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[インデックス 17645] ファイルの概要

このコミットは、gccgo コンパイラが特定のGoコードのコンパイルに失敗したバグを再現するためのテストケースを追加します。具体的には、複数の同一の匿名構造体がメソッドを持つ場合に発生するコンパイルエラーを検証します。

コミット

test: add a test that gccgo failed to compile

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/45e214fb62389214896700ded97b6585c103af9b

元コミット内容

commit 45e214fb62389214896700ded97b6585c103af9b
Author: Ian Lance Taylor <iant@golang.org>
Date:   Wed Sep 18 15:47:50 2013 -0700

    test: add a test that gccgo failed to compile
    
    R=golang-dev, rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/13451045
---
 test/fixedbugs/bug477.go | 34 ++++++++++++++++++++++++++++++++++\
 1 file changed, 34 insertions(+)

diff --git a/test/fixedbugs/bug477.go b/test/fixedbugs/bug477.go
new file mode 100644
index 0000000000..86289afa6d
--- /dev/null
+++ b/test/fixedbugs/bug477.go
@@ -0,0 +1,34 @@
+// compile
+
+// Copyright 2013 The Go Authors.  All rights reserved.
+// Use of this source code is governed by a BSD-style
+// license that can be found in the LICENSE file.
+
+// Test multiple identical unnamed structs with methods.  This caused
+// a compilation error with gccgo.
+
+package p
+
+type S1 struct{}
+
+func (s S1) M() {}
+
+type S2 struct {
+	F1 struct {
+		S1
+	}
+	F2 struct {
+		S1
+	}
+}
+
+type I interface {
+	M()
+}
+
+func F() {
+	var s2 S2
+	var i1 I = s2.F1
+	var i2 I = s2.F2
+	_, _ = i1, i2
+}

変更の背景

このコミットは、Go言語のコンパイラの一つである gccgo が、特定のコードパターンにおいてコンパイルエラーを引き起こす問題を修正するために追加されたテストです。具体的には、複数の匿名構造体が同じ基底型(このケースでは S1)を埋め込み、かつその基底型がメソッドを持つ場合に、gccgo が型の同一性やメソッドセットの解決に誤りがあったことが示唆されます。

Go言語には公式の gc コンパイラと、GCCをバックエンドとする gccgo コンパイラが存在します。両者はGo言語の仕様に準拠していても、内部的な型表現や最適化、メソッド解決のロジックに微妙な違いがあることがあります。このテストは、gccgo がGo言語の仕様に完全に準拠していなかった、または特定のコーナーケースを正しく扱えていなかったことを浮き彫りにするために作成されました。テストが追加されることで、将来的にこのバグが再発しないように、また gccgo の修正が正しく行われたことを確認できるようになります。

前提知識の解説

Goの構造体 (structs)

Goの構造体は、異なる型のフィールドをまとめるための複合データ型です。C言語の構造体やC++のクラスに似ていますが、継承の概念はありません。

type Person struct {
    Name string
    Age  int
}

Goのメソッド (methods)

Goのメソッドは、特定の型に関連付けられた関数です。レシーバ引数(func (receiver Type) MethodName(...)receiver Type 部分)を持つことで、その型の値に対して操作を行うことができます。

type Circle struct {
    Radius float64
}

func (c Circle) Area() float64 {
    return 3.14 * c.Radius * c.Radius
}

Goのインターフェース (interfaces)

Goのインターフェースは、メソッドのシグネチャの集合を定義する型です。ある型がインターフェースのすべてのメソッドを実装していれば、その型はそのインターフェースを「実装している」とみなされます(暗黙的な実装)。

type Shaper interface {
    Area() float64
}

埋め込みフィールド (embedded fields) と匿名構造体 (anonymous structs)

Goでは、構造体の中にフィールド名なしで別の型を埋め込むことができます。これを「埋め込みフィールド」と呼びます。埋め込まれた型のメソッドは、外側の構造体のメソッドとして「昇格」されます。

type Base struct {
    Value int
}

func (b Base) GetValue() int {
    return b.Value
}

type Container struct {
    Base // Base型を埋め込み
    Name string
}

func main() {
    c := Container{Base: Base{Value: 10}, Name: "MyContainer"}
    fmt.Println(c.GetValue()) // BaseのGetValueメソッドがContainerから呼び出せる
}

