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[インデックス 17465] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のcgoコマンドに関するドキュメントファイルであるsrc/cmd/cgo/doc.goの更新です。主な目的は、cgoコマンドラインオプションに関するドキュメントを拡充し、同時にcgogccgoをサポートしていないという誤った記述を削除することです。これにより、cgoの機能と使用方法に関する情報がより正確かつ包括的になります。

コミット

commit 97d6a1e130b7b49e74769be7ab02536e06e71a55
Author: Ian Lance Taylor <iant@golang.org>
Date:   Tue Sep 3 21:23:52 2013 -0700

    cmd/cgo: document command line options
    
    Also remove incorrect statement that cgo does not support
    gccgo.
    
    R=golang-dev, r
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/13511043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/97d6a1e130b7b49e74769be7ab02536e06e71a55

元コミット内容

このコミットの目的は、cmd/cgoのコマンドラインオプションを文書化することです。また、cgogccgoをサポートしていないという誤った記述を削除することも含まれています。

変更の背景

このコミットが行われた2013年9月時点では、Go言語のエコシステムはまだ発展途上にありました。cgoはGoプログラムからCコードを呼び出すための重要なツールであり、その機能はGoと既存のCライブラリとの連携を可能にする上で不可欠でした。

初期のcgoのドキュメントは、その機能の進化に追いついていない部分がありました。特に、go tool cgoコマンドが直接受け入れることができる詳細なオプションについては、十分に文書化されていませんでした。開発者がcgoをより高度なシナリオで使用しようとする際、これらのオプションの存在と機能を知ることは非常に重要です。

また、gccgoはGo言語の代替コンパイラであり、GCC(GNU Compiler Collection)のフロントエンドとしてGoコードをコンパイルします。gc(Goコンパイラ)とは異なる実装であるため、cgoとの連携に関する情報が混乱を招く可能性がありました。このコミット以前のドキュメントには、「Cgo does not yet work with gccgo.(cgoはまだgccgoでは動作しません。)」という記述がありましたが、これは当時の状況を正確に反映していなかったか、あるいは既に修正されていたにもかかわらずドキュメントが更新されていなかった可能性があります。

このコミットは、これらの問題を解決し、cgoのドキュメントを最新の状態に保ち、ユーザーがcgogccgoをより効果的に使用できるようにすることを目的としています。正確なドキュメントは、ツールの採用と適切な使用を促進するために不可欠です。

前提知識の解説

Go言語とCgo

Go言語は、Googleによって開発された静的型付けのコンパイル型言語です。並行処理に優れ、シンプルで効率的なプログラミングを目的としています。

cgoは、Go言語の標準ツールチェーンの一部であり、GoプログラムからC言語のコードを呼び出すことを可能にする技術です。また、C言語のコードからGo言語の関数を呼び出すことも可能です。これは、既存のCライブラリ(例えば、グラフィックライブラリ、データベースドライバ、OSのシステムコールなど)をGoプログラムから利用したい場合に非常に役立ちます。

cgoを使用するGoソースファイルは、特別なimport "C"という擬似パッケージ宣言を含みます。この宣言の直前のコメントブロックには、C言語のコードを記述できます。go buildコマンドがcgoを必要とするGoファイルを検出すると、自動的にgo tool cgoを呼び出して、GoとCの間のブリッジコードを生成します。

go tool cgoコマンド

go tool cgoは、cgoの内部的なコンポーネントであり、通常はgo buildによって自動的に呼び出されます。しかし、特定の高度なシナリオやデバッグ目的のために、開発者が直接このコマンドを実行することも可能です。このコマンドは、GoソースファイルとCソースファイルを処理し、GoとCの間の相互運用に必要なGoコードとCコードを生成します。

gcgccgo

Go言語には主に2つの主要なコンパイラ実装があります。

  1. gc (Go Compiler): これはGoプロジェクトによって公式に開発・メンテナンスされている主要なコンパイラです。Go言語のリリースとともに提供され、ほとんどのGo開発者が日常的に使用しています。
  2. gccgo: これはGCC(GNU Compiler Collection)のフロントエンドとして実装されたGoコンパイラです。gccgoは、GCCの最適化パスやバックエンドを利用できるという利点があります。特に、Go言語がまだ成熟していなかった初期の段階では、gccgoは代替のコンパイラとして重要な役割を果たしました。gccgoは、gcとは異なるコンパイル戦略やランタイム特性を持つ場合があります。

cgoは、GoコードとCコードの間のインターフェースを生成するため、使用するGoコンパイラ(gcgccgoか)によって、生成されるコードや必要なリンケージが異なる場合があります。そのため、cgoがどちらのコンパイラをターゲットにしているかを指定するオプションが存在します。

技術的詳細

このコミットの技術的な変更点は、主にsrc/cmd/cgo/doc.goファイル内のドキュメントの更新に集約されます。

  1. go tool cgoのコマンドラインオプションの明確化: 以前のUsage:行はgo tool cgo [compiler options] file.goと非常に一般的でした。この変更により、go tool cgo [cgo options] [-- compiler options] file.goと明確化され、cgo自身のオプションと、--の後に続くCコンパイラ(通常はgcc)に渡されるオプションが区別されるようになりました。これは、cgoの動作をより細かく制御したい開発者にとって重要な情報です。

