標準機能だけで高性能なアプリケーションを構築できることを意味します。

コアとなるコードの変更箇所

このコミットで変更されたファイルは doc/go1.2.txt のみです。追加された行は以下の2行です。

--- a/doc/go1.2.txt
+++ b/doc/go1.2.txt
@@ -9,6 +9,8 @@ package or cmd/xxx directory name, and ending in a CL number.
 Please keep the list sorted (as in sort.Strings of the lines).
 
 Performance:
+compress/bzip2: faster decompression by 30% (CL 9915043).
+crypto/des: 5x faster encoding/decoding (CL 11874043, 12072045).
 encoding/json: faster encoding (CL 9129044).
 net: improve windows performance by up to 30% (CL 8670044).
 

コアとなるコードの解説

追加された2行は、doc/go1.2.txt ファイルの "Performance:" セクションに、Go 1.2で実現された具体的なパフォーマンス改善を記述しています。

  • compress/bzip2: faster decompression by 30% (CL 9915043). この行は、compress/bzip2 パッケージのデコンプレッション(展開)処理が30%高速化されたことを示しています。括弧内の CL 9915043 は、この改善がどの変更リスト(Change List)によってもたらされたかを示しており、詳細な技術的変更内容を追跡するための参照情報となります。

  • crypto/des: 5x faster encoding/decoding (CL 11874043, 12072045). この行は、crypto/des パッケージのエンコーディング(暗号化)およびデコーディング(復号化)処理が5倍高速化されたことを示しています。ここでも、CL 11874043, 12072045 というCL番号が提供されており、複数の変更リストがこの大幅な速度向上に貢献したことを示唆しています。

これらの記述は、Go 1.2のリリースノートの一部として、ユーザーや開発者に対して、このバージョンでどのようなパフォーマンス上のメリットが期待できるかを明確に伝える役割を果たします。ドキュメントのこのセクションは、Go言語の進化と、そのパフォーマンスへの継続的な取り組みを示す重要な部分です。

関連リンク

参考にした情報源リンク