[インデックス 17695] ファイルの概要
このコミットは、Go言語の標準ライブラリ math/big
パッケージ内の Int.Bytes
および Int.BitLen
メソッドのドキュメンテーションにおける変数名の誤りを修正するものです。具体的には、ドキュメンテーションコメント内で参照されている変数が z
となっていた箇所を、実際のレシーバー変数名である x
に修正しています。
コミット
- コミットハッシュ:
b0ef6aeff961053b4351cc103e3d4e4f72542e10
- Author: Kamil Kisiel kamil@kamilkisiel.net
- Date: Tue Sep 24 16:32:23 2013 -0700
GitHub上でのコミットページへのリンク
https://github.com/golang/go/commit/b0ef6aeff961053b4351cc103e3d4e4f72542e10
元コミット内容
math/big: Fix variable name in documentation for *Int.Bytes and BitLen.
R=golang-dev, iant, gri
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/13869043
変更の背景
この変更の背景は、math/big
パッケージの Int
型のメソッド Bytes()
と BitLen()
のドキュメンテーションコメントに存在する軽微な誤りを修正することです。Go言語では、メソッドのレシーバー変数は慣習的に短い名前(例: x
や z
)が使われますが、ドキュメンテーションコメント内でそのレシーバー変数を参照する際には、実際のコードで使用されている変数名と一致しているべきです。
このコミット以前は、Bytes()
と BitLen()
メソッドのドキュメンテーションコメント内で、レシーバー変数が z
と記述されていましたが、実際のメソッド定義では x
が使用されていました。この不一致は、コードの可読性や理解を妨げる可能性があり、特にGoDocなどの自動生成されるドキュメンテーションにおいて混乱を招く恐れがありました。このコミットは、このようなドキュメンテーションの正確性を向上させることを目的としています。
前提知識の解説
Go言語の math/big
パッケージ
math/big
パッケージは、Go言語で任意精度の算術演算を可能にするための型を提供します。標準のGoの組み込み型(int
, int64
, float64
など)は固定のビット幅を持つため、非常に大きな数値や高い精度を必要とする計算には適していません。math/big
パッケージは、これらの制限を克服し、任意の大きさの整数(Int
)、有理数(Rat
)、浮動小数点数(Float
)を扱うことができます。
*Int
型:math/big
パッケージで任意精度の整数を表す型です。ポインタ型 (*Int
) としてメソッドのレシーバーや戻り値としてよく使用されます。これは、大きな数値のコピーを避けるためと、メソッドがレシーバーの値を直接変更できるようにするためです。
Int.Bytes()
メソッド
func (x *Int) Bytes() []byte
このメソッドは、*Int
型の数値 x
の絶対値を、ビッグエンディアンのバイトスライスとして返します。ビッグエンディアンとは、数値の最上位バイト(最も大きな桁)がバイトスライスの先頭に来る形式です。例えば、Int
型の 1025
(バイナリで 00000100 00000001
) は、[]byte{4, 1}
として表現されます。
Int.BitLen()
メソッド
func (x *Int) BitLen() int
このメソッドは、*Int
型の数値 x
の絶対値のビット長を返します。ビット長とは、数値を表現するのに必要な最小ビット数です。例えば、1
のビット長は 1
、2
のビット長は 2
、3
のビット長は 2
、4
のビット長は 3
となります。0
のビット長は 0
と定義されています。
Go言語のドキュメンテーションコメント
Go言語では、エクスポートされた(大文字で始まる)型、関数、メソッド、変数の直前に記述されたコメントが、GoDocツールによって自動的にドキュメンテーションとして抽出されます。これらのコメントは、コードの動作や使用方法を説明するために非常に重要です。慣習として、メソッドのドキュメンテーションコメントでは、レシーバー変数を参照する際に、実際のメソッド定義で使用されている変数名と一致させるべきです。
技術的詳細
このコミットは、src/pkg/math/big/int.go
ファイル内の2つのメソッド、Bytes()
と BitLen()
のドキュメンテーションコメントを修正しています。
元のコードでは、これらのメソッドのドキュメンテーションコメントが以下のように記述されていました。
// Bytes returns the absolute value of z as a big-endian byte slice.
func (x *Int) Bytes() []byte {
// ...
}
// BitLen returns the length of the absolute value of z in bits.
// The bit length of 0 is 0.
func (x *Int) BitLen() int {
// ...
}
ここで注目すべきは、コメント内で「z
の絶対値」と記述されている点です。しかし、実際のメソッドのシグネチャを見ると、レシーバー変数は x
と定義されています (func (x *Int) ...
)。
この不一致は、GoDocによって生成されるドキュメンテーションを見た際に、読者に混乱を与える可能性があります。ドキュメンテーションはコードの正確な説明であるべきであり、このような変数名の不一致は、些細なものであっても誤解を招く原因となり得ます。
このコミットでは、この不一致を解消するために、コメント内の z
を x
に変更しています。これにより、ドキュメンテーションが実際のコードと完全に一致し、GoDocの出力もより正確になります。これは、コードの品質と保守性を高めるための、細部への注意を示す良い例です。
コアとなるコードの変更箇所
変更は src/pkg/math/big/int.go
ファイルの以下の行で行われました。
--- a/src/pkg/math/big/int.go
+++ b/src/pkg/math/big/int.go
@@ -563,13 +563,13 @@ func (z *Int) SetBytes(buf []byte) *Int {
return z
}
-// Bytes returns the absolute value of z as a big-endian byte slice.
+// Bytes returns the absolute value of x as a big-endian byte slice.
func (x *Int) Bytes() []byte {
buf := make([]byte, len(x.abs)*_S)
return buf[x.abs.bytes(buf):]
}
-// BitLen returns the length of the absolute value of z in bits.
+// BitLen returns the length of the absolute value of x in bits.
// The bit length of 0 is 0.
func (x *Int) BitLen() int {
return x.abs.bitLen()
コアとなるコードの解説
このコミットにおけるコアとなる変更は、src/pkg/math/big/int.go
ファイル内の2つのドキュメンテーションコメントの修正です。
-
Bytes()
メソッドのコメント修正:- 変更前:
// Bytes returns the absolute value of z as a big-endian byte slice.
- 変更後:
// Bytes returns the absolute value of x as a big-endian byte slice.
- この変更は、
Bytes()
メソッドのレシーバー変数がx
であるにもかかわらず、コメント内でz
と記述されていた誤りを修正しています。これにより、コメントが実際のコードの変数名と一致するようになりました。
- 変更前:
-
BitLen()
メソッドのコメント修正:- 変更前:
// BitLen returns the length of the absolute value of z in bits.
- 変更後:
// BitLen returns the length of the absolute value of x in bits.
- 同様に、
BitLen()
メソッドのレシーバー変数がx
であるにもかかわらず、コメント内でz
と記述されていた誤りを修正しています。
- 変更前:
これらの変更は、コードの機能には一切影響を与えません。純粋にドキュメンテーションの正確性を向上させるための修正であり、GoDocなどのツールが生成するドキュメントの品質を高めます。これは、Go言語コミュニティがコードの可読性とドキュメンテーションの正確性を重視していることの表れです。
関連リンク
- Go CL 13869043: https://golang.org/cl/13869043
参考にした情報源リンク
- Go言語
math/big
パッケージ公式ドキュメント: https://pkg.go.dev/math/big - Go言語のドキュメンテーションの書き方 (GoDoc): https://go.dev/blog/godoc