[インデックス 17352] ファイルの概要
コミット
commit c1dd7f4322dc2ed6869da606b9bf9f3db6be9b5a
Author: Elias Naur <elias.naur@gmail.com>
Date: Wed Aug 21 17:45:35 2013 +1000
doc/go1.2.txt: cmd/5l: support for external linking for linux/arm
R=r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/13019044
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/c1dd7f4322dc2ed6869da606b9bf9f3db6be9b5a
元コミット内容
doc/go1.2.txt: cmd/5l: support for external linking for linux/arm
このコミットは、Go 1.2 のリリースノートドキュメント (doc/go1.2.txt
) に、cmd/5l
リンカが linux/arm
アーキテクチャ向けに外部リンキングをサポートしたという変更点を追記するものです。
変更の背景
Go言語は、その設計思想として、可能な限り静的リンクを推奨しています。これにより、Goバイナリは自己完結型となり、デプロイが容易になるという利点があります。しかし、特定の状況、特にC言語で書かれたライブラリ(Cgoを通じて利用されるもの)を使用する場合や、システムに存在する共有ライブラリに依存する必要がある場合には、外部リンキング(ダイナミックリンク)が必要となります。
このコミットが行われた2013年当時、Go言語は急速に進化しており、様々なアーキテクチャやオペレーティングシステムへの対応を拡大していました。linux/arm
は、組み込みシステムやRaspberry Piのようなシングルボードコンピュータで広く利用されている重要なプラットフォームです。これらの環境では、既存のCライブラリとの連携が頻繁に求められるため、外部リンキングのサポートはGoアプリケーションの適用範囲を広げる上で不可欠でした。
この変更は、Go 1.2 リリースに向けた作業の一環であり、Go言語がより多様なユースケースに対応できるよう、クロスプラットフォームサポートを強化する目的がありました。
前提知識の解説
-
Go言語のリンカ (
cmd/5l
): Go言語のツールチェインには、コンパイラ(例:cmd/gc
)、アセンブラ(例:cmd/5a
)、リンカ(例:cmd/5l
)などが含まれています。cmd/5l
は、Goプログラムのオブジェクトファイルを結合し、実行可能なバイナリを生成する役割を担うリンカです。Goのリンカは、伝統的なC/C++のリンカとは異なり、Goランタイムと標準ライブラリの大部分を静的にリンクすることで、自己完結型のバイナリを生成することを特徴としています。5l
の5
は、ARMアーキテクチャを指すGoの内部的な慣習です(例:6l
はamd64、8l
は386)。 -
外部リンキング (External Linking / Dynamic Linking): プログラムが実行時に外部の共有ライブラリ(例:
.so
ファイル on Linux,.dll
on Windows,.dylib
on macOS)に依存するリンク方式です。これにより、複数のプログラムが同じライブラリのコピーを共有できるため、ディスクスペースとメモリ使用量を節約できます。また、ライブラリの更新が容易になるという利点もあります。Goでは、Cgoを使用してCライブラリを呼び出す場合などに外部リンキングが必要になることがあります。 -
linux/arm
: Linuxオペレーティングシステム上で動作するARMアーキテクチャのプラットフォームを指します。ARMプロセッサは、低消費電力と高性能のバランスが取れているため、スマートフォン、タブレット、組み込みシステム、IoTデバイス、そして近年ではサーバーやデスクトップPCにも広く採用されています。 -
Go 1.2: 2013年12月にリリースされたGo言語のメジャーバージョンです。このバージョンでは、ランタイムのパフォーマンス改善、ガベージコレクタの改良、スライス操作の強化、Cgoの機能拡張など、多くの重要な変更が加えられました。このコミットは、Go 1.2 のリリースノートに記載されるべき新機能の一つとして追加されました。
技術的詳細
このコミット自体は、Goのリンカのコードを変更するものではなく、Go 1.2 のリリースノートドキュメント (doc/go1.2.txt
) に一行追加するものです。しかし、その背景にある技術的変更は、cmd/5l
リンカが linux/arm
環境で外部リンキングを適切に処理できるようにするための実装です。
具体的には、cmd/5l
は、Goのオブジェクトファイルと、Cgoによって生成されたCのオブジェクトファイルを結合する際に、外部リンカ(通常はGCCなど)を呼び出す必要があります。このプロセスには、以下の技術的課題が含まれます。
- リンカフラグの調整:
linux/arm
環境で外部リンキングを行うためには、適切なリンカフラグ(例:-shared
,-L
,-l
など)を外部リンカに渡す必要があります。これらは、Goのツールチェインがターゲットシステムとアーキテクチャに応じて動的に生成します。 - シンボル解決: GoのコードとCのコード間でシンボル(関数や変数)を正しく解決する必要があります。外部リンキングでは、共有ライブラリ内のシンボルへの参照を解決するためのメカニズムが必要です。
