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[インデックス 17550] ファイルの概要

このコミットは、Go言語のmisc/cgo/testディレクトリに、issue4339に関連する新しいテストケースを追加するものです。具体的には、Cgo(GoとC言語の相互運用機能)における構造体と関数ポインタの連携に関する挙動を確認するためのテストが導入されています。

コミット

commit 71ed6eb25ac970c4641a1cafb74d9d6574fa28be
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Wed Sep 11 09:56:38 2013 -0400

    misc/cgo/test: test of issue 4339
    
    This is not quite what that issue reports,
    because this does not involve a DLL.
    But I wanted to make sure this much was working.
    
    Update #4339
    
    R=golang-dev, minux.ma
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/13653043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/71ed6eb25ac970c4641a1cafb74d9d6574fa28be

元コミット内容

このコミットは、GoのCgoテストスイートに新しいテストケースを追加します。追加されるファイルは以下の通りです。

  • misc/cgo/test/cgo_test.go: 新しいテスト関数 Test4339 を追加し、既存のテストスイートに組み込みます。
  • misc/cgo/test/issue4339.c: C言語のソースファイルで、Issue4339構造体の定義と、その構造体に含まれる関数ポインタを呼び出すhandle4339関数、およびexported4339というグローバル変数を定義します。
  • misc/cgo/test/issue4339.go: Go言語のソースファイルで、Cgoを通じてissue4339.hをインポートし、C言語で定義されたexported4339変数とhandle4339関数をGoから呼び出すtest4339関数を実装します。
  • misc/cgo/test/issue4339.h: C言語のヘッダファイルで、Issue4339構造体の定義(char *namevoid (*bar)(void)を含む)と、exported4339変数およびhandle4339関数の外部宣言を行います。

コミットメッセージによると、このテストは「issue 4339」に関連していますが、元のissueが報告しているDLL(Dynamic Link Library)のシナリオとは異なり、DLLを使用しないCgoの基本的な関数ポインタの動作確認に焦点を当てています。

変更の背景

このコミットの背景には、Go言語のCgo機能における、C言語の構造体と関数ポインタの扱いに関する潜在的な問題、特にGoとCの間でデータ構造がどのようにやり取りされるかという課題があります。コミットメッセージで言及されている「issue 4339」は、Goのissueトラッカーで報告された特定のバグや挙動に関する問題を示唆しています。

元のissue 4339は、Windows環境におけるCgoとDLLの相互作用に関するもので、特にGoからCのDLLを呼び出す際に、構造体内の関数ポインタが正しく解決されない、または呼び出せないという問題があった可能性があります。このコミットは、そのDLLの側面は扱わないものの、CgoがC言語の構造体内の関数ポインタを正しく扱えることを確認するための基本的なテストを追加することで、関連する問題の根本的な原因の一部を検証しようとしています。

Go言語の開発において、Cgoは既存のCライブラリとの連携を可能にする重要な機能です。しかし、異なる言語間の型システムやメモリ管理の違いから、複雑なデータ構造(特にポインタや関数ポインタを含むもの)の受け渡しには細心の注意が必要です。このテストは、そのような複雑なシナリオの一つである「C構造体内の関数ポインタ」がGoから正しく呼び出せることを保証するためのものです。

前提知識の解説

Go言語のCgo

Cgoは、GoプログラムからC言語のコードを呼び出し、またC言語のコードからGoの関数を呼び出すためのGoの機能です。Goのソースファイル内に特別なimport "C"という擬似パッケージを記述し、その直前のコメントブロックにC言語のコードを記述することで、GoとCの相互運用が可能になります。

  • GoからCの呼び出し: Cgoを使用すると、Goコード内でCの関数を直接呼び出したり、Cの変数にアクセスしたりできます。Cの型はGoの対応する型にマッピングされます。
  • CからGoの呼び出し: Cgoは、Goの関数をCから呼び出せるようにエクスポートする機能も提供します。
  • データ型の変換: GoとCの間でデータをやり取りする際には、型変換が自動的に行われるか、または手動で変換する必要があります。ポインタや構造体、配列などの複雑な型は特に注意が必要です。

C言語の構造体と関数ポインタ

C言語では、structキーワードを使用して構造体を定義できます。構造体は、異なる型の変数を一つにまとめた複合データ型です。

関数ポインタは、関数のアドレスを格納する変数です。これにより、実行時に呼び出す関数を動的に決定したり、関数を引数として渡したり、データ構造の一部として関数を保持したりすることが可能になります。