「匿名構造体」は、型名を定義せずに直接構造体を宣言するものです。

var anonStruct struct {
    X int
    Y string
}

このコミットのテストケースでは、匿名構造体の中にさらに型を埋め込むという、より複雑なパターンが使用されています。

gccgogc コンパイラの比較

  • gc: Go言語の公式コンパイラであり、Goチームによって開発されています。Goのリリースバイナリは通常 gc でコンパイルされます。
  • gccgo: GCC (GNU Compiler Collection) のフロントエンドとしてGo言語をサポートするコンパイラです。GCCの最適化バックエンドを利用できるという利点がありますが、Go言語の進化に追従するのに時間がかかったり、特定のコーナーケースで gc と異なる振る舞いをすることが稀にあります。このコミットのバグはその一例です。

技術的詳細

このバグは、Goの型システムにおける「型の同一性」と「メソッドセットの解決」の複雑な相互作用に起因していると考えられます。

Go言語の仕様では、構造体の型はフィールドの順序、名前、型がすべて一致する場合にのみ同一とみなされます。しかし、匿名構造体の場合、その定義が複数箇所にあっても、その構造が完全に同一であれば、Goのコンパイラはそれらを同じ型として扱うことがあります。

このテストケースの核心は、S2 構造体内の F1F2 フィールドが、それぞれ struct { S1 } という同一の匿名構造体型である点です。この匿名構造体は S1 を埋め込んでおり、S1M() メソッドを持っています。Goの埋め込みのルールにより、s2.F1s2.F2 はそれぞれ M() メソッドを持つことになります。

問題は、var i1 I = s2.F1var i2 I = s2.F2 というインターフェースへの代入です。Goのインターフェースへの代入は、代入される値のメソッドセットがインターフェースのメソッドセットを完全に満たす場合にのみ成功します。s2.F1s2.F2 はどちらも M() メソッドを持つため、I インターフェースを満たします。

gccgo がここで失敗した理由はいくつか推測できます。

  1. 匿名構造体の型同一性判定の誤り: gccgoS2.F1S2.F2 の匿名構造体型を、Goの仕様に反して異なる型として扱ってしまった可能性があります。もし異なる型と認識された場合、それぞれの型が I インターフェースを実装しているかどうかのチェックが正しく行われなかったか、あるいは内部的な型表現の不整合が生じた可能性があります。
  2. メソッドセット解決の誤り: 埋め込みフィールドからのメソッド昇格の処理において、gccgo が複数の同一匿名構造体からのメソッド解決を正しく行えなかった可能性があります。特に、s2.F1s2.F2 がそれぞれ S1M() メソッドを「持っている」と認識しつつも、インターフェースへの代入時にそのメソッドが正しく解決されなかった、あるいは型システム内で重複として扱われた可能性があります。
  3. コンパイラの内部状態の不整合: 複雑な型構造を処理する際に、gccgo の内部的な型テーブルやシンボルテーブルに不整合が生じ、結果としてコンパイルエラーに至った可能性も考えられます。

このバグは、Goの型システムが持つ強力な機能(埋め込み、インターフェースの暗黙的実装)が、コンパイラの実装においていかに繊細なものであるかを示しています。

コアとなるコードの変更箇所

変更は test/fixedbugs/bug477.go という新しいファイルを追加する形で行われています。

// compile

// Copyright 2013 The Go Authors.  All rights reserved.
// Use of this source code is governed by a BSD-style
// license that can be found in the LICENSE file.

