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[インデックス 17739] ファイルの概要

このコミットは、Go言語の標準ライブラリ go/doc パッケージ内の comment.go ファイルにおける ToHTML 関数のドキュメントコメントを更新するものです。主な目的は、GoのソースコードコメントがHTML形式に変換される際のルール、特に段落、見出し、および整形済みテキストブロックの処理方法に関する説明を明確にすることです。

コミット

commit 01479b6c4a5a7863b9712b16123d41fea6a3951f
Author: Russ Cox <rsc@golang.org>
Date:   Thu Oct 3 09:49:12 2013 -0400

    go/doc: update ToHTML doc comment
    
    Update #5429
    
    R=golang-dev, r, dan.kortschak
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/14293043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/01479b6c4a5a7863b9712b16123d41fea6a3951f

元コミット内容

go/doc: update ToHTML doc comment

このコミットは、go/doc パッケージの ToHTML 関数のドキュメントコメントを更新します。これはIssue #5429に関連するものです。

変更の背景

Go言語では、ソースコード内のコメントから自動的にドキュメントを生成するツール godoc が提供されています。このツールは、開発者がコードとドキュメントを密接に連携させ、常に最新の状態に保つことを奨励しています。go/doc パッケージは、この godoc ツールの中核をなす部分であり、Goのソースコードから抽出されたドキュメントコメントを解析し、構造化されたデータに変換する役割を担っています。

ToHTML 関数は、この構造化されたドキュメントデータを最終的にHTML形式に変換するために使用されます。この変換プロセスには、コメント内の改行、インデント、特定のパターンを認識し、それぞれをHTMLの段落 (<p>)、整形済みテキスト (<pre>)、見出し (<h1>など) にマッピングするロジックが含まれています。

このコミットの背景には、おそらく既存のドキュメントコメントが ToHTML 関数の実際の挙動を正確に反映していなかった、あるいはその説明が不十分であったという問題があったと考えられます。特に、段落の区切り方、見出しの認識ロジック、整形済みブロックの処理に関する詳細が不足していた可能性があります。Issue #5429がこのドキュメントの不明瞭さを指摘していたと推測されます。

前提知識の解説

Go言語のドキュメンテーションシステム (godoc)

Go言語には、godoc という公式のドキュメンテーションツールが組み込まれています。これは、Goのソースコードに記述されたコメントから自動的にAPIドキュメントを生成するものです。godoc は、単にコメントを表示するだけでなく、特定の書式規則に従って記述されたコメントを解析し、HTMLなどの整形された形式で表示します。これにより、開発者はコードとドキュメントを同時に管理でき、ドキュメントの陳腐化を防ぐことができます。

go/doc パッケージ

go/doc パッケージは、godoc ツールの基盤となるライブラリです。このパッケージは、Goのソースコードを解析し、パッケージ、型、関数、変数などのドキュメントコメントを抽出して、プログラムで扱えるデータ構造に変換します。このデータ構造は、ドキュメントの表示や検索、さらには他のツールでの利用を容易にします。

ToHTML 関数

go/doc パッケージ内の ToHTML 関数は、抽出されたドキュメントコメントのテキストをHTML形式に変換する役割を担っています。この関数は、プレーンテキストのコメントを、Webブラウザで表示可能な整形されたHTMLに変換するために、以下のような特定のルールに従って処理を行います。

  • 段落 (Paragraphs): 空行で区切られたテキストのブロックは、通常、個別の段落として扱われます。
  • 整形済みテキスト (Pre-formatted text): 行頭にインデントがあるテキストブロックは、コード例や整形済みの出力などとして扱われ、通常 <pre> タグで囲まれます。これにより、テキストの空白や改行がそのまま保持されます。
  • 見出し (Headings): 特定のパターンに合致する行は、見出しとして認識され、<h1><h2> などの見出しタグに変換されます。

このコミットは、特にこれらの変換ルールに関するドキュメントコメントをより正確かつ詳細に記述することで、ToHTML 関数の挙動を明確にすることを目的としています。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/go/doc/comment.go ファイル内の ToHTML 関数のドキュメントコメントを修正しています。変更の核心は、GoのドキュメンテーションコメントがHTMLに変換される際の、段落、見出し、および整形済みブロックの処理ロジックに関する説明の明確化です。

以前のドキュメントコメントは、これらの変換ルールについて非常に簡潔な説明しか提供していませんでした。

  • Turn each run of multiple \n into </p><p>. (複数の改行の連続を </p><p> に変換する)
  • Turn each run of indented lines into a <pre> block without indent. (インデントされた行の連続を、インデントなしの <pre> ブロックに変換する)
  • Enclose headings with header tags. (見出しをヘッダータグで囲む)

新しいドキュメントコメントは、これらのルールをより詳細かつ正確に記述しています。

  1. 段落の変換ルール:

