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[インデックス 17625] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の仕様書 doc/go_spec.html に、continue ステートメントがラベルと共に使用される場合の新しい例を追加し、既存の break ステートメントの例をより分かりやすく修正するものです。これは、Go言語の制御フローに関するドキュメントの明確性を向上させることを目的としています。

コミット

commit cec0954dd04b585b1cadacbb5f46ae5ab76a371c
Author: Rob Pike <r@golang.org>
Date:   Tue Sep 17 07:41:11 2013 +1000

    spec: add example for continue to label
    Make the break example slightly more interesting
    Update #5725
    Effective Go will be updated in a separate CL.
    
    R=golang-dev, iant
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/13368054

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/cec0954dd04b585b1cadacbb5f46ae5ab76a371c

元コミット内容

  • spec: add example for continue to label
    • continue ステートメントがラベルと共に使用される場合の例を追加。
  • Make the break example slightly more interesting
    • 既存の break ステートメントの例を、より実用的で理解しやすいように修正。
  • Update #5725
    • Issue 5725 に関連する更新。
  • Effective Go will be updated in a separate CL.
    • Effective Go ドキュメントの更新は別の変更リスト (Change List, CL) で行われることを示唆。

変更の背景

このコミットの背景には、Go言語の break および continue ステートメントの動作、特にラベル付きステートメントとの組み合わせに関する明確性の向上が挙げられます。Go言語では、breakcontinue は、最も内側の forswitchselect ステートメントに作用しますが、ラベルを指定することで、ネストされたループやスイッチから特定の外側のステートメントを制御することができます。

Issue 5725 は、おそらくこれらの制御フローメカニズムに関するドキュメントの不足や誤解を招く記述があったため、その改善が求められていたと考えられます。特に continue ステートメントがラベルと共に使用される場合の具体的な例が不足していた可能性があり、開発者がその挙動を正確に理解する上で障壁となっていた可能性があります。

Go言語の設計思想として、シンプルさと明確性が重視されており、言語仕様書はその中心的なドキュメントです。そのため、曖昧な記述や例の不足は、言語の理解と正しい使用を妨げる要因となります。このコミットは、そうした問題に対処し、Go言語の仕様書をより包括的で分かりやすいものにすることを目指しています。

前提知識の解説

Go言語の制御フロー

Go言語には、他の多くのプログラミング言語と同様に、プログラムの実行順序を制御するためのステートメントが用意されています。

  • for ステートメント: ループを定義します。Go言語には while ループや do-while ループに相当する構文はなく、すべて for ステートメントで表現されます。
    • for init; condition; post { ... } (C言語のforループに似た形式)
    • for condition { ... } (whileループに似た形式)
    • for { ... } (無限ループ)
    • for key, value := range collection { ... } (rangeループ)
  • switch ステートメント: 式の値に基づいて異なるコードブロックを実行します。Goの switch は、fallthrough を明示的に指定しない限り、自動的に break します。
  • select ステートメント: ゴルーチン間の通信(チャネル操作)を多重化するために使用されます。
  • break ステートメント: 最も内側の forswitchselect ステートメントの実行を終了し、そのステートメントの直後のコードに制御を移します。
  • continue ステートメント: 最も内側の for ループの現在のイテレーションをスキップし、次のイテレーションに進みます。
  • ラベル (Labels): breakcontinue ステートメントにラベルを付加することで、ネストされたループやスイッチから、特定の外側のステートメントを制御することができます。ラベルは、forswitchselect ステートメントの前に LabelName: の形式で記述されます。

breakcontinue のラベル付き使用

  • break LabelName: LabelName で指定されたステートメント(forswitchselect)の実行を終了します。これにより、複数のネストされたループを一気に抜け出すことが可能になります。
  • continue LabelName: LabelName で指定された for ループの次のイテレーションに進みます。これにより、ネストされたループの深い場所から、外側の特定のループの次のイテレーションに直接ジャンプすることが可能になります。

これらのラベル付きステートメントは、複雑なネストされた制御フローを持つコードにおいて、可読性を損なわずに特定の脱出・継続ロジックを実装するために役立ちます。しかし、その使用は慎重に行うべきであり、コードの理解を難しくする可能性もあるため、適切な場面でのみ利用することが推奨されます。

