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[インデックス 17751] ファイルの概要

このコミットは、Goランタイム内のsrc/pkg/runtime/traceback_x86.cファイルから、未使用の関数宣言であるruntime·deferprocruntime·newproc、およびruntime·morestackを削除するものです。これはコードベースのクリーンアップを目的としており、不要な宣言を取り除くことで、コードの可読性と保守性を向上させます。

コミット

commit 15baf6b4ace720e7b2cfe5911d43aa9ede1a4f97
Author: Keith Randall <khr@golang.org>
Date:   Fri Oct 4 13:22:20 2013 -0700

    runtime: remove 3 unused declarations.
    
    R=golang-dev, cshapiro, iant
    CC=golang-dev
    https://golang.org/cl/14405043

GitHub上でのコミットページへのリンク

https://github.com/golang/go/commit/15baf6b4ace720e7b2cfe5911d43aa9ede1a4f97

元コミット内容

runtime: remove 3 unused declarations.

R=golang-dev, cshapiro, iant
CC=golang-dev
https://golang.org/cl/14405043

変更の背景

このコミットの背景は非常にシンプルで、コードベースの健全性を維持するための一般的なクリーンアップ作業の一環です。src/pkg/runtime/traceback_x86.cファイル内に、もはや使用されていない関数宣言(プロトタイプ)が存在していました。未使用のコードや宣言は、以下のような問題を引き起こす可能性があります。

  • 可読性の低下: 不要なコードが存在することで、本当に必要なコードが埋もれてしまい、コードの意図を理解するのに時間がかかります。
  • 保守性の低下: 未使用であっても、将来的に誤って参照されたり、混乱を招いたりする可能性があります。また、コンパイル時間やバイナリサイズにわずかながら影響を与える可能性もゼロではありません。
  • 誤解の招き: 宣言があるにもかかわらず実装がない、あるいは使用されていない場合、開発者がその宣言の目的を誤解し、不必要な調査を行う原因となることがあります。

Goランタイムのような大規模で重要なコードベースでは、このような小さなクリーンアップも全体の品質と効率に貢献します。この変更は、特定のバグ修正や新機能の追加ではなく、既存コードの品質向上を目的としたものです。

前提知識の解説

このコミットを理解するためには、Goランタイムの基本的な概念と、C言語における関数宣言(プロトタイプ)の役割、そしてGoの主要なランタイム関数であるdeferprocnewprocmorestackについて理解しておく必要があります。

Goランタイム

Goランタイムは、Goプログラムの実行を管理する低レベルのシステムです。これには、ガベージコレクション、ゴルーチン(goroutine)のスケジューリング、チャネル(channel)の管理、スタックの管理などが含まれます。Goランタイムの多くの部分はC言語とアセンブリ言語で書かれており、Goプログラムが効率的に動作するための基盤を提供しています。

C言語における関数宣言(プロトタイプ)

C言語では、関数を使用する前にその関数を宣言する必要があります。関数宣言(またはプロトタイプ)は、関数の名前、戻り値の型、および引数の型と数をコンパイラに伝えます。これにより、コンパイラは関数呼び出しが正しい形式で行われているかを確認できます。関数宣言は通常、ヘッダーファイル(.h)に記述されるか、ソースファイル(.c)の先頭に記述されます。

// 関数宣言の例
int add(int a, int b); // 戻り値の型、関数名、引数の型と数を宣言

このコミットで削除されたのは、まさにこのような関数宣言であり、実際の関数の実装(定義)ではありません。

runtime·deferproc

deferprocは、Goのdeferステートメントを処理するためのランタイム関数です。Goでは、deferキーワードを使って関数呼び出しを遅延させることができます。遅延された関数は、それを囲む関数がリターンする直前(パニックが発生した場合でも)に実行されます。

deferprocは、deferステートメントが実行されたときに呼び出され、遅延される関数とその引数を現在のゴルーチンの遅延リストに登録します。これにより、関数が終了する際に、登録された遅延関数がLIFO(後入れ先出し)の順序で実行されることが保証されます。