    • Each span of unindented non-blank lines is converted into a single paragraph.
      • インデントされていない空行ではない行の連続は、単一の段落に変換されます。これは、コメント内のテキストが空行で区切られている場合に、それぞれが独立した段落として扱われることを意味します。
    • There is one exception to the rule: a span that consists of a single line, is followed by another paragraph span, begins with a capital letter, and contains no punctuation is formatted as a heading.
      • このルールには例外があります。単一行で構成され、その後に別の段落が続き、大文字で始まり、句読点を含まないスパンは、見出しとしてフォーマットされます。これは、Goのドキュメンテーションコメントにおける見出しの認識ロジックを具体的に説明しています。例えば、「Introduction」のような行は、このルールに合致すれば見出しとして扱われる可能性があります。
  2. 整形済みブロックの変換ルール:

    • A span of indented lines is converted into a <pre> block, with the common indent prefix removed.
      • インデントされた行の連続は、<pre> ブロックに変換され、共通のインデントプレフィックスは削除されます。これは、コード例や整形済みテキストをコメント内に記述する際に、そのインデントがHTML出力では取り除かれ、<pre> タグによって元の整形が保持されることを意味します。

これらの変更は、ToHTML 関数の内部的な実装ロジック自体を変更するものではなく、その外部から見た挙動、つまりコメントがどのようにHTMLに変換されるかというルールを、より正確にユーザーに伝えるためのドキュメントの改善です。これにより、開発者はGoのドキュメンテーションコメントを記述する際に、どのように書けば意図したHTML出力が得られるかをより明確に理解できるようになります。

コアとなるコードの変更箇所

変更は src/pkg/go/doc/comment.go ファイルの以下の部分です。

--- a/src/pkg/go/doc/comment.go
+++ b/src/pkg/go/doc/comment.go
@@ -239,9 +239,14 @@ func anchorID(line string) string {
 // nor to have trailing spaces at the end of lines.
 // The comment markers have already been removed.
 //
-// Turn each run of multiple \n into </p><p>.
-// Turn each run of indented lines into a <pre> block without indent.\n
-// Enclose headings with header tags.
+// Each span of unindented non-blank lines is converted into
+// a single paragraph. There is one exception to the rule: a span that
+// consists of a single line, is followed by another paragraph span,
+// begins with a capital letter, and contains no punctuation
+// is formatted as a heading.
+//
+// A span of indented lines is converted into a <pre> block,
+// with the common indent prefix removed.
 //
 // URLs in the comment text are converted into links; if the URL also appears
 // in the words map, the link is taken from the map (if the corresponding map

コアとなるコードの解説

この変更は、ToHTML 関数のドキュメントコメントを更新しています。ToHTML 関数は、GoのドキュメンテーションコメントをHTMLに変換する際の主要なロジックをカプセル化しています。

変更前は、コメントのHTML変換ルールが非常に簡潔に記述されていました。

  • Turn each run of multiple \n into </p><p>.
    • これは、複数の改行が段落の区切りとして機能することを示唆していました。
  • Turn each run of indented lines into a <pre> block without indent.
    • インデントされた行が <pre> ブロックになることを示していました。
  • Enclose headings with header tags.
    • 見出しがヘッダータグで囲まれることを示していました。

変更後は、これらのルールがより詳細かつ正確に記述されています。

  • 段落の処理:

    • Each span of unindented non-blank lines is converted into a single paragraph.
      • インデントされていない空行ではない行の連続が単一の段落になることが明記されました。これにより、Goのドキュメントコメントでは、空行が段落の区切りとして機能することが明確になります。
    • There is one exception to the rule: a span that consists of a single line, is followed by another paragraph span, begins with a capital letter, and contains no punctuation is formatted as a heading.
      • この新しい説明は、Goのドキュメンテーションシステムがどのようにして見出しを自動的に認識するかという、具体的なヒューリスティックを明らかにしています。単一行で、大文字で始まり、句読点を含まず、その後に別の段落が続くという条件が、見出しとして認識されるための基準となります。これは、開発者が意図的に見出しを作成する際に非常に役立つ情報です。
  • 整形済みブロックの処理:

    • A span of indented lines is converted into a <pre> block, with the common indent prefix removed.
      • インデントされた行が <pre> ブロックに変換される際に、「共通のインデントプレフィックスが削除される」という重要な詳細が追加されました。これは、コメント内でコード例などを記述する際に、余分なインデントがHTML出力に含まれないことを保証し、よりクリーンな表示を可能にします。

このドキュメントコメントの更新は、ToHTML 関数の内部的な動作を変更するものではなく、その動作に関する説明を改善することで、Goのドキュメンテーションコメントの記述方法に関する開発者の理解を深めることを目的としています。これにより、godoc が生成するドキュメントの品質と予測可能性が向上します。

関連リンク

参考にした情報源リンク