// Test multiple identical unnamed structs with methods.  This caused
// a compilation error with gccgo.

package p

type S1 struct{}

func (s S1) M() {}

type S2 struct {
	F1 struct {
		S1
	}
	F2 struct {
		S1
	}
}

type I interface {
	M()
}

func F() {
	var s2 S2
	var i1 I = s2.F1
	var i2 I = s2.F2
	_, _ = i1, i2
}

コアとなるコードの解説

このテストケースは、以下の要素で構成されています。

  1. type S1 struct{}: 空の構造体 S1 を定義します。
  2. func (s S1) M() {}: S1 型に M() というメソッドを定義します。このメソッドは何も行いませんが、インターフェースの実装に必要なシグネチャを提供します。
  3. type S2 struct { F1 struct { S1 }; F2 struct { S1 } }:
    • S2 という構造体を定義します。
    • S2F1F2 という2つのフィールドを持ちます。
    • F1F2 はどちらも struct { S1 } という匿名構造体型です。この匿名構造体は S1 を埋め込んでいます。
    • Goの埋め込みのルールにより、s2.F1s2.F2 はそれぞれ S1M() メソッドを「昇格」された形で持つことになります。
  4. type I interface { M() }: M() メソッドを持つ I というインターフェースを定義します。
  5. func F() { ... }:
    • var s2 S2: S2 型の変数 s2 を宣言します。
    • var i1 I = s2.F1: s2.F1I インターフェース型の変数 i1 に代入します。s2.F1 は匿名構造体 struct { S1 } であり、S1 を埋め込んでいるため M() メソッドを持ち、I インターフェースを満たします。
    • var i2 I = s2.F2: 同様に、s2.F2I インターフェース型の変数 i2 に代入します。s2.F2s2.F1 と全く同じ構造の匿名構造体であり、M() メソッドを持つため I インターフェースを満たします。
    • _, _ = i1, i2: 変数 i1i2 が未使用であるというコンパイラ警告を避けるための慣用的な記述です。

このコードは、Goの仕様に則っていれば問題なくコンパイルされるはずです。しかし、gccgo はこの s2.F1s2.F2 のような、同一の構造を持つ匿名構造体がインターフェースに代入される際に、内部的な型解決のロジックでエラーを発生させていたと考えられます。このテストが追加されたことで、gccgo のこのバグが修正されたことを確認できるようになりました。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語公式ドキュメント
  • Go言語のソースコード (test/fixedbugs/bug477.go)
  • GCCGoに関する一般的な情報 (GoとGCCGoの比較など)
  • Go言語の型システムに関する一般的な知識

[インデックス 17645] ファイルの概要

このコミットは、gccgo コンパイラが特定のGoコードのコンパイルに失敗したバグを再現するためのテストケースを追加します。具体的には、複数の同一の匿名構造体がメソッドを持つ場合に発生するコンパイルエラーを検証します。

コミット

test: add a test that gccgo failed to compile

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/45e214fb62389214896700ded97b6585c103af9b

元コミット内容

commit 45e214fb62389214896700ded97b6585c103af9b
Author: Ian Lance Taylor <iant@golang.org>
Date:   Wed Sep 18 15:47:50 2013 -0700

    test: add a test that gccgo failed to compile
    
    R=golang-dev, rsc
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/13451045
---
 test/fixedbugs/bug477.go | 34 ++++++++++++++++++++++++++++++++++\
 1 file changed, 34 insertions(+)

diff --git a/test/fixedbugs/bug477.go b/test/fixedbugs/bug477.go
new file mode 100644
index 0000000000..86289afa6d
--- /dev/null
+++ b/test/fixedbugs/bug477.go
@@ -0,0 +1,34 @@
+// compile
+
+// Copyright 2013 The Go Authors.  All rights reserved.
+// Use of this source code is governed by a BSD-style
+// license that can be found in the LICENSE file.
+
+// Test multiple identical unnamed structs with methods.  This caused
+// a compilation error with gccgo.
+
+package p
+
+type S1 struct{}
+
+func (s S1) M() {}
+
+type S2 struct {
+	F1 struct {
+		S1
+	}
+	F2 struct {
+		S1
+	}
+}
+
+type I interface {
+	M()
+}
+
+func F() {
+	var s2 S2
+	var i1 I = s2.F1
+	var i2 I = s2.F2
+	_, _ = i1, i2
+}

変更の背景

このコミットは、Go言語のコンパイラの一つである gccgo が、特定のコードパターンにおいてコンパイルエラーを引き起こす問題を修正するために追加されたテストです。具体的には、複数の匿名構造体が同じ基底型(このケースでは S1)を埋め込み、かつその基底型がメソッドを持つ場合に、gccgo が型の同一性やメソッドセットの解決に誤りがあったことが示唆されます。

