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[インデックス 1745] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の公式仕様書ドキュメントである doc/go_spec.html ファイルに対する変更です。具体的には、HTMLの表示上の不具合修正と、package main に関する記述の明確化が行われています。

コミット

  • コミットハッシュ: 811dd2584ca6d5bdfa1961672e7647c88898ab4a
  • Author: Rob Pike r@golang.org
  • Date: Wed Mar 4 20:39:39 2009 -0800

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/811dd2584ca6d5bdfa1961672e7647c88898ab4a

元コミット内容

fix an HTML glitch.
say a little more about package main.

R=rsc
DELTA=7  (4 added, 0 deleted, 3 changed)
OCL=25725
CL=25725

変更の背景

このコミットは、Go言語の仕様書ドキュメントの品質向上を目的としています。

  1. HTMLの表示上の不具合修正: 以前のバージョンでは、スライス操作のインデックス lohi を説明する際に、HTMLのリストアイテムタグである <li> が誤って使用されていました。これは、コードの一部や技術的な用語をインラインで表示する際に不適切であり、視覚的な表示やセマンティクスに問題を引き起こす可能性がありました。このコミットでは、より適切な <code> タグに修正することで、HTMLのセマンティクスを改善し、コードや変数名が適切にレンダリングされるようにしています。

  2. package main に関する記述の明確化: Goプログラムのエントリポイントである package main について、その実装上の制約が明示されていませんでした。特に、コンパイラが package main を単一のソースファイルで構成され、他のパッケージからインポートされないものとして扱っているという重要な情報が欠落していました。この追加により、Goプログラムの構造とコンパイル時の挙動に関する理解が深まり、開発者が package main をどのように扱うべきかについて、より正確な情報が提供されるようになりました。

前提知識の解説

Go言語におけるスライス (Slice)

Go言語のスライスは、配列のセクションを参照するデータ構造です。スライスは、基になる配列の一部を動的に操作するための強力なメカニズムを提供します。スライス操作 s[lo:hi] は、lo から hi-1 までの要素を含む新しいスライスを生成します。ここで lohi はインデックスを表し、0 <= lo <= hi <= length の関係を満たす必要があります。length は、配列や文字列の場合はその長さ、スライスの場合はその容量(capacity)を指します。

HTMLの <li> タグと <code> タグ

  • <li> (List Item) タグ: HTMLのリスト(順序付きリスト <ol> や順序なしリスト <ul>)の各項目を定義するために使用されます。通常、箇条書きや番号付きリストの形式で表示されます。
  • <code> (Code) タグ: インラインのコードスニペットや、プログラムの変数名、ファイル名、コマンドなどを表すために使用されます。ブラウザは通常、このタグで囲まれたテキストを等幅フォントで表示し、コードであることを視覚的に示します。技術文書において、コードの一部を明確に区別するために非常に重要なタグです。

このコミットでは、技術的な用語である lohi がコードの一部として扱われるべきであるため、<li> から <code> への変更はHTMLのセマンティクスと表示の正確性を向上させるための適切な修正です。

Go言語における package main

Go言語のプログラムは、package と呼ばれる論理的な単位で構成されます。package main は特別なパッケージであり、実行可能なGoプログラムのエントリポイント(開始点)を定義します。main パッケージには、プログラムが実行を開始する main 関数が含まれている必要があります。

Goのコンパイラは、package main を他のパッケージとは異なる方法で扱います。通常、Goのパッケージは他のパッケージからインポートされ、その機能を利用することができます。しかし、package main は実行可能バイナリを生成するためのものであり、他のパッケージからインポートされることを意図していません。また、初期のGoコンパイラの実装では、package main が単一のソースファイルで構成されることを前提としていました。これは、コンパイルの単純化や、プログラムのエントリポイントの明確化に寄与します。

技術的詳細

このコミットの技術的詳細は、Go言語の仕様書ドキュメントの正確性と、Goコンパイラの内部的な挙動に関する重要な制約を反映しています。

HTMLの修正の詳細

変更前:

<li>lo</li> and <li>hi</li> must satisfy
0 &lt;= <li>lo</li> &lt;= <li>hi</li> &lt;= length;

変更後:

<code>lo</code> and <code>hi</code> must satisfy
0 &lt;= <code>lo</code> &lt;= <code>hi</code> &lt;= <code>length</code>;

この変更は、単なる見た目の修正以上の意味を持ちます。lohi は、Go言語のスライス操作におけるインデックスを表す変数名であり、コードの一部として扱われるべきです。<li> タグはリストアイテムを意味するため、文脈的に不適切でした。<code> タグを使用することで、これらの用語がプログラムコードの一部であることを明確に示し、ドキュメントのセマンティクスを向上させています。これにより、ドキュメントの可読性が向上し、読者が技術的な用語と通常のテキストを区別しやすくなります。また、length も同様にコードの一部として <code> で囲まれています。

package main に関する記述の追加の詳細

追加された記述:

<p>
Implementation restriction: The compiler assumes package <code>main</code>
is created by a single source file and that it is not imported by any other package.
</p>