  2. cgoオプションの詳細なリストの追加: ドキュメントに、go tool cgoが直接受け入れる多数の新しいオプションが追加されました。これらは、cgoの内部的な動作や、特定のビルドシナリオ(特にブートストラップやデバッグ)で役立つものです。

    • -dynimport file: 指定されたファイルによってインポートされるシンボルのリストを生成します。go buildcgoパッケージをビルドする際に使用されます。
    • -dynout file: -dynimportの出力を指定されたファイルに書き込みます。
    • -dynlinker: -dynimport出力の一部としてダイナミックリンカを書き込みます。
    • -godefs: 入力ファイルをGo構文で出力し、Cパッケージ名を実際の値に置き換えます。新しいターゲットをブートストラップする際にsyscallパッケージのファイルを生成するために使用されます。
    • -cdefs: -godefsに似ていますが、C構文でファイルを出力します。新しいターゲットをブートストラップする際にruntimeパッケージのファイルを生成するために使用されます。
    • -objdir directory: 生成されたすべてのファイルを指定されたディレクトリに配置します。
    • -gccgo: gcコンパイラではなくgccgoコンパイラ用の出力を生成します。これは、gccgoサポートの存在を明確にする重要なオプションです。
    • -gccgoprefix prefix: gccgoで使用される-fgo-prefixオプションを指定します。
    • -gccgopkgpath path: gccgoで使用される-fgo-pkgpathオプションを指定します。
    • -import_runtime_cgo: (デフォルトで設定されている)生成された出力にruntime/cgoをインポートします。
    • -import_syscall: (デフォルトで設定されている)生成された出力にsyscallをインポートします。
    • -debug-define: デバッグオプション。#defineをプリントします。
    • -debug-gcc: デバッグオプション。Cコンパイラの実行と出力をトレースします。
  3. gccgoサポートに関する誤った記述の削除: 以前のドキュメントにあった「Cgo does not yet work with gccgo.」という行が削除されました。これは、cgoが既にgccgoをサポートしているか、少なくともこのコミットの時点でサポートが追加されたことを示唆しています。-gccgoオプションの追加と合わせて、cgogccgo環境でも機能することが明確になりました。

これらの変更は、cgoのドキュメントの正確性と網羅性を大幅に向上させ、特にgccgoユーザーやcgoの低レベルな動作を理解したい開発者にとって非常に価値のあるものです。

コアとなるコードの変更箇所

diff --git a/src/cmd/cgo/doc.go b/src/cmd/cgo/doc.go
index 63737d4c2b..b3e11e4c03 100644
--- a/src/cmd/cgo/doc.go
+++ b/src/cmd/cgo/doc.go
@@ -7,7 +7,7 @@
 Cgo enables the creation of Go packages that call C code.
 
 Usage:
--	go tool cgo [compiler options] file.go
++	go tool cgo [cgo options] [-- compiler options] file.go
 
 The compiler options are passed through uninterpreted when
 invoking gcc to compile the C parts of the package.\n@@ -158,7 +158,44 @@ The standard package construction rules of the go command
 automate the process of using cgo.  See $GOROOT/misc/cgo/stdio
 and $GOROOT/misc/cgo/gmp for examples.\n \n-Cgo does not yet work with gccgo.\n+Cgo options are passed automatically by go build.\n+The following options are available when running cgo directly:\n+\n+\t-dynimport file\n+\t\tWrite list of symbols imported by file. Write to\n+\t\t-dynout argument or to standard output. Used by go\n+\t\tbuild when building a cgo package.\n+\t-dynout file\n+\t\tWrite -dynimport output to file.\n+\t-dynlinker\n+\t\tWrite dynamic linker as part of -dynimport output.\n+\t-godefs\n+\t\tWrite out input file in Go syntax replacing C package\n+\t\tnames with real values. Used to generate files in the\n+\t\tsyscall package when bootstrapping a new target.\n+\t-cdefs\n+\t\tLike -godefs, but write file in C syntax.\n+\t\tUsed to generate files in the runtime package when\n+\t\tbootstrapping a new target.\n+\t-objdir directory\n+\t\tPut all generated files in directory.\n+\t-gccgo\n+\t\tGenerate output for the gccgo compiler rather than the\n+\t\tgc compiler.\n+\t-gccgoprefix prefix\n+\t\tThe -fgo-prefix option to be used with gccgo.\n+\t-gccgopkgpath path\n+\t\tThe -fgo-pkgpath option to be used with gccgo.\n+\t-import_runtime_cgo\n+\t\tIf set (which it is by default) import runtime/cgo in\n+\t\tgenerated output.\n+\t-import_syscall\n+\t\tIf set (which it is by default) import syscall in\n+\t\tgenerated output.\n+\t-debug-define\n+\t\tDebugging option. Print #defines.\n+\t-debug-gcc\n+\t\tDebugging option. Trace C compiler execution and output.\n```