Go言語には公式の gc コンパイラと、GCCをバックエンドとする gccgo コンパイラが存在します。両者はGo言語の仕様に準拠していても、内部的な型表現や最適化、メソッド解決のロジックに微妙な違いがあることがあります。このテストは、gccgo がGo言語の仕様に完全に準拠していなかった、または特定のコーナーケースを正しく扱えていなかったことを浮き彫りにするために作成されました。テストが追加されることで、将来的にこのバグが再発しないように、また gccgo の修正が正しく行われたことを確認できるようになります。

前提知識の解説

Goの構造体 (structs)

Goの構造体は、異なる型のフィールドをまとめるための複合データ型です。C言語の構造体やC++のクラスに似ていますが、継承の概念はありません。

type Person struct {
    Name string
    Age  int
}

Goのメソッド (methods)

Goのメソッドは、特定の型に関連付けられた関数です。レシーバ引数(func (receiver Type) MethodName(...)receiver Type 部分)を持つことで、その型の値に対して操作を行うことができます。

type Circle struct {
    Radius float64
}

func (c Circle) Area() float64 {
    return 3.14 * c.Radius * c.Radius
}

Goのインターフェース (interfaces)

Goのインターフェースは、メソッドのシグネチャの集合を定義する型です。ある型がインターフェースのすべてのメソッドを実装していれば、その型はそのインターフェースを「実装している」とみなされます(暗黙的な実装)。

type Shaper interface {
    Area() float64
}

埋め込みフィールド (embedded fields) と匿名構造体 (anonymous structs)

Goでは、構造体の中にフィールド名なしで別の型を埋め込むことができます。これを「埋め込みフィールド」と呼びます。埋め込まれた型のメソッドは、外側の構造体のメソッドとして「昇格」されます。

type Base struct {
    Value int
}

func (b Base) GetValue() int {
    return b.Value
}

type Container struct {
    Base // Base型を埋め込み
    Name string
}

func main() {
    c := Container{Base: Base{Value: 10}, Name: "MyContainer"}
    fmt.Println(c.GetValue()) // BaseのGetValueメソッドがContainerから呼び出せる
}

「匿名構造体」は、型名を定義せずに直接構造体を宣言するものです。

var anonStruct struct {
    X int
    Y string
}

このコミットのテストケースでは、匿名構造体の中にさらに型を埋め込むという、より複雑なパターンが使用されています。

gccgogc コンパイラの比較

  • gc: Go言語の公式コンパイラであり、Goチームによって開発されています。Goのリリースバイナリは通常 gc でコンパイルされます。
  • gccgo: GCC (GNU Compiler Collection) のフロントエンドとしてGo言語をサポートするコンパイラです。GCCの最適化バックエンドを利用できるという利点がありますが、Go言語の進化に追従するのに時間がかかったり、特定のコーナーケースで gc と異なる振る舞いをすることが稀にあります。このコミットのバグはその一例です。

技術的詳細

このバグは、Goの型システムにおける「型の同一性」と「メソッドセットの解決」の複雑な相互作用に起因していると考えられます。

Go言語の仕様では、構造体の型はフィールドの順序、名前、型がすべて一致する場合にのみ同一とみなされます。しかし、匿名構造体の場合、その定義が複数箇所にあっても、その構造が完全に同一であれば、Goのコンパイラはそれらを同じ型として扱うことがあります。

このテストケースの核心は、S2 構造体内の F1F2 フィールドが、それぞれ struct { S1 } という同一の匿名構造体型である点です。この匿名構造体は S1 を埋め込んでおり、S1M() メソッドを持っています。Goの埋め込みのルールにより、s2.F1s2.F2 はそれぞれ M() メソッドを持つことになります。