- ABI (Application Binary Interface) の互換性: GoのコンパイラとCのコンパイラ(GCCなど)が生成するコード間で、関数呼び出し規約、データ構造のメモリレイアウト、レジスタの使用方法など、ABIの互換性を確保する必要があります。特にARMアーキテクチャには、様々なABIバリアント(例: ARM EABI, OABI)が存在するため、これらへの対応が重要になります。
- GoランタイムとCライブラリの連携: Goのランタイムは、Cgoを通じてCライブラリを呼び出す際に、スタックの切り替えやシグナルハンドリングなど、低レベルな処理を適切に行う必要があります。外部リンキングのサポートは、これらの連携メカニズムがダイナミックリンクされたライブラリに対しても正しく機能することを保証します。
このコミットが参照している CL 12871044
(Change List) は、これらの技術的課題を解決し、cmd/5l
が linux/arm
上で外部リンキングをサポートするための実際のコード変更を含んでいます。この変更により、Go開発者は linux/arm
環境でCgoを利用して、既存のCライブラリと連携するGoアプリケーションをビルドできるようになりました。
コアとなるコードの変更箇所
このコミット自体は、Goのソースコードではなく、Go 1.2 のリリースノートドキュメント (doc/go1.2.txt
) のみを変更しています。
--- a/doc/go1.2.txt
+++ b/doc/go1.2.txt
@@ -20,6 +20,7 @@ archive/tar,archive/zip: fix os.FileInfo implementation to provide base name onl
cmd/5a: removed support for R9/R10 (use m/g instead) (CL 9840043).
cmd/5l: add MOVBS, MOVHS etc for sub-word moves (CL 12682043).
+cmd/5l: support for external linking for linux/arm (CL 12871044).
cmd/cgo, cmd/go: support including C++ code with cgo (CL 8248043).
cmd/gc: three-index slicing to set cap as well as length (CL 10743046).
cmd/gc: make missing package error fatal (CL 12677043).
追加された行は以下の通りです。
+cmd/5l: support for external linking for linux/arm (CL 12871044).
コアとなるコードの解説
このコミットはドキュメントの変更であるため、直接的な「コアとなるコード」の変更はありません。しかし、追加された一行が示す内容は、Goのツールチェイン、特にリンカ (cmd/5l
) が linux/arm
プラットフォームにおいて、外部リンキング(ダイナミックリンク)をサポートするようになったという重要な機能追加を伝えています。
この機能追加は、GoプログラムがCgoを介してC言語で書かれた共有ライブラリ(例: libc.so
やその他のシステムライブラリ)を利用する際に不可欠です。以前は、linux/arm
環境ではGoプログラムがこれらの共有ライブラリに動的にリンクすることが困難であったか、不可能であった可能性があります。このサポートにより、Goアプリケーションは linux/arm
デバイス上で、より広範なシステム機能や既存のCライブラリを活用できるようになり、Goの適用範囲が大きく広がりました。
括弧内の CL 12871044
は、この機能を実現するための実際のコード変更が含まれるGoのChange List(コードレビューシステムのエントリ)を指しています。このChange Listには、cmd/5l
の内部ロジック、特にリンカが外部リンカを呼び出す部分や、ARMアーキテクチャ固有のリンキング要件を処理する部分に修正が加えられたと考えられます。
関連リンク
- Go 1.2 Release Notes: このコミットが追加されたドキュメントの最終版は、Go 1.2 の公式リリースノートとして公開されています。
- Go Language Official Website: https://golang.org/
- Go Wiki - Go 1.2: Go 1.2 の詳細な変更点や背景について記述されている可能性があります。
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント
- Go言語のソースコードリポジトリ (特に
src/cmd/5l
ディレクトリの歴史) - Go言語のChange List (CL) システム (Gerrit)
- ARMアーキテクチャとLinuxのリンキングに関する一般的な情報
- Go 1.2 Release Notes (最終版)
- Goのリンカに関する技術記事や解説
- Cgoに関するGoの公式ドキュメント
- Goのクロスコンパイルに関する情報
- Goのツールチェインの内部構造に関する情報I have read the commit data and understand the request. I will now generate the detailed technical explanation in Markdown format, following the specified chapter structure. I will use web search to enrich the content, especially for the "前提知識の解説" and "技術的詳細" sections.