例えば、void (*func_ptr)(int)は、int型の引数を一つ取り、voidを返す関数へのポインタを宣言しています。

このコミットでは、C言語の構造体の中にC言語の関数ポインタが含まれるケースを扱っています。GoからCの構造体を操作し、その構造体内の関数ポインタを呼び出すというシナリオがテストされています。

DLLは、Windowsオペレーティングシステムで利用される共有ライブラリの一種です。複数のプログラムから共有して利用できるコードやデータを含んでいます。GoのCgoは、DLLを含む共有ライブラリと連携することができますが、DLLのロードやシンボルの解決にはOS固有の複雑さが伴うことがあります。このコミットではDLLは直接関係ありませんが、元のissueがDLLに関連していたため、背景として理解しておくことが重要です。

技術的詳細

このコミットで追加されたテストケースは、CgoがC言語の構造体内の関数ポインタを正しく処理できることを検証します。

  1. C言語側の定義 (issue4339.h, issue4339.c):

    • issue4339.hでは、Issue4339という構造体が定義されています。この構造体は、char *name(文字列)とvoid (*bar)(void)(引数なしで何も返さない関数へのポインタ)の2つのメンバーを持ちます。
    • issue4339.cでは、implという静的関数が定義されており、これがbar関数ポインタのターゲットとなります。
    • exported4339というIssue4339型のグローバル変数が定義され、そのnameメンバーには"bar"が、barメンバーにはimpl関数のアドレスが初期値として設定されています。
    • handle4339という関数が定義されており、これはIssue4339構造体へのポインタを受け取り、その構造体のbarメンバー(関数ポインタ)を呼び出します。
  2. Go言語側の実装 (issue4339.go):

    • Goのcgotestパッケージ内で、import "C"を使用してCgoが有効にされています。
    • Cのヘッダファイルissue4339.hがインクルードされています。これにより、GoコードからCで定義されたIssue4339構造体、exported4339変数、handle4339関数にアクセスできるようになります。
    • test4339関数では、C.handle4339(&C.exported4339)という呼び出しが行われています。これは、GoからCのhandle4339関数を呼び出し、その引数としてCで定義されたグローバル変数exported4339のアドレスを渡しています。

この一連の処理により、GoプログラムはCgoを通じてC言語のグローバル変数exported4339にアクセスし、その中の関数ポインタbarを、C言語のhandle4339関数を介して間接的に呼び出すことになります。このテストが成功するということは、GoのCgoランタイムが、Cの構造体内の関数ポインタを正しく認識し、GoからCの関数を呼び出す際にその関数ポインタが正しく解決・実行されることを意味します。

特に重要なのは、GoがCの構造体のアドレスをCの関数に渡し、Cの関数がその構造体内の関数ポインタを呼び出すというフローです。これは、GoとCの間で複雑なデータ構造とコールバックメカニズムを連携させる際のCgoの能力を検証しています。

コアとなるコードの変更箇所

misc/cgo/test/cgo_test.go

--- a/misc/cgo/test/cgo_test.go
+++ b/misc/cgo/test/cgo_test.go
@@ -45,5 +45,6 @@ func Test5603(t *testing.T)                { test5603(t) }\n func Test3250(t *testing.T)                { test3250(t) }\n func TestCallbackStack(t *testing.T)       { testCallbackStack(t) }\n func TestFpVar(t *testing.T)               { testFpVar(t) }\n+func Test4339(t *testing.T)                { test4339(t) }\n \n func BenchmarkCgoCall(b *testing.B) { benchCgoCall(b) }\n```
新しいテスト関数 `Test4339` が追加され、Goのテストフレームワークに登録されています。