問題は、var i1 I = s2.F1var i2 I = s2.F2 というインターフェースへの代入です。Goのインターフェースへの代入は、代入される値のメソッドセットがインターフェースのメソッドセットを完全に満たす場合にのみ成功します。s2.F1s2.F2 はどちらも M() メソッドを持つため、I インターフェースを満たします。

gccgo がここで失敗した理由はいくつか推測できます。

  1. 匿名構造体の型同一性判定の誤り: gccgoS2.F1S2.F2 の匿名構造体型を、Goの仕様に反して異なる型として扱ってしまった可能性があります。もし異なる型と認識された場合、それぞれの型が I インターフェースを実装しているかどうかのチェックが正しく行われなかったか、あるいは内部的な型表現の不整合が生じた可能性があります。
  2. メソッドセット解決の誤り: 埋め込みフィールドからのメソッド昇格の処理において、gccgo が複数の同一匿名構造体からのメソッド解決を正しく行えなかった可能性があります。特に、s2.F1s2.F2 がそれぞれ S1M() メソッドを「持っている」と認識しつつも、インターフェースへの代入時にそのメソッドが正しく解決されなかった、あるいは型システム内で重複として扱われた可能性があります。
  3. コンパイラの内部状態の不整合: 複雑な型構造を処理する際に、gccgo の内部的な型テーブルやシンボルテーブルに不整合が生じ、結果としてコンパイルエラーに至った可能性も考えられます。

このバグは、Goの型システムが持つ強力な機能(埋め込み、インターフェースの暗黙的実装)が、コンパイラの実装においていかに繊細なものであるかを示しています。

コアとなるコードの変更箇所

変更は test/fixedbugs/bug477.go という新しいファイルを追加する形で行われています。

// compile

// Copyright 2013 The Go Authors.  All rights reserved.
// Use of this source code is governed by a BSD-style
// license that can be found in the LICENSE file.

// Test multiple identical unnamed structs with methods.  This caused
// a compilation error with gccgo.

package p

type S1 struct{}

func (s S1) M() {}

type S2 struct {
	F1 struct {
		S1
	}
	F2 struct {
		S1
	}
}

type I interface {
	M()
}

func F() {
	var s2 S2
	var i1 I = s2.F1
	var i2 I = s2.F2
	_, _ = i1, i2
}

コアとなるコードの解説

このテストケースは、以下の要素で構成されています。

  1. type S1 struct{}: 空の構造体 S1 を定義します。
  2. func (s S1) M() {}: S1 型に M() というメソッドを定義します。このメソッドは何も行いませんが、インターフェースの実装に必要なシグネチャを提供します。
  3. type S2 struct { F1 struct { S1 }; F2 struct { S1 } }:
    • S2 という構造体を定義します。
    • S2F1F2 という2つのフィールドを持ちます。
    • F1F2 はどちらも struct { S1 } という匿名構造体型です。この匿名構造体は S1 を埋め込んでいます。
    • Goの埋め込みのルールにより、s2.F1s2.F2 はそれぞれ S1M() メソッドを「昇格」された形で持つことになります。
  4. type I interface { M() }: M() メソッドを持つ I というインターフェースを定義します。
  5. func F() { ... }:
    • var s2 S2: S2 型の変数 s2 を宣言します。
    • var i1 I = s2.F1: s2.F1I インターフェース型の変数 i1 に代入します。s2.F1 は匿名構造体 struct { S1 } であり、S1 を埋め込んでいるため M() メソッドを持ち、I インターフェースを満たします。
    • var i2 I = s2.F2: 同様に、s2.F2I インターフェース型の変数 i2 に代入します。s2.F2s2.F1 と全く同じ構造の匿名構造体であり、M() メソッドを持つため I インターフェースを満たします。
    • _, _ = i1, i2: 変数 i1i2 が未使用であるというコンパイラ警告を避けるための慣用的な記述です。

このコードは、Goの仕様に則っていれば問題なくコンパイルされるはずです。しかし、gccgo はこの s2.F1s2.F2 のような、同一の構造を持つ匿名構造体がインターフェースに代入される際に、内部的な型解決のロジックでエラーを発生させていたと考えられます。このテストが追加されたことで、gccgo のこのバグが修正されたことを確認できるようになりました。

関連リンク

参考にした情報源リンク

  • Go言語公式ドキュメント
  • Go言語のソースコード (test/fixedbugs/bug477.go)
  • GCCGoに関する一般的な情報 (GoとGCCGoの比較など)
  • Go言語の型システムに関する一般的な知識
  • Web検索: "golang gccgo unnamed struct method compile error"