この記述は、Goコンパイラの初期の実装における重要な「実装上の制約 (Implementation restriction)」を明示しています。

  • 「The compiler assumes package main is created by a single source file」: これは、main パッケージを構成するGoソースファイルが一つだけであることをコンパイラが前提としていることを意味します。Goの他のパッケージは複数のソースファイルに分割されることが一般的ですが、main パッケージに関しては、この時点では単一ファイルでの構成が推奨、あるいは必須とされていました。これは、コンパイルプロセスを簡素化し、エントリポイントの特定を容易にするための設計上の選択であったと考えられます。
  • 「and that it is not imported by any other package」: main パッケージは実行可能プログラムのエントリポイントであり、他のパッケージからライブラリとしてインポートされることを意図していません。この制約は、Goのパッケージシステムにおける main パッケージの役割を明確にし、循環インポートなどの潜在的な問題を回避するためのものです。

これらの制約は、Go言語の初期段階における設計思想と、コンパイラの実装の現実を反映しています。後のGoのバージョンでは、main パッケージが複数のファイルに分割されることが可能になるなど、一部の制約が緩和されることもありますが、このコミット時点では重要な情報でした。この記述により、Go言語の学習者や開発者は、main パッケージの特殊な性質と、それに伴うコンパイラの挙動をより深く理解できるようになります。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/doc/go_spec.html
+++ b/doc/go_spec.html
@@ -2252,8 +2252,8 @@ s[1] == 3
 <p>
 The slice length must be non-negative.
 For arrays or strings, the indexes
-<li>lo</li> and <li>hi</li> must satisfy
-0 &lt;= <li>lo</li> &lt;= <li>hi</li> &lt;= length;
+<code>lo</code> and <code>hi</code> must satisfy
+0 &lt;= <code>lo</code> &lt;= <code>hi</code> &lt;= <code>length</code>;
 for slices, the upper bound is the capacity rather than the length.
 <p>
 If the sliced operand is a string, the result of the slice operation is another, new
@@ -3785,7 +3785,7 @@ m := make(map[string] int, 100);  # map with initial space for 100 elements
 <p>
 Go programs are constructed by linking together <i>packages</i>.
 A package is in turn constructed from one or more source files that
-together provide an interface to a set of types, constants, functions,
+together provide access to a set of types, constants, functions,
 and variables.  Those elements may be <i>imported</i> and used in
 another package.
 </p>
@@ -4072,6 +4072,10 @@ invoking <code>main.main()</code>.
 <p>
 When <code>main.main()</code> returns, the program exits.
 </p>
+<p>
+Implementation restriction: The compiler assumes package <code>main</code>
+is created by a single source file and that it is not imported by any other package.
+</p>

 <hr/>

コアとなるコードの解説

1. HTMLタグの修正 (doc/go_spec.html の 2252行目付近)

-<li>lo</li> and <li>hi</li> must satisfy
-0 &lt;= <li>lo</li> &lt;= <li>hi</li> &lt;= length;
+<code>lo</code> and <code>hi</code> must satisfy
+0 &lt;= <code>lo</code> &lt;= <code>hi</code> &lt;= <code>length</code>;

この部分では、Go言語のスライス操作におけるインデックス lohi、そして length を説明する際に使用されていたHTMLタグが変更されています。

  • -<li>lo</li>-<li>hi</li> は、リストアイテムを示す <li> タグで囲まれていました。これは、lohi がコード内の変数名であることを考慮すると不適切でした。
  • +<code>lo</code>+<code>hi</code>+<code>length</code> に変更されたことで、これらの用語がコードの一部であることを明確に示し、等幅フォントで表示されるようになります。これにより、ドキュメントの技術的な正確性と視覚的な整合性が向上します。

2. パッケージの定義に関する文言の修正 (doc/go_spec.html の 3785行目付近)

-together provide an interface to a set of types, constants, functions,
+together provide access to a set of types, constants, functions,

この変更は、パッケージが提供する要素(型、定数、関数、変数)について、「インターフェースを提供する (provide an interface)」という表現から、「アクセスを提供する (provide access)」という表現に修正されています。これは、Goのパッケージが単にインターフェースを定義するだけでなく、その内部の要素に直接アクセスできるようにするという、より広範な意味合いを正確に伝えるための微調整と考えられます。Goにおける「インターフェース」は特定の型を指すため、一般的な「アクセス」という言葉の方が適切と判断された可能性があります。

3. package main に関する実装上の制約の追加 (doc/go_spec.html の 4072行目付近)

+<p>
+Implementation restriction: The compiler assumes package <code>main</code>
+is created by a single source file and that it is not imported by any other package.
+</p>

この追加は、package main の特殊な性質に関する重要な情報を提供します。

  • Implementation restriction: という見出しは、これがGoコンパイラの現在の実装における制約であることを明確に示しています。
  • 「The compiler assumes package main is created by a single source file」は、main パッケージが複数のGoソースファイルに分割されることをコンパイラが想定していないことを意味します。これは、Go言語の初期段階におけるコンパイルの単純化のための設計上の決定でした。
  • 「and that it is not imported by any other package」は、main パッケージが他のGoパッケージからライブラリとしてインポートされるべきではないという、Goのパッケージシステムの基本的な原則を再確認しています。main パッケージは実行可能バイナリのエントリポイントとしてのみ機能します。

これらの変更は、Go言語の仕様書ドキュメントの正確性、明確性、そして読者への情報提供の質を向上させるためのものです。

関連リンク

参考にした情報源リンク