runtime·newproc

newprocは、新しいゴルーチンを作成するためのランタイム関数です。Goのgoキーワード(例: go myFunction())は、コンパイラによってruntime.newprocの呼び出しに変換されます。

newprocは、新しいゴルーチンのためのスタックを割り当て、初期化し、そのゴルーチンをGoスケジューラが実行できるように準備します。ゴルーチンは非常に軽量なスレッドのようなもので、Goの並行処理モデルの根幹をなします。

runtime·morestack

morestackは、Goの動的なスタック管理システムの一部です。Goのゴルーチンは、最初は比較的小さなスタック(通常2KB)で開始されます。関数が実行され、より多くのスタック空間が必要になった場合、morestackが呼び出されます。

morestackは、現在のスタックが不足していることを検出し、より大きな新しいスタックセグメントを割り当てます。そして、古いスタックの内容を新しいスタックにコピーします。このプロセスは「スタックの分割(stack split)」または「スタックの成長(stack growth)」と呼ばれ、Goプログラムがメモリを効率的に使用し、各ゴルーチンに固定された大きなスタックを事前に割り当てる必要がないようにします。

これらの関数は、Goプログラムの実行において非常に重要な役割を担っていますが、このコミットでは、これらの関数の「宣言」が、特定のファイル内で「未使用」であったために削除されたという点が重要です。

技術的詳細

このコミットは、src/pkg/runtime/traceback_x86.cファイルから3つの関数宣言を削除するものです。

  • void runtime·deferproc(void);
  • void runtime·newproc(void);
  • void runtime·morestack(void);

これらの宣言は、C言語の関数プロトタイプであり、これらの関数がどこか別の場所で定義されていることをコンパイラに伝えます。traceback_x86.cファイルは、x86アーキテクチャにおけるスタックトレースバック(プログラムの実行パスを追跡する機能)に関連するコードを含んでいます。

コミットメッセージが「remove 3 unused declarations」と明確に述べているように、これらの関数はtraceback_x86.cファイル内で実際に呼び出されたり、その宣言が他のコードによって必要とされたりしていませんでした。つまり、このファイルにとっては冗長な情報でした。

Goランタイムのコードベースは、C言語とGo言語、そしてアセンブリ言語が混在しており、特に初期のGoバージョンではC言語のコードが多く見られました。ランタイムの内部関数は、GoのコードからCgoを介して呼び出されたり、アセンブリコードから直接呼び出されたりすることがあります。しかし、特定のCソースファイル内でその関数が使用されていない場合、そのファイルに宣言を記述する必要はありません。

この変更は、コンパイルされたバイナリの動作に影響を与えるものではなく、純粋にソースコードのクリーンアップです。これにより、コンパイラが処理する情報が減り、コードベースがより整理されます。

コアとなるコードの変更箇所

--- a/src/pkg/runtime/traceback_x86.c
+++ b/src/pkg/runtime/traceback_x86.c
@@ -9,9 +9,6 @@
 #include "malloc.h"
 #include "funcdata.h"
 
-void runtime·deferproc(void);
-void runtime·newproc(void);
-void runtime·morestack(void);
 void runtime·sigpanic(void);
 
 // This code is also used for the 386 tracebacks.

コアとなるコードの解説

上記の差分が示すように、変更は非常に単純です。src/pkg/runtime/traceback_x86.cファイルの9行目から11行目にかけて存在していた3つのvoid型を返す関数の宣言が削除されています。

  • void runtime·deferproc(void);
  • void runtime·newproc(void);
  • void runtime·morestack(void);

これらの行は、C言語のコメントアウトではなく、実際にコードから削除されています。これは、これらの関数がこのファイル内で使用されていなかったため、その宣言が不要であると判断されたことを意味します。

runtime·sigpanic(void);の宣言は残されていますが、これはtraceback_x86.cファイル内でruntime·sigpanicが使用されているか、またはこのファイルにとってその宣言が必要であるためです。

この変更は、コードの機能には全く影響を与えません。単に、不要な宣言を取り除くことで、コードベースをより簡潔で理解しやすいものにするための保守作業です。

関連リンク

参考にした情報源リンク