[インデックス 17352] ファイルの概要
コミット
commit c1dd7f4322dc2ed6869da606b9bf9f3db6be9b5a
Author: Elias Naur <elias.naur@gmail.com>
Date: Wed Aug 21 17:45:35 2013 +1000
doc/go1.2.txt: cmd/5l: support for external linking for linux/arm
R=r
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/13019044
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/c1dd7f4322dc2ed6869da606b9bf9f3db6be9b5a
元コミット内容
doc/go1.2.txt: cmd/5l: support for external linking for linux/arm
このコミットは、Go 1.2 のリリースノートドキュメント (doc/go1.2.txt
) に、cmd/5l
リンカが linux/arm
アーキテクチャ向けに外部リンキングをサポートしたという変更点を追記するものです。
変更の背景
Go言語は、その設計思想として、可能な限り静的リンクを推奨しています。これにより、Goバイナリは自己完結型となり、デプロイが容易になるという利点があります。しかし、特定の状況、特にC言語で書かれたライブラリ(Cgoを通じて利用されるもの)を使用する場合や、システムに存在する共有ライブラリに依存する必要がある場合には、外部リンキング(ダイナミックリンク)が必要となります。
このコミットが行われた2013年当時、Go言語は急速に進化しており、様々なアーキテクチャやオペレーティングシステムへの対応を拡大していました。linux/arm
は、組み込みシステムやRaspberry Piのようなシングルボードコンピュータで広く利用されている重要なプラットフォームです。これらの環境では、既存のCライブラリとの連携が頻繁に求められるため、外部リンキングのサポートはGoアプリケーションの適用範囲を広げる上で不可欠でした。
この変更は、Go 1.2 リリースに向けた作業の一環であり、Go言語がより多様なユースケースに対応できるよう、クロスプラットフォームサポートを強化する目的がありました。
前提知識の解説
-
Go言語のリンカ (
cmd/5l
): Go言語のツールチェインには、コンパイラ(例:cmd/gc
)、アセンブラ(例:cmd/5a
)、リンカ(例:cmd/5l
)などが含まれています。cmd/5l
は、Goプログラムのオブジェクトファイルを結合し、実行可能なバイナリを生成する役割を担うリンカです。Goのリンカは、伝統的なC/C++のリンカとは異なり、Goランタイムと標準ライブラリの大部分を静的にリンクすることで、自己完結型のバイナリを生成することを特徴としています。5l
の5
は、ARMアーキテクチャを指すGoの内部的な慣習です(例:6l
はamd64、8l
は386)。 -
外部リンキング (External Linking / Dynamic Linking): プログラムが実行時に外部の共有ライブラリ(例:
.so
ファイル on Linux,.dll
on Windows,.dylib
on macOS)に依存するリンク方式です。これにより、複数のプログラムが同じライブラリのコピーを共有できるため、ディスクスペースとメモリ使用量を節約できます。また、ライブラリの更新が容易になるという利点もあります。Goでは、Cgoを使用してCライブラリを呼び出す場合などに外部リンキングが必要になることがあります。 -
linux/arm
: Linuxオペレーティングシステム上で動作するARMアーキテクチャのプラットフォームを指します。ARMプロセッサは、低消費電力と高性能のバランスが取れているため、スマートフォン、タブレット、組み込みシステム、IoTデバイス、そして近年ではサーバーやデスクトップPCにも広く採用されています。 -
Go 1.2: 2013年12月にリリースされたGo言語のメジャーバージョンです。このバージョンでは、ランタイムのパフォーマンス改善、ガベージコレクタの改良、スライス操作の強化、Cgoの機能拡張など、多くの重要な変更が加えられました。このコミットは、Go 1.2 のリリースノートに記載されるべき新機能の一つとして追加されました。
技術的詳細
このコミット自体は、Goのリンカのコードを変更するものではなく、Go 1.2 のリリースノートドキュメント (doc/go1.2.txt
) に一行追加するものです。しかし、その背景にある技術的変更は、cmd/5l
リンカが linux/arm
環境で外部リンキングを適切に処理できるようにするための実装です。
具体的には、cmd/5l
は、Goのオブジェクトファイルと、Cgoによって生成されたCのオブジェクトファイルを結合する際に、外部リンカ(通常はGCCなど)を呼び出す必要があります。このプロセスには、以下の技術的課題が含まれます。
- リンカフラグの調整:
linux/arm
環境で外部リンキングを行うためには、適切なリンカフラグ(例:-shared
,-L
,-l