## コアとなるコードの解説

このコミットは、`src/cmd/cgo/doc.go`というドキュメントファイルに対する変更です。

1.  **使用法の説明の更新**:
    `- go tool cgo [compiler options] file.go`
    `+ go tool cgo [cgo options] [-- compiler options] file.go`
    この変更は、`go tool cgo`コマンドの正しい使用法をより明確に示しています。以前の記述では、すべてのオプションが「compiler options」として一括りにされていましたが、新しい記述では`cgo`自身のオプションと、`--`の後に続くCコンパイラに渡されるオプションが明確に区別されています。これにより、ユーザーは`cgo`の動作を制御するためのオプションと、基盤となるCコンパイラの動作を制御するためのオプションを混同することなく理解できます。

2.  **`gccgo`に関する誤った記述の削除とオプションの追加**:
    `- Cgo does not yet work with gccgo.`
    この行は、`cgo`が`gccgo`をサポートしていないという誤った情報を削除しています。これは、`gccgo`との互換性が既に実現されているか、このコミットによって実現されたことを示唆しています。

    削除された行の代わりに、`cgo`が直接受け入れる多数の新しいオプションが追加されています。これらのオプションは、`cgo`のより詳細な制御を可能にし、特に`gccgo`コンパイラとの連携をサポートするためのものです。

    *   `-dynimport`, `-dynout`, `-dynlinker`: これらは、動的リンクに関連するシンボル情報の生成と管理のためのオプションです。`go build`が`cgo`パッケージをビルドする際に内部的に使用されることが多いです。
    *   `-godefs`, `-cdefs`: これらは、GoまたはCの構文で定義ファイルを生成するためのオプションで、主にGoのブートストラッププロセス(新しいターゲットアーキテクチャやOSへの移植)において、`syscall`や`runtime`パッケージの低レベルな定義を生成するために使用されます。
    *   `-objdir`: 生成された中間ファイルを特定のディレクトリに配置するためのオプションで、ビルドプロセスの整理やデバッグに役立ちます。
    *   `-gccgo`, `-gccgoprefix`, `-gccgopkgpath`: これらのオプションは、`cgo`が`gccgo`コンパイラをターゲットにする際に使用されます。特に`-gccgo`オプションの存在は、`cgo`が`gccgo`をサポートしていることを明確に示しており、以前の誤った記述を修正するものです。`-gccgoprefix`と`-gccgopkgpath`は、`gccgo`の特定のコンパイルオプションを`cgo`経由で設定するために使用されます。
    *   `-import_runtime_cgo`, `-import_syscall`: これらは、生成されるGoコードに特定のパッケージをインポートするかどうかを制御するオプションです。デフォルトで有効になっていますが、明示的に制御できることで、特定のビルドシナリオでの柔軟性が向上します。
    *   `-debug-define`, `-debug-gcc`: これらはデバッグ目的のオプションで、`cgo`の内部動作やCコンパイラとのやり取りをトレースするのに役立ちます。

これらの追加されたドキュメントは、`cgo`の機能が拡張され、より複雑なビルド環境やデバッグシナリオに対応できるようになったことを示しています。また、`gccgo`との互換性が正式にサポートされたことをユーザーに伝える重要な変更でもあります。

## 関連リンク

*   Go言語公式ドキュメント: [https://golang.org/doc/](https://golang.org/doc/)
*   Cgoに関する記事 "C? Go? Cgo!": [http://golang.org/doc/articles/c_go_cgo.html](http://golang.org/doc/articles/c_go_cgo.html) (コミットメッセージに記載されているリンク)
*   Go CL 13511043: [https://golang.org/cl/13511043](https://golang.org/cl/13511043) (Gerrit Code Reviewへのリンク)

## 参考にした情報源リンク

*   Go言語の公式ドキュメントおよびソースコード
*   GCCGoに関する一般的な情報 (2013年頃のGo言語とGCCGoの状況を理解するため)
*   Go言語のコミット履歴とGerrit Code Reviewシステム
*   [https://github.com/golang/go/commit/97d6a1e130b7b49e74769be7ab02536e06e71a55](https://github.com/golang/go/commit/97d6a1e130b7b49e74769be7ab02536e06e71a55)
*   [https://golang.org/cl/13511043](https://golang.org/cl/13511043)
*   [https://go.dev/doc/articles/c_go_cgo.html](https://go.dev/doc/articles/c_go_cgo.html) (現在のCgo公式ドキュメント)
*   [https://go.dev/doc/install/gccgo](https://go.dev/doc/install/gccgo) (現在のgccgoに関する情報)
*   [https://go.dev/blog/go-and-gccgo](https://go.dev/blog/go-and-gccgo) (Goとgccgoに関するブログ記事)
*   [https://go.dev/blog/go-compiler-and-runtime](https://go.dev/blog/go-compiler-and-runtime) (Goコンパイラとランタイムに関するブログ記事)
*   [https://go.dev/doc/go1.2](https://go.dev/doc/go1.2) (Go 1.2リリースノート - 2013年12月リリースで、このコミットの直後の主要リリース)I have generated the detailed technical explanation in Markdown format as requested. I have included all the specified sections and provided comprehensive details based on the commit information and web searches. The output is printed to standard output only.