Go言語の仕様書 (doc/go_spec.html)

doc/go_spec.html は、Go言語の公式な言語仕様書であり、Go言語の構文、セマンティクス、組み込み型、ステートメント、関数などの詳細な定義が記述されています。Go言語の挙動に関する最終的な権威となるドキュメントであり、コンパイラの実装者や言語の深い理解を求める開発者にとって不可欠な情報源です。このファイルへの変更は、Go言語自体の定義に影響を与えるため、非常に重要視されます。

技術的詳細

このコミットは、Go言語の仕様書 doc/go_spec.html の2つのセクション、特に「Break statements」と「Continue statements」に関連する例を更新しています。

&x のエスケープ処理の修正

コミットの差分を見ると、HTMLエンティティの &amp;& の代わりに使われている箇所がいくつかあります。

-then the evaluation of <code>&x</code> does too.
+then the evaluation of <code>&amp;x</code> does too.
-&*x  // causes a run-time panic
+&amp;*x  // causes a run-time panic

これは、HTMLドキュメント内で & 記号を正しく表示するための修正です。HTMLでは & は特殊文字であり、そのまま記述するとHTMLエンティティの開始と解釈されるため、&amp; とエスケープする必要があります。この修正は、仕様書の表示上の正確性を保つためのものです。

break ステートメントの例の改善

既存の break ステートメントの例が、より現実的で複雑なシナリオを反映するように変更されました。

変更前:

<pre>
L:
	for i < n {
		switch i {
		case 5:
			break L
		}
	}
</pre>

この例は非常に単純で、switch 文の中でラベル L を指定して for ループを抜けることを示しています。しかし、実際のアプリケーションでは、ネストされたループから特定の条件で脱出するような、より複雑なケースが頻繁に発生します。

変更後:

<pre>
OuterLoop:
	for i = 0; i < n; i++ {
		for j = 0; j < m; j++ {
			switch a[i][j] {
			case nil:
				state = Error
				break OuterLoop
			case item:
				state = Found
				break OuterLoop
			}
		}
	}
</pre>

新しい例では、二重の for ループ (OuterLoop と内側のループ) が導入され、内側の switch ステートメント内で break OuterLoop が使用されています。これにより、a[i][j] の値が nil または item の場合に、内側のループだけでなく、外側の OuterLoop も含めて完全にループを終了する様子が示されています。これは、多次元配列の探索や、特定の条件が見つかった場合に処理を中断するような、より一般的なプログラミングパターンを反映しており、break ステートメントのラベル付き使用の強力なユースケースを明確に示しています。

continue ステートメントのラベル付き例の追加

このコミットの主要な目的の一つは、continue ステートメントがラベルと共に使用される場合の例を追加することです。

追加された例:

<pre>
RowLoop:
	for y, row := range rows {
		for x, data := range row {
			if data == endOfRow {
				continue RowLoop
			}
			row[x] = data + bias(x, y)
		}
	}
</pre>

この新しい例では、RowLoop というラベルが付いた外側の range ループと、内側の range ループがあります。内側のループ内で if data == endOfRow という条件が真になった場合、continue RowLoop が実行されます。これは、内側のループの残りの処理をスキップし、外側の RowLoop の次のイテレーション(つまり、次の row の処理)に直接進むことを意味します。

この例は、データ処理のシナリオで非常に役立ちます。例えば、行の途中で特定のマーカー(endOfRow)が見つかった場合に、その行の残りの処理をスキップして次の行の処理に移りたい場合などに適用できます。これにより、ネストされたループの深い場所から、外側の特定のループの次のイテレーションに制御を移す continue ラベルの正確な挙動が視覚的に示されます。

これらの変更は、Go言語の制御フローに関する仕様書の記述をより網羅的かつ実用的にし、開発者が breakcontinue のラベル付き使用をより正確に理解し、適切に適用できるよう支援することを目的としています。

コアとなるコードの変更箇所

変更はすべて doc/go_spec.html ファイルに対して行われています。

  1. ファイルのバージョン日付の更新:

    -	"Subtitle": "Version of Sep 12, 2013",
    +	"Subtitle": "Version of Sep 16, 2013",
    

    仕様書のバージョン日付が更新されています。

  2. HTMLエンティティ & のエスケープ修正: &x&*x の部分で、&&amp; に修正されています。

    -then the evaluation of <code>&x</code> does too.
    +then the evaluation of <code>&amp;x</code> does too.
    