など)を外部リンカに渡す必要があります。これらは、Goのツールチェインがターゲットシステムとアーキテクチャに応じて動的に生成します。 - シンボル解決: GoのコードとCのコード間でシンボル(関数や変数)を正しく解決する必要があります。外部リンキングでは、共有ライブラリ内のシンボルへの参照を解決するためのメカニズムが必要です。
- ABI (Application Binary Interface) の互換性: GoのコンパイラとCのコンパイラ(GCCなど)が生成するコード間で、関数呼び出し規約、データ構造のメモリレイアウト、レジスタの使用方法など、ABIの互換性を確保する必要があります。特にARMアーキテクチャには、様々なABIバリアント(例: ARM EABI, OABI)が存在するため、これらへの対応が重要になります。
- GoランタイムとCライブラリの連携: Goのランタイムは、Cgoを通じてCライブラリを呼び出す際に、スタックの切り替えやシグナルハンドリングなど、低レベルな処理を適切に行う必要があります。外部リンキングのサポートは、これらの連携メカニズムがダイナミックリンクされたライブラリに対しても正しく機能することを保証します。
このコミットが参照している CL 12871044
(Change List) は、これらの技術的課題を解決し、cmd/5l
が linux/arm
上で外部リンキングをサポートするための実際のコード変更を含んでいます。この変更により、Go開発者は linux/arm
環境でCgoを利用して、既存のCライブラリと連携するGoアプリケーションをビルドできるようになりました。
コアとなるコードの変更箇所
このコミット自体は、Goのソースコードではなく、Go 1.2 のリリースノートドキュメント (doc/go1.2.txt
) のみを変更しています。
--- a/doc/go1.2.txt
+++ b/doc/go1.2.txt
@@ -20,6 +20,7 @@ archive/tar,archive/zip: fix os.FileInfo implementation to provide base name onl
cmd/5a: removed support for R9/R10 (use m/g instead) (CL 9840043).
cmd/5l: add MOVBS, MOVHS etc for sub-word moves (CL 12682043).
+cmd/5l: support for external linking for linux/arm (CL 12871044).
cmd/cgo, cmd/go: support including C++ code with cgo (CL 8248043).
cmd/gc: three-index slicing to set cap as well as length (CL 10743046).
cmd/gc: make missing package error fatal (CL 12677043).
追加された行は以下の通りです。
+cmd/5l: support for external linking for linux/arm (CL 12871044).
コアとなるコードの解説
このコミットはドキュメントの変更であるため、直接的な「コアとなるコード」の変更はありません。しかし、追加された一行が示す内容は、Goのツールチェイン、特にリンカ (cmd/5l
) が linux/arm
プラットフォームにおいて、外部リンキング(ダイナミックリンク)をサポートするようになったという重要な機能追加を伝えています。
この機能追加は、GoプログラムがCgoを介してC言語で書かれた共有ライブラリ(例: libc.so
やその他のシステムライブラリ)を利用する際に不可欠です。以前は、linux/arm
環境ではGoプログラムがこれらの共有ライブラリに動的にリンクすることが困難であったか、不可能であった可能性があります。このサポートにより、Goアプリケーションは linux/arm
デバイス上で、より広範なシステム機能や既存のCライブラリを活用できるようになり、Goの適用範囲が大きく広がりました。
括弧内の CL 12871044
は、この機能を実現するための実際のコード変更が含まれるGoのChange List(コードレビューシステムのエントリ)を指しています。このChange Listには、cmd/5l
の内部ロジック、特にリンカが外部リンカを呼び出す部分や、ARMアーキテクチャ固有のリンキング要件を処理する部分に修正が加えられたと考えられます。
関連リンク
- Go 1.2 Release Notes: このコミットが追加されたドキュメントの最終版は、Go 1.2 の公式リリースノートとして公開されています。
- Go Language Official Website: https://golang.org/
- Go Wiki - Go 1.2: Go 1.2 の詳細な変更点や背景について記述されている可能性があります。
参考にした情報源リンク
- Go言語の公式ドキュメント
- Go言語のソースコードリポジトリ (特に
src/cmd/5l
ディレクトリの歴史) - Go言語のChange List (CL) システム (Gerrit)
- ARMアーキテクチャとLinuxのリンキングに関する一般的な情報
- Go 1.2 Release Notes (最終版)
- Goのリンカに関する技術記事や解説
- Cgoに関するGoの公式ドキュメント
- Goのクロスコンパイルに関する情報
- Goのツールチェインの内部構造に関する情報