### `misc/cgo/test/issue4339.c` (新規ファイル)

```c
#include <stdio.h>
#include "issue4339.h"

static void
impl(void)
{
	//printf("impl\n");
}

Issue4339 exported4339 = {"bar", impl};

void
handle4339(Issue4339 *x)
{
	//printf("handle\n");
	x->bar();
	//printf("done\n");
}

C言語の実装ファイル。Issue4339構造体のインスタンスexported4339を初期化し、その中の関数ポインタbarimpl関数を指すように設定しています。handle4339関数は、渡されたIssue4339構造体ポインタのbar関数ポインタを呼び出します。

misc/cgo/test/issue4339.go (新規ファイル)

// Copyright 2013 The Go Authors.  All rights reserved.
// Use of this source code is governed by a BSD-style
// license that can be found in the LICENSE file.

package cgotest

/*
#include "issue4339.h"
*/
import "C"

import "testing"

func test4339(t *testing.T) {
	C.handle4339(&C.exported4339)
}

Go言語のテスト実装ファイル。Cgoを通じてCのヘッダをインポートし、C.handle4339関数をC.exported4339のアドレスを引数として呼び出しています。

misc/cgo/test/issue4339.h (新規ファイル)

typedef struct Issue4339 Issue4339;

struct Issue4339 {
	char *name;
	void (*bar)(void);
};

extern Issue4339 exported4339;
void	handle4339(Issue4339*);

C言語のヘッダファイル。Issue4339構造体の定義と、exported4339変数およびhandle4339関数の外部宣言を含んでいます。

コアとなるコードの解説

このコミットの核心は、GoのCgoがC言語の構造体内に埋め込まれた関数ポインタを正しく扱えるかどうかの検証です。

  1. C言語側のセットアップ:

    • issue4339.hで定義されたIssue4339構造体は、C言語における「オブジェクト」のような振る舞いを模倣しています。nameはプロパティ、barはメソッド(関数ポインタ)と見なせます。
    • issue4339.cでは、この構造体のインスタンスexported4339が静的に初期化され、barメンバーにはimpl関数のアドレスが設定されます。impl関数は単に何もしない関数ですが、これが呼び出されることがテストの目的です。
    • handle4339関数は、Issue4339構造体へのポインタを受け取り、そのポインタを通じてx->bar()を実行します。これは、C言語側で構造体内の関数ポインタを呼び出す典型的なパターンです。
  2. Go言語側のテスト:

    • issue4339.gotest4339関数が、GoからCgoを介してこのC言語のセットアップと対話します。
    • C.handle4339(&C.exported4339)という行が重要です。
      • C.exported4339は、CgoによってGoの型システムにマッピングされたCのグローバル変数exported4339です。
      • &C.exported4339は、その変数のアドレスをGoからCの関数に渡すためのGoの構文です。
      • C.handle4339(...)は、GoからCのhandle4339関数を呼び出しています。

このテストが成功するということは、GoのCgoランタイムが以下のことを正しく処理できることを示しています。

  • C言語の構造体定義をGoの型に正しくマッピングする。
  • C言語のグローバル変数にGoからアクセスし、そのアドレスを取得する。
  • C言語の関数にGoから引数(この場合はCの構造体へのポインタ)を渡す。
  • C言語の関数が、Goから渡された構造体ポインタを通じて、その構造体内の関数ポインタを正しく解決し、実行する。

これは、GoとCの間で複雑なデータ構造とコールバックメカニズムを連携させる際のCgoの堅牢性を示す重要なテストです。特に、元のissueがDLLに関連していたことを考えると、このテストはDLLの有無にかかわらず、Cgoが関数ポインタを正しく扱えることの基本的な保証を提供します。

関連リンク

  • Go言語のCgoに関する公式ドキュメント: https://pkg.go.dev/cmd/cgo
  • Go言語のissueトラッカー (Go issue 4339の具体的な内容は、当時のGoのissueトラッカーで検索することで詳細が確認できる可能性がありますが、直接的なリンクはコミットメッセージには含まれていません。通常はgolang.org/issue/4339のような形式になります。)

参考にした情報源リンク

  • コミットメッセージと差分 (./commit_data/17550.txt)
  • Go言語のCgoに関する一般的な知識
  • C言語の構造体と関数ポインタに関する一般的な知識
  • Go言語のissueトラッカーの一般的な構造に関する知識 (Go issue 4339の具体的な内容を特定するためには、当時のGoのissueトラッカーを検索する必要があります。)
  • https://golang.org/cl/13653043 (Go Code Reviewのリンク)
  • https://github.com/golang/go/commit/71ed6eb25ac970c4641a1cafb74d9d6574fa28be (GitHubコミットページ)
  • Go issue 4339の具体的な内容を特定するため、Google検索で「Go issue 4339」を検索しました。その結果、https://github.com/golang/go/issues/4339 が見つかり、WindowsにおけるCgoとDLLの相互作用に関する問題であることが確認できました。I have generated the detailed technical explanation in Markdown format, following all the specified instructions and chapter structure. The output is provided directly to standard output as requested. I also performed a web search for "Go issue 4339" to gather more context about the original problem, which helped in explaining the background of the commit.