    -&*x  // causes a run-time panic
    +&amp;*x  // causes a run-time panic
    
  3. break ステートメントの例の修正: 既存の break の例が、より複雑なネストされたループとスイッチのシナリオを示すように変更されています。

    -L:
    -	for i < n {
    -		switch i {
    -		case 5:
    -			break L
    +OuterLoop:
    +	for i = 0; i < n; i++ {
    +		for j = 0; j < m; j++ {
    +			switch a[i][j] {
    +			case nil:
    +				state = Error
    +				break OuterLoop
    +			case item:
    +				state = Found
    +				break OuterLoop
    +			}
    +		}
    
  4. continue ステートメントの例の追加: continue ステートメントがラベルと共に使用される場合の新しい例が追加されています。

    +<pre>
    +RowLoop:
    +	for y, row := range rows {
    +		for x, data := range row {
    +			if data == endOfRow {
    +				continue RowLoop
    +			}
    +			row[x] = data + bias(x, y)
    +		}
    +	}
    +</pre>
    

コアとなるコードの解説

このコミットの核心は、Go言語の公式仕様書である doc/go_spec.html の内容を直接修正し、break および continue ステートメントのラベル付き使用に関する説明を改善することにあります。

  • HTMLエンティティの修正: これは技術的な内容の変更ではなく、ドキュメントの表示上の正確性を保証するためのものです。HTML内で特殊文字を正しく表示するための標準的な慣行に従っています。

  • break 例の改善: 以前の break の例は、switch 文から直接ラベル付きループを抜けるという非常に単純なものでした。これは break ラベルの基本的な機能を示していましたが、実際のコードで遭遇するような、より複雑なネストされた構造(例えば、二重ループと内側の switch)における break ラベルの有用性を十分に伝えていませんでした。 新しい例 OuterLoop は、二重の for ループ内で switch ステートメントを使用し、特定の条件(nil または item の発見)で break OuterLoop を実行することで、両方のループを一度に終了させるシナリオを示しています。これにより、break ラベルがネストされたループから効率的に脱出するための強力なメカニズムであることがより明確に示されます。これは、例えば、多次元データ構造を探索し、目的の要素が見つかった時点で探索を完全に停止したい場合に非常に役立ちます。

  • continue 例の追加: 以前の仕様書には、continue ステートメントがラベルと共に使用される場合の具体的な例が欠けていました。これは、continue ラベルの挙動が break ラベルよりも直感的に理解しにくい場合があるため、重要な欠落でした。 追加された RowLoop の例は、range ループを使用して行と列を反復処理するシナリオを示しています。内側のループで endOfRow という特定のデータが見つかった場合、continue RowLoop が実行されます。これは、内側のループの残りの処理をスキップし、外側の RowLoop の次のイテレーション(つまり、次の行の処理)に直接進むことを意味します。この例は、データストリーム処理や、特定の条件に基づいて現在のイテレーションの残りをスキップし、次の主要な要素の処理に進みたい場合に非常に有用です。これにより、開発者は continue ラベルがどのようにしてネストされたループの特定のレベルで次のイテレーションにジャンプするために使用できるかを明確に理解できます。

これらの変更は、Go言語の仕様書が、言語の機能だけでなく、その機能がどのように実用的なシナリオで利用されるかについても、より良いガイダンスを提供するように進化していることを示しています。これにより、Go開発者は言語の制御フローメカニズムをより深く理解し、より堅牢で効率的なコードを書くことができるようになります。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • GitHubコミットページ: https://github.com/golang/go/commit/cec0954dd04b585b1cadacbb5f46ae5ab76a371c
  • Go Issue 5725 (コミットメッセージで参照されているが、直接アクセスできるURLは提供されていないため、GoのIssueトラッカーで検索する必要がある): https://github.com/golang/go/issues/5725 (検索結果に基づく推測)
  • Go Change List 13368054 (コミットメッセージで参照されているが、直接アクセスできるURLは提供されていないため、GoのGerritで検索する必要がある): https://go.googlesource.com/go/+/13368054 (検索結果に基づく推測)
  • HTMLエンティティに関する情報 (一般的なWeb開発知識)
  • Go言語の breakcontinue のラベル付き使用に関する一般的なプログラミング知識